リニアに下げてふり向けば東日本
しばらく株価動向が気になって、更新をサボっておりました^_^;。ま、やっと落ち着いて、ふり返る余裕も出てまいりましたが、個人的には、今まで手が出せなかった値嵩株を仕込むことができて満足しております。早速株価は戻して数パーセントのキャピタルゲインということで、株はやめられません^_^;。
てなこと言うと石が飛んできそうですが、最近の株価報道はどうもパニックを煽っているだけにしか見えません。ま、おかげで安値で拾えたから個人的には良いんですが^_^;、報道する側が意味を理解しているのだろうかという疑問がわきます。そんな中でこんなニュースです。
(1/24)仏銀大手ソシエテが1兆円の損失・不正取引、1人で7600億円いわゆるサブプライム問題とは直接関係のない、銀行員個人の詐欺事件なんですが、その規模の大きさが目を引きます。当然、内部的に不正を見抜けなかった、あるいは当局も異常に気づかなかったなどの問題もあるんですが、むしろこれだけの損失を計上しながら、銀行がつぶれないことが驚きです。
サブプライム問題で連日さまざまな報道がされていて、特に米金融機関の巨額損失に驚かされますが、シティの2兆円超とかメリルの1兆円超などの損失を出しながら、日本の金融危機時に問題になった、銀行への公的資金注入の議論が聞こえないのはなぜかということを考えさせます。簡単に言ってしまえば、それだけの損失を出しても倒れないだけの資本の厚みがあるからなんですね。そしてそれゆえにバーゼル会議で決められた国際決済銀行(BIS)規制でも、銀行に対して自己資本比率規制を課しているわけです。
欧米銀は国際的な合従連衡の果てに自己資本の厚みを増していて、今回のサブプライムローン問題でも、リスクのある証券への投資ができた理由ですし、また厚い資本に対して十分なリターンを求められる立場でもあるからこそ、邦銀がほとんど手を出さなかったサブプライム関連の金融商品への投資へと向かわせたわけでもあります。つまるところ金融機関の利益の源泉はリスクテイクであるということを地でいっているだけの話です。逆にこの流れに乗れなかった邦銀の方が周回遅れなんですね。
で、実際に損失を確定させて危機を乗り切ろうとする動きが、米銀を中心に起きているわけですが、この課程でアブダビ投資庁やドバイ、シンガポール、ロシア、ノールウエーなどの政府系ファンド、いわゆる国富ファンド(SWF)の存在がクローズアップされました。昨年ハイリゲンダムサミットで懸念を共有されたはずのSWFに助けを求めるというあたりに、米銀のなりふり構わぬ姿勢が見えます。これは、金融機関にとって自己資本はとりもなおさず損失発生のときのバッファであるということが身にしみているからこそ、毀損した資本を早急に回復しようとするわけです。で、この辺に事業に対する覚悟のすごさがにじみ出ておりますね。
で、繰り返しになりますが、銀行にとって生命線ともいえる自己資本に関する国際ルールを、日本は邦銀の都合でたびたび捻じ曲げているのは、これまでも指摘してきたとおりですが、特にバーゼルIIで押し込んだ民間格付け機関による格付けを資産評価に反映させるルールは、国債などの債券保有の多い邦銀にとっては、自己資本を良く見せることができる、言葉を変えればお化粧を施せるルールということなんですが、それでも日本のメガバンクは、国際業務へなかなか復帰できないでいるわけで、当の銀行自身が、自らの実力をわきまえているということなのでしょう。にしてもいつまで膾を吹くつもりかい。
で、日本では、銀行に限らず、生保や年金基金などのいわゆる機関投資家まで同じことをしていて、ここ数年株式を売り越して債券を買い越すということをしてきた結果、日本の株価を大きく下げたわけですが、それを救ったのが、海外の機関投資家たちです。いわゆる外国人投資家と呼ばれる彼らは、低リターンの国内債券には目もくれず、国内株式を買い続けてくれたおかげで、日本の株価は下支えされてきたわけですが、そのために奇妙なことが起きてしまったのです。最近の株価トレンドをドルベースで見ると、ニューヨークと東京の株式相場のトレンドがほぼピッタリ一致するのです。彼等はあくまでもドル建てて相場を見ていて、ニューヨークで買えない銘柄(ほとんど全ての日本株が該当)を分散投資の一環で購入していただけということです。ですからサブプライム問題のような信用不安が発生すると、当然のように保有株式を持ち換えるわけで、サブプライム問題にほとんどコミットしていないはずの日本株が揺さぶられる構図となるわけです。
で、奇妙なというのは、マクロに見て、国内投資家が主に内外の債券を保有する一方、海外勢は内外の株式を保有し、特にニューヨークと東京の株価が同じトレンドで動く状況下では、株価が上がれば上がるほど、マクロで見たネットのキャピタルゲインが海外へ流出するわけで、実は東京の株価上昇は国富の喪失でもあるという悩ましい状況にあります。こう考えると、株価が戻ってメデタシという報道はノーテンキです。
といっても、個別銘柄でいえば、こういった国際金融情勢に無関係に上げ下げがあるわけで、基本的には株価は企業業績の先行きを反映したものですから、特に内需関連となる陸運、特に鉄道株はそうなんですが、ここのところ大きく下げている銘柄がありますね。言うまでもなくJR東海です。例のリニア自力整備発表以来下げ止まりません。150万円に届くかという最高値をつけたことがあり、昨年だけでも120万円超あった高値水準も、リニア発表以来下げが続き、100万円を割って、90万円前後で推移するJR東日本に迫られております。元々JR本州各社の株価水準は、各社の収益力を反映しておりましたから、リニア建設に対する投資家の不信任の表れですね。
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Comments
リスクのとり方の難しさを考える一例ですね。
外資はドライに動くため日系企業には安心して取引できないときがあるといいます。
昔ほど日本系金融機関がウエットではないにせよ
また、のんびりすぎるのもおっしゃるとおり臆病なのもよくないですが
みんなおなじではそれも危険ではないでしょうか。
最後に先生の御多幸をお祈りします。
とまと
Posted by: とまと | Saturday, January 26, 2008 03:13 PM
コメントありがとうございます。本題に入る前に、トラックバックスパムに関する業務連絡ですが、相互コミュニケーションの成り立たない一方的なトラックバックは迷惑です。発見次第即刻削除いたします。ただし事前承認制はとりませんので、トラックバックそのものは歓迎いたします。しかし対応が遅れて不適切なリンクが生きた状態になることがありますが、その場合はあくまでも閲覧される皆さんの自己責任の範囲の問題とさせていただきます。
外資がドライなのか、日系企業が変化に追随できていないのかは議論が分かれるかもしれません。しかし国内株式市場の価格上昇が国富の喪失になるマクロ経済政策というのは、どう考えても政策当局者の頭の悪さ以外の何者でもありません。国民にとって迷惑な話ですね。
Posted by: 走ルンです | Sunday, January 27, 2008 10:07 AM