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June 2007

Saturday, June 30, 2007

JR福知山線事故最終報告書続報

えー、前の記事は大急ぎでまとめたので、報告書の内容までは立ち入っておりませんが、なにしろA4版275ページの分量ですから、読むだけでも時間がかかります^_^;。興味のある方は、航空・鉄道事故調査委員会のwebページからダウンロードでしてご覧ください。

ま、とにかく読むだけでも大変な代物ですが、かなりの部分を用語解説などに費やしておりますので、大まかなストーリーとしては、速度オーバーによる転覆脱線事故で、高見運転士の操作ミスによるブレーキ遅れが原因と、至ってシンプルなストーリーとなっております。そしてそうした運転士の異常行動を誘発したのが、JR西日本の企業体質ということで、それを説明するために、実に細部にわたって記述されております。

日勤教育に代表される精神論的ペナルティが、運転士にペナルティの回避行動を取らせた結果、伊丹駅でのオーバーランの指令への過少申告を車掌に依頼し、それを確かめるための無線交信の傍受を行うことに気をとられた結果という認識を示したわけで、改めにやりきれないものを感じます。

そのことに対する傍証として、実にさまざまな問題点を現場社員からのヒアリングなどで集めておりますが、事故地点での速度超過は過去にも起きていて、しかも指令への報告がされていなかったなどが明らかにされております。またATS-Pの設定速度の誤り速度計の誤差など、安全対策を無力化しかねないミスも発覚しており、安全管理に大いなる疑問をつきつけております。これらを根つめて読むと、JR西日本を利用したくなくなります。

また以前の速度超過事故でも見られるようにいわゆる事故に至らないヒヤリハット(インシデント)が報告されないことはかなり日常的に見られるということで、現場のフィードバックなしにいかなる安全対策が可能なのでしょうか。日勤教育に代表される精神論的ペナルティの弊害以外のなにものでもありません。事故当日、高見運転士は車掌に「まけてくれへんか?」とオーバーランの過少申告を依頼したことに通じます。

というわけで、限りなくJR西日本をクロに近いと認定しているのですが、当ブログで主張しております経営トップの刑事訴追に至るかどうかという点では、これは日本の司法が抱える問題のほうがネックになりそうで心配です。

朝鮮総連本部問題で、当初総連の資産差押え逃れの緊急避難と報道された名義変更が、総連を被害者とする緒方元公安庁超過の詐欺事件にすりかわったのですが、一説によれば総連の代理人の土屋弁護士の扱った事件で敗訴して煮え湯を飲まされた東京地検の意趣返しと言われております。また緒方元長官も、法務省OBでもあるわけで、法務省内部の権力闘争との見方もあります。この手の話は情報が偏って伝えられるので、真実はわかりませんが、こういった検察のストーリーに易々と乗ってしまう独立性に疑問符がつく司法で裁けるのかどうか疑問です。

思えば信楽高原鉄道事故では、早い段階で不起訴処分が決まり、その後信楽高原鉄道を被告とする公判の過程で亀山CTCセンターの方向優先テコの存在が明らかになり、かつ事故後速やかに撤去されマニュアルも破棄されたなど、明らかな証拠隠滅に走ったJR西日本ですが、今回もぎりぎり逃げ切るつもりなんでしょうか。今回こそ裁きが届かなければ、この国では法の支配は有名無実ということになってしまいます。下手すると中国以下かもしれない^_^;。

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Thursday, June 28, 2007

速報! JR福知山線事故調最終報告

というわけで、JR福知山線尼崎事故の事故調最終報告が出され、国交大臣へ提出されました。ただし国交省のwebページではまだ公表さえれておらず、一般公開は少し後になるのでしょう。

(6/28)JR福知山線脱線事故、事故調が最終報告
事故原因は速度超過による転覆脱線事故ということで、運転士のブレーキ遅れというシンプルなものなのですが、JR西日本のいわゆる日勤教育に見られる懲罰的な体質を批判するなど、基本的なところは押さえられているようです。ただし事故の再発防止については、株主総会の顛末などから判断して、少なくとも経営陣には声が届いていないように感じます。

そもそも120km/hから70km/hへの減速というのは、運転士にはかなり緊張を強いられるものかと思いますが、高見運転士は自らの伊丹駅のオーバーランを報告する車掌と指令の無線交信を傍受していたなど、やや緊張感に欠けるところが疑問です。その結果のブレーキ遅れということで、高見運転士の異常行動は別に異常心理によるものではないわけで、それがわかったことで、実は深刻な問題なんですね。

というのも、事故直後にJR西日本はR300mの転覆限界の速度を133km/hと発表し、事故列車の速度では転覆しないと言っていたわけです。これは当時事故直後に鉄道総研に問い合わせて弾き出した数字で、無風、乗客0、横振動0という仮定の計算値だったことが後でばれてしまいます。実はこの点が示唆に富むのですが、経営トップのこのぬるい認識が、現場社員にも共有されていたとすると、高見運転士の緊張感のない運転態度の説明がついてしまうという点で恐ろしいのです。つまりは事故原因はブレーキ操作の遅れではなく、伊丹駅のオーバーランによる遅れを取り返そうとする心理が働いた可能性があるということですね。だとすればJR西日本という会社は、かくも安全に関する認識が甘かったのかと愕然とします。

事故車両の207系についても、事故後、重心高やボルスタレス台車の安全性についての指摘などもありましたが、多分限界性能で見ればボルスタレス台車はボルスタ付台車よりも転覆しやすいのかもしれませんが、そもそも日常の営業運転で曲線部で速度超過を試すようなことをすることが異常なんで、これらの議論は事故原因とは直接結びつきませんでした。

ま、確かにボルスタ付台車の方が、ボルスタ(揺れ枕)と台車枠を枕ばねで支えてボルスタアンカー(揺れ枕吊り)で吊る構造なので、このボルスタアンカーの吊り構造が曲線部で遠心力を打ち消す働きをしますが、ボルスタレス台車では遠心力による枕ばねの偏倚で遠心力を増長しますし、そもそもボルスタの有無で台車質量が異なりますから、転覆に対する限界性能は前者が高いはずです。だからといって乗客を乗せた営業運転で、限界を試すなどは論外です。実際の制限速度は乗り心地を阻害しない横方向の重力加速度の限界値(0.08Gといわれます)で決まりますので、ボルスタレス台車犯人説は当初から胡散臭いものだったといえます。で、この辺は鉄道関係者にとっては常識に属する話だと思うんですが、その意味で事故直後にJR西日本の転覆限界133km/hの発表があったときに、大いに違和感を感じたわけです。営業運転で限界を試すのかい(怒)。

というわけで、やはり再発防止のためには経営トップの刑事訴追は避けて通れないところかと思います。

関連記事:

迷走するJR西日本、阪急阪神乗客減少でも強気のわけ
あれから2年の福知山線事故

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Sunday, June 24, 2007

JR東日本東北線架線事故、過密輸送の果て

ンまぁ大変な事故でした。

通勤の足、大混乱・JR東北線で架線切れ停電
原因は信号停止の際にパンタグラフがエアーセクションにかかって大電流が流れて溶融したものということです。
JR停電事故、禁止区間での停車が原因
というわけで、明らかな人災ですが、運悪くというか、事故当日はJR東日本の株主総会の日だったこともあり、総会は荒れました。
JR東日本の株主総会、過去最長の4時間32分
ま、これも巡り会わせか^_^;。JR東日本に対しては、国交省から警告が出されました。
国交省、停電事故でJR東日本に警告
というわけで、朝の通勤時間帯の事故だっただけに、影響は大きかったわけです。

ま、事故自体は人災といえますし、お粗末ではあります。運転士はベテランだったようですが、エアーセクション関連の停止禁止は承知していたはずですし、万が一停止してしまった場合の脱出措置もわかっていたはずなので、なぜにこのような不注意ミスを犯したのかはわかりませんが、ラッシュで先行列車がつっかえていて、停止信号に頻繁に引っかかる状況で、ATS-Pなどの保安装置のバックアップがあるだけに、安全監視の緊張感が維持できなかった可能性はあります。つまりは高度な安全対策の積み重ねも、必ずしも万全とは言い切れないのが現実というわけですね。特に死傷事故につながらないこの手の事故では、不注意ミスの発生そのものを防ぐのは難しいところがあります。

逆にラッシュで高密度輸送の渦中で、かつただでさえ雨天時には遅延が起きやすい中で、乗務員の緊張感は高いはずですが、同時に先行列車の遅れで発進停止を繰り返す渋滞というかダンゴ運転の状態では、ハンドル操作の反復が惰性化して緊張が緩むことは、自動車で渋滞にはまった場合などにも感じるところです。となると有効な再発防止策は難しいかもしれません。

となれば事故が起きた場合の復旧の迅速化や代替輸送路の確保など、緊急時の危機対応力の強化が重要なんですが、この点もJRだけを責められないところがあります。報道によれば停電で駅間に停止した列車は6本あり、うち5本の乗客を線路上を最寄り駅へ徒歩で誘導したそうですが、朝ラッシュう真っ盛りですから、少なく見積もっても1列車当り2,000人以上の乗客がいたはずで、合計1万人以上の乗客を線路上を徒歩誘導したわけですから、その部分でかなりの時間ロスが発生しているはずです。まして雨天でしたし。そして事後に線路上の安全確認を行って、やっと運転再開となるわけで、復旧に5時間もかかったことが非難されてますが、これは致し方ないでしょう。架線の張替えと再通電に要した時間は2時間程度ですから、ハードの復旧は意外と早かったのです。

つまるところ東京一極集中で、特に首都圏の路線網では都心直通ルートがあるJRへ集中する傾向があるだけに、JR単独では事態の回避可能性は低かったと言わざるを得ません。この辺は並行私鉄がピッタリ寄り添って少ない乗客を奪い合っている近畿圏や中京圏とは感覚的に大きな違いがあります。混雑の原因である東京一極集中を放置して、JR東日本だけに解を求めても、問題は解決しないということですね。再開発で潤うデベロッパーや融資する銀行は、リスクを負わずに利益だけを得ている状況ですが、開発利益課税でも考える必要がありそうです。

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Sunday, June 10, 2007

迷走するJR西日本、阪急阪神乗客減少でも強気のわけ

本題に入る前に、サイドバーで取り上げました

JR福知山線事故の本質―企業の社会的責任を科学から捉える
をご紹介しておきます。メモでも書きましたが、現時点で事故の本質に最も迫れたのではないかと思う内容です。特に転覆限界に関する「国枝理論」からの解明は実に見事で、JR西日本の刑事訴追のネックとなりそうな予見可能性に関するアリバイが崩れたと個人的には思っております。ぜひご一読を。

阪急阪神の経営統合後初の決算がありまして、乗客減少に歯止めがかからない中で、増収増益の好業績となりました。

阪急阪神の前期連結最終益366億円――前々期は253億円の黒字
これが統合効果によるものかというと、必ずしもそうではなく、好業績の中身は不動産事業に依存しているもので、どちらかといえば地価の反転上昇の恩恵によるところだろうと思います。もちろん地価の動きも、統合により梅田地区の再開発でシナジー効果を期待するものかもしれませんが、むしろ東名阪ビジネスゾーンのオフィス需要増大の影響と見るのが妥当でしょう。

運が良かったと言ってしまえばそれまでですが、運を味方につけるのも大事なことではあります。そうなると「聞いちゃった」ことで刑事被告人となった村上さんが虎の尾を踏んでくれたことに感謝すべきでしょうか^_^;。少なくとも阪急の強気にはわけがあったというのが、今回のメインテーマです。

国鉄分割民営化によるJR発足以降、最も大きな変化があったのは関西圏であるというのは確かなところですが、JR西日本は京阪神圏アーバンネットワークの強化を経営の柱に、国鉄から引き継いだインフラを有効活用しながら、私鉄王国関西で、ひとり勝ちを演じてまいりました。その結果、京阪神圏に路線網を持つ阪急が特に侵食され、またバブル期の不動産開発事業への傾斜でとりわけ有利子負債を膨らませた阪急は、反撃しようにも後手を踏まざるを得ませんでした。また阪神大震災でも大きな痛手を受け、さらに復興でJR西日本が先行したこともあって、競合路線で乗客が逸走し、輸送シェア低下に苦しみました。

そんな苦境のなか、阪急が取った対策はなかなかユニークなものでした。手始めに地銀の池田銀行と組んで金融業へ進出、特に消費者ローンで審査時間を20分程度として、かつ駅構内の端末で申し込んで別の駅の端末で受け取るシステムを構築することで、消費者ローンに新風を巻き込みました。つまりは梅田で融資申し込みをして、電車で移動している間に審査を終了し、京都、神戸、宝塚などの着駅で現金を受け取ることができるわけで、鉄道事業者の特徴を巧みに利用した新しいビジネスモデルを立ち上げました。

思えば小林一三の時代から、沿線での住宅分譲というのは、当時としては画期的な新しいビジネスモデルであったわけで、苦境に立たされたことでチャレンジ精神のDNAが復活して先祖帰りしたのかもしれません。以後の阪急は次々と新しいビジネスを立ち上げます。その一つが共通乗車券カードのスルッとKANSAIですが、元々自動改札機導入が進んでいた関西では、阪急のラガールカードをはじめ、プリペイド型ストアードフェア乗車券カードが各社で導入されつつあった中で、対JR戦略として各社のSF乗車券カードの共通化されたもので、阪急主導で進んだことは知られております。

またレバレッジドリースによる車両調達に先鞭をつけ、これは関東の相鉄や京成をはじめ、遂には東急にまで波及して業界の新しいスタンダードになりつつあります。

そしてSF乗車券カードもICカード化しますが、ここでもJR東日本のSuicaなどでプリペイド型でスタートしてますが、阪急はポストペイド(後払い)方式を導入し、その後スルッとKANSAIのICカード版である共通カードPITAPAで標準となるなど、完全に主導権を握っております。そのPITAPA関連でこんなニュースがあります。

三井住友カード、マンション鍵として使える一体型カード
記事には触れられておりませんが、マンション購入者に1年間無料で乗れるサービスも盛り込まれるということで、マンション開発と連動した新たな囲い込み戦略として注目されます。まさに大攻勢をかけているという状況です。

とはいえ有利子負債1兆円超の阪急阪神HDですから、決して経営的には安泰ではないですが、かくも攻勢に出られる理由として考えられるのが、福知山線事故以来のJR西日本の迷走ぶりにあるのではないかと思います。ヒントは2006年3月期決算にあるんですが、事故後の復旧が遅れたことと、JRの企業体質に疑問符がつけられて利用が忌避されたことが相まって、阪急はそれまでの乗客減少基調が増加へと転じたわけです。まぁ何かしら他人の不幸につけ込むようでなんですが、JR西日本の攻勢にさらされて追い込まれた阪急だけに、逆に乗客はJRから取り返せるということにある種確信的なものがあったのではないかと思います。とすれば阪急の経営再建は、なかなか挑戦的でかつ手強いものといえるかと思います。

翻ってJR西日本ですが、噂はありましたが前掲本でも指摘されている頭の高い補償交渉に終始し、現場の改善要求が通らないなどの問題も指摘される中、阪急阪神の大攻勢に太刀打ちするためにも、事故の教訓を活かして乗り越えていってほしいと切に願うところです。でなければ未来はおJALと心配になってしまいます。

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Thursday, June 07, 2007

年金と国鉄の意外な関係

巷では、年金記録漏れ問題で揺れております。その一方で政府は明らかな論点はずしに奔走しておりまして、新たに1,430万件の入力漏れが発覚するなど、泥沼の様相となっております。

一方でメディアはまた本質を理解しないままの的外れな報道が散見され、JR尼崎事故や耐震強度偽装事件のような空騒ぎに終わりそうな気配が見えるのが気がかりです。特に「年金返せ」という論調が一部メディアに見られるのですが、制度を理解していないとしか思えません。

当ブログでは、社会保険庁の年金保険料免除の偽装に関連してこんな記事をアップしてますが、そこで日本の公的年金制度は、積み立て方式というよりは賦課方式に近いことを指摘すると共に、当面の高齢化の進捗による給付の増大に積立金を計画的に取り崩すことで対応し、完全賦課方式に移行することがベターという論を展開いたしました。

そう、そもそも公的年金で積立金は不要なんです。個人のライフサイクルでみて、現役時代に保険料を納付して、リタイア後に年金として受け取るのに、時間差を利用した政府の信用創造で機能は果たせるわけです。それを現役時代に積み立てた保険料を年金の形で取り崩す制度とすれば、確かに少子化など人口変動の影響を受けることはなくなりますが、それはつまるところ政府による強制貯蓄ということになるわけで、果たして公的年金として意味があるのかという点が指摘できます。別に預けるのは民間金融機関でかまわないはずです。それをあえて国に預けて積み立てることの意味が問われます。

実は厚生年金に関しましては、これこそが制度発足の最大の理由だったのです。戦火拡大する1942年、戦費調達目的で、公務員の恩給制度に似せてつくられたのが、厚生年金なんですね。これは同時に、とかく高収入を求めて会社を渡り歩く当時のサラリーマンに転職が不利に働く制度として、給与上昇圧力を抑制する目的もありました。そう、信じられない話ですが、戦前のサラリーマンというのは、一種事務の専門家、民間テクノクラートという性格が強く、コピーのない時代に謄本作成には原本の下にカーボン紙と白紙を敷いて文鎮で固定し、鉄筆でカリカリやっていた時代ですから、事務職の能力如何が会社の事業推進能力を決定するものだっただけに、高給取りだったのですが、戦時の国家総動員体制で1つの会社への忠誠を求められることになったのです。終身雇用制はこの時代から始まったと見られます。

というわけで、こんなニュースも意外性はないんですね。

(6/6)年金記録、最大1430万件の「未統合」・新たに発覚
当時の政府にとっては、戦費調達とサラリーマンの社畜化が同時にできる一石二鳥の妙案だったわけです。だから脱退して5年以上の年金記録は無視して当然という感覚はあったのでしょう。

ですから年金積立金の流用に関しても、元々戦費調達目的だったわけですから、罪悪感なしにできたでしょうし、実際年度を重ねて積立金が積み上がってくると、政府予算と違って裁量的に投資ができる資金として流用され、一部は旧大蔵省資金運用部資金すなわち財政投融資資金として、旧国鉄ほか多数の特殊法人に注入され、相当部分が焦げ付いたものと思われますが、JRに引き継がれなかった旧国鉄累積債務など一部を除き実態は不明です。

加えて年金保険料の算出に使われる割引率(将来給付に必要な積立金を金利で割り引いて現在価値に直すので、収める保険料は想定される給付額より少なくなるが、そのときに用いる割引金利のこと)を4%程度で固定しているのですが、長期にわたる低金利時代にも見直しはされませんでしたから、運用実績が4%に達していた可能性はかなり低いといえます。というわけで、年金を積み立て方式とするならば、現時点で明らかに多額の積み立て不足が生じているわけで、ある試算では800兆円にものぼると見られており、不足分の追加拠出は非現実的です。ということは、現時点で年金会計を清算して加入者に一時金として返済するとすれば、加入者たる国民は相当な損失を確定させることになります。というわけで「金返せ」は解決策たり得ません。

ちなみに公務員の恩給制度は、戦後共済年金として民間向けの厚生年金と外形的な整合性が取られたわけですが、同じく政府が保険者として管掌する被用者年金である厚生年金とは別立ての制度となりました。その結果年金積立金の運用も別立てで、特に国家公務員共済に関しては、法令で定員が定められており、株式などのリスク資産への投資もないこともあって、積立金は痛んでいないと言われております。つまりは腹立たしいことに公務員の勝ち逃げになるだけなんですね。

で、国鉄なんですが、戦後国の機関から公共企業体へと改組され公社となったときに、国家公務員共済から外れて国鉄共済となったのですが、これにもからくりがありまして、戦後大陸からの引揚者の雇用対策として国鉄が国策に乗って大量採用したのですが、その結果年齢構成のいびつな組織となったわけですから、将来の年金給付が膨らむのは目に見えていたので切り離したという穿った見方が可能です。そして実際、戦後大量採用世代の退職期にあたる80年代後半に急速に国鉄の経営が悪化し、国鉄分割民営化へと進むこととなります。

もちろん国鉄改革の理由はそれだけではありませんが、巷間いわれる赤字ローカル線問題というのは、それほど大きな要素ではなかったことは断言できます。そして郵貯、簡保、年金を財源とする財投資金が大量に注入された国鉄は解体され、債務の一部はJRへ資産売却代金の形で移転され、残りのほとんどは国鉄清算事業団によって一元管理されたものの、バブル崩壊で遊休不動産の再開発が滞ったこともあって償還が進まず、むしろバブル期の高金利の長期借り入れだったためにむしろ債務総額を拡大する失態となります。これが90年代中盤に旧国鉄債務問題として政治問題化し、業績好調なJRへの追加負担の議論にすり替えられたのは、記憶に新しいところです。

ここで政府は奇策を弄しまして、JR本州会社在勤の旧国鉄職員の共済年金から厚生年金への移行に伴なって発生する債務の負担を打ち出したんですね。当初発足する新会社の負担を軽減して早く収支改善をはかるのが妥当と判断されたのですが、予想以上に好調な本州会社の収支をみて、現役社員の年金という反対しにくい部分を狙い撃ちしたもので、かなり狡猾なやり方です。しかし当然JR各社から反発を受け、労使協調の反対運動が展開される事態となりました。それを見かねて収拾に動いたのが、社民党の土井党首で、政府とJR労組をとりなして半額負担でまとめ上げたのですが、正直いって足して2で割るグレーな解決といわざるを得ません。これ以来私は社民党嫌いになりました(笑)。

ま、てなことがありまして、実は郵政民営化でも年金問題は結構大きなハードルですし、いわゆる公務員法改正問題で天下り防止策がいわれますが、優遇された公務員年金の現実を見るにつけ、官僚の抵抗が大きい分野ですが、現行制度で進む限り、さまざまなトラブルはまだまだ続きそうです。百年安心なんて言ったの誰でしたっけ?

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