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Saturday, December 09, 2006

税制支援でもままならない3島&貨物20年目の真実

国鉄改革20年目にして、本州各社は株式上場による完全民営化が果たされたJRですが、積み残し問題が解決したわけではありません。上場した本州各社もそれぞれに課題を抱えておりますが、3島会社とJR貨物の直面する現実はなお視界不良という状況です。そんな中でこんなニュースです。

(12/8)JR3島会社への税制支援継続・自民税調
先日JR東日本の駅ナカビジネスに対する課税強化方針が出されたばかりですが、取りやすいところからは取り、経営が苦しい3島会社とJR貨物については、経過措置である税制支援を継続するというわかりにくさですね。

本来は7社全ての完全民営化が目標とされていたのですが、少なくとも人口減少の影響をより強く受ける3島会社に関しては、目標未達は確定したものとして見直しをしても良さそうなものですが、格差問題に関心が高まる中、大都市集中に根ざすこの問題に言及することは、政治的にリスクが高いということになりそうです。

一部では九州新幹線の開業によってJR九州は化けるという見方もあるようですが、JR西日本の山陽新幹線との直通運転がどういった規模で行われるのかが不明で、確定的なことは現時点では言えない気がします。また需要地である東京への直通は、実用性はともかく広告塔にはなるのですが、某社の壁に阻まれていて不可能ですから^_^;、ローカル新幹線のイメージのままとなると厳しいですね。いっそ航空との連携を模索した方が良いかもしれません。

JR九州に関しては、3島会社の発足時に渡された経営安定基金の存在から、新幹線を手に入れれば相当な経営環境の改善になるという希望的観測もなされておりますが、長く続く低金利の影響で、実はむしろ総資本利益率(ROA)の数値を押し下げる要因になっているなど、必ずしも好材料とはいえない現実があります。

またJR九州が該当するわけではありませんが、国鉄の特定地方交通線切り離しで発足した第三セクター鉄道の多くで、転換交付金の一部に自治体からの拠出金を足して積んだ経営安定基金を、ロシア債やアルゼンチン債その他のリスク債券への投資によって焦げ付かせたり、毎年度の赤字補填で目減りさせたりして、車両更新などの必要な投資ができなくなって存亡の危機にあるものが多数ある現実もあります。民間企業として生きるならば、無駄にお金を積み上げるのではなく、リスクを取って有効な投資をしてリターンを得ることを考えるべきですが、自治体主導三セクでは望むべくもありません。少なくとも経営安定基金の存在が企業の存続、繁栄を約束するものではないということは言えるかと思います。

結局営業エリアを簡単に変えられない鉄道会社にとっては、地域経済の浮揚以外に存続の手立てはないわけで、民間企業として担えるものではないですから、現実的には税制優遇などの支援策を取らざるを得ないということになります。JR発足からまもなく20年となるわけですが、各社の企業努力の成果はいろいろな形で見えてはいるものの、特に3島会社の未来像に関しては、むしろ不透明になっていると感じられます。

最近の税制に関するニュースですが、間違いだらけでいちいち突っ込む気力も失せるほどです。例えば、道路特定財源の問題が典型的ですが、現実に発生する余剰を現実に需要される使途、例えば年金などの社会保障費にまわすだけの問題が、かくも政治問題化すること自体が妙な話です。

法人税見直しで「日本は税率が高い」といわれますが、2005年度で7割近い企業が赤字で納税を免れ、残る3割強のほとんどが大手企業という現実が意味するところは、単なる大企業優遇でしかないということです。同様に減価償却費の見直しでも、多額の設備投資を行う大企業以外にはさほどメリットのない話です。ましてこれを主張する企業が政治献金しているというのは許しがたいですね。献金をやめて納税すれば済む話です。こんな企業に限ってCSR(企業の社会的責任)なぞとほざいてますが、企業の最大の社会貢献は納税であるということを肝に銘じて欲しいところです。国鉄民営化で確実に税収は増えているのですから。その意味では郵政改革の胡散臭さは相変わらず、こんなニュースに絶句します。

(12/1)特定郵便局長会、経営に影響力残る・日本郵政が改革案
人事制度上の特定郵便局長の特権を消した形になってますが、特定局オーナーでもある特定局長に本人が希望しない転勤を命じることは猫の首に鈴をつけるようなもの。さらに60歳定年後に一般職員待遇で再雇用された特定局長にどんな仕事をさせるつもりなんでしょうか。特権の温存でしかありません。これで納税できるのでしょうか-_-;。

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Comments

こんばんは。
いつもご教示いただきましてありがとうございます。
さて、貨物と九州は某社の壁の厚さということで。
皆様の意見または突っ込みでなんとかしましょう。
地域経済はまず地域の棚卸しからはじめましょう。
今年一年ありがとうございました。
これからも皆様ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
よい新年になりますように。

Posted by: とまと | Tuesday, December 12, 2006 08:26 PM

や、書き方がまずかったかもしれませんが、元々九州新幹線の東海道乗り入れは想定されておりませんので、貨物の場合と違って、東海が直接"壁”になるわけじゃないんです。

むしろ直接的にはJR西日本との関係が難しいということでして、東海道山陽新幹線の東海と西日本の関係が山陽と九州両新幹線でのJR西日本とJR九州の関係が再現されるということで、「江戸の仇を長崎で討つ」ような話になりそうなんです。

実際JR西日本は九州新幹線との直通に難色を示して、水面下の交渉でやっと直通は認めたものの、JR東海との関係でダイヤに制約を負っている山陽新幹線ですから、直通列車の本数その他の細目の詰めはこれからの話で、JR九州にとっての最適解が得られる保証はないわけです。

ま、この辺はいずれ項を改めて記事にしたいと思いますので、ご期待ください。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, December 13, 2006 06:14 PM

北陸新幹線の動きはどうなんでしょうね。富山が金沢へ、そして福井も「オレッチの街へ」と来れば今度は敦賀が・・ 最終的には西が自力で新大阪まで持ってくれば東西で新幹線問題は解決できます。そこへ九州をからめての鹿児島発ー新大阪ー富山ー長野ー高崎ー東京という桃太郎電鉄のようなお馬鹿なルートも不可能ではないはず(大爆笑)

でも九州からすればこうしてでも東京に入りたいかもしれません。東はおそらく関心なしでしょうね。むしろ北海道に興味を持っているかも。しかしそこまでして開通させるって何でしょうねぇ・・

Posted by: SATO | Sunday, December 17, 2006 02:41 PM

北陸新幹線ですが、とりあえず金沢までの営業線と松任の車両基地までの回送線までは着工されておりますが、優先順位が低いので、工事は進んでおりません。

そして2007年を最後に、鉄道整備基金が残高0になりますので、新たな財源の手当てがされない限り、新規着工はできません。したがってわれわれが生きている間は実現しないでしょう。

ま、あとネットワークの観点から言うと、ショートカット効果が期待できない北陸新幹線の収益性は限りなく低いですし、一応米原ルートが想定されているようなので、まかり間違って開業しても^_^;、JR東海の嫌がらせは続きます(笑)。

Posted by: 走ルンです | Sunday, December 17, 2006 11:18 PM

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