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Friday, April 13, 2007

PASMO品切れの深層

いやはや意外な展開です。

パスモの発行、12日から定期券に限定――人気で在庫不足
PASMOのシステムがソニーのFericaと呼ぶシステムソリューションに乗っかったアプリケーションであることは、先行したSuicaと同様ですが、予想を超える発行が続いてアプリを乗せるカード自体が不足するというのは嬉しい悲鳴といえるのかどうか微妙です。以下に論考していきます。

PASMO運営会社では、早速追加発注をしたようですが、メーカーがソニー1社ですから、その生産能力に依存するのは仕方ないところです。ま、ソニーとしてはICカードのインテルになれるチャンスなはずですが、ソニー自身が出資するビットワレット社のEdyと交通系のSuica/PASMO陣営とは、電子マネー分野でライバル関係でもありますし、系列のソニークレジットでポストペイドのerioというネット決済専用カードを発行しているわけで、Suica/PASMO陣営の膨張は痛し痒しの側面もあります。カードの増産自体は、結果的にコストダウンが進みFericaシステムの普及、浸透に追い風ですから、ソニーは対応してくれるでしょうけど、ソリューションを1社に頼るシステムの弱点に対する認識は、少なくともPASMOに関しては甘かったと言われても仕方ないところです。

ただそうはいっても、首都圏私鉄、地下鉄、バス各社が参加するPASMOの場合、参加各社の温度差があったことも否めないところで、合議制でリーダーシップ不在だったこともまたやむをえないところかもしれません。そもそもPASMOは出自からいってSuicaとは別物だったのですが、日本鉄道サイバネティックス協議会でICカード乗車券の仕様が定められ、それに準じてSuicaが先行していた状況で、PASMOがSuicaと仕様を合わせること自体は合理的な選択ではあります。特にPASMOの場合は、膨大な処理を必要とするサーバーを持たず、Suicaのサーバーを借りてシステムを構築したように、コスト面から踏み込んだビジネスモデルにできなかったのですから、その流れから、発行枚数の予想を読み誤ってカードの在庫を十分に持たなかったのも、やはりコストを意識した結果であったと思われます。逆に予想よりもカードが売れなかった場合、おそらく担当者は加盟各社から叩かれたであろうと考えられますから、慎重になるのも無理もないところです。

そしてこれだけ巨大なシステムの導入に、明確なリーダーシップが不在だったことのツケは結構あちこちに散見されます。そもそもICカード乗車券というのは、カード個々にIDナンバーが振られて個別管理されているわけですから、生のパーソントリップのデータを取得できるわけで、それが輸送計画や企画商品などの立案に役立つのみならず、電子マネー機能で消費の実態もデータ化されて取得可能なわけで、丁度コンビニエンスストアのPOSシステムと同様に、鉄道事業のビジネスモデルを激変させる可能性を秘めたものなんですが、旧い営業規則の縛りから抜け出せずに、特に連絡運輸関連の複雑怪奇な営業規則の骨格をそのままに、経路特定に関するルールを少しだけいじって実施した結果、既に指摘したような同一改札間で2種類の運賃というけったいなことが起きてしまいます。また特にJRと他社のノーラッチ接続駅の改札分離も進み、中にはICカード限定のチェック用タッチセンサーが登場したり、構内に自動改札のゲート閉鎖のチャイムが鳴り響く^_^;など、自動改札のメンテナンスフリーの効果を削ぐ事態すら起きています。また、磁気券では処理不能な3社線連絡定期券はSuica/PASMOでも不可ですから、現状でもやむなく2枚定期券で利用している人は少なからず存在しますし、また小田急町田とJR町田のように公式に連絡運輸が行われていないところもそのままで、当初予想ではSuicaとPASMOの重複利用は少ないと見られていたようですが、下記の囲い込み戦略も絡んで重複利用が多くなったようで、何ともばかげた話です。

一方で一部大手私鉄では、オートチャージを餌に自社系列のハウスカードを大量発行したり、独自ポイントで航空会社のマイレージのような囲い込み戦略に出たりと、エゴ丸出しの対応をした会社がありますが、逆に言えばそれだけICカード乗車券によるメンテナンスフリー効果で超過利潤を得られるからこそ可能なサービスなんですが、これを原資とした乗継割引の拡大やゾーン制などのわかりやすい運賃制度への移行へは進まなかったわけで、再開発ブームで勝ち組地域に位置する立地の優位にどっぷり浸かっていると言われても仕方がありません。今後人口減少が首都圏でも顕在化したとき、それは遠い未来の話ではないのですが、気がつけば沿線がまるごと空洞化していないという自信があるのでしょうか。何とも心許ない限りです。

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Comments

乗り継ぎ割引の導入は手形の発行みたいなもので最悪は不渡りになり。ならば原資をためてからの導入が順当なのではないでしょうか。バスは未だ完全対応ではないですし。

ただきっぷが大幅に減って資源&ごみの処分コストは完全に浮くであるとか自動改札導入でもはや消えたヒューマンエラーにおける取りっぱぐれ(逆に取りすぎで謝罪は後を引かず)や非接触型でのメンテナンスコストの圧縮はすでに数値化できますから今後の値上げの鈍化は期待できそうな気がします。
ただこの部分だけでも先行値下げをしてくれれば印象も良かったのですが、会社側からすれば「機器導入におけるコストアップをしなかったのだから善しとせよ」というはず。

いやはや事業者と消費者の意識は異なっていますね。

Posted by: SATO | Saturday, April 14, 2007 08:02 AM

多分この会社は東日本のSUICAの枚数もかなりあるからこれで十分だろうと判断したんじゃないでしょうか?
はっきり言ってしまえばどちらか一枚持っていれば事足りるわけですから。SUICAの弱点といえば私鉄のみの定期券を発行できないことですが、PASMO定期券の発行は続くわけで何も問題はないわけです。(少なくとも今のところは)

恐らくSUICAだと私鉄や地下鉄、バスにも乗れるということを知らない人間が多いのではないかと思います。あちこちでPASMOと言われていたわけですからPASOMOじゃないとダメという思い込みでしょう。
その辺の説明をマスコミ各社がやるべきだとは思うのですが、相変わらず需要予測なんてバカの一つ覚えみたく連呼するわけですが(笑

絵柄がPASMOじゃないとイヤとかSUICAはJR以外使えないと
考えている人がほとんどじゃないでしょうかね?

まぁもっともSUICA自体私鉄駅に売っているわけでもないから
SUICAがすぐ手に入らないのも事実ですがね。

Posted by: ナオ | Saturday, April 14, 2007 11:34 PM

コメントありがとうございます。

事業者の立場を斟酌すれば、乗継割引の拡大や大規模なシステムチェンジに慎重になるのは致し方ないところがあるとは思います。

しかしコンビニエンスストアがPOSシステムの導入で化けたように、きわめて国民生活に近いところでのイノベーションの可能性に着目されていないのだとすれば、実にもったいない話です。

コンビニエンスストアの場合には、POSシステムの導入を機に、物流体制の見直しや店舗空調をPOSデータでコントロールするなど、業務を徹底的に見直しておよそ考えられる限りのコストダウンを実現する一方、取得した消費データを商品開発にフィードバックして成果をあげています。ICカード乗車券の普及は、同等以上のインパクトを秘めた改革だけに、それを生かせるリーダーシップが不在なのは惜しいですね。

Posted by: 走ルンです | Sunday, April 15, 2007 04:45 PM

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