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Sunday, December 02, 2007

海外輸送で国内も活性化するJR貨物

JR貨物がこのところ好調です。もちろんさまざまな補助を受けながらですが、いよいよ来年から京都議定書が実行段階となり、地球温暖化対策としてのC02削減義務が、メーカーの物流部門にも義務付けられる状況で、主に自動車、電機の両業界で鉄道輸送へのシフトが加速しており、2006年の実績で鉄道コンテナ利用が両業界で3年前の6割増という勢いです。それを象徴するニュースです。

JR貨物、トヨタ専用列車を増便・「愛知―岩手」1日2往復に
トヨタ ロングバス エクスプレスについては、過去にも取り上げておりますので、併せてご参照ください。列車の形態としては、コキに31ftコンテナ2個積みの20連という姿で、丁度スーパーレールカーゴの機関車牽引版のようなスタイルです。1列車でトラック40台分に相当しますから、2往復ということはトラック片道80台、往復で160台相当ということですから、CO2削減効果はかなりのものです。ただし元々は船便だったそうですから、効果を過大評価しないように注意が必要です。

一方で生産の海外シフトという悩ましい事態に対しては、レールのつながらない海外への継送が必要なことから、鉄道貨物の出る幕はなかったのですが、JR貨物は独自に上海ソウルへのルートを拓いております。上海は中国海運大手のPOSCOとの提携でコンテナ船を用い、ソウルへは博多港からのフェリーでJR規格の12ftコンテナを用いるもので、輸送のスタイルはかなり違いますが、電子部品や製品など、電機業界に重用されているようです。それぞれ12ftコンテナ換算で4,000個/年(上海)、600個/年(ソウル)まで成長し、国内貨物拠点駅だった福岡(タ)がコンテナ積み出しの拠点に変わったわけです。

で、非公式ながら、次の海外進出として、シベリア鉄道との提携も視野に入れているようです。というのも、12月にトヨタはサンクトペテルブルクで乗用車工場を稼動するのですが、船便で1月以上かかるところから、名古屋―盛岡間のトヨタ専用列車を日本海側へ延長して、船でウラジオストクへ運び、25日程度で結ぶルートを拓くということです。現時点ではJR貨物の小林社長の口頭での言及に留まり、トヨタが採用するには至っておりませんが、既に実証実験は終えております。さすがにJR規格の12ftコンテナにはならないでしょうが、いずれ名古屋発サンクトペテルブルク行きのコンテナが動き始めるかもしれません。

温暖化防止は待ったなしの状況ですし、原油価格の高騰で物流コストの上昇が避けられない中、鉄道貨物が価格競争力を持ちうる可能性はむしろ拡大したといえます。環境税の導入に慎重だった日本ですが、原油価格が上がって自動車の使用が手控えられる傾向が見え始めており、改めて環境税の効果が確認される状況です。既に省エネの進んだ日本では、努力目標だけでCO2削減が進むと考える方が無理があります。また、トヨタ専用列車でも明らかなように、鉄道貨物の輸送力の大きさにも注目すべきでしょう。結局一般財源化が後退する道路特定財源問題ですが、単線鉄道でも4車線道路に匹敵する輸送力を持たせることが可能なんで、温暖化防止と相まって、道路造るなら鉄道貨物に投資した方が良いことは自明ですね。とりあえず暫定税率の延長をやめて、改めで炭素税の形で課税することで、財源は生み出せますし。

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Comments

そのトヨタの日・ロ間CKD部品輸送で決定的な役割を果たすとみられているのが以下の新航路です。

■北東アジアフェリー
http://www17.ocn.ne.jp/~neanet/neanetpage20.htm

来春から韓国(ソクチョ)→新潟→ロシア(旧ザルビノ)のループで定曜日配船される日本海横断国際フェリー航路。
オンシャーシ輸送可能なRORO荷役の機動力は、冬季荒天で運航スケジュールが乱れやすい日本海で真価を発揮できます。
トヨタなど大手荷主の引き合い如何によっては、博多・上海など先発の国際ROROネットワークを凌駕するサービスとしてブレークするかもしれません。

Posted by: kuma | Tuesday, December 04, 2007 02:50 PM

コメントありがとうございます。また、有用な情報提供、感謝です。

なるほど、RORO荷役ならば、積み替えのタイムロスも少ないですし、海を渡る複合一貫輸送のシステムとしては合理的ですね。とするとソウルルートも、12ftコンテナ締結装置付のフラットシャーシでRORO荷役すれば可能ですね。

にしてもJR貨物がユーラシア大陸を東西に貫通するサービスを行うというのは痛快ですね^_^v。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, December 04, 2007 08:17 PM

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