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Sunday, June 10, 2007

迷走するJR西日本、阪急阪神乗客減少でも強気のわけ

本題に入る前に、サイドバーで取り上げました

JR福知山線事故の本質―企業の社会的責任を科学から捉える
をご紹介しておきます。メモでも書きましたが、現時点で事故の本質に最も迫れたのではないかと思う内容です。特に転覆限界に関する「国枝理論」からの解明は実に見事で、JR西日本の刑事訴追のネックとなりそうな予見可能性に関するアリバイが崩れたと個人的には思っております。ぜひご一読を。

阪急阪神の経営統合後初の決算がありまして、乗客減少に歯止めがかからない中で、増収増益の好業績となりました。

阪急阪神の前期連結最終益366億円――前々期は253億円の黒字
これが統合効果によるものかというと、必ずしもそうではなく、好業績の中身は不動産事業に依存しているもので、どちらかといえば地価の反転上昇の恩恵によるところだろうと思います。もちろん地価の動きも、統合により梅田地区の再開発でシナジー効果を期待するものかもしれませんが、むしろ東名阪ビジネスゾーンのオフィス需要増大の影響と見るのが妥当でしょう。

運が良かったと言ってしまえばそれまでですが、運を味方につけるのも大事なことではあります。そうなると「聞いちゃった」ことで刑事被告人となった村上さんが虎の尾を踏んでくれたことに感謝すべきでしょうか^_^;。少なくとも阪急の強気にはわけがあったというのが、今回のメインテーマです。

国鉄分割民営化によるJR発足以降、最も大きな変化があったのは関西圏であるというのは確かなところですが、JR西日本は京阪神圏アーバンネットワークの強化を経営の柱に、国鉄から引き継いだインフラを有効活用しながら、私鉄王国関西で、ひとり勝ちを演じてまいりました。その結果、京阪神圏に路線網を持つ阪急が特に侵食され、またバブル期の不動産開発事業への傾斜でとりわけ有利子負債を膨らませた阪急は、反撃しようにも後手を踏まざるを得ませんでした。また阪神大震災でも大きな痛手を受け、さらに復興でJR西日本が先行したこともあって、競合路線で乗客が逸走し、輸送シェア低下に苦しみました。

そんな苦境のなか、阪急が取った対策はなかなかユニークなものでした。手始めに地銀の池田銀行と組んで金融業へ進出、特に消費者ローンで審査時間を20分程度として、かつ駅構内の端末で申し込んで別の駅の端末で受け取るシステムを構築することで、消費者ローンに新風を巻き込みました。つまりは梅田で融資申し込みをして、電車で移動している間に審査を終了し、京都、神戸、宝塚などの着駅で現金を受け取ることができるわけで、鉄道事業者の特徴を巧みに利用した新しいビジネスモデルを立ち上げました。

思えば小林一三の時代から、沿線での住宅分譲というのは、当時としては画期的な新しいビジネスモデルであったわけで、苦境に立たされたことでチャレンジ精神のDNAが復活して先祖帰りしたのかもしれません。以後の阪急は次々と新しいビジネスを立ち上げます。その一つが共通乗車券カードのスルッとKANSAIですが、元々自動改札機導入が進んでいた関西では、阪急のラガールカードをはじめ、プリペイド型ストアードフェア乗車券カードが各社で導入されつつあった中で、対JR戦略として各社のSF乗車券カードの共通化されたもので、阪急主導で進んだことは知られております。

またレバレッジドリースによる車両調達に先鞭をつけ、これは関東の相鉄や京成をはじめ、遂には東急にまで波及して業界の新しいスタンダードになりつつあります。

そしてSF乗車券カードもICカード化しますが、ここでもJR東日本のSuicaなどでプリペイド型でスタートしてますが、阪急はポストペイド(後払い)方式を導入し、その後スルッとKANSAIのICカード版である共通カードPITAPAで標準となるなど、完全に主導権を握っております。そのPITAPA関連でこんなニュースがあります。

三井住友カード、マンション鍵として使える一体型カード
記事には触れられておりませんが、マンション購入者に1年間無料で乗れるサービスも盛り込まれるということで、マンション開発と連動した新たな囲い込み戦略として注目されます。まさに大攻勢をかけているという状況です。

とはいえ有利子負債1兆円超の阪急阪神HDですから、決して経営的には安泰ではないですが、かくも攻勢に出られる理由として考えられるのが、福知山線事故以来のJR西日本の迷走ぶりにあるのではないかと思います。ヒントは2006年3月期決算にあるんですが、事故後の復旧が遅れたことと、JRの企業体質に疑問符がつけられて利用が忌避されたことが相まって、阪急はそれまでの乗客減少基調が増加へと転じたわけです。まぁ何かしら他人の不幸につけ込むようでなんですが、JR西日本の攻勢にさらされて追い込まれた阪急だけに、逆に乗客はJRから取り返せるということにある種確信的なものがあったのではないかと思います。とすれば阪急の経営再建は、なかなか挑戦的でかつ手強いものといえるかと思います。

翻ってJR西日本ですが、噂はありましたが前掲本でも指摘されている頭の高い補償交渉に終始し、現場の改善要求が通らないなどの問題も指摘される中、阪急阪神の大攻勢に太刀打ちするためにも、事故の教訓を活かして乗り越えていってほしいと切に願うところです。でなければ未来はおJALと心配になってしまいます。

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Comments

あれから9年、阪急阪神は再度磁気プリペイドを導入することになりました。
今となっては、迷走しているのはどっちなのか……。

Posted by: んん | Thursday, December 29, 2016 at 03:33 PM

確かにwwwwwwww。

京阪や近鉄はICOCA出してますし、阪急阪神HDが孤立気味ですね。大阪の地盤沈下も止まらず、一番打撃を受けるのは阪急になりそうですし、系列の神戸電鉄も青息吐息。むしろなんば線効果の阪神に助けられているかも。

Posted by: 走ルンです | Thursday, December 29, 2016 at 10:12 PM

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