鉄道書評、自動改札のひみつ
最近更新が滞っておりますが、書評なんぞで新境地を拓いてみますか。
というわけで、まずは自動改札のひみつです。今や首都圏でも当たり前になった自動改札ですが、実は民営化直後のJR東日本による駅業務の近代化、機械化の取組みがきっかけで普及に弾みがついたものです。既に関西地区では1970年の大阪万博で試験導入された後、主に私鉄と地下鉄で広まっていたのですが、当時の技術では首都圏のラッシュへの対応に難点があったために広まらず、旧国鉄の武蔵野線や、営団地下鉄、東急電鉄などで部分的に導入されたに留まり、磁気券比率が低いために省力化効果はほとんどなかったようです。
JR東日本では1990年の山手線での導入を皮切りに、首都圏エリアで急速に普及させたんですが、ラッシュ対策とともに、関西のシステムの単純な移植ではなく、旅客サービスの向上も含めたコンセプトが模索されました。その一つがSFカードのIOカードであり、ICカード乗車券として発展型のSuicaであるわけです。
あと意外だったのは、自動改札は省力化システムではあるけれど、例えば小児その他の割引運賃の適用旅客かどうかや、定期券の持参人と名義人が同一かどうかなどは判定できないわけで、基本的に人による監視を前提としており、不具合によるドア閉鎖のリセットを人が行うわけですが、これが頻発すると省力化効果を削いでしまうわけです。ゆえに当初入場記録を書き込むフェアライドシステムが導入されなかったのも、チェックを厳格化して省力化効果が失われることについての見極めがつかなかったんですね。厳格化には自ずと限界があるわけです。
またハンドラーと称する磁気券を読み書きするメカが、高度なメンテナンスを要するため、ICカード乗車券の導入は即メンテナンスコストの圧縮につながりますし、磁気券が減れば券売機の台数も減らせるので、省力化の波及効果は大きいですし、駅ナカビジネスの店舗スペースを生み出せるなどのメリットがあるのですが、私鉄とバスのPASMO導入に関しては、その辺のメリットが十分認識されていなかったようです。よく言われる「SuicaとPASMOが共通利用できることが周知されていなかった」点ですが、後付けの言い訳でしょう。共通利用に関しても報道などでかなり広報されてましたし、「Suicaで私鉄・バスに乗れる」という広告も流れていたのですから、殺到した購入者の多くは、承知の上での行動と考えられます。むしろマーケティング的にはSuica所持者にまで買わせることができたのですから大成功だったわけです。カードの在庫切れは、一気に普及させることで利用度が上がる電子マネー機能を宝の持ち腐れにしかねず、事実後発のnanacoが7-11の加盟店1万店を背景に利用度トップに躍り出たことからも、PASMOの躓きは交通カード陣営には痛い失点です。
それとSuicaとPASMO連絡運輸あれこれで取り上げたのですが、PASMO導入にあたっての乗継割引など、乗客側に分かりやすいメリットを訴求することができれば、更に普及させることも可能だったでしょうけど、全て後の祭りです。設備近代化でPFIで民間とコラボレートしたロンドン地下鉄が3月にICカード乗車券普及を狙って初乗り運賃を4£(直近の外為相場で1,000円相当)に値上げして、ICカード利用の優位性を演出してますが、私鉄中心のPASMOでそのような戦略性が発揮されないのは残念です。一応都営バスでは1回目の乗車から90分以内に再度都営バスに乗車した場合に100円の割引運賃を適用する"90分ルール"を採用してますが、公営交通の方がよほど戦略的ですね。
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Comments
参考
名古屋市営バスと名古屋市営地下鉄のあいだではバスが関係するとき
90分以内で支払いがすべてSFカードのとき一回だけ80円値引きです。
できるかぎり正確な表現にしました。
しかしながら完全とは保証できません。
そのことは御了承くださいませ。
Posted by: とまと | Tuesday, July 24, 2007 10:26 AM
コメントありがとうございます。
地下鉄とバスの乗継割引は、名古屋市以外でも、大阪市、仙台市、札幌市などで実績がありますが、都営バスのそれは、バス同士で、PASMO利用の場合に限っての割引という点に特長があります。使い方次第で乗継割引にも往復割引にも使えるのですが、おそらく3/18のPASMOスタート時にバス事業者で唯一全営業車が対応したことで、システム導入費用の早期回収に狙いがあるものと思われます。
いずれにしても、このような発想が私企業である私鉄ではなく、公営交通の方から出てくるというのが、何とも頭痛いところです。
Posted by: 走ルンです | Tuesday, July 24, 2007 07:45 PM