都営地下鉄07年度黒字化
少し前の報道なんですが、忘れないように取り上げます。
都営地下鉄、初の黒字に・07年度特に大江戸線の貢献が大きいようです。南北線と同時期の開業だったことから、都心のマンションブームに乗っかり、沿線人口がふえたことと、つくばエクスプレスの開業で流入が増えたことなどが寄与しているようです。
驚くべきは、利用者数でも大江戸線がトップということでして、工事が遅れて事業費が膨張し、バブルの後遺症を心配されたのがうそのように好調な大江戸線ですが、大規模装置たる大都市地下鉄では、減価償却が進み事業費を賄う借入金の元本償還の進捗で利払いも年々減少するわけですから、一旦黒字転換すれば、経常的には黒字は継続し、さらに黒字幅も経年で拡大するわけですから、何十年後かには累積債務の償還も間違いなく終わるわけです。利用の多い大江戸線が車両サイズは一番小さいというのがなんともシュールですが^_^;。
リニア方式の小断面地下鉄についてですが、私はあんまり評価しておりません。平均駅間距離1kmの都市内地下鉄で、駅部は開削工法で非常時の乗客整理でコンコース階とホーム階を分けることや、避難階段の広さなどが法令で定められている状況で、車両を小型化することで節約できる土木工事量は多くはないので、実際大江戸線の工事費用は300億円/km以上と、新宿線と大差ない水準です。車両が小型な分、急曲線を使って公共道路下に線路を収めることで、民地下の通過に伴う用地買収を回避できる利点はあるものの、地価水準の高い東京では、焼け石に水だったようです。
あと検修を行う馬込工場への入出場回送で自力回送ができないために、牽引用のELを用意しなければならないなど、効率性に疑問点があります。もちろんその辺も大断面の普通鉄道方式との比較検討の上の決定ではあったのでしょう。特に相互直通予定の東武東上線と東急池上線の双方にキャンセルされて、高い建設費の償還に苦しんだ三田線の先例があっただけに、仕方ないところなのかもしれませんが、利用者が増えてくれば、当然のごとく輸送力の天井が来ることも考えざるを得ないわけですから、悩ましいところです。
ま、ただ今は再開発ブームに沸く東京ですが、人口減少とともに地方からの流入が減ってくれば、さすがに人口減少の影響を受けないわけではありませんから、人口減少が来るのと輸送力の天井のどっちが早いかだけの問題かもしれません。また都市集積が極限に近づきつつある東京のこれ以上の開発は、経済合理性よりもヒートアイランド現象の進展による不利益が上回る可能性もありますので、ある意味物理的限界が見えている状況は望ましいのかもしれません。
ただし言うまでもありませんが、こう言えるのは大江戸線が東京都心に立地しているからであって、集積度の低い大阪でリニア地下鉄の整備が進むのは、都心の一角をよぎる長堀鶴見緑地線はまだしも、今里筋線まで作る必要があったのかどうか、都市規模の違いを考えると、東京で言えばエイトライナーのような路線ですが、さすがに東京都も手が出ませんね。
まして実質ニュータウン鉄道でしかない横浜市営地下鉄で、既存線のブルーラインと規格の異なるグリーンラインの整備というのは、狂気の沙汰としか思えませんね。需要さえつかめれば、ある意味固定資本の負担はいずれ償還されるわけで、むしろ日々のランニングコストの低減の方が、将来への負担を軽くするということは指摘しておきたいところです。
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Sunday, November 06, 2005
都営地下鉄、大江戸線効果で乗客増加
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Comments
初めてお邪魔いたします。いつも読ませていただいております。特に「フラット化する日本の黄金律」、地籍調査が進まない事も含めまして、土地の流動性の無さについては「目から鱗」の思いを致しました。
確かに、大江戸線は政令市の地下鉄整備の意欲に火をつけてしまったかと感じております。神戸の海岸線、福岡の七隈線等々、特に前者については、まあ震災後に良く作ってしまったものだと思います。路線環境を考えると今ならLRTの可能性もあったと思うだけに。平日の夜7時の三宮花時計前、西神・山手線のラッシュが嘘のように静まりかえっていた駅舎や車内の光景は、ある意味ぞっとしました。
Posted by: maruta | Wednesday, November 08, 2006 12:54 AM
コメントありがとうございます。土地を巡るさまざまな制度上のバイアスが、効率的配分を歪めているのは困った問題です。こういった歪みを取り除き、経済を活性化させるのが、イノベーションのはずなんですがね。そもそも地価上昇が景気回復の当然の帰結と見られているようですが、結果的にこういった感覚はバブル期のそれと大差ないということがいえそうです。
神戸市の海岸線ですが、そんなに利用者が少ないのですか。確か当初計画では、山手線と結んで環状線を構成するはずだったと思いますが、さすがに財政の裏づけがないということで、小断面リニアに飛びついたのかもしれませんが、なまじ選択肢があったために事業化されたのだとすれば、小断面リニア地下鉄は功罪の罪の方が重いですね。福岡市の七隈線は道路事情から鉄軌道輸送システムの必要性があった地域ですからまだしもですが。
結果的に補助金の額が大きい地下鉄が選択されてしまい、自治体財政に大きな負担となる愚が繰り返されるのは、何とかならないものでしょうか。
Posted by: 走ルンです | Wednesday, November 08, 2006 09:23 PM
こちらこそ失礼しております。
まずは気の長い話ですが、土地を巡る各種規制の可視化、そして官民境界や民民境界確定を通じた流動性の確保を進めていくしかないのでしょうか。○全総を前提とする再配分システムが崩壊した今、それに変わる効率的な再配分をするのなら、土地規制に関する制度変革が必須だと思うに思うのですが。それがないと、なかなかスムーズな東京集中への臨界点からの脱出が困難ではないかと。
そういえば、横浜市交通局には、こんなニュースリリースが出ています。
http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/news/2006/20060926.html
背景も、土地収用法も良く解っていないので、でなんとも言えませんが、「民地下の通過に伴う用地買収を回避できる利点」も、一カ所でもボトルネックが発生してしまえば、その後の大きな障害になってしまうということでしょうか。補償額の吊り上げといった悪しき前例になる可能性はどうなのでしょう??。
Posted by: maruta | Wednesday, November 08, 2006 11:55 PM
個別事例に首を突っ込むのは慎重にしたいのですが、発表では6画地26人(内マンション共有者20人)ということですから、おそらくマンションがネックなんでしょう。
地目からいえば高い建物は建てられない場所ですが、マンションの場合将来の建て替えの際に地上権設定が制約条件になる可能性がありますので、なかなか落としどころを見つけるのは難しいところです。
それ以上にそもそも地下鉄を通すような場所が住居地域や近隣商業地域で、開発に制約を課されているというのが、本件の特徴でしょう。そもそもグリーンラインの計画の前身である横浜4号線計画が二転三転したために、当該地域の都市計画を整合的に策定できなかったためのドロナワなんじゃないかと思います。
Posted by: 走ルンです | Saturday, November 11, 2006 01:35 PM