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Monday, July 30, 2007

JR東日本新型新幹線車両は時速320km

東海道山陽新幹線のN700系が7/1に営業運転を始めましたが、JR東日本の新幹線にも新型車両が登場します。

JR東日本、世界最速320キロ車両導入へ
JR東日本のプレスリリースはこちらです。
新幹線高速化について
リリースにあるように、2005年から高速試験電車「FASTECH360」で行ってきた走行試験の成果を踏まえ、2010年の新幹線青森開業時に営業投入を予定しており、具体的な速度や列車本数は未定ということですから、320km/hの最高速は、当面の目標ということで、試験車で想定した360km/hへの挑戦は続けるようです。ゆえに例の空力ブレーキは今回採用されず、将来へ温存ということのようです。

アクティブサスペンションと車体傾斜装置を搭載ということで、N700系と似ていますが、アクティブサス自体はJR西500系で初採用されたものですし、車体傾斜装置に至っては、JR北海道が線路の弱い在来線向けに開発したものですから、別にJR東がN700系を真似たわけではありません。むしろJR東海はそれらの成果を取り入れてN700系を開発したことは、新幹線500系の功績でもご指摘申し上げたとおりで、それどころかアクティブサスはよほど気に入ったようで、313系5000番台でも採用されました。在来線の汎用車としては贅沢なメカですが、高速走行時の左右動を減衰させて軌道狂いを抑制する狙いでしょうか。線路保守量は減らせますが、車両側の保守作業量は増えますから、どちらが有利かは長期的に見なければわかりません。

JR東の新型車の場合、力行性能だけならE2系で既に320km/h対応はされているようですから、FASTECH360の志しが後退したように見えますが、一段の高速化に含みを残しているところが、JR東日本らしいといいますか、民間企業らしさを感じます。同じように政府保有株完全放出で完全民営化された本州会社ですが、経営のスタンスの違いが鮮明ですね。

といいますのも、北海道新幹線の新青森~新函館間が既に着工され、現時点では確定しておりませんが、札幌延長の構想もあるだけに、その際の対応を織り込んだ技術開発に狙いがあるということです。この辺は整備新幹線の政治性とでも言いますか、元々オイルショック時の総需要抑制策で東北、上越、成田の3新幹線が建設凍結されたあおりで、着工の目途が立たなかった整備計画区間を、国鉄分割民営化で空文化することを恐れた運輸族議員による整備スキームの押し込みで生き残った新幹線計画ですから、JRにとっては、都市間輸送インフラとしての幹線鉄道の公費によるグレードアップと合法的に在来線を切り離して、非採算のローカル輸送と貨物鉄道への線路賃貸から撤退できるという有利な条件が与えられたわけで、その結果青森(正確には新青森)までの整備は願ってもないところである一方、会社が変わる新青森から先については、本来無関係なんですが、根元受益とやらを持ち出して、JR東日本からも増収分を召し上げようという議論がされてます。ああ社会主義ニッポン-_-;。

とはいえJR東日本としても、新青森から先へ伸びるならば直通列車を走らせて増収に結び付けたいわけで、旺盛な需要を背景にJR西の山陽新幹線を介した九州新幹線への直通など端から考えないJR東海の東海道新幹線とは事情が違います。そういった意味で、北海道新幹線の開業は、JR東にとっては政治的なリスク要因ということになります。政府にリニアに金出せなどとたわごと言ってる余裕はないのです。

ついでながら、JR北海道にとっても、北海道新幹線はリスク要因でして、とりあえず着工された新函館までの区間については、青函トンネル区間が貨物と共用の3線軌となることで、前後区間も含めて並行在来線として切り離しできる区間が存在しないため、経営上のメリットは薄いのですが、地元の期待を前に事業を引き受けるしか選択肢がない状況です。加えて青函トンネルの維持管理費問題という、JR北海道にとってはきつい負担が待ち受けており、旅客輸送だけで比較すると青函航路時代を下回る実績しかない津軽海峡線のてこ入れに舵を切らざるを得ない事情があります。正式発表はされておりませんが、江差線末端区間の木古内~江差間の廃止は噂されており、あるいはDMVの導入線区となる可能性もありそうです。一方で車体傾斜装置と制御付振り子の併用で140km/h営業運転を目指す新型特急車で函館~札幌間2時間台という意欲的な目標を掲げておりますが、都市計画の検討段階で新幹線駅予定地と目されていた土地にタワービルを建てたことと相まって、新幹線の札幌延長はまず不可能とJR北自身は考えているのでしょう。

というわけで、民営化のトップランナーと目されるJR東と、存亡の危機感漂う殿のJR北が共に民間らしさを見せる一方、他社の現状はいろいろ問題ありですね。

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Comments

札幌駅は1・2番線ホームを新幹線に転用、苗穂方面に引き上げ線を設けるということで対応するという計画だと思いますけど。

Posted by: crofts | Monday, July 30, 2007 at 10:51 PM

コメントありがとうございます。

高層タワービル建設計画が発表されたときに、地元から「新幹線駅用地と競合しないか」という声が出たのは事実でして、事後的に現況に整合的な計画に書き換えられたからといって、JR北と地元との同床異夢的なすれ違いの事実は消せないですよね。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, July 31, 2007 at 06:28 PM

 車体傾斜装置は、キハ200とモハ731系の併結走行をカーブが多い札幌・小樽間で実現させるために開発されたものですよ。路盤が悪いところを走るキハ261系で使ったのはその後です。

 それと、整備新幹線が動き出した時に最も熱心に動いていたのは(当時の)運輸省の役人だったと聞いてます。色々誤算があって、現在は政治家主導になったようですが。

 JRタワーを推進した坂本相談役(当時社長)は、ばりばりの新幹線推進派ですよ。そういう人が、JRタワーの計画時点で新幹線を織り込まないはずが…。

Posted by: とをりすがり | Tuesday, August 28, 2007 at 06:58 AM

コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、車体傾斜システムは731系とキハ201系で初採用されたものでした。ご指摘感謝いたします。

ただし線路に負担をかけない速度向上策であって、JR北海道が初採用したものであることに変わりはないですし、記事の論旨には影響ないですよね。

整備新幹線に関しましては、別項にコメントしましたのでご参照ください。

http://btrainj.cocolog-nifty.com/hasirundesu/2007/08/post_c713.html

それからタワー問題ですが、計画に対して地元で意外感を持たれたという事実が当時の報道に見られるという話をしているのであって、当時の経営者がどういう絵図を描いていたかという話ではないということは申し上げておきます。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, August 28, 2007 at 06:58 PM

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