不動産販売にブレーキ、私鉄大手中間決算
私鉄大手13社連結業績 | ||
2007年9月中間期実績、単位億円。カッコ内は前年同期比増減率%、阪急阪神HDは阪神の統合前実績を加味した実質ベース | ||
経常利益 | 不動産業の営業利益 | |
東急 | 459( 25) | 92(-24) |
阪急阪神HD | 399(-13) | 137(-18) |
近鉄 | 236( 17) | 77(3.3倍) |
京王 | 244( 1) | 45(-15) |
小田急 | 215( -0) | 63(-18) |
東武 | 182(-11) | 40( 57) |
名鉄 | 149( 4) | 149( 4) |
京急 | 130( 5) | 26( 21) |
京成 | 116( 4) | 18(-11) |
南海 | 97( 14) | 44( -0) |
京阪 | 74( -5) | 36( 22) |
相鉄 | 73( -2) | 58( 5) |
西鉄 | 68(-23) | 40( -8) |
久々の決算ネタです。
私鉄大手13社9月中間、6社が経常減益各社の状況はバラつきがありますが、6社が減益となり、不動産の販売減が業績に影響を与えていることは読み取れます。各社の数値のバラつきは、つまるところリストラの進捗度によるものといえます。
例えばリストラ進捗度の高いと目される東急、京王、京急などでは、新たな収益源を探る動きが見られる一方、リストラ渦中の近鉄では、むしろ不動産業営業利益の大幅増が見られ、明らかな周回遅れと思われます。また経営統合で注目される阪急阪神HDでは、今のところ明確な統合効果は見えません。主に不動産関連でのシナジー効果に期待があっただけに、不動産業の不振は今後の業績に陰を落とします。
一方で首都圏各社では、沿線人口の増加や大型商業施設の開業が寄与して、本業の鉄道事業が7社全て増加する一方、人口減少が始まっている関西各社は苦しい状況が続きます。
不動産関連でも、元々歴史が古く、取得時期の関連で簿価が極端に安い土地を大量に保有していた私鉄各社ですから、リストラの原資としてそれらの土地の含み益を利用することは可能だったわけですが、この点では首都圏各社の取組みが総じて早かった点は指摘しておきます。例えば東急ですが、2000年3月期決算を前に、田園都市線沿線の未開発地をまとめて売却し、肥大化したグループの再編を一気に行いました。その過程で東急建設を投資ファンドのフェニックスキャピタルへ売却したり、百貨店を子会社化し優良店の日本橋店を売却したり、未上場の優良子会社だったハンズ株(後に上場)を手放したりと、手傷を負いながら今日に至っているのです。
その一方で首都圏でも出遅れた東武と在阪5社では、課税特例措置として不動産の含み益を含み損の損益通算特例を利用して、バブル期に高値掴みした開発用不動産の含み損を償却したものの、逆にその後の再開発ブームで含み益最大化を実現し損なった恨みがあります。損切りは素早くやった方が良いということですね。
あと細かいことですが、損益通算特例の適用に関しても、そもそもは販売用不動産が対象なのですが、個別物件が特定できるわけではありませんので、転売の可能性がほぼゼロの鉄道用地を含めても普通はバレないのですが、例えば近鉄のように広域に路線網を持ち、ローカル線を保有するような事業者の場合、赤字を理由にローカル線に公的補助を得ようとするときに、鉄道資産の公的主体(自治体や線路保有3セク)への転売しようとするときに顕在化する可能性はあります。
えー、ここまで書くと察しの良い方でしたらピンと来ると思うんですが、近鉄が10/1に切り離して誕生した養老鉄道と伊賀鉄道のことなんです。赤字ローカル線を上下分離で存続させる手法というのは、例えば整備新幹線並行在来線の受け皿となった青い森鉄道(青森県)のように、線路を県の保有とすることで、固定資産税が免除されるのですが、この手のいわゆる公設民営型の上下分離とは逆に、養老鉄道、伊賀鉄道では、線路保有は近鉄のままで、新設の3セク鉄道が第二種事業者となる選択がされました。明らかに経済合理性の面で疑問となるのですが、資産売却を簿価で行う必要があるケースで、鉄道用地を損益通算に用いたことが発覚すれば、税務当局から課徴金を課される可能性もあるだけに、資産売却に踏み込めなかったというのは穿ちすぎでしょうか^_^;。
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