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Monday, December 17, 2007

並行在来線JR線として存続の長崎新幹線

長崎新幹線で動きが出たようです。

新幹線西九州ルート 在来線分離区間JR運行、沿線2県と合意 地元同意不要と解釈
九州新幹線西九州ルート 着工に向け加速 調整案を報告
うーん、これはなかなか牽強付会です。おさらいしますと、九州新幹線西九州ルート(通称長崎新幹線、以下この表記とする)の武雄温泉―諫早間の新規着工問題で、並行在来線としてJRからの切り離しが打診されていた肥前山口―諫早間で、沿線自治体3市町が反対し、佐賀県も沿線自治体の反対を押し切ってまで着工に同意できないという立場だったことは既に取り上げておりますが、しからば並行在来線区間をJR九州から切り離さないスキームをということなんでしょう。結果的に佐賀県と長崎県がJR九州から並行在来線区間の線路を買い取り、JR九州が引き続き運行することで、実質的に県が赤字補填をするということになります。

かなり強引な話ですが、反対の立場にある鹿島市と江北町が反対する理由を取り除くという発想です。そこまでして新幹線が欲しいかという話ですね。しかも当面はスーパー特急方式で在来線とスルーする予定ですから、時間短縮効果は30分程度と投資効率の悪いプロジェクトに拘泥することは滑稽です。とりあえず20年間にわたって7,000億円程度を負担するということですが、そこまで両県の財政が持つのかどうか。またJR九州自身も年間1億円程度の赤字負担を予定しているのですが、これでJR九州の株式上場の目はなくなったと見るべきでしょう。国鉄改革20年目にして改革の趣旨は大きく捻じ曲げられたといえます。

上下分離自体は昨今の流行りですが、政府全株式保有の特殊会社であるJR九州の場合、自治体へ収める固定資産税減免の特例を受けているので、県の線路保有による税負担軽減の意味はなく、あくまでも線路使用料の割引による実質的な補助金となるわけです。全業黒字の民間企業への補助金と考えると、いささか違和感のある対応ですし、それでも1億円の赤字負担を強いられるJR九州は、赤字額そのものは経営を揺るがすレベルではありませんが、上場企業であれば株主利益を損なったということで訴訟を覚悟する必要があります。その意味でこれを認めるようであれば、国交省の対応は改革逆行のそしりを免れません。

長崎新幹線自体は、既に2005年以来10億円の予算が計上されていたものの、並行在来線問題で予算の執行が滞っていたものですから、これで並行在来線問題が解決したと見なされて政治決着されることは間違いないところです。この辺は北陸新幹線の福井県への延伸や北海道新幹線の札幌延伸など、鉄道整備基金の枯渇で財源問題が決着していない新規着工区間とは違う話なので念のため。

しかし国からの補助金を天から降ってくるものとしか考えていないのでしょうけど、その補助金を得るために負担を受け入れるというのは、何ともアホらしい話です。整備新幹線問題でややこしいのは、国の補助金というのが、鉄道整備基金からの融資であって、開業後にJRから線路リース料を取って償還するわけですから、厳密には財政資金から補助されるわけではなく、空港特会や道路特会などと同じ特定財源でして、結局受益者である新幹線利用者の負担で作られるわけです。補助の割合なども厳密にはややこしい計算式があるんですが、簡単に言えば特定財源による国の負担分と同額を地方(県と市町村)が負担し、残りをJRが自己負担するという仕組みです。ですからJRも負担はあるわけで、この辺は誤解されているふしがありますが、JRにしても総事業費を圧縮できれば投資利回りが良くなるわけですから、一定のメリットはあるわけです。加えて非採算部門であるローカル輸送を切り離せるおまけまでつくわけで、というよりもむしろ、この方がJRにとってはおいしい話であります。

で、並行在来線は地元自治体が受け皿となって存続させるしかないわけですから、県も市町村も出資や赤字補填などの負担を強いられるわけで、新幹線の建設でも負担を求められ、開業後の並行在来線維持にも負担を求められるわけですから、結果的には負担は最後は全て地方に来る仕組みです。それでいて元々並行在来線の切り離しが求められるほどに大元の需要が弱い地域ですから、事業費に見合うリターンは期待薄です。経済学て言うところの収益逓減の法則に支配されるわけです。

というわけで、佐賀県と長崎県の皆さんにはバッドニュースというわけです。そうでなくても景況感が悪化しているときに、新たな負担を引き受けるというのは、とても正気の沙汰とは思えませんね。

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Comments

三島会社の場合、事業用固定資産は固定資産税の評価額を1/2に減免だったはず。地元の負担はもっと重い悪寒。

Posted by: Ikegami | Tuesday, December 18, 2007 at 09:40 PM

ご指摘感謝いたします。

ま、論旨としては固定資産税減免を狙ったいわゆる公設民営型の上下分離とはニュアンスが異なるという指摘です。どのみち整備新幹線の負担は、それぞれ別経路で地元にのしかかるわけですが。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, December 18, 2007 at 09:57 PM

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