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Thursday, October 19, 2006

仏TGVに日本製車両

というニュースが流れました。

仏版新幹線「TGV」、日本製車両採用の可能性・仏紙
台湾新幹線開業間近のこのタイミングで、注目すべきニュースです。

台湾をはじめ、韓国KTXや中国北京-上海間の新幹線構想などで火花を散らすライバル国からの突然のラブコールです。SNCF(フランス国鉄)のTGV自身が、日本の新幹線を徹底的に研究して登場したものですが、ベンチマークされた0系時代から急速な進化を遂げて、誇り高いフランスの鉄道マンから高い評価を受けたことの意義は大きいといえます。

TGVの売りは経済性であり、それを実現するために両端に動力車を配置したプッシュプル形態の列車組成として、当時の欧州流であった動力集中列車形態で超高速鉄道を実現し、必要な駆動力を得るためにトルクフルな同期モーターを採用していたのですが、どちらかといえばライバルのドイツ鉄道が誘導モーターを採用したことへの対抗心だったようです。

またパワーエレクトロニクスの進化によって、実際に誘導モーターが主流となると、その軽量さゆえに動軸と従軸の重量差が縮まり、また回生ブレーキが使えるようになると、高速対応の空気制動力を得るためにばね下重量となるブレーキディスクを複数枚装備するなど、動力集中列車が有利とされた超高速鉄道でも、動力分散列車に有利な条件が増えてきて、この辺の評価が逆転しつつあるということはいえます。実際当初動力集中で開発されたドイツICEでもICE3では動力分散列車となるなど、見直しがされています。知識は陳腐化することを実感します。

そういった中での今回の報道ですから、日本の新幹線が国際的に評価されたということで、素直に喜びたいと思います。ま、日本の新幹線の有利な点としては、圧倒的に需要が高い人口密集地域に立地しているので、輸送実績が高く、その分技術開発に使える予算が潤沢だということはあるでしょう。その意味では日本ほどの人口密集地がない欧州での超高速鉄道の事業レベルでの実現には、TGVのようなアプローチは必須だったといえます。またそのことがスペインAVEなど他国へのプロジェクト輸出を容易にし、アジア進出もその流れで出てきたものといえます。逆に日本の新幹線は国際経験が皆無に等しいわけで、ある意味韓国KTXでTGV方式の進出を許したこともやむをえないところかと思います。

この点は一応日本の方式を導入した台湾高速鉄道でも、当初欧州方式でスタートし、線路などは欧州基準で建設されたところへの日本製車両の導入ということで、システムの整合性をとるのに手間取って、開業が遅れており、既に1年延期された上に、完成検査に手間取って、今月末の開業も延期、さらに台北へ乗り入れる全面開業は来春になるなど、惨憺たる結果となっています。

台湾新幹線、台北-高雄間の運賃5300円
それでも日欧の鉄道技術が出会ったことは評価すべきでしょう。

これに懲りたのか、技術支援をしたJR東海は中国新幹線に対して冷淡な態度を取っていますが、JR東日本は乗り気のようです。長野新幹線の整備でキロ当たり70億円もの建設費がかかって高コストを意識しているのでしょうか。地価の高い日本国内では、なかなか新幹線システムの真の国際競争力は測れないと思われますので、ぜひとも中国の大地で経験を積んで欲しいところです。

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Comments

確かに、台湾新幹線は、欧州流の地上設備との整合性を取る、という作業は、考えるだけでも大変そうですね。

Primera

Posted by: Primera | Saturday, October 21, 2006 at 04:51 AM

特に保安装置は大変だったようです。結局TGV流の単線並列配線となりましたので、日本の新幹線とは運行管理の考え方に違いがあり、システムの整合性をはかるのに苦労したようです。

Posted by: 走ルンです | Saturday, October 21, 2006 at 10:55 PM

初めまして。いつも拝見しています。
さて新幹線の技術供与ですが。
JR東海が中国に消極的なのは、JR東海の葛西会長が論壇誌に寄稿していたように、パートナーとしての信頼性が中国は台湾より劣ることが大きな理由と聞いていました。
台湾新幹線に懲りたから技術移転に消極的、という解釈は新鮮でした。

Posted by: fly to sky | Sunday, October 22, 2006 at 11:10 AM

コメントありがとうございます。

確かに時系列で見て「台湾新幹線に懲りたから」JR東海が技術移転に消極的といえるかどうかは微妙です。しかしそれをいえば主権国家ですらない台湾の、それも民間主体による事業という点で、異なった意味で事業リスクがあることに変わりはないですよね。

どのみち海外へ出て行く以上、リスクはつきものなんで、葛西会長の発言は、つまるところ「中国(北京政府)は嫌いだ」と言っているに等しいのであって、大企業のトップとしてふさわしい発言とはいえません。

ま、この辺が国際感覚のなさというか。ディープインパクトの薬物疑惑も、仏獣医師にレース1週間前には投薬を中止するように注意を受けていたのを守らなかったことが原因のようですが、国際経験の乏しさが出たといえます。いつまでも井の中の蛙では国の将来を危うくします。

Posted by: 走ルンです | Sunday, October 22, 2006 at 05:25 PM

結局東海旅客鉄道株式会社は中央新幹線のことで頭がいっぱいになって、
ほかのことができないということが露呈しているかもしれないですね。

Posted by: とまと | Sunday, October 22, 2006 at 06:51 PM

新参者に丁寧なご返答を頂だき、ありがとうございます。

事業リスクについてですが、台湾と中国におけるそれとは内容に決定的な差があるのではないでしょうか。
台湾(中華民国)を主権国家として承認している国家は年々減少していますが、彼の地では指導者である総統と議会を直接選挙で選び、信任しています。

私たち日本人が尊重している「自由と民主主義」に則り運営されているわけです。
対する中国(中華人民共和国)は・・・。
私が具体例を挙げる必要は無いでしょう。選挙があるのか。
自由な言論が保障されているのか。

つまり、事業リスクが中国においては一民間企業が背負えるレベルを
超越していることが台湾における事業リスクと決定的に違い、同列に
並べていいものか、と思います。

要は中国政府が信頼に足るビジネスパートナーではないという判断であり、ならば一民間企業として至極全うではないでしょうか。
その判断を好き嫌いで決めたかのように捉えるのは少々酷ではないかなぁ、と率直に思います。
必要なのは、中国における事業リスクが他の資本主義国におけるレベルになるように整備が進んでいくことを促すことかと存じます。

ディープインパクトに関しては国際経験の乏しさがかような結果を招いてしまったのでしょうが・・・。
調教師の過失か仏獣医師の過失か。真相が待たれますね。
あんな名馬の晩節を汚すことなって残念です。

この件の徹底調査を日本人の手で為せれば、井の中の蛙から進化の一歩となるでしょう。

Posted by: fly to sky | Monday, October 23, 2006 at 01:53 AM

かつて中華民国を名乗っていた台北政府の国連での議決権その他の国際的権利関係は北京政府に引き継がれて久しく、中国の膨張を望まない米国の軍事プレゼンスによって権力の空白が生じているところに存続している台湾を国家(ネーション)ではなく地域(リージョン)とする国際的慣行は定着しておりますが。

民主的選挙で選ばれたイランの現政権がやっていることとか、独裁者を排除した後に民主的手続きを経て政府を樹立したはずのイラクの現状などをどうご覧になりますか。「選挙で選ばれた」ということ自体に価値を置くという考え方は、単なるイデオロギーでしかないんです。

市場経済は、売り手と買い手が市場で出会い情報交換を通じて価格形成をすることで、価値観の違いのような定性的な問題を定量的に評価し直しアウフヘーベンするシステムでもあるわけで、政治制度の違いだけが特別であるということはありません。事業の取り組み方の問題にすぎません。

あと鉄道事業というのは、どこの国でもガチガチの規制業種であり、当該政府との関係性は重要なんですが、利害を持つ自国政府への具体的提言ならばわかりますが、具体的利害のない第三国政府のあり方を論評するのは、企業トップとしていかがなものかとも思いますが。

Posted by: 走ルンです | Monday, October 23, 2006 at 05:35 PM

度々の丁寧なレス、勉強になります。

>「選挙で選ばれた」ということ自体に価値を置くという考え方は、
  単なるイデオロギーでしかないんです。

「選挙に通じて有権者が意思を表することの否定」を説いておられるのではない、
とは思います。
選挙の内容のレベルを問うておられるのでしょうが、イランであれイラクであれ、
自由意志における投票の結果であれば、それは肯定されるべきででしょう。
秘密警察の監視下の選挙は別ですが。

選挙の結果の政策の是非についてはそれはまた別の話ではないでしょうか。
イランの核開発にせよ、イラクの混迷にせよ、国際社会において如何に解決すべきか、
対策を講じるのか、を論じる必要の話であって、この両国の現状をして選挙自体の
価値を軽んじる理由にはならないと考えます。
そもそも、人間はイデオロギーから自由になりえるのでしょうか?
イデオロギーは否定的に捉えられるべきものでしょうか?
これは答えが出ないテーマでしょうが・・・。

市場経済は~以下のご主張に関しましては、これは中国と台湾に関しての私と
走ルン様との認識の差によるものでしょう。

中国にも市場経済は定着しつつあるでしょうし、それを否定するつもりはありません。
WTOに加盟し、色々環境整備を果たそうとしているのも事実です。

しかしながら、台湾は名実共に資本主義社会であり、西側諸国と同じ価値観を
共有している社会であることもまた事実ではないでしょうか。
主権国家であるかエリアに過ぎないかによってこの価値に軽重があるとお考えでしょうか。

自社が保有する高レベルの技術を移転する以上、相手方に信用があるかどうかを
判断するのは当然のことであると思いますし、判断をする際に相手国政府、政体を
ビジネスパートナーとしての可否を評価することも、その理由を論檀誌に寄稿することも
決して問題ではないと存じます。
具体的利害の有無、というのも関係ないのではないでしょうか。

最後に、私はJR東海を全面的に擁護する立場の者ではありません。
ホスピタリティのかけらもないファシリティである300系、700系に愛想を尽かし、
帰省等の移動にはもっぱら航空機を利用しています。

JR東海の関係者でもありません。
その旨を最後に添えさせていただきます。

散々突っかかる態度のようでいて恐縮ですが、これからも楽しみに拝見させて頂ければ、と
存じます。

Posted by: fly to sky | Thursday, October 26, 2006 at 08:34 PM

重ね重ねのコメントありがとうございます。あんまり哲学論争しても仕方ないのですが、例えばかのヒトラーも最初は選挙で選ばれましたし、最近では選挙で選ばれたはずのタイのタクシン首相が、軍事クーデターで地位を失う事件がありましたが、特に後者は手続上は重大問題であるはずなのに、とりあえずは混乱は見られません。選挙制度それ自体は、権力の監視システムに過ぎないのであって、選挙で選ばれたことと統治の正当性とは、必ずしも一致しないのです。

また統治の実態は国によって千差万別でして、例えば証券市場の監視システムが強固な米国のNYSE(ニューヨーク証取)では元々上場基準がきつかったのですが、エンロンの不正経理事件を期に整備されたSOX法でがんじがらめに縛られた結果、複数の日本の大手企業が逃げ出しております。経済行為としての海外進出は、どのみちリスクと無縁ではないのです。

中国に関してですが、おそらくJR東海が危惧している技術の不正コピーのリスクは確かに存在するとは思いますが、それ以上に中国でモータリゼーションが爆発し、原油価格が高騰したり、大気汚染の進捗で日本に酸性雨が降り注ぐリスクを天秤にかけると、果たしてどうなるでしょうか。技術の流出などのリスクは、案外みみっちい話という風に思います。

そして何よりも、国内に留まった場合、新幹線技術を活用できる場は限られますが、海外へ出れば活用できる場が増えるわけで、特に人口の多いアジアでは、鉄道を経済インフラの一部として整備することの経済合理性は高く、積極的なビジネスチャンスの拡大は望ましいことです。逆にアジアの経済成長を促進することは、人口を抱えるがゆえに紛争の絶えないアジア地域の安全保障への寄与という点でも重要です。

中国に限らず、政治制度に問題を抱える国は多数ありますが、そのことで生じる経済的矛盾は、裁定者(投機)によって圧力的に平準化されるものであることは、タイに始まったアジア経済危機で経験済みでもあります。もはや政治的暴走は国際的孤立の道でしかないことは、最近お騒がせなかの国の直面する現実を見るまでもなく明らかなところかと思います。

Posted by: 走ルンです | Saturday, October 28, 2006 at 10:48 AM

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