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Saturday, January 19, 2008

地球温暖化と日本の勘違い

えー、日本は間違いなく先進国中ではGDP対比のエネルギー消費量が少ない省エネ先進国なんですが、その割には環境意識が低いのはなぜかという話をします。

先に種明かしをしますと、まず先進国で比較すれば低緯度に位置していて、特に削減が難しい冬の暖房のエネルギー消費が際立って少ないことは踏まえておきましょう。そして部門別には家庭と運輸の両部門のCO2排出量が少ない特徴があります。その一方でオイルショック以来産業部門の省エネが進み、CO2排出量を減らしている一方、オフィス、家庭、運輸の各部門で排出量を増やしている状況です。つまりは日本の省エネは、温暖な気候の比較優位条件と、欧米に比べて住宅が狭くエネルギー投入量が少なく済むこと、それに鉄道網の発達で、特に大都市圏の限界的な大量輸送がエネルギー効率を高めているわけで、言い換えると、ウサギ小屋に住んで通勤ラッシュに揉まれた結果の栄誉ということになります^_^;。

製造部門は省エネが進んだのですが、IT化でハイテク武装されたオフィスの電力消費量が爆発的に増加してますし、家電品の省エネが進んだ結果、ウサギ小屋でも多数の家電品が使えるようになったし、道路特定財源のおかげで道路整備が進む一方、燃費性能の高まったクルマは一方でベーシックカーからミドルクラスへ、あるいは重いミニバンやSUVへとシフトし、公共交通の恩恵がない地方では、いまやクルマは1人1台となり、そうなれば日常行動はクルマ中心となるので、買い物もパーキングを備えた郊外型SCへと向かい、中心街はシャッター通りと化すことになります。となると人口も郊外へ拡散し、その分電気ガス上下水道通信線などのライフライン整備も広域化して絶えずどこかで道路を掘り起こすということになり、地方財政は疲弊することになります。

その結果、京都議定書で日本が国際公約したCO2-6%(1990年比)の削減目標に対し、直近の2007年で+6.4%となっており、産業界からは「これ以上は無理、あとはほかで削ってくれ」の声が聞かれるのですが、世界の趨勢をリードするEUでは、域内限定ながら排出量の数値目標を定め、過不足を企業間で取引できるキャップアンドトレードの仕組みをつくり、先日のCOP13(バリ会議)でも国際的な数値目標の導入を主張しましたが、日米中印などの反対で流れました。

さて、日本の取るべき道はいかに。それ以前に京都議定書で定められた温暖化ガス削減量ですが、政治的妥協の産物として、森林のCO2吸収効果を算入して良いというルールがあります。これは実は科学的には異論があるところでして、森林は植物の光合成で確かにCO2を吸収するのですが、同時に生命活動の場でもあり、特に生命活動の活発な熱帯林や温帯域の自然林では、CO2排出量も無視できないレベルとなります。むしろ寒冷地のツンドラ(永久凍土)地帯の方が、光合成で固定された炭素が分解されずに地層に留まることから、吸収源としては重要なんですが、海洋や地層の吸収効果は測定が難しいですし、また温暖化が一定レベル進むと、永久凍土もバクテリア分解が進む可能性があり、そうなるとむしろ排出源となるし、海洋も海水温上昇で吸収効果を低下させる可能性があるなど、不確実性が高いので、あえてカウントしないというのが温暖化防止を巡る国際的コンセンサスのはずなんですが、森林については日本が強硬に主張したこともあり、吸収源として認められました。その結果森林の吸収量は-5.4%と算定されたわけで、結果的に実質の削減目標は-0.6%というのが、日本が京都で得た"成果"?だったわけです。うーむバーゼルIIに似ている。つまり直近の実績を踏まえれば-7%の削減が必要というわけですね。

ここまで書くと、もうほとんど結論は出たようなものですが、これ以上地方の道路整備を進めて居住人口を拡散させることは、温暖化防止の観点から問題ありということで、道路特定財源のあり方は根本的に変えるべきです。財源がある以上、それを使う誘因は常に働きますから、いつまでたっても「必要な道路」は増殖することになります。特に人口減少が始まり、社会保障負担は年を追って加重されると考える必要がありますから、インフラ整備は早く打ち止めにする必要ありということです。

あえて申し上げますが、それで「地方じゃ暮らせない」というならば、特に地方には高齢者が多いのですし、息子や娘を頼って都会暮らしすれば、人口の多い都市部で充実した介護サービスを受ける機会も得られますし、何より施設でなく在宅の介護は、結果的に社会保障負担を圧縮できます。かくして大都市に寄り添って省エネライフというのが、日本らしい取組みということになります。またそもそも大都市部ならばクルマも必需品ではありませんので、カーシェアリングなどで台数を制限するなどの方法も取りやすくなり、渋滞も起きにくくなり、運輸部門の省エネは進みます。

あともう一つですが、運輸部門でも旅客は鉄道利用のシェアが高いのですが、貨物のシェアが低い点は指摘しておきます。その意味では、運輸部門での追加的なCO2排出削減を考えるならば、整備新幹線やリニアなどよりも、貨物のモーダルシフトの方が重要であって、並行在来線問題を抱える整備新幹線問題も、貨物輸送インフラを毀損しないことを原則とすべきでしょう。その辺で一歩を踏み出さないと、得意なはずの環境問題で日本は世界の孤児になる可能性があります。ココロしてかかるべし。

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Comments

仰るように、人口減少の始まっている地方で人口拡散させるのは中心市街地の衰退をもたらすだけですから早く方針転換すべきです。
逆に、3大都市圏の過密化した市街地はもっと分散させるべきだと思います。渋滞はCO2を排出しますし、エアコン必須のヒートアイランド現象も然りです。都心部での道路と緑地の不足はかなりのCO2排出要因になっていると思う次第です。大都市は大都市で「省エネライフ」に課題がありますね。
あとあえて反論しますが、高齢者の都市移住はやはり土地への愛着などありますから難しいでしょうね。同様に人口拡散した地方の建て直しもむずかしい課題です。

Posted by: とおりすかり | Thursday, May 08, 2008 at 08:49 AM

高齢者の土地への愛着の実態ですが、子や孫が農業を継いでくれない、農機のローンが残っているから辞めるに辞められないといったところです。

しかも農地法の規制で農地の売買や貸借は市町村の農業委員会の承認が必要で、事実上他の農業者への譲渡しか途がありませんが、子や孫が継ぎたがらない農地を買ってくれる奇特な人はまず現れません。

かくして封建農奴ばりに自由の利かない境遇といえましょう。封建農奴の方が、強制的ではありますが後継者を心配しなくて済む分マシかも。

Posted by: 走ルンです | Thursday, May 08, 2008 at 08:37 PM

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