ボルト脱落が原因、ボンバルディア機
えーと、鉄ネタじゃないんですが^_^;、事故報道のあり方として取り上げます。
前輪格納扉の開閉部のボルト脱落・全日空機の胴体着陸国の航空機・鉄道事故調査委員会(以下「事故調」と略記)から早々に発表がありまして、ボルト1本の脱落が原因と特定されました。これでとりあえず再発防止策を講じることができますので、本来グッドニュースなんですが、メディアの捕え方はどうも変です。
ま、確かにボンバルディアのこの機体は、トラブルが多いということで、国交省も注目してましたし、暗にメーカーの責任を問いたいという空気が感じられるのですが、現時点では製造、整備のどちらに問題があったのかについては不明です。メーカーのボンバルディアも協力を約束してますし、今後明らかになるものと思います。着陸時の尻餅事故の補修が適切だったかどうかを明らかにしなかった日航ジャンボ機事故のときのボーイングよりも適切な対応が期待できます。
むしろ心配なのが全日空の方なんですが、仮に整備上の瑕疵があったとして、はたして全日空はそれを認めるだろうかという点に一抹の不安を覚えます。
元々ボンバルディアのこの機体は、昨年退役した国産機YS-11の後継機として国内デビューし、数を増やしているのですが、売りは何と言っても経済性で、数百キロレベルの中距離路線ならばジェット機と同等のフライト時間で飛べて、燃費は3割向上、滑走路も1,000mあればOKという、ローカル路線の救世主のような優秀な機体なんですが、開発費の高い民間航空機の主戦場から外れていて、ボーイング、エアバスのビッグ2のラインナップから欠落しています。ま、儲からないわけですね。
逆にだからこそ、総合輸送機器メーカーとしては大規模でも、航空機部門は小規模なボンバルディアにとっては、業界大手とガチンコ勝負しなくて良いマーケットという意味で重要なセグメントなんですね。このクラスで他社の追随を許さない経済性に優れた機体を低価格で提供できれば、市場を独占できるわけです。逆にこのようなマーケティング発想がなかったがゆえに、売れない=コスト回収できないがゆえに製造が打ち切られたYS-11の失敗とは対照的です。
というわけで、かなり革新的なコンセプトで登場したわけです。プロペラ機とはいえ6枚羽ですし、車輪の格納メカも独特のもので、整備面ではかなり特殊な扱いを強いられる面もあるでしょう。それもこれもローコストを実現するためですから、相当な技術的チャレンジはあったものと思います。またボンバルディアは本社こそカナダにありますが、欧米の輸送機器メーカーのM&Aを通じて発展した会社でもあり、航空機部門は元々英デハビランドの流れを汲む欧州系メーカーと考えた方が良いでしょう。当然設計思想も米系メーカーとはかなり異なります。
ま、この辺も浅薄な日本のメディアは、すぐに「資本の論理で安全をないがしろに……」のような短絡思考へ走ルンです^H^H^H走るんですが^_^;;;、そうやって不安を煽っていることはお構いなしという姿勢はほとほと呆れます。とりあえず原因が特定されたことは、グッドニュースなんです。この機体は今日も乗客を乗せて飛んでます。原因不明のまま飛ばなきゃならないことから比べて、どれだけ救われた人がいるでしょう。この機体がダメとなれば、撤退しなきゃならない路線も多数あります。そうして地方空港が寂れたらどーすんだ(怒)。
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Comments
YS-11とQ400を比べるのはいかがなものかと思いますYS-11が打ち切られたのは航空機の大型化の中で、商売が成り立たなくなったことが原因でした。地方空港のジェット化の中でQ400の導入された要因は大阪空港のジェット枠が絡んでおります。
国産技術で作るノウハウはあると思いますが、問題はエンジンでしょう。輸入ものになれば機体価格上昇は避けられません
販路の問題もあります。カローラ並に世界どこでもサービスが受けられることと日本製特有の凝り性なところを改善し頑丈な機体にすること。
その上、価格面との両立ができるのか疑問です。
あと、機体の共用する方向で設計が進められている自衛隊の哨戒機P-X、輸送機C-X計画は、旅客機分野へ進出ももくろんでいますが、いずれもジェットで計画されているため、輸送コストの安い機体にならないと思います。
Posted by: あんぱん | Tuesday, March 20, 2007 02:55 AM
コメントありがとうございます。対応が遅れまして申しわけありません。
YS-11とQ400の直接比較は、時代も違いますし、仰るようにあまり意味はありませんが、未だに軍用機と民間機の共同開発を考えているとすれば、その方が問題です。
かつて米軍向け輸送機でロッキードと競って敗れたボーイングが、用途を失った機体を民間航空向けに改良したのが、ジャンボ機747だったわけですが、ボーイングは単純に大量輸送の経済性だけを訴求したわけではありません。運行便の集約による空港発着枠の制約緩和で、繁忙期の臨時便運行や乗り継ぎのローカル便運行を在来の機体を転用して行うことで、民間航空輸送の裾野を広げることを提案し、各航空会社に受け入れられたのです。
一方のロッキードも、軍用機で培った技術を転用してL-1011トライスターを開発し、ビジネス拡大を狙いましたが、軍用機に偏っていて民間航空会社に販路を持たなかった同社は苦戦し、日本の政財界にカネをばらまいて売り込んだわけです。いわゆるロッキード事件ですが、そこまでしても開発費を回収できず、結局後継機の開発投入を断念しました。以後同社は軍事専門で推移します。
YS-11とQ400の違いも、つきつめれば同じようなことなんですが、技術革新によって、小型機の経済性が向上し、一方で少数のハブ空港にトラフィックを集中させた結果、むしろそこがボトルネック化してきたこともあり、輸送体系が直行便へシフトしつつある状況です。
かように民間航空の需要構造は変化にさらされているわけですが、その中でメーカーは自社の得意分野を明確にし、航空会社に受け入れられるマスマーケットの可能性のあるセグメントを提示する能力を問われているのです。残念ながら日本のメーカーでそれができるところは見当たりません。
Posted by: 走ルンです | Saturday, March 24, 2007 06:11 PM
横から失礼します。
このボンバルディア機ですがこの不具合の後も機体トラブルが
発生しております。油圧系・配線不良・電子機器故障etc…
ANAも求めてはいましたが、未だに各国各地で不具合が起こっております。また口では協力とは言ってはいますが、実際に協力などしているとは思えません。どうせいい加減にやってるんでしょう
胴体着陸なんてハデなことをテレビで放映されたから本気になっただけで、細かいトラブルなんかはどうせ航空会社のせいにしているんでしょう。これはどこのメーカも似たようなもんですが。だからこそパイロットや整備士などは厳しいのでしょうが。。
まあでも使っている航空会社としては他に代替機がないからしかたなく使い倒しているという感じでしょう。
ANAの今後の戦略を見てみると新大型機(777か747-8)と新中型機(787)と小型機(737)となっていますが、プロペラ機は今後も使っていくようなことが書いてあります。ただマスコミは言いすぎにしても、悪い意味で
有名になった機体はやはり一般人にとっては怖いものだと思います。
原因が特定されて、じゃあ改善されたかと思えば今度はまた別のトラブルが起こる・・それの繰り返しです。
日本も第二次世界大戦の時丁度ジェットエンジンに切り替わっていくという中でGHQに止められてしまったわけですからなんとも不幸です。
アメリカとしても日本が怖かったのでしょう。
Posted by: ナオ | Wednesday, March 28, 2007 12:48 AM
コメントありがとうございます。
ボンバルディア機がトラブルが多いのは確かです。経済性追求の結果として、限界設計がされていることが影響しているのだろうと思います。
しかし同時に、不具合が発見されて、改善されることによって、安定運行された例は過去にもあります。ボーイング727やダグラスDC-10などの機体も、現役当時はトラブルの多さが指摘されてました。
ま、ここから先は航空会社の判断となる部分です。トラブルの多い機体でも改良を重ねて使いこなすか、別の機体へ代替するかです。経済性がウリのボンバルディア機の場合、トラブル対策としての整備箇所の追加は、整備費用の増加に留まらず、機体の稼働率の低下も考えられますので、中長期では経済性の優位が失われる可能性があります。これは航空会社にとってはボディブローのように堪えます。
にも拘らずANAがプロペラ機にこだわるのは、おそらく伊丹対策かと思います。あまり報道されてませんが、ボンバルディア機を国内航空各社に推奨したのは、ほかならぬ国交省なんです。関空の開港で発着枠に余剰が出ながら、騒音対策で地元との約束である伊丹のジェット枠がネックとなっている中で、ボンバルディア機は伊丹の増便を行う切り札だったわけです。つまりは騒音問題を抱える伊丹の代替空港として計画されていたはずの関空開港時に伊丹の閉鎖を不透明な対応で見送ったツケを払わされているという見方も可能です。この辺は以下もご参照ください。
http://btrainj.cocolog-nifty.com/hasirundesu/2004/12/post_2.html
一方でJALはブラジルのエンブラエルの小型ジェット機の導入を発表しております。国内初登場ですが、用途としてはボンバルディア機と競合します。ジェット機ですから、機体価格や経済性はボンバルディア機に譲りますが、今回の事故を受けての巻き返しを意図したものとすればうなずけます。同時にJALは神戸空港の活用を視野に入れているとも取れます。
かくして競争市場での民間企業の振る舞いが、問題解決へと導いてくれるわけです。あとは乗客側の選択の問題ですから、その意味でもメディアの客観報道が重要なんですね。
Posted by: 走ルンです | Wednesday, March 28, 2007 06:12 PM
まだ対策が始まったばかりですが、冷静に考えてみたいと思います。
■ボンバル機に不具合相次ぐ…(1/1)
記事URL
http://www.news-service.ne.jp/tn/mailto_jump.cgi?fg=1&pg=85&ct=1&nid=88273
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TheNews
http://www.news-service.ne.jp/
Posted by: とまと | Sunday, May 06, 2007 03:26 PM