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Sunday, July 01, 2007

越美北線と高千穂鉄道の間

日本の原風景を代表する中山間地の2つの鉄道で明暗を分けたニュースです。

JR越美北線が全線開通・3年ぶり
宮崎県の第3セクター高千穂鉄道、全線廃止へ
越美北線は2004年7月の越前豪雨で被災、高千穂鉄道は2005年9月の台風14号による被害です。路線立地の似た両線の明暗を分けたのは、特定地方交通線廃止に揺れた国鉄末期、国鉄に残ってJRへ移行した線区と第三セクター鉄道に転換された線区の明暗という整理は可能です。鉄道事業はスケールメリットがものをいうのは確かです。

しかし決定的に異なるのは、やはり行政の対応でしょうか。過疎化の進む越美北線沿線ですが、その中で沿線の大野市が、以前から住民の定期券購入者に補助金を支給してきたことが効いているのではないかと思います。これもそもそもは、かつて大野市へ達していた京福電気鉄道(現えちぜん鉄道)越前本線の勝山―大野間廃止の苦い経験からきているものです。

大野市はかつて県都福井市へ2本の鉄道が通じていたわけで、地方都市としては破格の好条件でした。私鉄である京福の方が、運転頻度も高く、利便性に勝っていたのが、沿線の過疎化とモータリゼーションとともに経営が苦しくなり、度重なる運賃改定で高くなる一方、国鉄時代の全国一律運賃制度のもと、低廉な運賃が維持された越美北線に、沿線利用者が流れるようになります。結局京福は、生き残りのために勝山から先の区間を廃止して、残る区間の運行に経営資源を集中させる選択をします。私企業としては当然の選択です。

これによって越美北線が唯一の鉄道となった大野市では、特定地方交通線問題で結果的に国鉄に残った越美北線の廃止問題に危機感を持つようになります。で、単なる陳情では廃止は阻止できないという判断があったのでしょう。前記の定期券購入補助を行って、利用者を補助する形で支えていきました。そのことがあったからこそ、越美北線の復旧費用40億円の一部を県が負担することに道がひらけたのでしょう。実際被災当初は県は負担を嫌ってJR単独復旧に言及しておりましたが、結果的に一部負担することになりました。

その間に県レベルでもいろいろありまして、1992年に京福電気鉄道が福井支社管内の鉄道線全廃を打ち出したのに対し、97年に県と沿線市町村で対策協議会を発足させ、行政支援を含む活性化の模索があ始まります。このとき既に京福の廃止表明から5年経過しており、当時の行政の危機感の希薄さが読み取れます。と同時に、需給調整規制撤廃を盛り込んだ改正鉄道事業法の施行で、廃止に際して地元との協議で不調でも1年後に廃止できるいわゆる見切り発車条項が盛り込まれたことで、自治体側が対応せざるを得なくなったというのが本当のところでしょう。

京福も見切り発車に踏み込まず、地元との協議を続けたわけですが、これには整備新幹線の北陸新幹線計画が絡む福井駅付近の連続立体化事業事業をめぐる問題がさらに絡んできたものと思われます。JR北陸本線の高架化にあわせて、京福も高架で福井駅へ乗り入れる形で福井市で都市計画決定されていたこで、路線の存廃が都市計画を不確定にしてしまうという珍しい現象が起きたんですね。またいつになるかわからないけれど、新幹線が福井へくれば、フィーダー輸送で京福の鉄道線が息を吹き返す可能性もあるだけに、特に自治体側が粘ったのでしょう。けれど事態は意外な展開となります。

2000年12月17日に越前本線志比境―東古市間で列車正面衝突、さらに2001年6月24日に保田―発坂間で再度の列車正面衝突事故と、半時に2回の重大事故で全面運休に追い込まれ、復旧のめどがたたない中で、2002年に第三セクターのえちぜん鉄道を発足させて、翌年2月に京福から鉄道資産を譲り受け、同年8月に三国芦原線。10月に越前本線改め永平寺勝山線が営業運転を始めます。福井県は地域として公共交通の危機に直面し、それとともに議論も活発化、福井駅高架化に対しても、既に名鉄から岐阜市内線の中古車を導入してLRT化を指向する福井鉄道との直結を踏まえた高架駅乗り入れ中止へと舵を切ることとなります。

えちぜん鉄道、一部LRT化・福井県が計画変更へ
かくして福井では、公共交通の廃止議論が地域の危機感を強め、鉄道の存続に行政が大きくコミットすることとなりました。ただし越美北線は一部運休の影響もあるでしょうけど、徐々に利用者を減らしている現実があるわけで、とりあえずの復旧、存続ではあります。

高千穂鉄道については、まずは行政が全く腰が引けている状況ですから、存続はそもそも無理筋ではありました。それでもとりあえず観光鉄道としての復旧をめざし、神話高千穂トロッコ鉄道という新会社を発足させ、寄付を募ってきたわけですが、寄付金は予定額を大きく下回り、新会社への資産継承のために休止扱いを続けてきた高千穂鉄道がいつまでも会社清算ができないということで、鉄道資産は新会社に継承されることなく廃止されたわけです。これでほぼ復活の可能性は絶たれました。

善意の寄付による鉄道存続といえば、関東の銚子電鉄の事例が直近で話題となりましたが、首都圏に立地し、関連事業のぬれ煎餅のネット直販サイトがアクセス急増で急遽受付中止となるなどが話題となって、メディアへ露出したことが大きかったですね。こういったことがなければ、善意の寄付だけで必要な資金を集めようというのは、自ずと限界があります。福井でも決して当初から行政は積極的だったわけではなく、地域の存亡にかかわる事態から危機感が生まれ、行政や住民に共有された結果でもあります。悲しいかな目に見えるシンボリックな出来事にしか人々は反応しないわけです。

関連記事:

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Comments

こんにちは。

いつもありがとうございます。

ところで岐阜市ですが
富山市や青森市のような
市街地再生の手続きの適用になったそうです。
とまとはとなりの市居住勤務場所となりの県ですが
地方自治体としての岐阜市における
中央政府に対する権利の行使や岐阜市民に対する義務の履行に
過去の経緯から信義に反し誠実でないと感じました。

なんで地方自治体の能力にこれほど差ができてしまうのでしょうか。
個別事情をはじめ環境の差もありますが一人の有権者として
地方自治体を監視したいと思います。

これからもよろしくお願いします。

では、失礼いたします。

とまと

Posted by: とまと | Monday, July 02, 2007 at 12:56 PM

新幹線とえちぜん鉄道の重層高架を避け、JR在来線の複線のうち1線をえちぜん鉄道へ切り替える(電源方式が異なるので…)ということで、列車本数の面から三国港線のLRT化で方向性を固めたみたいです。

代行バス専門のJRバス営業所まで出来た上に平行バスも30分~1時間間隔で走る越美北線と運休時の代行バスもまともに運行されなかった(不通から数ヶ月後朝晩に2往復設定されただけ)の高千穂鉄道では需要が全く異なります。
いずれも激甚災害で公共事業の財源も確保しやすかったので、公共事業費を使った橋梁の復旧は比較的簡単なはずですけどね。

高千穂鉄道は一部区間の廃止の正式実施が9月で、他の区間は休止のままになります。

Posted by: あんぱん | Monday, July 02, 2007 at 02:08 PM

コメントありがとうございます。

>とまとさん
岐阜市はつまるところ、歴史に育まれた伝統や文化を捨てて名古屋市のベッドタウンになる選択をしたと考えた方がいいのかもしれません。本線や各務原線では迂回ルートとなる名鉄は、実質的に撤退したのと一緒で、JRと岐阜バスのモノカルチャータウンになったのだと思うしかなさそうです。

>あんぱんさん
確かに沿線人口の違いがありますし、潜在的な需要に差はあると思いますが、越美北線の場合、大野市の定期券購入補助の影響で定期客が嵩上げされている可能性がありますので、顕在化した需要の数字だけでは判断できない部分があります。

また高千穂鉄道の場合、バス部門を持たないわけですから、チャーター料金が発生する代替バスの運行自体困難ですし、並行する国道が集落から外れていて、鉄道ルートをトレースする集落を縫う生活道路は大型車の通行自体が困難だったという事情もあります。代替バスの運行事情だけでの判断はできません。越美北線の利用実態そのものは、決して将来を補償されたレベルには達していないのが現実です。

Posted by: 走ルンです | Monday, July 02, 2007 at 09:20 PM

管理人様をはじめ皆様

こんばんは。

いつもありがとうございます。

地域交通再生法が弐千七年拾月壱日施行になるそうですが

http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/01/010831_.html

地域交通再生に役立つのかわかりません。

皆様のお考えをお聞かせいただけると幸いです。

では、失礼いたします。

Posted by: とまと | Wednesday, September 19, 2007 at 11:31 PM

コメントありがとうございます。

地域交通再生のために補助金をつけるというのは、地方自治の原則に反します。この程度のことは地方単独事業でやるべきです。国の補助は鉄道の保安装置整備や老朽設備更新など、資本の補強となる分野に限定すべきでしょう。

地域交通に関しては、越美北線の例のように、地域住民への定期券購入補助などが有効ですが、この分野で国がやることがあるとすれば、持参人式定期や定期券期間設定の自由化などで、地域の実情に即した営業政策がとれるようにするとか、線路、電路、車両などの動産に掛る固定資産税(市町村民税)の裁量的減免制度などの側面支援に留め、自治体の権限を強化するといったところでしょうか。いずれも国の財政資金に依存しないものです。

Posted by: 走ルンです | Thursday, September 20, 2007 at 05:47 PM

貴重なご意見ありがとうございます。

取り急ぎお礼まで。

Posted by: とまと | Friday, September 21, 2007 at 12:46 PM

いつもありがとうございます。
岐阜駅前のその後です。
http://www.chukei-news.co.jp/news/200710/03/articles_4179.php
ご参考まで。

Posted by: とまと | Tuesday, October 09, 2007 at 06:40 PM

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