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Tuesday, August 14, 2007

鉄道書評、線路にバスを走らせろ

夏休みシーズンで、鉄道関連ブログにも訪問記や旅行記が多数アップされている中で、当ブログ管理人はPC熱と闘いながら(笑)、書斎派鉄の道をまい進しております(苦笑)。

線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記(朝日新書 56) (朝日新書 56)
国鉄末期からの地方交通線転換によって、多くの営業路線を失い、事業規模を縮小した北海道の鉄道ですが、それでも残った路線の状況は厳しく、営業キロ2,500km中6割はローカル線という状況です。当然存廃が問われる路線も多く、JR北海道発足後にも、池北線の三セク転換と深名線のバス転換が実施されました。赤字路線の分離は、それ自身は経営面で必要なことには違いないのですが、同時に事業規模の縮小を余儀なくされるわけですから、JR北海道にとっては痛し痒しの部分です。

また90年代の金融危機のときに、北海道拓殖銀行が突然の経営破たんに見舞われたように、北海道では地場産業の衰退に直面している実情もあり、鉄道事業の撤退は、地域の衰退に拍車をかけることにもなります。また元々鉄道と共に開拓が進んだ北海道では、鉄道事業そのものもが産業集積として地域雇用を支えていた現実もあります。先日20年越しで和解、決着した旧国鉄職員のJR各社への採用を巡る労使対立も、元をただせば北海道の鉄道事業縮小に伴なう余剰人員の北海道以外の各社への受け入れを巡って、人選に所属労組による差別があったかどうかが争われたものです。

それやこれやで問題を抱えるJR北海道ですが、同時にリゾート列車や高速振り子列車などなど、実に多くの技術開発を行って、鉄道の活性化に取り組んでいるのは、あとがない崖っぷちゆえでしょうけど、ある意味地域分割のプラス面とも評価できます。最果ての大地で鉄路を維持することの意義を考えさせます。

以前、北海道旅行で、日高から襟裳岬を通って十勝へ抜けるルートを取ったときに、札幌からの鉄路乗継は飽きそうだから(笑)、道南バスの直通高速バスで浦河へ向かったのですが、浦河ターミナルで降りて最寄の東町駅へ行って驚いたのは、列車の少なさでした。襟裳岬方面へはどのみち様似でバスに乗り継ぐわけですが、並行する国道のJRバスのバス停を見ると、ほぼ1時間に1本のバスが走っているのですが、「学休日運休」の注意書きがあります。つまりは事実上の通学バスと化しているのですが、そうすると列車は何のために走っているのだろうかと疑問が出てきました。そう、線路がある以上、列車を走らせるしかないのです。

一応襟裳岬へ向かう観光周遊ルートには組み込まれており、様似から襟裳岬方面へのバスは。列車に接続をとっているわけですから、両者が棲み分けているわけです。しかし同じJR北海道同士で、両者の連携がないのは、ただでさえ少ない旅客を分けあう分、収支面では不利になります。北海道には鉄路と並行する整備された道路という似たロケーションのところは多数あります。DMVはそんな北海道では割と自然な発想の産物なのかもしれません。

そういった背景で、DMV開発に着手したわけですが、歴史を紐解けば、同様の発想で何度もトライされ、死屍累々の失敗を積み重ねてきたキワモノでもあるわけです。それを幼稚園の送迎用園児バスを見て「そのまま線路に乗せられそうだ」と発想するところが見事です。しかも軽量で線路を傷めないし、GPSなどの位置情報システムを利用すれば軌道回路を用いた閉そく信号も省略できるとか、行き違いも片方が線路を外れればよいとか、必要に応じて線路から外れた集落などへ運行できるとか、万が一の災害のときにも、線路と道路の復旧している部分を自在に行き来して運行を確保できるなどなど、発想が広がります。そう、DMVは最果てのLRTと考えれば理解が深まりますね。

基本的に引き算による技術革新ということです。鉄道は「金を失う道」といわれるように、線路を設置し維持するのに多額の費用がかかるわけで、需要が見込めないところで成立させるのは難しいわけですが、容赦のない過疎化の進行で乗客が減り続ける最果ての鉄路を残すには、現状に何かを付け足すのではなく、要らないものを削ぎ落として本体を維持するという発想なんですね。JR西日本の富山港線が富山ライトレールとして再生されたのに似ています。整備新幹線事業の着手に関連した富山市の都市計画で富山駅周辺の高架化事業が行われるときに、ローカル線である富山港線を新しい高架駅へ乗り入れさせるには多額に費用が発生するわけですが、アプローチ部分を都市計画道路上の併用軌道とすることで、ローカル線を都市交通に取り込んだわけです。足し算ではなく引き算で成功した事例ですね。そう、ヘビーレールから余分なものを割り引いてライトレールにするのであって、例えば元々低規格で放置されていた東急世田谷線が、軌道回路を用いた閉そく信号機と、連動する旧国鉄ATS-B相当の車内警報装置や列車無線を装備し、冷房付の新車に置き換え、ホーム嵩上げでバリアフリー化するなど、多額の費用をかけて列車定員を減少させ駅での客扱い時間を伸ばしスピードダウンした現実を見ると、技術革新の方向性が誤っていると言わざるを得ません。

大量輸送こそ鉄道の使命ですが、一方で過疎化の進捗で公共交通の維持が難しい地域も多数あり、居住放棄につながる限界集落が増えていると言われます。このままでは国土が荒れ果て、経済的パフォーマンスを低下させる要因にもなりかねない中で、公共交通を維持するソリューションの必要性は高いといいえます。その意味で身の丈にあったイノベーションとして、DMVの行く末を見ていきたいと思います。

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Comments

こちらでは、ご無沙汰しておりました、Kaz-Tです。

この本を見る前に、今月に入り北海道へ旅行しDMVに乗車体験をしてきました。

JR北海道の置かれている環境はまさに厳しく、DMVが走行している路線も「釧網本線」ということで本線とは名乗っていても実質上はローカル線であり、おそらく赤字路線ではあるかとは思うのですが、釧路と網走という道東の拠点都市を結ぶ路線だけに簡単に廃止というわけにもいかず、今後の路線維持のためにも、線路も道路も走れるDMVといった新しい考えの乗り物が必要になってくるのではと思われます。

記述されておりますように、実際に乗客を乗せて線路も道路も走行できるところまできて、モードチェンジも数十秒で行なえるところはDMVの開発の最大のツボであったかと思うのですが、いかんせん信号や駅設備など現状の設備がDMV走行にはまだ適していないという点で、この辺が今後の課題と思われます。

あと、実際に乗車した感想としまして、マイクロバスがベースであるため車内が窮屈でした。乗客定員12名ということを考えましても車体の大型化、少なくとも路線バスベースの車体でDMVができなければ本格的な実用化にはまだ遠いかと感じます。

とはいいましても、このDMVは現在9月まで運行が定員に達してキャンセル待ちの状況であることと、現地でも注目が高く道の駅が併設されている浜小清水駅で待機中でも訪れた人が記念撮影をしていたり、線路走行時に通過する観光地の原生花園でもDMV通過の際は多くの人が集まり撮影しているという状況、さらには自分が乗車した便でもとある地方の議員さんと思われるグループが視察を兼ねて乗車している状況があったことから、多くの注目を集めていることには違いなく、それだけにこれら残された課題を克服して本格的な実用化にこぎつけ、その先のローカル線の存続に向けた明るい未来があることに期待してみたいと思います。

Posted by: Kaz-T | Thursday, August 16, 2007 at 12:04 AM

お久しぶりです^_^/。コメントありがとうございます。貴ブログの乗車記を楽しく拝読させていただきました。

基本的にはDMVは新ジャンルの乗り物と考えた方が良いのでしょうけど、やはり定員の少なさは気になりますね。とはいえ通常の大型バスでは、そのまま線路に乗せるわけにはいかず、フレームから特注品となりますので、車両価格がハネ上がってしまうでしょう。赤字ローカル線向けの技術開発ですから、この辺は如何ともし難いところです。

本文では触れませんでしたけど、道路走行のために車検を取得するのに、道路運送法の重量制限をクリアする必要があって、それこそ100グラム単位で軽量化に取り組んだものの、現在の試作車段階ではとりあえず定員を減らして重量制限をクリアしたということですから、今後さらに軽量化に取り組んで、定員を増やすことは考えられているようです。せめて小型バスの法定定員29人に近づけることができれば、3重連で80人程度の定員となり、ぎりぎり通学時間帯のラッシュをこなせるようになる可能性はあります。

現在の釧網本線の運行は、貸切ツアー形式のもので、正規の営業運行ではないんですが、それでも実際に乗客を乗せて走らせないとわからないこともありますし、それ以上にDMVのデモンストレーション運行という性格が強いと思います。クリアすべき問題の中には、非貫通での連結運転のように鉄道事業法の車両規則に抵触する可能性のある部分もありますが、長いトンネルや橋梁がない線区限定などの形でクリアすることも考えられますので、一般への認知を広める意味合いは大きいわけですね。というわけで、議員さんも大いに乗って体験してほしいですし、その結果を正しく政策に反映させてほしいところです。

Posted by: 走ルンです | Thursday, August 16, 2007 at 04:24 PM

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