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Monday, December 18, 2006

改正中心市街地活性化法認定、富山と青森が名乗り

改正まちづくり3法の1つである中心市街地活性化法の認定1号として、富山市と青森市が名乗りをあげたそうです。

富山市と青森市、認定第1号に・地方都市の中心市街活性化
1万m^2を超える商業施設の立地に自治体が独自に網をかけるもので、中心市街地として自治体が指定した地域以外への大型商業施設や病院などの立地が規制されるとともに、中心市街地活性化の名目で補助金も出るということで、改革とは名ばかりのバラマキ行政、大店法の復活などなどとも言われる困ったものです。

当ブログでもたびたび取り上げてまいりましたが、そもそも郊外への集客施設の流出は、自治体自身が仕掛けてきたことでもあります。最初は工業団地の造成などで企業誘致をはかるために郊外が開発されたのですが、グローバル化の流れで以前のように企業が来てくれないどころか、進出企業の製造拠点見直しによって工場閉鎖さえ起こるようになるなどで、その尻拭いに病院や公共施設、場合によっては役所自体も移転するなどしたり、積極的にイオンなどのSCを誘致したりしてきたのは、自治体自身です。そういう意味でいえば、とりあえず新法の認定に名乗りをあげた2市は、どちらかといえばそういった流れとは距離を置いてきたグループに属しますが、それぞれに問題を抱えております。

富山市については、道路整備の結果として空洞化が進んだ総曲輪などの中心街の空洞化に歯止めをかけたいということで、LRTの路線整備などの意欲的な計画を持っており、注目されております。それに先立ってJR富山港線のLRT化事業が行われ、富山ライトレールの名で運行開始した結果、従来より運行頻度が高く、停留所も増えて利用しやすくした結果、目に見えて利用者が増えたわけで、都市計画でJR富山駅の高架化が行われるのを期に、既存の富山地鉄市内線との直通及び路線の新設によって、空洞化した中心街の活性化を図ろうというもので、意欲的であると共に、鉄道愛好家としても注目される計画ではあります。

富山市としては北陸新幹線の延伸に期待しつつも、新幹線ができれば切り離される並行在来線問題もあって、決断したものと思います。というのは、JR西日本の意向もあって、当初スーパー特急方式で在来線列車を一部区間で乗せ換える計画だったものが、度重なる見直しでフル規格にシフトしたのですが、その過程で並行在来線の北陸本線が切り離されたときに孤立する支線の同時切り離しをJR西日本が求めました。その結果、大糸線(南小谷~糸魚川、富山港線、高山本線(猪谷~富山)、城端線、氷見線などの存続が不透明な状況に置かれ、地元は反発しますが、JR西日本は一方で地方都市近郊のローカル線のLRT化を提案し、候補として岡山の吉備線と共に富山港線が取り上げられたわけです。

富山市は提案を前向きに受け止めて、結果的に富山ライトレールの開業へと至るわけですが、面白いのは、沿線開発を集客施設に頼るのではなく、住環境の優れた低層住宅を立地させることで実現しようとしている点です。高齢化の進む地方都市で、住みやすい家から乗りやすい電車でまちへ出るというライフスタイルを提案している点は評価できます。いわゆるコンパクトシティを志向しているわけです。結果として住みやすさが住民の流入を促し、人口増化特に年金給付世代の流入は、地域に消費をもたらしますから、企業誘致に勝るとも劣らない経済効果が期待できます。富山市で起きたことは、つまるところ意図せざる新幹線ドミノなのかもしれません。

青森市の場合も新幹線と無縁ではありません。東北新幹線は既に新青森まで着工されており、昨年北海道新幹線も新青森~新函館(仮称、渡島大野付近)が着工されたのですが、青森市にとっては頭の痛い問題があります。それは新青森の立地に関わる問題です。

青森市も以前からコンパクトシティを標榜し、公共施設や商業施設を青森駅周辺に集中的に配置することをしてきたのですが、国鉄時代の東北新幹線のルート選定で、青函トンネルルートで北海道へつなぐ構想を持っていた国鉄が、一方的に新青森に新幹線駅の設置を決め、奥羽本線に新青森駅を開業させたのですが、市街地外れの閑静な住宅地で、青森市も特段の開発計画を持たない地点への駅設置でしたので、当時青森市から見直しが要請されましたが、国の機関たる国鉄は無視しました。他の自治体ならば、国からの天の声とばかりに用途地域を変更して開発計画をごり押しするところでしょうけど、青森市はそれをせず、未だに新青森駅周辺は住居専用地域のまま変更されず、新青森駅も片面ホームの無人駅のままという状況が続いております。このままでは新幹線駅周辺が開発できないということになるわけです。

あと北海道新幹線に関しては、並行在来線問題も複雑で、特に本州側の津軽線がJR東日本の路線で、事業主体のJR北海道と異なるために、切り離し対象ではないですし、また新幹線とトンネルを共用するJR貨物のアプローチ路線でもあるので、実際的に廃止できないのですが、この津軽線が新青森を通らないからまたややこしい話になります。津軽線自体も青森市の近郊路線としての存在感はあるわけで、青森駅周辺に都市機能が集中するだけに、乗車密度は意外と高かったりします。また並行在来線として切り離される東北本線も、青森駅へ接着するわけですから、新幹線が開業しても、青森市街が取り残される可能性があるわけです。特に受け皿となる第三セクター「青い森鉄道」が新幹線に接着できないとなると、経営問題に波及し存廃が取り沙汰される事態すら心配されるわけです。青森県が六ヶ所村の核廃棄物再処理施設受け入れまでしてフル規格を勝ち取ったがために、実は青森市が割を食う事態となったわけです。「北海道延伸のためにもフル規格で」という主張も、墓穴を掘る結果となったわけです。

というわけで、地元で囁かれているのが、東北新幹線の新青森~青森延長線構想だそうです。東北新幹線新青森から、Uの字状に路線を引いて津軽線油川付近に至り、津軽線と並行させて青森駅へアクセスする構想が浮上しているということです。つまり新幹線が北海道へ延びたとしても、一部は青森駅へ向かって終着となるわけで、そうするとJR北海道及び北海道側の自治体との調整が大変だと思うのですが、とりあえず新法で出る補助金を使えば、新幹線の青森駅アクセスぐらいは青森市の単独事業でやっちゃえ! という話になるかもしれません。ああここも新幹線ドミノなんですな。アホラシ。

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Comments

新青森駅はホント寂れてますね!こんなところに新幹線駅が
出来るのかと本気で疑いました。

まさか青森までもがミニ新幹線みたく乗り入れろと言ってくるとは
思いもしませんでした。
中には函館駅にもミニ新幹線か直通が必要だとか訳の分からない事を言い出す輩もいますが。

私個人の意見から言えば両方とも在来線乗り換えで十分だと思います。
あとはバスとかで中心街と結べば良いですし。
羽田空港の国際化に向けて(ちょっと千葉県の一部地域で揉めて調整つかず遅れてますが)JAL、ANAは新幹線延伸も含めて青森とか東北方面の空港は殆ど撤退を決めてますし、JRにしてみればスピードアップや利便性など後回しにしても良いですから新青森や新函館へ直通で走らせると車両や整備、ダイヤなどに大きく影響するんで直通案は消極的ですね。
一番の目的はやはり札幌ですからあとはオマケみたいなものです。

新幹線が通ったからといって必ずしも地域活性化できるものではないということはよく理解して欲しい所ですね、特に東北の上の方辺り。

Posted by: ナオ | Monday, December 25, 2006 01:04 PM

先日神戸で交通関係のシンポに参加した際、富山市長が富山ライトレールのプレゼンを行なった際、コンパクトシティの話で、まさしく青森モデルとの対比をしていたのが印象に残りました。
まぁ(公共)交通活用はさておいても、青森の場合雪処理が最大のネックとも言える分、凝縮型にならざるを得ないのではありますが。

Posted by: 551planning | Monday, December 25, 2006 02:03 PM

コメントありがとうございます。

>ナオさん
そもそも当初は八戸から先はミニ新幹線でという着工時点での計画を無理矢理フル規格にねじ込んでおいて「青森駅が素通りされるから何とかせい!」は通らない話です。国鉄時代の計画を見直しもせずに「とにかくフル規格で」とゴリ押しした結果ですから間抜けですね(笑)。

実際問題として低層住宅しか建てられない用途地域の新青森駅に本当に新幹線駅を作るつもりなのでしょうか。改正都市計画法で1万平米以上の集客施設は作れないはずですから、青森県の玄関駅にふさわしい大規模ターミナルは無理な気がします。

あと新幹線の青森開業で秋田市の対東京の所要時間が逆転されるということで、秋田県がJR東日本に秋田新幹線のスピードアップを要請したそうですが、こういうのを地域間競争とは言いませんね。アホラシ。

>551plannningさん
雪処理問題は雪国では確かに深刻ですね。でも例えば岐阜県本巣市のモレラ岐阜というショッピングモールで、開業景気で殺到した人の影響で浄化槽の能力オーバーとなり、急遽営業時間を短縮したように、郊外への集客施設の立地は、地元自治体に道路やライフライン整備を強要する面もあり、自治体財政の悪化に拍車をかける面があることもまた確かなところですね。

でも、だからこれからはコンパクトシティで行くんだと言われても、今まで散々野放図な開発を放任もしくは助長してきておいて、何を今さらです。やるなら補助金抜きでやってくれ(怒)。

Posted by: 走ルンです | Monday, December 25, 2006 09:16 PM

青森と秋田は昔っから仲が悪くどちらが東京に近いかという
下らん争いをしております。だからスピードアップしろなんていう
ことになるわけですね。もっとも北海道を睨んだFASTECh360のお陰で
30分ほどの短縮が見込めるわけですが・・・。
>青森県の玄関駅にふさわしい大規模ターミナル
駅ばっかり一生懸命作って後は何か適当ってな感じですね。
手を拱いていたら札幌が開業したら八戸駅も新青森も寂れていくことでしょう。

今日も夕張市についての特集みたいなのやってましたが、
似たり寄ったりな感じで。。。

Posted by: ナオ | Tuesday, December 26, 2006 10:05 PM

いえいえ、新法で規制が強化された地域に新幹線駅を作らなきゃならない矛盾をどう解決するかが見えていないんです。幾つかの細切れの計画に分割するという裏技はありますが、それだと建築制限をより強く受けることになりますし、下手すると乗換のみで改札外へ出られない駅になりかねないですね(苦笑)。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, December 26, 2006 11:41 PM

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Tracked on Monday, December 18, 2006 07:23 PM

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