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October 2007

Thursday, October 25, 2007

OECDの学力低下指摘は当たっていた

今回は鉄ネタ抜きです。賛否渦巻いた全国学力テストの結果が公表されましたが、応用力不足という、ある意味想定された結果が出ました。

応用問題に課題、地域間格差も・全国学力テスト
知識を問う問題と比較したときの応用力を問う問題の正答率が低いということですが、基本的に日本の教育課程では常に問題となっていたところです。

小学校で習う四則計算で、最初の躓きの石となるのは、おそらく掛け算の九九だと思いますが、掛け算と足し算が代替可能で、例えば

2×3=2+2+2
となるわけですね。a×3というのは、aを3回足すのと同じ意味であることは言うまでもないでしょう。ということは、実は掛け算を知らなくても答えに辿り着くことは可能ということでもあります。実際コンピュータでは掛け算は足し算で代替して演算処理されます。実際は2進数ですから、電気回路のon-offの組み合わせで単純化されて処理されるので、速く正確に処理されるわけですが、人間の脳ではそうはいきません。答えに辿り着くまでに時間がかかる上、処理の段階数が多い分、計算ミスの確率も高まるわけで、大きな数を扱うときには、実用上遅くて不正確なわけですから、やはり掛け算で処理した方が良いわけです。掛け算ができなければ、大きなお金の絡む取引には参加できないわけで、社会人としてのサバイバルゲームで端からハンディキャップ戦となるわけですね。この場合、掛け算は足し算に対して速く答えに近づく思考上のショートカットとなるわけです。

あと引き算も足し算に代替可能です。例えば398円の買い物で1万円札をレジ係に渡した場合、レジ係がまず2円を客に渡し、次に100円、500円、4,000円、5,000円と順に渡すという形でつり銭を払い出すという光景は、欧米ではよく見かけます。よく考えると、引き算になるはずのつり銭の払い出しを

398+2+500+4,000+5,000=10,000(円)
という足し算に置き換えているのがわかります。この場合、商品の売価である398円を数字に置き換えて処理を単純化しているもので、時間はかかりますが、計算ミスを防ぐ意味では優れています。またもの(商品)を数字と見なすわけですから、商品ではなく記号で置き換えれば、そのまま代数学へのアプローチがひらけます。ま、応用力というのはこんなものというお話なんですが。

日本では頭の良さをものを知っている程度で見がちなんですが、そうではないですよね。問題の発見と解決のためのソリューションを見い出すことが重要なんですが、実は日本人はこれが不得意なんですね。問題は与えられるもので、それを課題として、何とか努力してカイゼンしてクリアしていくものという感覚が強いので、ツボにはまれば強みを発揮する一方、グローバル化の進行する現在のような変化の時代には弱いということでしょうか。米ビッグ3を頂点とするヒエラルキー構造が明確だった自動車産業では、ついにGMを射程圏内に捉えたものの、マイクロソフトやグーグルのようなITやネット関連の新産業を生み出す力は、悲しいかな足りないのです。

なぜこうなるかといえば、知識偏重の教育課程に問題があるということです。数学の勉強で大事なのは、計算能力を磨くことではなく、上記のように、さまざまな問題を処理しやすい形に置き換えて、ショートカットを利用してできるだけ手間をかけずに答えを見い出すこと、あるいは答えが存在しないことを証明するということにほかならないのです。後者は、無駄な努力を回避して別のことに取り組めるという意味で、立派なソリューション(解決策)なのです。問われているのは、日本では古来「知恵」とか「生きる力」とか言われてきたような事がらだということですね。鍛えるには反復練習しかないんです。しかもできるだけ同じ問題を違う解法で解くということを続けることで、物事の関連性が見えてきて、思考回路が活性化され、問題解決能力を増すことになるんですが、そうやって子どもの習熟度を見ながら授業を進められる状況とは、教育現場の環境は程遠いのが現実です。

これって、いわゆるゆとり教育で改善を狙ったことがらだったはずなんですが、ゆとり教育自体が、何だか円周率を3とするとかいうばかばかしい議論に巻き込まれ、知識偏重の詰め込みの反動でひたすら教科書を薄く無内容にすることと、授業時間を削ることばかりが行われ、果ては学力低下の犯人扱いにされています。その一方で総合学習の時間はしっかり残されていて、子どもたちには遊ぶ時間を削らされる過酷な(笑)授業時間増がのしかかります。そして大人の思惑のためにテスト受けさせられてですからね。教育の受益者は子どもたちだという原点は忘れ去られてます。

実際には数学でさえも平方根の暗記のような、無意味な学習法が蔓延しておりまして、例えば小学生で習う分数式でも、「足し算引き算は通分して分子同士を足し引きする」という風に暗記するので、ちょっと込み入った問題文の問いに対しては、たちまち正答率が下がってしまうし、大学生になる頃には忘れてしまうということになります。これが一時話題になった「分数のできない大学生」の真実です。この伝でいえば、「小学生で習った愛国心を大学生になる頃には忘れる」のかい(爆笑)。

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Saturday, October 13, 2007

首都圏自動改札機ダウン

いやはや、大変な1日となりました。私自身は1日クルマで移動していて、刻々流れるラジオニュースで聴いていたのですが、こんなトラブルはいつか起こるんじゃないかと思っていただけに、現場に立ち会ってみたかったなどと不謹慎なこと考えてました^_^;。

まずは報道チェックです。

首都圏で自動改札トラブル・JRや私鉄、地下鉄も
首都圏で自動改札トラブル、徐々に復旧へ
首都圏の650駅で自動改札トラブル
時系列に沿って3本のニュースを比べると、当初トラブルの全体像が掴みきれていなかったようですが、首都圏650駅に及ぶ大規模なトラブルで、複数社の改札機を使う一部私鉄のトラブルの様態から、日本信号製の改札機のみでトラブルが起きていることなどが明らかとなりました。というわけで、日本信号が謝罪したわけです。
自動改札ダウン、製造元の日本信号が謝罪
セキュリティ確保のためのシャットダウンということですが、少し解説しますと、各駅の自動改札機を管理するコントローラーの起動時に、クレジット機能付カードの無効や紛失をサーバが配信するのですが、個人情報の塊りのデータですから、通信に不具合が発生したときには、コントローラー側がシャットダウンして、データの散逸を防ぐ仕組みだったのですが、それが徒となったようです。ただ、日本信号製の自動改札機に関しては、去年12月にもトラブルがあって、ソフトの手直しをしたということがありまして、今回もプログラムミスがあったらしい、つまりはシステムにバグがあったらしいということのようです。
自動改札ダウン、ソフトに問題か・日本信号
というわけで、今回も適切なバグfixが行われるものと思います。

ま、ただ日本信号だけに責任を被せるのはいかがなものかとも思います。ソフトのバグは付き物なんで、今回も個人情報保護のためのセキュリティシステムが律儀に働いた結果ですから、巨大システム固有のリスクという認識も必要ではないでしょうか。この点で真っ先に思い当たるのが2003年のみずほ銀行の決済システムトラブルや、2005年の東証のシステム障害などが思い出されます。当ブログではみずほ、東証、JR、巨大システムに潜むリスクという記事で取り上げております。また。SuicaとPASMOの共通化でトラフィックが増大したことが背景にあるわけで、システムへの追加投資など、鉄道事業者側も対応を迫られます。

で、JR東日本では、自動改札機を開放して、乗客を素通りさせることで、混乱回避をはかったんですが、1日800万人といわれる首都圏の鉄道利用者のボリュームを考えると、適切な処置であったということができます。ただし問題もあります。そう、入出場記録が対応して初めて運賃が決済されるシステムですから、出場や他線乗継時に処理が必要になり、精算所に長蛇の列となるわけです。

自動改札ダウン、帰宅の足も混乱・ICカード処理、窓口に長蛇の列
というわけで、首都圏の鉄道各社は、1日この問題に翻弄され続けたわけです。加えて日本信号製自動改札機に関しては、カードの無効情報を遮断することで仮復旧したわけで、その間に例えば紛失カードを取得した者による不正使用があった場合の処理などに問題を残しているわけです。特にオートチャージの場合、クレジットカードの請求書が届いて初めて発覚する種類の問題ですから、後処理はかなり面倒です。

そもそも鉄道事業者ごとに異なる運賃制度に、乗継割引や連絡運輸の有無など、複数事業者で錯綜する営業規則の根本をいじらずにシステムを導入したことが、結果的にシステムの負荷を高めているわけで、利害を超えた共通運賃制度などで、利用者に分かりやすく、かつシステム負荷も低減するというような知恵が働かなかったことが、問題の根本にあります。18m3扉の連接バスで前乗り後払いの運賃収受システムを踏襲するために、PASMO導入後も前扉だけで客扱いを行う神奈中Twin‐Linerを笑えないですね^_^;。

関連記事:

鉄道書評、自動改札のひみつ
PASMO品切れの深層
SuicaとPASMO連絡運輸あれこれ
SuicaとPASMO相互利用でどう変わる?

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Saturday, October 06, 2007

東京メトロ全株売却でどうなる?

久々の更新ですが、趣味的に重要なニュースが報じられました。

東京メトロ全株売却・政府が検討
総額1,000億円超規模の保有株式を一括売却することを検討しているもようで、JRが20年かかって本州会社の完全民営化を終えたものの、3島及び貨物会社に関しては上場すらめどが立たないのに比べ、スピーディな民営化とはいえます。東京の中心市街地に路線網を持つ強みということでしょう。

ただし売却されるのは、政府保有分の53%相当の株式ということで、東京都保有の47%相当分は含まれません。都営地下鉄を保有する東京都は、以前石原知事が旧営団時代に「民営化するなら都が買収して都営交通と併合する」とぶち上げたことがありますが、上場企業となれば、多額の累積債務を抱える都営交通との統合は遠のくであろうことは、記事にあるとおりです。

加えてオンライン版では省略されておりますが、紙面記事では東京の公共交通を特定の大株主が支配することを避けるために買収防衛策も検討するそうです。かつて東急が持分を保有していたこともありますが、運輸省の指導で返上させられ、国鉄と東京都を出資母体としてきた旧営団ですが、とりあえず4%買い増せば過半数を取れる東京都へのけん制の意味もありそうです。つまりは近未来において東京の地下鉄統合の可能性は遠のいたということです。

とはいえ東京都の47%という保有比率は、2/3超を必要とする株主総会の特別決議の拒否権を持つに等しいわけで、一般株主から見れば、都の経営への圧力を覚悟する必要があるわけで、株式購入にあたってのリスク要因となる可能性が高いという点に問題があります。というわけで、政府の売り急ぎが目立ちますが、実は問題山積の株式売却という点は指摘しておきます。

公的性格の強い大都市地下鉄では、公営交通が担い手となることを前提に制度設計されている面があり、地下鉄のトンネル躯体等へのインフラ補助金は補助率70%という高率になっているわけですが、旧営団及び民営化後の東京メトロのみは、特別法で例外扱いされてきたわけです。それでも半蔵門線などで民地下を通過する部分の用地買収(地上権設定、地下鉄が通過するので、基礎工事が支障するビル工事などの制限が発生する)で手間取るなど、地下鉄建設は簡単ではないのですが、南北、大江戸、副都心で指摘したように、沿線開発とリンクすることで、多額の公的補助も、税収増で回収可能ということもあって、大都市部での地下鉄建設熱は続く傾向があります。

さすがに地価が天井をつけたとみられる東京では、用地買収難がブレーキとなり、また物理的に開発余地が減ってきて、経済学で言う収益逓減法則が働きますから、追加的な建設は計画されておりませんし、メトロの民営化も、副都心線が最後の建設線となることを見越してスケジュール化されたとも言えるわけですが、一方で無理して地下鉄として整備した埼玉高速鉄道ゾンビのごとくしぶとい川崎市営地下鉄計画など、東京近郊では茨の道でもあります。その一方で名古屋の桜通線は緑の郊外へ伸びています。名古屋版つくばエクスプレスかも。しかし並行する名鉄本線の近距離客を激減させているように、やはり東京とは事情が違いますね。

また政府が売り急いでも、財政再建への貢献度は微々たるもので、単なる改革のポーズととられても仕方ありません。この春にPFI(民間資金活用事業)でICカード乗車券システムを含む設備更新を手がけたロンドン地下鉄が、劇的に近代化を進めたように、日本もそろそろ単純な民営化から卒業すべきなんですけどね。そういえば10/1から民営化された郵政事業関連でこんなニュースがあります。

日本郵政と日通、宅配便事業を統合・08年10月めど新会社
新聞やテレビでさまざまな解説がされてますが、要は宅配便事業の負け組である日通が、郵政に事業部門を身売りしたというのが本質です。赤字のゆうパック事業を黒字化するには規模の拡大しかないわけですが、企業物流に強み持つ日通が持て余していたペリカン便事業との統合は、ヤマトと佐川を追撃する意図ありありです。それでも民営化に伴なう経費削減のあおりで、過疎地の集配体制が弱体化している郵政の逆転の可能性は低いでしょう。果たして上場までたどり着けるか、おJALな失速へと向かうか^_^;。

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