« April 2007 | Main | June 2007 »

May 2007

Wednesday, May 30, 2007

飛んで飛んでまわってまわって国有化でおJAL

当ブログのリニア論争のコメントの応酬で少し触れましたが、日本航空(JAL)の前途が不透明です。

日航、資本支援を要請・主力行に2000億-4000億円
JALでは一応否定しているようですが、日本政策投資銀行とメガバンク3行(三菱UFJ,みずほコーポ,三井住友)へ資本支援を要請しているもようです。いわゆるデッドエクイティスワップ(DES)と呼ばれる手法で、JALが議決権のない優先株を発行し銀行が引き受け、それを当該銀行の債務返済に充てるもので、債務の株式化とも言われる手法です。

正直なところ、JALがここまで追い詰められていたのが驚きですが、更にDESによる資本支援の規模が2,000億~4,000億円という金額も驚きです。特に政府系金融機関である日本政策投資銀行の債務残高が3,000億円で、第2位のみずほコーポレート銀行が400億円ぐらいですから、何のことはありません、郵貯、簡保、年金などのいわゆる財投資金が大量に投入されていたのですね。

政策投資銀の資金自体は、JR各社や私鉄、地下鉄の新線工事などにも投入されていますし、政府系金融機関改革で、民営化方針も出されているわけではありますが、やはり債務残高が突出している点で異様です。実際に民間銀行ではJALから資金を引揚げる動きも見られ、中央三井信託銀行は60億円程度あった債務を投資ファンドへ売却したようですし、りそな銀行や地銀各行も追随しそうです。元々民間銀行の多くは、政策投資銀の融資につきあっていたふしがありますが、JALの経営改善がさっぱり進まず、金融庁の銀行への検査で、JAL向け債権の格付けを破綻懸念先へ変更するよう指導されたことで、追加融資が事実上不可能になったと考えてよいでしょう。加えて政策投資銀も民営化に先行して金融庁の検査を受けることになっていますので、事実上銀行融資なしに資金繰りをしなければならない状況ということになります。そこで事実上DESしか選択肢がない状況となったわけですね。

一応民営化予定とはいえ、政策投資銀がDESに応じて債務を株式化した場合、議決権こそありませんが、事実上の半国有化ということになるわけで、87年の完全民営化から20年の節目の急旋回は皮肉です。もっとも政策投資銀を仲介して財投資金が注入されていたと見れば、民営化自体が虚妄だったという見方もまた可能ではあります。JALは難局を乗り切るには、リストラを強化して銀行の資本支援に向けてのアピールが必要となり、かくして関連事業の整理に向かうことになったようです。

日航、JALカード株売却へ・追加リストラ着手
記事にもありますが、JALカードは非上場ながら時価総額1,000億円規模と見られ、特に会員に富裕層が多いということで、早速カード各社の争奪戦が始まっているようです。JALカードはSuica提携カードも発行しており、JR東日本も動くかもしれませんね。

元々政府出資の特殊会社だったJALの民営化20年は、ある意味JRの先行事例という意味合いもあったわけで、旅客6社貨物1社の特殊会社でスタートし、10年をめどに株式上場、政府保有株放出で完全民営化のシナリオを、JALは先取りしていたわけです。

ただし航空事業を取り巻く状況は様変わりでして、JALの不振も変化に対応できなかったということができます。87年当時は、いわゆる航空憲法による3社体制が健在で、JALが国際線と国内幹線、全日空(ANA)が国内幹線と国内ローカル線、東亜国内航空(TDA,後の日本エアシステム(JAS))が国内ローカル線で、幹線以外ではダブルトラックもなく、ほぼ完全に棲み分けがされておりました。

JALは国内線ではANAと競合してはいたものの、85年のプラザ合意以来の円高にも拘らず、国内販売の航空券はそれ以前の250円/ドル程度の固定相場で発行され、内外価格差による為替差益を得ておりましたので、国内線は赤字でも構わなかったのです。そういう意味で完全民営化とはいえ、民間企業としての自覚がどの程度あったかは疑問が残ります。

加えて航空事業は安全保障と直結するということで、国際線に関しては、二国間の政府間交渉で運行する航空会社まで決めるという国際ルールがあり、運賃も方面別の協定運賃ですから、国際線は完全な独占市場だったわけです。

このことは同時に政治の干渉を受けやすい企業体質でもあったわけで、国内線初のジェット機のコンベア880以来、歴代の機種選定にも政治の影が付きまといますし、就航予定のない機材を買わされてテキサスの砂漠の中の格納庫に放置したりもしてます。

あとHSSTの開発もJALが突然始めたのですが、成田や千歳などの都心から遠い空港の機能向上を謳い文句としながら、なぜJALが手がけるのかは明らかではありません。結局50億円以上の開発費を投入し、その一部は独シーメンスのトランスラピートのライセンス使用料としてかなり高額の支払がされていたりで、この辺は国会でも問題視されたことがありますが、あげくに中部エイチエスエスティ開発に1.5億円で叩き売ったんですからあきれます。そして技術はリニモに結実し、飛んでまわって空気を運ぶ-_-;。JR東海にとってはリニアのライバルに塩を送ったわけで、ただでさえ航空を目の敵の同社は何を思うでしょうか^_^;。

この辺の政治力のなさを裏付ける最近のニュースにこんなのがあります。

日本航空、松本―札幌線を存続
記事中にもあるように、リストラの一環として不採算路線10路線の休止を決めたのですが、疑惑の復活と相成りました。ホントJALはいいようにむしり取られ続けたわけです。20年前と違って格安航空会社がアジア太平洋地域でも興隆している現在、国際線の方が競争激化しており、今はむしろ国内線の方が独占領域となっている中で、不採算路線からの撤退でANAに後れをとる余裕はないはずです。一般の事業会社ならば外資ファンドの餌食になるところでしょうけど、航空業法で議決権30%を上限とする外資規制がむしろ邪魔をして、再建の道すじは全く五里霧中です。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

Saturday, May 26, 2007

非電化の星? キハE200

以前の記事でも取り上げましたキハE200形の実車が登場し、今夏から小海線で営業運転が始まります。既に趣味誌でも紹介記事が出ておりますので、分かりにくかった詳細が明らかになりました。ひとことで申し上げてなかなかの意欲作といえるかと思います。

ハイブリッドシステムについても明らかになりましたが、都合8つの走行モードを切り替えるもので、鉄道車両用ハイブリッドシステムとしては、なかなか良く考えられている感じです。走行モードは以下のとおりです。

1.駅出発時:バッテリー→モーター(ディーゼル特有の起動時騒音をなくす)
2.力行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン効率運転+バッテリー電力で補完)
3.上り坂走行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
4.上り坂走行時:ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
5.下り坂走行時:モーター→バッテリー/ディーゼル発電機(バッテリー充電+エンジン排気ブレーキ)
6.下り坂走行時:モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
7.ブレーキ時:モーター→バッテリー(回生ブレーキでバッテリー充電)
8.駅停車時モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
鉄道車両としての基本性能を満たしつつ、省エネを実現するものとして、よく考えられています。

やはり駅発車時には電車のようにモーター音やインバータ転動音はするものの、エンジン音なしにスタートするわけで、また一歩電車に近づいた感じです。力行時のディーゼル発電機にバッテリー電力を補完させて短時間の過負荷運転を容認するあたりは、E233系の記事でご紹介した走ルンですコンセプトが生きていますね。力行時と上り坂走行時のエンジン出力の使い分けも興味深いところですが、勾配区間で運用することを考えると、納得できるところです。

逆に下り坂走行時に回生電力のバッテリー充電とディーゼル発電機のエンジン排気ブレーキの併用は、連続下り勾配での抑速制動を意図したものですね。駅停車時にエンジン排気ブレーキを使うのは、動力ブレーキとして低速域で不安定になる回生ブレーキよりも確実性を優先させたものといえます。ひょっとすると駅発車時よりもノイジーな感じかもしれませんね^_^;。

当面はキハ110系との混用となるわけですが、110系が基本的な動力システムこそ旧来型の液体式ディーゼル車ながら、制御回路を電車に準拠させて、方向固定、全電気指令式ブレーキとしたものだったわけで、この辺は電車との部品共用によるメンテナンスコスト削減に狙いがあったものと思われますが、キハE200ではさらに進化して^_^;電車に近づいています。実はディーゼル車を使う非電化路線の弱点を現しているものでもあるのです。

元々トルクコンバーター(以下トルコンと略す)を用いた液体式駆動は、トルコンの特性を利用して、発車時に大きなトルクを必要とする鉄道車両では、車軸の負荷で推進軸と車軸の回転数に差が出ることでトルクを発生させてスムーズに発車させるわけですが、30km/h程度以上になると負荷が減少して車軸と推進軸の回転差がなくなり、動力伝達上はむしろ非効率になるので、この時点で車軸と推進軸を直結して以後はディーゼルエンジンのトルク特性を利用した加速となるわけです。元々船舶用エンジンからスタートした国鉄標準型のDMH17系エンジンでは、トルクカーブがフラットで扱いやすい反面、回転数があがらない特性でした。ある意味トルコン向きだったとはいえます。

一方で80年代の国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道を中心に、新潟鉄工(→新潟トランシス)や富士重工業(鉄道車両製造から撤退)が、従来の国鉄型より高性能なエンジンと軽量車体を組み合わせた高性能な軽快気動車を売り込みました。エンジンもトラックバス用や重機用その他高性能な汎用品が用いられるようになりますと、直結後の速度制御を円滑にするために、ギアを切り替えて2段3段の変速を行う必要が生じました。それ以前にも国鉄が開発したDML30系列の高性能エンジン搭載車は、直結2段でエンジン性能を引き出していたのですが、一般型への波及という意味では、地交線向け軽快気動車を取り上げておいた方が良いでしょう。実際民営化を睨んだ国鉄末期の各形式でも考え方が踏襲され、JR化後に登場した各社のローカル線向け車両も基本的なメカニズムは同じです。JR東日本のキハ100系110系も走行メカニズム自体は軽快気動車のそれと変わりません。

液体式ディーゼル車の場合、トルコンにクラッチ、変速ギア、逆転機などなど、電車と比べて動力伝達装置が複雑になり、これが保守上の弱点となるわけです。それで液体式駆動は日本とドイツ以外ではあまり用いられず、主にディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動する電気式が主流でした。加えて三相かご型誘導モーターを用いたVVVFインバーター制御が実現すると、電気式の弱点だった電力の抵抗ロスや、起動時のショックによる空転も防ぎやすいということで、大量の液体式ディーゼル車を使い続けているのはほぼ日本だけという状況になりつつあります。その意味ではキハE200は大きな世界の潮流に乗ったものと見ることも可能です。

そう考えると、方向固定など無意味と登場時に批判された電車の制御システムの導入の意味合いが変わってきます。実際電気指令ブレーキの採用で加圧空気管のような保守の厄介なパーツは激減し、電車と部品の共用も可能になります。さらに進んで駆動装置も電車と共用できれば、メンテナンスコストの削減効果はかなり大きいといえます。加えてハイブリッドシステムの採用で燃費が改善されれば、直接的な動力費の削減となるわけです。

加えてハイブリッドシステムの試験車だったキハE991は、その後燃料電池試験車へと新たな使命を得たように、ディーゼル電気ハイブリッドシステムは、燃料電池駆動への移行が比較的容易という点も見逃せません。水素供給システムに課題はありますが、こうなると車両面での非電化路線の弱点はかなりの程度克服されることとなります。

当ブログでも地方ローカル線の話題はたびたび取り上げておりますが、高性能を売り物とした軽快気動車群ですが、汎用部品が多用されたこともあって、鉄道車両としても耐久性に問題があり、導入した三セクローカル私鉄に車両更新の課題を突きつけている現状があります。こうなると非電化のローカル線向けに在来型の液体式ディーゼル車を使い続ける意味合いを考え直す必要があるかもしれません。かといって非電化路線を電化するというのは、小浜線のようによほど地域が原発成金にでもならないと無理ですから、それも含めてJR東日本の示した方向性の意味は大きいのではないでしょうか。

| | Comments (4) | TrackBack (1)

Sunday, May 13, 2007

JR北海道秩父別駅積み残し事件

えー、リニア問題に揺れた当ブログですが(笑)、全く無関係の話題で久々の更新です^_^;。まずはメディアチェックです。

秩父別駅 客26人乗れぬまま発車 JR運転士「奥に詰めて」 デッキの高校生ら動かず(05/09 14:09)
JRなど乗車指導 秩父別駅 生徒は「車両増やして」(05/10 14:06)
マナー問題なし、列車混雑のため 秩父別乗り遅れ JRに反論の声(05/10 09:24)
JRと当事者の高校生や指導にあたった高校教師との間で、見解が割れていますが、地方ローカル線の現状を如実に現した事件ですね。

国鉄時代から指摘されていたことですが、過疎地のローカル線の乗客は、高校生を中心とした通学生が中心で、始業時間に間に合う列車は限られますから、該当する通学列車は混雑するのですが、赤字体質の国鉄では、輸送改善の対応は取りようがありませんでした。また忘れてならないのが、通学定期券の問題でして、国の機関だった国鉄ゆえに、教育支援の国策に沿って、高率の割引率が適用されていた通学定期券が、ただでさえ劣悪な収支状況をより悪化させる役割も果たしていたわけで、JRも基本的に運賃制度を国鉄から引き継いでいて、運賃改定はあったものの、基本的にこの構図は継承されております。

この辺は、3島会社だけの問題というわけではないんですが、分割民営化で鉄道ネットワークの末端を受け持つことになった3島会社ほど強く傾向が出る問題であるとともに、内部補助の原資の少なさゆえに、支えきれなくなる可能性はより高いわけです。

さらに昨今の少子化で、通学生そのものが減少している中、列車の運行を支えるJR各社としても、合理化待ったなしですから、ワンマン化などを行わざるを得ないわけです。かくして今回の事件となったわけですが、以上の問題点を踏まえれば、マナー問題に矮小化してよい話ではないというのは自明ではないでしょうか。

事業会社としてのJRの立場としては、赤字を続けながらの列車運行はいつまでも可能なわけがないので、いずれ事業の撤退も視野に入れざるを得ないわけですが、公共性の呪縛で簡単ではないわけです。鉄道事業法の改正で、需給調整規制が撤廃され、鉄道事業でも基本的には参入退出は自由化されたわけですが、公共性にかんがみて、地元自治体と協議して同意を得る必要があります。それでも地元協議が難航した場合に、1年後には同意なしに廃止できる、いわゆる「見切り発車」条項が設けられて事実上自由化され、実際にローカル路線の廃止は相次いでいるわけです。話題のDMVも、どちらかといえばここまでやっても鉄道を維持できないことを地元に説明するために開発されているという側面が強いのです。

JRに関しては、地元協議のハードルを高くして、安易に廃止を強行できないようにはなっておりますが、最終的に見切り発車は可能でして、JR西日本可部線の可部以北が廃止されたのは周知のとおりです。とはいえ鉄道事業の比重の高いJR各社にとっては、路線の廃止は即事業規模の縮小を意味するわけですから、何とか維持したいのもまた確かでして、それ故に例えば旧国鉄時代の周遊券その他の企画商品の見直しが行われる中で、どう見ても持ち出し必至の大盤振る舞い商品の青春18キップが期間を学休期に限定して継続販売されている理由も、実は学休期の通学列車の運行維持に狙いがあることがわかります。

仮に運休したとすると、車両の集中保守などで運行経費を圧縮することは可能でしょうけど、同時に毎日運行で決まった時間に列車に乗れることからくる信頼性という公共交通としての自己否定でもあるわけで、過疎地ゆえに存在感を失う恐れがあり踏み込めない部分です。逆に首都圏では、中央線の連続立体化に伴なう線路切り替えなどで計画運休しても、休日で代替ルートがあるという条件で、大きな問題にならないのと事情が違うわけですね。

で、この通学定期券の割引率問題に焦点を当てると、教育のための家計への補助を営利企業が行っている構図となるわけで、こうなると毎年300億円規模の赤字を計上し、経営安定基金の運用益で穴埋めしている状況のJR北海道ですから、赤字路線の廃止・縮小局面で必ず問題視される部分となります。

本来は家計への教育補助は自治体の役割なんですが、自治体財政の逼迫で、現実的には難しいわけですが、さりとて放置すれば鉄道が廃止され、代替バスも過疎地では走り続ける保証はないですから、いずれ自治体でスクールバスを走らせるなどの対応が迫られ、最後には通学生を抱えた世帯の他地域への移転によって、無人地帯になる可能性まで視野に入れる必要があります。かくして第二第三の夕張がそこかしこに-_-;。

地域間格差がいわれ、夏の参院選でまたぞろ公共事業のバラマキ話が沸き起こると思うんですが、このような地域に新しい道路を作っても、財政悪化に拍車をかけるだけなんですね。なぜ既存の鉄道があるならば、それを存続させて有効活用しないのかですね。通学生向けの営利を無視したディスカウントは今すぐ止めるべきですし、それによって負担を増す家計に対しては、自治体が補助してやればよいはずです。少なくともJRは民営化20年で経過措置も終わって固定資産税を満額支払っているわけですから、沿線自治体はその部分で税収増を実現しているはずなんです。それを住民への補助を通じてJRへ還元して地域の基盤を維持することの方が重要なはずです。

あと通学定期券というのは、利用者を限定した事実上のIDカードです。地方ローカル線では所持者を個人レベルで特定できるはずですね。SuicaやPASMOのようなICカード化は無理としても、例えば学校が発行する学生証に定期券機能を付加して事務手続きを簡略化するとか、また乗車時にもいちいち提示を求めるのではなく、例えばシリアルナンバーをバーコード化してリーダーにかざすことでチェックするなどの方法もあるわけで、特に2扉キハの後扉締切扱いで前扉だけで客扱いして、奥へ詰めてくれないから乗れなかったというもの感心しませんね。欧州流のセルフ方式がある意味やりやすい環境でもあるはずです。それも無理なら通学列車の時間帯限定で自治体か学校の職員を駅に立たせるでも良いかもしれませんね。いずれにしても、これぐらい考えないと、3島会社の鉄道事業は厳しいと思うんですが。

| | Comments (6) | TrackBack (3)

« April 2007 | Main | June 2007 »