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Wednesday, April 25, 2007

あれから2年の福知山線事故

今日は朝からテレビで尼崎のJR福知山線事故の慰霊式典のライブ中継がありまして、そういえば2年経ったことを実感しております。その間に航空鉄道事故調査委員会(以下[事故調」と記す)の中間報告が出され、事故原因の解明も進んではおります。問題は再発防止できるかどうかなんですが、どうもJR西日本ではその後もトラブルが多くて、被害者との補償交渉も滞っているなど、まだまだ課題山積のようです

。(2007/4/25)尼崎市で追悼慰霊式典、JR福知山線脱線事故から2年
事故時の状況に関しては、事故調によってかなり解明されており、事故直前に伊丹駅でのオーバーランをめぐって運転士と車掌が車内電話で交信し、運転士が「(オーバーランの距離を)まけてもらえないか」という会話をして、注意散漫なままブレーキのタイミングを逸したということのようです。というわけで高見運転士の業務上過失致死傷罪は成立しますが、問題は運転士以外の者の罪状です。特に企業としてのJR西日本と当時の経営トップの訴追が為されるかどうかが注目点です。

正直なところ会社や経営トップの訴追は、日本の法体系では難しいところがあります。実際横浜市瀬谷区で起きたトレーラーの脱輪事故で、メーカーの三菱自動車のリコール隠しが原因として当時の河添社長が訴追されましたが、一審で無罪となっております。因果関係はかなり濃厚であるにもかかわらず、企業や経営トップの関与に関しては、予見可能性や回避措置を怠った不作為が立証される必要があるのですが、素人である警察や検察といった捜査当局には困難な作業といえます。

しかし特にJR西日本のような巨大企業の起こした事故ですから、きちんと訴追され罰を受けることこそが、再発防止にとって重要な意味を持ちます。なぜならば、株式会社という組織形態が持つ有限責任原則がバリアとなって、会社が痛みを感じることなく、事故の風化、世論の沈静化とともに安全への誓いを忘れてしまうことが危惧されるからです。

少し解説しますが、法律によって法人格が付与される株式会社という存在は、自然人と同等の私的権利を認められ、契約や商取引の主体として行動できるわけですが、株式を交付することで投資家から資金を集めることで、投資家に出資分以上の債務履行を免除する仕組みに特徴があります。それによって個人ではリスクを負いきれない大規模投資が可能となり、結果のリターンを配当して投資家に報いるのが基本的なあり方です。これが大規模投資を要求される工業化社会を支える仕組みとして機能してきたことは言をまたないのですが、同時に悪用すれば投資家から資金を掠め取る仕組みにもなりえますし、事業の結果の事故や環境汚染や他者への権利侵害などの外部不経済に対してのコスト負担の回避によって社会正義を害する存在にもなりえます。

そして厄介なのが、そのような企業の反社会的行動に対して、自然人ではない法人たる企業を訴追しても、当然のことながら実刑は受けないわけです。また扱う資金量からいって、個人であれば負担を感じる金額の罰金や科料であっても、大企業ほど負担感がないという点に問題があります。つまり刑事罰を受けることによる反社会的行為の抑止効果が期待できないわけです。その意味では会社経営の執行に責任を有する経営トップへの実刑というのが意味を持つわけですが、残念ながら上記の予見可能性や不作為の立証が壁となって、推定無罪の壁を超えられない可能性が高いのです。このことは法の下の平等をうたう法治国家の原則に照らしても問題ですし、事故の再発防止をお題目に終わらせないためにも、経営トップに痛みを感じさせることが重要なのです。

JR西日本の山崎社長は再発防止を誓い、安全対策の進捗を訴えてはおりますが、実際にはトラブルが続いている状況ですし、安全優先を訴えても社員の意識がなかなか変わらないといって社員に責任転嫁してますが、現場で積み上げるべき安全対策が意見として幹部に届かず対策が遅れているのが実態で、意識を変えるべきは経営幹部の方であるといえる状況です。信楽高原鉄道事故でも訴追を免れたJR西日本ですが、同社の将来のためにも、厳しいようですが、きちんと罰を受けることが重要と考えます。なお、こちらも併せてご参照ください。

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Comments

おっしゃるとおり、法人というのは厄介さと便利さがありますね。

理想ですがすべての犯罪について法人処罰規定をおいて
無制限の罰金や法人の強制的解散ができてほしいです。

Posted by: とまと | Friday, April 27, 2007 at 05:56 PM

コメントありがとうございます。JR西日本のような巨大企業と対峙する被害者や遺族は、それだけで圧力を感じざるを得ませんから、いくら平身低頭して補償交渉にあたっても、「頭が高い」態度に見えてしまいます。

私たちが交通事故で他人を傷つけたときと同じ法律で裁かれることで、やっと同じ地平に立つ感覚になれるのだと思います。その意味で罰を受けることでJR西日本自身も救われることになりますね。

Posted by: 走ルンです | Saturday, April 28, 2007 at 01:37 PM

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