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Thursday, November 16, 2006

固定資産税駅ナカ課税強化へ

かねてより東京都がJR東日本に対して示していた駅ナカショップの固定資産税強化方針に対して、総務省が認める方針を出しました。

(11/15)固定資産税、「駅ナカ」課税を強化――総務省
ちょっと整理しますと、元々鉄道用地や駅施設などの鉄道資産に対しては、市町村税である固定資産税評価を1/3とする優遇措置があったのですが、それを一定の基準に従って店舗部分について宅地並み課税とするということです。具体的な基準については今後詰めることになるようです。

そもそもの発端は、JR東日本による駅ナカビジネス強化の流れが、駅前などの商業施設と競合するということで、税の優遇を受けながら、改札内という閉鎖エリアで優越的な商業行為を行っているという類いのイチャモンだったわけです。ま、その言い分自体はわからないではありませんが。

ただ実際に改札を出て街を見れば、駅前にコインパーキングなどというのがありふれた風景になってきております。都内でも駅前商店街は必ずしも賑っているわけではなく、魅力のない商売してて、改札内で買い物されたらたまらないということならば、何ともエゴ丸出しの話です。そう、デジャビュですね。規制のためなら縦割りも何のその商業施設と病院の立地規制?改正都市計画法成立で改革逆行で取り上げた問題と似ています。既成市街地の衰退を郊外店や駅ナカショップのせいにして、規制を加えようという動きという風に理解することができます。

ただし、やや趣きを異にする部分もあります。元々鉄道資産への固定資産税評価の減免は、鉄道事業者が資金繰りなどの都合で鉄道用地を処分したりして、輸送業務に支障しないようにという意味もあるのですが、逆に鉄道資産であるが故に、簡単に転売できない現実があることから、流動性の低さに対する補償措置という側面もあります。いずれにしても固定資本比率の高い鉄道事業者への税制面での優遇ではあるわけで、それなりに意味のある減免措置ということはできます。

とすると「公共性を隠れ蓑に税の軽減を受けながら、改札内で優越的な商業行為を行っている」という批判は、必ずしも当たらないわけで、課税強化するにしても、やや根拠が弱い気がします。ただし例えばルミネなどJR東日本の駅ビル事業に関しては、従来から商業施設として扱われていたわけで、ある意味商業施設部分への課税という意味では、それなりに整合性はあるわけで、なかなか悩ましい問題です。ま、ただ東京都の課税強化に関しては、JR東日本への影響は数億円と言われておりますので、直ちに経営面で重荷になるということはなさそうですが、他の自治体が追随するとすれば、営業エリアの大きいJR東日本だけに、影響は大きいかもしれません。

ただし直接的な影響というよりは、むしろ首都圏以外の地域での駅ナカビジネスの抑制といった形の影響になる可能性があり、むしろ東京一極集中を助長するおそれがあります。むしろ過疎地域などでは、無人化されて用途を失った駅舎を、格安な賃料でテナントを誘致するなどして、駅の集客に役立てるというような方向性も考えられるわけで、一律右へ倣えというわけにはいかないのではないでしょうか。

また元々JR東日本の駅ナカビジネスが、国鉄改革の置き土産の一つである旧国鉄余剰人員再雇用問題で抱えた社員の処遇のためという側面もありまして、本体の鉄道事業は、国鉄時代に特定地方交通線の転換があり、また人口減少で中長期には輸送量の自然増もなくなり、むしろ労働力確保が難しくなるなどの問題もあって、省力化を進める必要があるわけですから、余剰人員対策として鉄道事業以外の事業の柱が必要ということで、今まで試行錯誤が繰り返されました。

結果として駅ナカビジネスをはじめとする物販が、Suica事業と共に柱として育ってきたわけで、やっと目に見える成果が出てきたところでの課税強化ですから、やんぬるかなとの思いはあるでしょう。やはり収益の柱と考えられていたデベロッパー事業では、例えば長野新幹線で頼まれもしないのに安中榛名駅を開業させたはいいけれど、人里離れた立地で利用はさっぱり伸びず、駅周辺の土地造成やライフライン整備に付き合わされた自治体はいい面の皮、熊の生存エリアだったこともあり、熊出没時避難マニュアルのある唯一の新幹線駅(笑)となるなど、結構失敗も重ねております。

また一説によれば、そもそも国鉄改革の狙いは、戦後大陸からの引揚者の雇用の受け皿として当時の国鉄が大量採用したために、国鉄組織の年齢構成がいびつだったこともあり、大量の退職者が出て給付が肥大化する前に公務員の共済年金から外しておきたい官僚の悪巧みだったとする説もあります。ま、ありそうな話ですが、動機は何であれ、国鉄民営化自体は、わりとうまくいったと評価することはできます。合理化の失敗で民営化まで1年のこのタイミングで大量採用に走る郵政公社とは違います。

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ま、それやこれやのもろもろの矛盾が解消されるわけでもなく、ひたすらご都合主義の改革は続きます。

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Comments

う~ん 私はむしろ適法だと感じますが。

エキナカが問題なんですよ。乗換えの合間という駅外にはないメリットが享受できる。またエキナカといっても青梅線の日向和田に作るわけではなく、駅前でも十分に成り立つ位置にしかJRは出さないでしょう。

駅外ですがTXの守谷なんか、言うほどお客が溢れているわけでもない、つまり立地にも助けられています。

それにここまで低率というある種の甘い汁を吸わせてもらったわけですし、もう減税期間は過ぎたんですからボチボチ適正納税に戻しましょうよ。

極端な話、納税分は利用者にコスト添加しても良いと思います。野球場だってビールは定価以上、それを駅で適用すればよいだけのことと思います。それで客が離れたとすれば、所詮、その程度の客です。東急ハンズをみれば利便性こそ一番のメリットというのがわかります。

Posted by: SATO | Friday, November 17, 2006 01:53 AM

ま、実際この問題で引っかかるのは、今のところJR東日本だけと言っていい状況です。東武鉄道でも構内営業の伝統からか、まとまった店舗が構内に存在しますが、JRとの比較ではかなり小規模ですし。で、JR限定、首都圏限定である限りは、ま、見直し自体避けられないところだろうと思います。

でも税の問題ってのは、原則をはっきりさせておかないと、後で思わぬ弊害が出る可能性があるんですね。例えば道路特定財源が07年度以降余剰となる問題でも、揮発油税のうちガソリンを贅沢品と見なして暫定税率として高率の課税をしたために、扱いを巡って議論が膠着してしまうということにもなるんです。

それと最近商業施設が増えたために、東京駅の週末の乗降客が増えているそうですが、要は改札外の街が魅力的ならば、駅ナカでどんな商売してても揺るがないはずです。あるいは地下鉄駅のどこからも遠い六本木ヒルズにあれだけ人が集まるわけですから、利便性だけで賑わいができるというわけでもありません。新幹線駅でも外は熊がいる安中榛名だってあるわけですし^_^;。

Posted by: 走ルンです | Friday, November 17, 2006 08:42 PM

相変わらず税金に関しては素早く動くんですな、国は。
金の使い方を知らない子供が小遣いの値上げを強請る図に
見えますわ。

>エキナカが問題なんですよ。
どの辺りが問題なんです?ビジネスとしてはとても素晴らしいもの
だとは思いますが。乗り換え路線などが多い(人が集まりやすい)場所でサービスを開始して利益を得るというのは至極真っ当なことですし、
それに何も利便性だけで集まってるわけじゃないんですがね。
女性の方をターゲットにして、有名店などを数多く揃えてあるのもポイントです。

Posted by: ナオ | Friday, November 17, 2006 11:40 PM

過疎地の駅を格安で貸すようなケースなら、固定資産税だって微々たるものでしょう。
たとえば具体例として亀嵩駅の蕎麦屋にいくらかかってるかとすると……減免措置がないとしても、土地にかかる固定資産税は1m^2で年間70円程度のようです。これが1/3に減免されようが減免されまいが、それほど話は変わらないでしょう。

やはり、固定資産税減免の停止によるエキナカビジネス抑制は都市圏の話のように聞こえます。

Posted by: あかみ | Saturday, November 18, 2006 10:26 PM

コメントありがとうございます。

>ナオさん
駅ナカだから問題とする立場は、主に改札外の駅前商店街を抱える地元自治体や商工会の立場だと思いますが、やはり乗客に改札を出てみようというぐらいの魅力が街にあるかどうかを見直すべきですね。

駅ナカにしろ郊外型ショッピングモールにしろ、既成市街地の商店にとっては強敵だとは思いますが、そちらへ消費者が流れている現実を直視すべきですね。テナント料が高くなれば、構内営業への参入のハードルが高くなる分、むしろ強力なテナントが集まって地元商店にとっても手強さを増すだけですね。

>あかみさん
亀嵩駅のケースはわかりませんが、たとえば過疎地でテナント作戦が成功して駅に人が集まるようになった結果、地価が上がって税負担が増えた局面で、事業にブレーキをかけてしまう可能性はあります。言ってみれば創意工夫の成果に対して課税することになるわけで、大都市圏の内部補助から抜け出そうとする地方支社のモチベーションを冷やす可能性はありますね。いわば成功への懲罰になってしまうという点は指摘しておきます。

Posted by: 走ルンです | Sunday, November 19, 2006 11:19 AM

コメント有難うございます。私自身品川駅の近くに住んでいるのですが、駅の外に出ると本当にさびしいもので近くにホテルがそびえていたり、コンビニやファーストフード店でほとんど固められてる感じですね。

魅力的な町というよりかは大企業同士の縄張りのようなイメージですね。今の世の中大きな会社の元で経営していかないと追いつかないのかもしれません・・・ 

Posted by: ナオ | Wednesday, November 22, 2006 11:43 AM

私宛のコメントかもしれませんので
エキナカが問題なのは、駅外よりも立地が良いのに税金は安い、ここが問題なんですよ。たとえばです。駅がこれに竿を差すなら「買い物に関しては途中下車可」とかいう制度でもあれば、ここは同格なんですが、前コメントにも書いたように「乗換えの合間」というところが駅外に完全に勝っているので、増税とは言わずともせめて同額程度はやむを得ないと感じるのです。
また会社はその増額分は消費者添加をしても良いと私は思います。

税金は取れるところから取る、これは真っ当ではないでしょうか。低所得者から取るよりは高所得者から取る、お金が来ないところから取るより、来るところから取る方が集金力は上ります。

ただ、取った後の使い方、これに関しては今の方法がベストとは言えませんよね。

Posted by: SATO | Thursday, November 23, 2006 09:14 AM

>エキナカが問題なのは、駅外よりも立地が良いのに税金は安い
立地の良し悪しは、乗換客にとっては構内が上でしょうけど、ナオさん最寄の品川駅でも、入場券の売上が倍増しているそうで、実際は外から構内に買い物に来ている人が少なからず存在するのです。もうこなると外は何やっているのって話ですね。

ま、ただ現行の近距離キップの下車前途無効の扱いの緩和は、考えて欲しいところではあります。無原則というわけにはいかないでしょうけど、指定駅でパスネットに準じた30分ルールあたりが落としどころかとは思います。神保町でメトロと都営の乗換えのときに書泉グランデの鉄道書を物色というのは、皆さんやりますよね^_^;。

>税金は取れるところから取る、これは真っ当ではないでしょうか。
税金は使い道が大事なのは確かですが、税の本質は所得移転機能ですから、どこから取るかも大事なんです。確かに現実問題として「取りやすいところから取られて」はいるのですが、それを納税者の側が認めれば、権力者は無限の力を得ることになるんで、民意の表明(ツッコミとも言う^_^;)は民主政治の基本です。

Posted by: 走ルンです | Thursday, November 23, 2006 09:35 PM

ま~増税した程度じゃ周りの商店街の反発は留まらないでしょう。

多少、商品価格が上昇した程度で消費者は「なんのその」です。
それにしてもJR東は色々とビジネスを考えているなぁ・・。
今度は保育施設を駅に作っているということですが、中々消費者の
目線を追っている点は称賛に値します。
・・・若干天狗になっている節はありますが

Posted by: ナオ | Sunday, November 26, 2006 07:39 PM

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