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Sunday, May 13, 2007

JR北海道秩父別駅積み残し事件

えー、リニア問題に揺れた当ブログですが(笑)、全く無関係の話題で久々の更新です^_^;。まずはメディアチェックです。

秩父別駅 客26人乗れぬまま発車 JR運転士「奥に詰めて」 デッキの高校生ら動かず(05/09 14:09)
JRなど乗車指導 秩父別駅 生徒は「車両増やして」(05/10 14:06)
マナー問題なし、列車混雑のため 秩父別乗り遅れ JRに反論の声(05/10 09:24)
JRと当事者の高校生や指導にあたった高校教師との間で、見解が割れていますが、地方ローカル線の現状を如実に現した事件ですね。

国鉄時代から指摘されていたことですが、過疎地のローカル線の乗客は、高校生を中心とした通学生が中心で、始業時間に間に合う列車は限られますから、該当する通学列車は混雑するのですが、赤字体質の国鉄では、輸送改善の対応は取りようがありませんでした。また忘れてならないのが、通学定期券の問題でして、国の機関だった国鉄ゆえに、教育支援の国策に沿って、高率の割引率が適用されていた通学定期券が、ただでさえ劣悪な収支状況をより悪化させる役割も果たしていたわけで、JRも基本的に運賃制度を国鉄から引き継いでいて、運賃改定はあったものの、基本的にこの構図は継承されております。

この辺は、3島会社だけの問題というわけではないんですが、分割民営化で鉄道ネットワークの末端を受け持つことになった3島会社ほど強く傾向が出る問題であるとともに、内部補助の原資の少なさゆえに、支えきれなくなる可能性はより高いわけです。

さらに昨今の少子化で、通学生そのものが減少している中、列車の運行を支えるJR各社としても、合理化待ったなしですから、ワンマン化などを行わざるを得ないわけです。かくして今回の事件となったわけですが、以上の問題点を踏まえれば、マナー問題に矮小化してよい話ではないというのは自明ではないでしょうか。

事業会社としてのJRの立場としては、赤字を続けながらの列車運行はいつまでも可能なわけがないので、いずれ事業の撤退も視野に入れざるを得ないわけですが、公共性の呪縛で簡単ではないわけです。鉄道事業法の改正で、需給調整規制が撤廃され、鉄道事業でも基本的には参入退出は自由化されたわけですが、公共性にかんがみて、地元自治体と協議して同意を得る必要があります。それでも地元協議が難航した場合に、1年後には同意なしに廃止できる、いわゆる「見切り発車」条項が設けられて事実上自由化され、実際にローカル路線の廃止は相次いでいるわけです。話題のDMVも、どちらかといえばここまでやっても鉄道を維持できないことを地元に説明するために開発されているという側面が強いのです。

JRに関しては、地元協議のハードルを高くして、安易に廃止を強行できないようにはなっておりますが、最終的に見切り発車は可能でして、JR西日本可部線の可部以北が廃止されたのは周知のとおりです。とはいえ鉄道事業の比重の高いJR各社にとっては、路線の廃止は即事業規模の縮小を意味するわけですから、何とか維持したいのもまた確かでして、それ故に例えば旧国鉄時代の周遊券その他の企画商品の見直しが行われる中で、どう見ても持ち出し必至の大盤振る舞い商品の青春18キップが期間を学休期に限定して継続販売されている理由も、実は学休期の通学列車の運行維持に狙いがあることがわかります。

仮に運休したとすると、車両の集中保守などで運行経費を圧縮することは可能でしょうけど、同時に毎日運行で決まった時間に列車に乗れることからくる信頼性という公共交通としての自己否定でもあるわけで、過疎地ゆえに存在感を失う恐れがあり踏み込めない部分です。逆に首都圏では、中央線の連続立体化に伴なう線路切り替えなどで計画運休しても、休日で代替ルートがあるという条件で、大きな問題にならないのと事情が違うわけですね。

で、この通学定期券の割引率問題に焦点を当てると、教育のための家計への補助を営利企業が行っている構図となるわけで、こうなると毎年300億円規模の赤字を計上し、経営安定基金の運用益で穴埋めしている状況のJR北海道ですから、赤字路線の廃止・縮小局面で必ず問題視される部分となります。

本来は家計への教育補助は自治体の役割なんですが、自治体財政の逼迫で、現実的には難しいわけですが、さりとて放置すれば鉄道が廃止され、代替バスも過疎地では走り続ける保証はないですから、いずれ自治体でスクールバスを走らせるなどの対応が迫られ、最後には通学生を抱えた世帯の他地域への移転によって、無人地帯になる可能性まで視野に入れる必要があります。かくして第二第三の夕張がそこかしこに-_-;。

地域間格差がいわれ、夏の参院選でまたぞろ公共事業のバラマキ話が沸き起こると思うんですが、このような地域に新しい道路を作っても、財政悪化に拍車をかけるだけなんですね。なぜ既存の鉄道があるならば、それを存続させて有効活用しないのかですね。通学生向けの営利を無視したディスカウントは今すぐ止めるべきですし、それによって負担を増す家計に対しては、自治体が補助してやればよいはずです。少なくともJRは民営化20年で経過措置も終わって固定資産税を満額支払っているわけですから、沿線自治体はその部分で税収増を実現しているはずなんです。それを住民への補助を通じてJRへ還元して地域の基盤を維持することの方が重要なはずです。

あと通学定期券というのは、利用者を限定した事実上のIDカードです。地方ローカル線では所持者を個人レベルで特定できるはずですね。SuicaやPASMOのようなICカード化は無理としても、例えば学校が発行する学生証に定期券機能を付加して事務手続きを簡略化するとか、また乗車時にもいちいち提示を求めるのではなく、例えばシリアルナンバーをバーコード化してリーダーにかざすことでチェックするなどの方法もあるわけで、特に2扉キハの後扉締切扱いで前扉だけで客扱いして、奥へ詰めてくれないから乗れなかったというもの感心しませんね。欧州流のセルフ方式がある意味やりやすい環境でもあるはずです。それも無理なら通学列車の時間帯限定で自治体か学校の職員を駅に立たせるでも良いかもしれませんね。いずれにしても、これぐらい考えないと、3島会社の鉄道事業は厳しいと思うんですが。

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Comments

地元の方々は自分達が崖っぷちに居ることを認識できていない様ですね。激安の学割定期で乗っていて、混雑していてもコストにあわず赤字になっている鉄道に対して軽々しく物を言うのはどうかと思いましたね。
間違いなくやめたい路線から数えたほうが早い路線ですからね。
むしろ自分達で如何にして維持できるか考えるべきなのにふんぞり返って「混んでいるから増連結増発しろ」ってのは・・・
高校生にもあきれましたが、教師にはもうなんというかそんな教育しているから地元が疲弊するんだぞと言いたくなりましたが。
なんのための教師なんだか・・・

Posted by: じぇいあーる | Monday, May 14, 2007 at 01:11 AM

コメントありがとうございます。

JR北海道のローカル線でも、留萌本線はとりわけ状況が厳しいようですが、原価割れでも輸送サービスを続けなければならないところが、公共交通のつらいところです。

ま、ただJR北海道にしても、今回の事件をマナー問題にしてしまうと、本質である原価割れ問題が置き去りになってしまうのではないかという点で、注文をつけたいところなんですよね。こんなことで感情的に対立しても、問題は解決しません。

ということで、どっちもどっちという気がします。

Posted by: 走ルンです | Monday, May 14, 2007 at 08:26 PM

 いつも鋭い分析(滋賀県の新駅問題や長崎新幹線など)に関心しながら読ませていただいております。
 ただ、今回のこの部分ですが・・・。
>JRは民営化20年で経過措置も終わって固定資産税を満額支払っているわけですから
確かに本州3社はそうでしょうが、3島会社は固定資産税を免除されているのでは・・・。

Posted by: 焚火派GALゲー戦線 | Monday, May 14, 2007 at 09:11 PM

失礼いたしました。ご指摘感謝いたします。

以前の記事で自分で書いておいて、すっかり忘れておりました^_^;。貨物を含めて事実上の財政支援状態から抜け出せないのが、20年目の現実として重いですね。

Posted by: 走ルンです | Monday, May 14, 2007 at 10:56 PM

いつも高度な記事ありがとうございます。
高校生の通学定期券の問題は、厄介ですね。
へんな話法律上高等学校は任意教育なのに、
世間的には義務教育みたいなところがありますね。
では、失礼します。

Posted by: とまと | Friday, May 18, 2007 at 08:54 PM

JR深名線路線バス廃止

Posted by: 永江聡 | Thursday, October 04, 2012 at 10:17 PM

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