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September 2007

Monday, September 24, 2007

改革続行の試金石は道路財源

何か自民党の総裁選にメディアジャックされた状況が続いておりますが、こういうときにこっそりと動くアンシャンレジュームの既得権者たちの動きは要注意です。

(8/29)国交省概算要求、公共事業費21%増・道路は特定財源上回る
道路特定財源の見直し問題は、小泉政権でも言及され、既得権者の反対の大合唱にかき消された問題です。簡単におさらいすると、財政再建路線で公共事業費を削減した結果、余剰となる道路予算を、道路公団民営化関連で多大な債務を抱える本四公団の債務償還に充てた結果、2007年度以降に余剰となる道路予算の使途を巡る綱引きがありました。

それを受けて安倍政権初期に、政権の改革姿勢を示すという意図から、道路特定財源の見直しが議論された結果、道路建設に使う予算が増額された上で、なお余剰となる部分について一般財源化するということで政治決着されたのですが、地域間格差是正の掛け声をテコに一般財源化を完全に空洞化させてしまうことになります。かなり悪質な改革逆行です。新政権発足は25日の首相指名選挙と事後の衆参両院の協議の後ということになりますが、政治的空白は往々にして官僚の跳梁跋扈を許す結果となりますので、改めて安倍首相の政権投げ出しの責任は問われます。

というわけで、道路特定財源問題に対する新政権のスタンスを見れば、改革姿勢が本物かどうかは直ちにわかるということでもあります。と同時に抵抗の大きい改革でもあるので、新首相の政権運営能力を見る上でも重要です。安倍政権での道路特定財源見直しは、その意味で中途半端で、政権が変わればあっさりと空文化されてしまう類いのものだったということがいえます。

道路特定財源問題が示すものというのは、つまるところ国民が政府に何をして欲しいと望むかということに尽きる問題です。全国津々浦々に張り巡らされた道路網の既存ストックは、マクロには既に十分な水準にあると考えられます。もちろん個別地域で見たときには、未だ整備途上の部分があるでしょうけど、少なくとも近未来の人口減少が確定している現在、新たな道路整備の必要性自体は少ないといえます。

その一方で人口の高齢化は確実に進み、例えば年金問題などは、国民の将来不安から関心が高まったものであるわけです。高齢者が増えていって、現役世代が支えられるのか、その展望が見えないことが、国民を不安がらせ苛立たせているのであって、受給年齢に達する高齢者にとっても、その高齢者を支える現役世代にとっても重大問題になるわけです。

加えて医療制度改革の度に患者の自己負担が増額されたり、折角スタートした介護保険制度も給付制限を強めて現場を混乱させ、結果的にコムスンの不正受給事件に代表される不祥事の原因となっているわけです。端的に申し上げて、政府に道路やダムを造ってもらうか、老後不安の解消を担保してもらうかという選択を国民は迫られるということです。

ということで、財政再建の視点として、従来の政府予算の枠組みの中での歳出削減に留まる限り、仮に2011年のプライマリーバランスの黒字化を実現しても、利払い分だけ国債発行残高は増え続けるわけで、将来の増税は避けられない話です。というわけで、政府の仕事の領域ややり方にまで踏み込まない限り、本当の財政再建の道すじは見えてこないのです。この辺は小泉改革のインチキ性を未だ引きずったままの新政権では無理な相談だとは思いますが。早速こんなニュースが流れます。

(9/19)2011年度財政黒字化目標、公明が先送り求める――幹事長が言及
実効性に疑問のあるプライマリーバランス黒字化すら待って欲しいとは、かなり露骨なバラマキのおねだりです。

与党内では整備新幹線の新規着工で、並行在来線の切り離しや、JRの受益の範囲での使用料負担などの条件緩和が話し合われているようですが、こうなるともう何も申し上げようがないですね。先祖伝来の田畑を体を張って守っている高齢者に直接報いることに回すお金を新幹線に振り向けることの意味を少しは考えろ(怒)。

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Sunday, September 23, 2007

南北、大江戸、副都心

といえば最近建設されたor建設中の東京の地下鉄新線ですが、共通した特徴があります。私事で恐縮ですが、昨日北参道あたりに出掛けまして、丁度地下鉄副都心線の工事中だったのですが、低層の木造建築の多かった、どちらかといえば取り残された風情のあったこの地域で、10階建て程度のビルやマンションへの建て替えが進んでいることに感心いたしました。大江戸線現象は続いているということです。

3線に共通した特長として、いずれも都心地域の中の比較的低開発の地域を通過する路線というところに特徴が見られます。ただし事情はかなり変わってきているようで、南北線、大江戸線の建設期は地価下落局面で、人口の都心回帰のトレンドに乗ったものだったのに対し、副都心線は地価上昇局面での建設工事であることと、地理的には山手線の線路や神宮の森、雑司が谷墓苑など、開発の面的な広がりを阻害するバリアのあるエリアだけに、開発規模そのものは小規模なものにならざるを得ないようですが、逆に開発限界が見えていることが、住環境など希少性を演出することで、むしろ高く売れる要素と捉えることもできるので、地価上昇がブレーキにならない可能性は高そうです。

丁度今月19日に基準地価が発表されました。都道府県による調査であり、国交省調査の公示地価と調査地点を変えて補完性のある調査となっており、調査地点の多さきめ細かさから、傾向を見るのに好都合です。

基準地価、3大都市圏で2年連続上昇・商業地、16年ぶり上昇
傾向を見る意味で2つのグラフもご参照ください。
<図>基準地価の変動率(全用途)
<図>全国の地価
報道では、三大都市圏の地価上昇が強調された結果、あたかも地価が下げ止まったような印象を持たれた方が多いと思いますが、国全体では地価の下落傾向は変わらず、三大都市圏がやっとプラスに転じたというのが実際です。また三大都市圏の方が下落局面でも下落率が高く、それだけ不安定な値動きをしたとも見ることができます。また全国で見た商業地と住宅地の指数の推移で分かるとおり、商業地だけで見ると、77年当時の水準に達していないことがわかります。地方のシャッター通り現象が影響していると思われますが、巷間言われる二極化が、実態はかなり複雑ということです。

今後は人口減少によって住宅需要の低下は避けられないところで、実際、地価上昇を当て込んでわざと発売時期をずらして高値販売を目論んだマンション業者が多かったのですが、結果は対前年4割減という惨憺たる結果で、住宅に関しては既に天井をつけたと見るべきでしょう。

ただ面白いのは商業地の方でして、特に副都心線独自の現象として、沿線のデパートが一斉に改装その他の設備投資に走ったことで、しかもタカシマヤが100億円、伊勢丹160億円などをはじめ、MARUIの建て替え、小田急、京王の改装など、新宿地区を中心に百貨店のリニューアルが続き、池袋や渋谷にも飛び火しています。加えて渋谷の東急東横線渋谷駅地下化(旧東急文化会館跡地へ移転)後の跡地開発で東急百貨店も大増床が予定されているなど、商業ゾーンとしての存在感は高まる傾向が見えます。というわけで、副都心線は地価上昇トレンドに拘らず、再開発の起爆剤として機能しているといえます。

昨今の再開発ブームで、都心地域の東側で高層化が進み、残るは高輪のJR操車場跡地ぐらいという状況ですが、西地区は相対的に高層化が進んでおらず、未だ開発余地があるということがいえます。かくして東京都心が集積度を高めていけば、希少資源である都心の不動産価格は上昇するわけですが、東京都心の代替需要で押し上げられている郊外や名阪札福などの不動産ブームは、遠からず終焉するということは言えそうです。当然その他の地方の地価へ飛び火することはないと断言してよいでしょう。

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Saturday, September 15, 2007

福井さん、利上げですよ^_^;

あ、何か知らんけど、日本国の首相が辞めたらしいですね。でも瞬間株価が上がったというのはワロタ。首相の辞任は米住宅ローンの焦げ付きよりもマーケットへの影響が低いということで^_^;。ま、元々next Abeよりもnext Fukuiの方が外国の関心が高かったのですが。

というわけで、米サブプライムローン問題の余波が続く中で、影響が広範囲に及んでいるのは、このようなニュースからも窺い知れます。

英中銀、中堅銀に緊急融資・サブプライム問題が拡大
米国の住宅ローンの焦げ付きが、主に欧州銀行へ波及しているのは、ローン債権の証券化商品を多く保有していることによるものですが、ややこしいのは、元々債権証券化商品は、小口化して転売することでリスク分散をはかることで、リスク許容度を高めるわけですが、それが結果的にリスクの大元である米住宅ローンの審査をゆるくしてしまったことで、米住宅市場にバブルが発生したわけです。それがはじける原因が、多数のローン証券を保有する欧州銀が、ローンの焦げ付きで格付けの下がった証券化商品を転売しようとしたら、市場に買い手がいなかったということなんですね。で、欧州中銀(ECB)が緊急に資金供給に動いたことが、逆に憶測を呼ぶという不幸な連鎖となりました。欧州はともかく、日本では日銀が緊急オペで短期金利の上昇を防ぐ動きをした結果、短期金利は一時0.1%まで下落することになり、日本に限っていえば明らかな過剰反応だったのです。そもそもサブプライムローン証券化商品を邦銀はほとんと保有していなかったのですから。

というわけで、ECBとしては金融システムは守らなければならないけれど、一方でインフレ懸念は払拭されない中で、利下げではなく流動性の供給で事態を乗り切ろうとしたわけです。辛いのは貨幣の流動性を供給しても、欧州銀が保有する証券化商品の流動性が増すわけではない中でのオペレーションということで、間接的効果しか期待できないのですが、欧州に関しては基本的にこのスタンスに変更はないでしょう。

もちろん米国に関しては、住宅バブルの崩壊はおそらく実体経済への影響は避けられないでしょうから、対米輸出の減少などで日本にも何がしかの影響はあるでしょうけど、そもそも日本の対米輸出自体が、以前ほどシェアが大きくない現状です。今の世界は主に東欧をEUに取り込んだ欧州とBRICsなどの新興国の成長に依存しているので、米景気の後退の影響は限定的です。

むしろ1,500兆円といわれる家計の貯蓄残高が、行き場を失って彷徨っていることこそが、日本にとっての一番の問題なんです。国内の低金利に痺れを切らした一部の個人が、銀行や郵便局の窓口で勧められるままに、海外投信を購入した結果、国内で持て余された流動性が海外へ流出し、米住宅バブルや欧州のインフレ圧力の原因の一部となっているわけで、この観点から日本の取るべき道は、流動性が国内へ向かうようにすることです。ということは、端的に言えば個人が為替リスクを負うことがないように、国内に魅力的な投資先があることこそ重要です。となれば、今こそ利上げ局面ということになります。

大手メガバンクの不良債権問題が片付いたことで、金融危機が去ったかのように見られておりますが、地方に目を転じれば、不良債権処理の進まない多くの地銀や信金信組がまだまだあります。そして10月からは郵政民営化でゆうちょ銀行がスタートするわけで、地方金融機関の巨大なライバルが出現するわけです。

そもそも地銀等の不良債権処理が進まない理由ですが、現在の異常な低金利に原因があるといえば意外と受け取られるかもしれませんが、事実はそうなんです。元々産業立地に偏りのある日本では、地方銀行は営業エリアに必ずしも有力な融資先があるわけではないのですが、一方で大手企業を融資先に抱える都銀や、産業立地エリアの地銀などでは自行で集める預金だけでは融資資金が足りない状況ですから、銀行間で貸し借りをして融通していたのです。その結果有力融資先を持たない地方銀行でも、銀行間取引で利ざやを稼ぐことができたんですね。それが昨今の異常な低金利政策で不可能となり、例えば温泉旅館に貸し込んだ足利銀行のような悲劇を生み出したわけです。

邦銀に対しては、旧大蔵省銀行局の護送船団行政と日銀の窓口規制で、自らのリスクで融資先を選別するいわゆる信用創造能力が不足していると言われますが、かような低金利下で、利ざやが稼げないなかで、融資先の選別眼を養えというのは無理な相談なんです。今、地方の疲弊が明らかなように、公共事業などのバラマキでの解決は難しいですが、地方銀行が融資能力を身につけることで、地域が自律的に経済を回復させることこそが、今必要なことではないでしょうか。その結果、預金者に高い預金金利を約束できれば、地域のお金が地域に留まって、経済を活性化させることになるわけです。これこそ「民にできることは民に」ということですね。

というわけで、福井さんも意味深な発言はしております。

日銀総裁、サブプライム問題で「実体経済へ影響注視」
ま、利上げへの意欲は失っていないようですが、「実体経済を重視」というところで逃げをうっておりますね。とりあえず米住宅バブルははじけてバブル崩壊の戦犯にされることもなくなったし、丁度政治の空白もあるし(笑)、金利は今が上げ時ですぞ、福井さん!

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Sunday, September 02, 2007

三セク地獄が始まる?

市場が休みの土曜日、日経夕刊のトップ記事は、ホットなニュースというよりも、長期的視点から重要な記事が多い気がします。そんな記事から話題を拾います。

三セク累損100億円超は18社、前期末・地方や鉄道で処理遅れ
web版には掲載されておりませんが、本紙には累損100億円超の主な10社が表で掲載されております。そのうち鉄道関連は次のとおりです。
東葉高速鉄道(累損84,330百万円)
東京臨海高速鉄道(49,320百万円)
埼玉高速鉄道(累損43,510百万円)
北総鉄道(累損35,174百万円)
神戸新交通(累損21,076百万円)
首都圏新都市鉄道(累損20,560百万円)
このうち2007年度単年度黒字を計上しているのは、北総鉄道と神戸新交通のみで、他は累積損失を今も積み増しているということになります。

鉄道事業の場合、建設に10~20年という時間がかかる上に、事業費の規模も大きいので、当初は事業資金の借入金の金利支払で利益を食い潰してしまう傾向はあります。同時に資産の減価償却費も高額になるため、帳簿上は赤字になりやすいのですが、これは内部に現金が留保されるわけですから、必要ならば資本の毀損の穴埋めに使うことも可能なので、あえて考慮しないことにします。

全数調査ではないので、これで傾向を見るのは注意が必要ですが、見事に大都市圏の三セクが並んでいるのは、事業費の規模が大きくならざるを得ないがゆえということはいえます。鉄道事業にとって悩ましいのは、鉄道建設計画が明らかになった時点で、沿線地域で将来の値上がりを予想した動きが出てしまうことで、その結果事業用地の取得費用が増大してしまうということですね。東葉高速鉄道ではあからさまな用地買収費の吊り上げまで行われたのは周知のとおりです。土地取引をめぐるこの手の"錬金術"は、つまるところ土地政策の不在を反映したものです。日本の土地は流動性が低く、売り物が滅多に出ないから相場形成が歪み、相続、開発、公共事業のいずれかでしか動かない状況になっております。そこへつけ込む者が利得を得る構図で、そのツケ回しとして三セクの赤字という傾向ははっきり見て取れます。

驚くのは首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)が名を連ねている点でして、資本が厚いので破綻の心配はないとはいえ、本来自己資本比率が高く、無利子融資などさまざまな特典により有利子負債が少ない超優良企業であっても、単年度黒字を達成できず、累損を積み増しているという点です。投資規模がそれだけ大きかったということなんでしょうけど、東急田園都市線をモデルにしたはずの整備計画なのに、実際の開発利益は沿線の土地を保有するデベロッパーに落ちているという矛盾が見えてしまいます。手の込んだ補助金バラマキと評されても仕方ないところです。

とはいえ、将来の沿線開発である程度回復可能な大都市圏三セク鉄道はまだましなのかもしれません。事業規模がそこそこ大きく、多数の自治体が関与せざるを得ない整備新幹線の並行在来線受け皿三セク鉄道の場合には、沿線開発による増収はほぼ可能性ゼロであり、負担だけがのしかかる構図ですから、より深刻な問題だと思うんですが、論点が錯綜しますので、ここでは振れないことにします。

記事にもあるように、08年度決算から自治体財政が連結でチェックを受けることになるので、損失を三セクに飛ばして表面を繕うことができなくなります。いわゆる夕張シンドロームに備えた早期是正措置の一環です。しかしそうすると多額の負債を抱えた三セクの損失処理が問題になります。既に宮崎県のフェニックスリゾートが産業再生機構の案件として処理され転売されていますが、同様に損失を抱えた三セクは全国に多数あり、一方産業再生機構は既に解散している中で、同様のスキームで損失処理しようという話になるんですね。

地方版再生機構創設へ・政府方針、3セク処理も対象
というわけで、今後とも本来公的債務にカウントされるべき負債が白日のもとにさらされることになると思うんですが、同時に安易な三セク事業に対するブレーキの役割も期待したいところです。

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