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Saturday, May 26, 2007

非電化の星? キハE200

以前の記事でも取り上げましたキハE200形の実車が登場し、今夏から小海線で営業運転が始まります。既に趣味誌でも紹介記事が出ておりますので、分かりにくかった詳細が明らかになりました。ひとことで申し上げてなかなかの意欲作といえるかと思います。

ハイブリッドシステムについても明らかになりましたが、都合8つの走行モードを切り替えるもので、鉄道車両用ハイブリッドシステムとしては、なかなか良く考えられている感じです。走行モードは以下のとおりです。

1.駅出発時:バッテリー→モーター(ディーゼル特有の起動時騒音をなくす)
2.力行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン効率運転+バッテリー電力で補完)
3.上り坂走行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
4.上り坂走行時:ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
5.下り坂走行時:モーター→バッテリー/ディーゼル発電機(バッテリー充電+エンジン排気ブレーキ)
6.下り坂走行時:モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
7.ブレーキ時:モーター→バッテリー(回生ブレーキでバッテリー充電)
8.駅停車時モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
鉄道車両としての基本性能を満たしつつ、省エネを実現するものとして、よく考えられています。

やはり駅発車時には電車のようにモーター音やインバータ転動音はするものの、エンジン音なしにスタートするわけで、また一歩電車に近づいた感じです。力行時のディーゼル発電機にバッテリー電力を補完させて短時間の過負荷運転を容認するあたりは、E233系の記事でご紹介した走ルンですコンセプトが生きていますね。力行時と上り坂走行時のエンジン出力の使い分けも興味深いところですが、勾配区間で運用することを考えると、納得できるところです。

逆に下り坂走行時に回生電力のバッテリー充電とディーゼル発電機のエンジン排気ブレーキの併用は、連続下り勾配での抑速制動を意図したものですね。駅停車時にエンジン排気ブレーキを使うのは、動力ブレーキとして低速域で不安定になる回生ブレーキよりも確実性を優先させたものといえます。ひょっとすると駅発車時よりもノイジーな感じかもしれませんね^_^;。

当面はキハ110系との混用となるわけですが、110系が基本的な動力システムこそ旧来型の液体式ディーゼル車ながら、制御回路を電車に準拠させて、方向固定、全電気指令式ブレーキとしたものだったわけで、この辺は電車との部品共用によるメンテナンスコスト削減に狙いがあったものと思われますが、キハE200ではさらに進化して^_^;電車に近づいています。実はディーゼル車を使う非電化路線の弱点を現しているものでもあるのです。

元々トルクコンバーター(以下トルコンと略す)を用いた液体式駆動は、トルコンの特性を利用して、発車時に大きなトルクを必要とする鉄道車両では、車軸の負荷で推進軸と車軸の回転数に差が出ることでトルクを発生させてスムーズに発車させるわけですが、30km/h程度以上になると負荷が減少して車軸と推進軸の回転差がなくなり、動力伝達上はむしろ非効率になるので、この時点で車軸と推進軸を直結して以後はディーゼルエンジンのトルク特性を利用した加速となるわけです。元々船舶用エンジンからスタートした国鉄標準型のDMH17系エンジンでは、トルクカーブがフラットで扱いやすい反面、回転数があがらない特性でした。ある意味トルコン向きだったとはいえます。

一方で80年代の国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道を中心に、新潟鉄工(→新潟トランシス)や富士重工業(鉄道車両製造から撤退)が、従来の国鉄型より高性能なエンジンと軽量車体を組み合わせた高性能な軽快気動車を売り込みました。エンジンもトラックバス用や重機用その他高性能な汎用品が用いられるようになりますと、直結後の速度制御を円滑にするために、ギアを切り替えて2段3段の変速を行う必要が生じました。それ以前にも国鉄が開発したDML30系列の高性能エンジン搭載車は、直結2段でエンジン性能を引き出していたのですが、一般型への波及という意味では、地交線向け軽快気動車を取り上げておいた方が良いでしょう。実際民営化を睨んだ国鉄末期の各形式でも考え方が踏襲され、JR化後に登場した各社のローカル線向け車両も基本的なメカニズムは同じです。JR東日本のキハ100系110系も走行メカニズム自体は軽快気動車のそれと変わりません。

液体式ディーゼル車の場合、トルコンにクラッチ、変速ギア、逆転機などなど、電車と比べて動力伝達装置が複雑になり、これが保守上の弱点となるわけです。それで液体式駆動は日本とドイツ以外ではあまり用いられず、主にディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動する電気式が主流でした。加えて三相かご型誘導モーターを用いたVVVFインバーター制御が実現すると、電気式の弱点だった電力の抵抗ロスや、起動時のショックによる空転も防ぎやすいということで、大量の液体式ディーゼル車を使い続けているのはほぼ日本だけという状況になりつつあります。その意味ではキハE200は大きな世界の潮流に乗ったものと見ることも可能です。

そう考えると、方向固定など無意味と登場時に批判された電車の制御システムの導入の意味合いが変わってきます。実際電気指令ブレーキの採用で加圧空気管のような保守の厄介なパーツは激減し、電車と部品の共用も可能になります。さらに進んで駆動装置も電車と共用できれば、メンテナンスコストの削減効果はかなり大きいといえます。加えてハイブリッドシステムの採用で燃費が改善されれば、直接的な動力費の削減となるわけです。

加えてハイブリッドシステムの試験車だったキハE991は、その後燃料電池試験車へと新たな使命を得たように、ディーゼル電気ハイブリッドシステムは、燃料電池駆動への移行が比較的容易という点も見逃せません。水素供給システムに課題はありますが、こうなると車両面での非電化路線の弱点はかなりの程度克服されることとなります。

当ブログでも地方ローカル線の話題はたびたび取り上げておりますが、高性能を売り物とした軽快気動車群ですが、汎用部品が多用されたこともあって、鉄道車両としても耐久性に問題があり、導入した三セクローカル私鉄に車両更新の課題を突きつけている現状があります。こうなると非電化のローカル線向けに在来型の液体式ディーゼル車を使い続ける意味合いを考え直す必要があるかもしれません。かといって非電化路線を電化するというのは、小浜線のようによほど地域が原発成金にでもならないと無理ですから、それも含めてJR東日本の示した方向性の意味は大きいのではないでしょうか。

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Comments

液体式がそれほど世界的にみるとマイナーな存在だとは知りませんでした。確かに機関車だと電気式が多いようだとは認識していましたが。

Primera

Posted by: primera | Sunday, May 27, 2007 at 12:37 AM

コメントありがとうございます。

そもそも日本はディーゼル動車の保有両数がずば抜けて多いですし、日本から中古も含めて輸出された国もありますので、統計の取り方如何では逆の結果になる可能性はあります。

そのことをお断りした上で、やはり日本で主流の液体式は、世界の趨勢からは離れていると言わざるを得ないでしょう。

そもそもハイブリッド車という意味では、動車では例がないかもしれませんが、例えばスイスでは、交流16・2/3hz15kvの架線電力とディーゼル発電機の双方から給電可能な電気ディーゼルハイブリッド機関車とか、果ては大戦中の石炭不足対策として架線電力をパンタグラフ集電で取り入れてヒーターで蒸気を発生させる電熱蒸気機関車まで存在していたので、世界初のハイブリッド車という謳い文句自体は、割り引いて考えた方が良いと思います。

Posted by: 走ルンです | Sunday, May 27, 2007 at 04:49 PM

JR東日本のプレスリリースを見る限り、ディーゼルエンジンが発電機にしかつながっていないので、排気ブレーキは使えないと思うのですが?。

Posted by: Ikegami | Thursday, May 31, 2007 at 11:47 AM

制動時には、走行用モーターが発電機になり、ディーゼルエンジン直結の発電機がモーターとなりますから、エンジンへの燃料供給を遮断していれば、動力抵抗が発生しますので、排気ブレーキは有効ですね。

Posted by: 走ルンです | Thursday, May 31, 2007 at 09:41 PM

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