トヨタ ロングバス エクスプレス出発式
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Friday, March 04, 2005というわけで、かねてより予告されていたトヨタ専用列車が11/15から運行開始されることとなり、10/30に名古屋南貨物駅で出発式が行われました。
トヨタ専用列車でCO2削減
トヨタ専用列車発進、JR貨物が11月から部品輸送20両編成のコンテナ列車に31ftコンテナ(10tトラックのバンボディ相当)2個を積載して運行することは既報のとおりです。現状は海運での輸送ですから、直ちにトラック40台分のCO2削減につながるわけではありませんが、それでも3,000t程度の削減効果はあるそうです。
ただし運送コストは10%程度上昇するということで、専用コンテナを工夫して積載量を10%増強するなどしてコストダウンに努めているあたりはさすがトヨタです。またトヨタのロゴを掲げたコンテナ列車の広告効果も絶大なものがあると考えられますので、はっきりいってキレイゴトで成り立っているわけではないということは押さえておきましょう。
なぜこんなことを言うかといいますと、いわゆる企業の社会的責任(Corpolate Social Resopnsibility=CSR)についての誤解を指摘したいからです。CSRに関しては、議論の前提として、企業=有限責任を前提とする株式会社形態の企業で、法令により法人格を備えるもの、ということから考える必要があります。法人格を備えるので、契約の主体たり得ると共に、営利を得て法人税を納める義務を有する一方で、犯罪行為に対しては、罰金など一定の経済刑を科せられることはあり得ても、懲役などの拘束刑は科せられません。また一定規模以上の大企業の場合、少々の罰金を科せられたところで、実態として痛くも痒くもない現実がありますので、不法行為に対する歯止めが利かなくなる可能性があるわけです。実際企業不祥事が絶えないですし、大概は微々たる利益に拘泥して不正を繰り返すことが少なくないわけです。
企業は営利を求める存在ですが、それはあくまでも買い手に評価される付加価値を生み出すことで利益を得るのであって、得た利益はステークホルダーに配分し、国に納税することが、企業の究極的な社会的責任といえます。また有限責任ということは、経営者の計画倒産による債務の踏み倒しの誘因にもなります。特に株主資本は、あらゆる債務に対して劣後するわけですから、その観点から株主への会計情報の開示義務が発生し、経営者が不正を働かないように株主は取締役を選任し、監視にあたらせる必要があるわけです。いわゆるコーポレートガバナンス論ですが、この議論が日本では「会社は株主のものか?」というおかしな問いに収斂されてしまうのは困ったもんです。
今回のトヨタ ロングバス エクスプレスについてもそうですが、企業が自らの事業を継続して行おうとするときに、目先の利益を多少犠牲にしても、企業の未来を買う保険のようなものとして、環境問題その他の社会的有用性を追求することは、実は通常の企業活動そのものと変わらないということを忘れるべきではないでしょう。そこを見落とすと、バブル期に盛んだったメセナと称する文化事業への寄付行為などと同列に論じられる可能性があります。これも実は企業イメージを高めるための広報活動の一環なんで、プロ球団のオーナーになったり、実業団スポーツへ参加したりすることと特に違いはないんです。この辺の認識が弱いから、バブル崩壊後の日本企業は企業メセナも企業スポーツも切り捨てて、保身に走ったわけですね。
そういうわけですから、今さらCSRとか言われても、それは企業本来の当たり前の活動なんであって、あえてCSRを言わなければならないというのは、逆に身についていないことを暴露しているといえましょう。本来は利益を上げられるように事業を見直して、顧客の信頼を勝ち取り、従業員に報い、取引先に応え、株主に配当し、国に税を納める必要があったのですが、実際には赤字を隠れ蓑に顧客の期待に背き、雇用を流動化させ、取引先には容赦なく値切り、株主の権利を軽視して、税金も値切った上に国に助けを求め、談合で超過利潤をせしめるなど、およそCSRどこ吹く風だったことを真摯に反省してほしいところです。
最後に、社会的責任投資(Social Responsible Investment=SRI)についてですが、いわゆるCSRを重視する企業を中心としたファンドを組み、小口化して投資家に販売される金融商品でして、社会貢献できてかつ中長期には良好なパフォーマンスが得られるというセールストークで売られますが、CSRが一定規模以上の企業において重視される問題なわけですから、パフォーマンスが良いのは当たり前、原因と結果が逆転しております。しかるにえてしてこの手の投信は、売買手数料も信託報酬も高率な場合が多く、新手の投資家だましと考えた方が良いでしょう。
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Comments
常々、興味深く拝見しております。トラック製造業です。
ついに、トヨタは自らはじめたJust In Timeから方向性を変化させるつもりなのでしょうか。このニュースは、日本の製造物流の根本を見直す動きだと思います。
鉄道貨物の弱点は良く言われる積み替えの手間などではなく、(実はトラックも積替えは日常的)とにかく時間が不正確なことにつきます。旅客では距離を問わず圧倒的に正確な鉄道ですが、貨物になると道路に比べて大幅な遅延が日常化しています。特に長距離では、巷間言われる鉄道の優位性とは裏腹に、頻発する輸送遅延が大問題です。トラックなら渋滞しても他の経路で回避できたり、あらかじめ渋滞を織り込んだ時間で走行するため、遅れ時間の絶対値が小さいのです。したがって、部品供給の遅れが、ライン停止に直結する自動車組立では、鉄道への切替は、予備在庫を持つ必要とセットになるはずです。このことは、JITの本家でさえ、CO2削減のために変化せざるを得ない現状を表していると思います。
ここ数年、自動車業界が鉄道輸送に注目していることが伝えられ、最近もマツダがミルクラン配送とセットで愛知‐広島の部品輸送に鉄道を利用するとの報道がありました。特に今回のトヨタの事例は、主力組立工場への機関部品の供給であり、成功すれば当然他の地域、北海道のエンジンや九州地区の車両組立など全国展開されるでしょう。
昔はJITと言って手間暇かけて無駄なことをやってたんだよ、と語られる時代になるかしれません。正直に言って、現代の製造業はJITのを当たり前と思いこんで、無駄が多くなっている気がしてなりません。トラック屋ではありますが、トヨタのチャレンジが成功することを期待しています。
Posted by: piyore | Wednesday, November 01, 2006 12:28 AM
コメントありがとうございます。
鉄道貨物の遅延ですが、線路が自前ではなく、旅客会社から借りていることが影響しているのかもしれません。しかもコストに見合わない割引価格であるために、特にJR東海では1分の遅延でも抑止をかけてしまうぐらいシビアに対応されてしまうようです。
まぁ旅客会社としては安すぎる線路使用料もさることながら、物言わぬ貨物よりも物言う旅客^_^;を優先したくなるでしょうし、実際駅間抑止で車内閉じ込めなどは避けなければなりませんから、致し方ない部分はあろうかと思います。ただJust In Timeの見直しまでは考えてはいないと思います。
記事では触れられておりませんが、鉄道貨物へシフトすることで、半日程度の時間短縮は実現しているそうですから、それを当面遅延のバッファにしつつ様子を見るのではないでしょうか。また昨今日本近海でも海難事故が多発しているように、海上も渋滞に悩まされている実態もありますので、トヨタの社内事情まではわかりませんが、全体最適を逸脱した動きではないと思います。そもそもJITのためにトラックを路上で待機させるなどして、かえって生産性を下げている企業が多い中で、トヨタは物流を戦略的に構築できている数少ない日本企業でもあります。
それだけにインパクトのあるニュースといえるわけで、他社への波及も含めて楽しみですね。
Posted by: 走ルンです | Wednesday, November 01, 2006 06:50 PM
JR東海をJR東日本が買収してほしいと思いました。
Posted by: とまと | Friday, November 03, 2006 11:38 PM
トヨタは完成車輸送を汎用低床コキで行っていたのですが、これをここ数ヶ月、運用停止しているみたいです。保守が難しい超小径車輪というのがネックで脱線事故を起こしたこともあり、実のところ、ここまで持ちこたえられたというのが感想です。
三菱は軽自動車の完成車を汎用12トンコンテナへパレットごと積み込むという輸送コストが格段安い方式で鉄道輸送を継続しているのとは対照的です。
鉄道輸送では山陽~九州スジでは代替ルートを持っていないことが致命傷でしょう。山陰線の電化されていない又は電化されていても電気機関車運行出来るほどの変電所能力が全くないというのが問題でしょう。羽越本線の長期間不通など、10年前なら事故翌日からの運転再開を強行していた線区でも平気で長期間止めてしまう現状です。
南方貨物線を放棄してしまった時点で、日本の鉄道輸送にのびしろは無くなりました。基幹部分に需要があっても受け皿が存在しないのです。あれだけ完成し需要が確実に見込まれるインフラが全く使われずに放棄されていく姿は、まさに無念です。
Posted by: あんぱん | Tuesday, November 07, 2006 12:07 PM
コメントありがとうございます。南方貨物線問題は確かに貨物のアキレス腱ですね。埼京線や京葉線を国鉄時代に整備してから渡されたJR東日本に対して、JR東海名古屋圏の在来線インフラは中途半端ではあります。
ただしより経営の苦しいJR四国が宇多津~丸亀間を自前で複線化したことからすると、ほぼ路盤工事が終わっていた南方貨物線の整備を放棄したことは、JR東海の判断ミスの可能性がありますね。外環状線を構成する瀬戸線未成区間も、非電化かつ勝川で中央線とつながらない東海交通事業城北線という中途半端な姿で放置されているのも気になります。
首都圏では武蔵野線が貨物幹線として機能している状況を考えると、少々大げさに言えば、JR東海の消極姿勢がトヨタの足を引っ張る構図ともいえますね^_^;。
Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 07, 2006 08:54 PM
こんにちは。いつもありがとうございます。
南方貨物線についてですが、東海旅客鉄道株式会社の状況を観ていると
不可能と思います。
というのは、今の東海道新幹線の地上設備更新に
要員、物資、資金(いくら無税で積み立てがあるとはいえ)を
迅速かつ大量に投入する必要があるので不可能と考えます。
しかしながら、日本貨物鉄道株式会社になにもできないのでしょうか。
あるいはセントレアのようにトヨタ主導で整備できないでしょうか。
Posted by: とまと | Saturday, November 11, 2006 02:53 PM
なぜ不可能とお考えになりますか。名古屋圏の鉄道ネットワークの弱さを自らの弱点と認識できない現経営陣にはまぁ判断つかない問題かもしれませんが。
JR東日本の湘南新宿ラインの好調はご存じのとおりですが、現在の運行形態に至る過程で、池袋駅の配線変更や軌道強化、車両更新などの周到な投資を行ってきた結果です。現状維持に甘んじなかったわけです。また業績好調なつくばエクスプレスへの出資を蹴りながら、ネットワーク強化に資すると判断されたりんかい線への出資は行いました。
南方貨物線については、東海道線と並行する大府~笠寺間では、路盤を振り替えて使用しておりますが、鉄道資産の拡大にならない範囲で設備更新に利用しているわけです。負債の大きいJR東海として、資産規模の拡大は望まないのはわかりますが、その結果鉄道資産の相対的な競争力を劣化させれば将来の減益要因となります。この辺は判断の分かれるところではありますが。
Posted by: 走ルンです | Saturday, November 11, 2006 05:18 PM