リニアと長崎を結ぶ線
まずは余談ですが、昨日、東急新6000系が神武寺から長津田へ発送されました。走ルンですファミリー増殖中ですね^_^;。
で、本題ですが、本日のニュースはこれですね。
JR東海、リニア新幹線を自己負担で建設・総事業費5兆円取締役会で決定したということですから、企業としての機関決定はされたわけですが、前途多難ではあります。ちなみに株式市場の評価は辛口です。終値ベースで前日比-1000,000円、8.85%の下げという結果です。元々4月に松本社長が記者会見で発表してますので、既定方針どおりですが、今回企業組織として正式に取り組むこととなったわけです。
当ブログでは既にこの時点で取り上げておりまして、改めて付け加えることはないんですが、来年の株主総会が荒れそうですね^_^;。加えて新幹線については国の関与という面倒な問題もあります。というのも、70年代に施行された全国新幹線鉄道整備法によって、新幹線鉄道は国が基本計画を策定し、各種調査の後に整備計画を決定し、建設指示、工事実施計画作成の後に着工という風に手順が決まっております。これは新幹線の事業主体が国の機関である国鉄であることを暗黙の前提としていて、国(運輸省)が国鉄に指示する形で進めるもので、今さらな国鉄時代の遺物的制度です。
で、中央新幹線に関しては、現在基本計画線の段階で民営化を迎え、手続上は宙に浮いた形になっているのですが、JR東海がそれを引き継いで地形・地質調査の指示を受け、リニア新幹線として開業させようとしているわけです。今後需要予測、輸送計画、施設や車両の技術開発、建設費の試算などの指示を経て国(国土交通省)に諮り、整備計画として決定される必要があるのですが、この段階でおそらく国交省から、なぜリニアなのか、東京―名古屋間のみの事業なのかなど、かなり突っ込んだ検証がされるはずです。あるいはこの段階で例えば既存新幹線と直通可能な鉄軌道方式への変更などが指導される可能性もあります。今回JR東海が自己資金で行う事業ですが、国交省は法律手続は必要との立場を崩しておりません。
あと前述のとおり株主の同意はもちろん、資金調達も債券市場で起債により賄われると思いますので、果たして必要な資金が集まるのかどうかも不確定ですし、調達金利も高くなる可能性があります。そもそもルート選定からして不確定要素テンコ盛りで、特に東京側のターミナル計画でJR東日本との調整も全く手付かず状態で、現状ではJR東日本関係者からも「協力できない」という声が聞こえます。当然多数の旅客の乗降をさばく大規模施設となるわけですから、東京都との協議で都市計画に組み込んでもらう必要もありますし、そうなると東北縦貫線でも問題になっている都アセス条例に基づく手続も必要ですから、これらの課題をこなしながら事業を推進することはかなり困難です。
ま、JR東海もそんなことは百も承知でしょうけど、整備新幹線を巡る駆け引きの中で埋没することを嫌ったのではないかと思います。というのは、ここへ来て明らかに現在の整備新幹線建設スキームに綻びが見えてきたために、順番待ちしていては、いつまでたっても事業化できないと考えたのだと思います。それでJR東海単独事業として可能な計画を練ったということでしょう。
というのも、そもそも整備新幹線事業のうちの国の拠出分の原資となっている鉄道整備基金が、毎年度なし崩しで新規着工を重ねた結果、2007年度で枯渇することとなってしまったわけです。長野新幹線や東北新幹線盛岡―八戸間など、開業区間から発生するリース料で償還する前にこれですから、現状では財源がないことになります。もちろんリース料を裏づけに起債する手はありますが、基金の枯渇で資本がない状況での起債は、当然市場で足元を見られますから、不利な条件とならざるを得ず、国交省が言う「安定した財源」には程遠いものとなります。というわけで、道路財源の暫定税率も見直さずに、高速道路料金の夜間値下げのような無意味なバラマキが横行する中で、整備新幹線の新規着工は見送られました。その一方で長崎新幹線では強引な事業着手と相成りました。
前の記事でも触れましたが、長崎新幹線については2005年に既に予算計上されていたのですが、並行在来線沿線市町の反対で事業着手できず、予算執行が滞っていたわけですね。そこへ北海道新幹線札幌延伸と北陸新幹線敦賀延伸の新規着工の話が出てきて、執行できずに宙に浮いている予算を横取りされることを危惧した佐賀県やJR九州首脳の焦りが、今回の強引な赤字負担スキームへとつながったというのが真相のようです。つまりはバラマキ予算の取り合いの果ての話です。となればその延長線上に中央リニアの整備事業が現れるのはほとんど奇跡に近いわけで、このように読み解くと、JR東海にも焦りが見られるというわけで、長崎とリニアがつながりました^_^;。
ま、それでも上場企業であるJR東海に関しては、株価などで直接的に市場の評価が出てきますし、株主総会でブレーキがかかる可能性もあるわけですが、非上場のJR九州ではブレーキが効かない怖さがあります。また地方の格差問題にしても、新幹線、それも2,700億円かけて28分の時間短縮というコストパフォーマンス最悪のプロジェクトを推進することと、地元の有力企業を株式上場させることとどちらが経済的メリットが大きいか、冷静に考えてみましょう。ブレーキの利かない電車には乗りたくはないですよね。
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