東北縦貫線と公示地価の不況和音
東北縦貫線の工事日程が発表されました。
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について(PDF)5月に着工し2013年度完成予定ということで、今年6月開業予定の東京メトロ副都心線共々、首都圏の鉄道ネットワークは充実します。それと密接に関連する再開発ブームも、新たな局面が見えてきました。そんな中で発表された公示地価ですが、見てみましょう。
08年の公示地価、2年連続上昇・全国伸び率、1.7%に拡大違和感を持たれる方が多いと思うんですが、どう考えても、既に8月のサブプライムショックの影響で、明らかに地価は下落へとシフトして潮目が変わっているのですが、公示地価は2年連続上昇、かつ伸び率も高くなっているのです。いわゆる1物6価といわれる地価のフィクション性がかなり出た結果です。
国交省発表の公示地価と、都道府県発表の基準地価は、それぞれ毎年1/1(公示地価)と7/1(基準地価)時点の数値で、計測地点が異なるので、相互補完関係にあります。そしてこれらが、公共事業の用地買収費の基準となるわけです。それが実態を反映していないというのは、今に始まった話ではないんですが、特に都市部の公共事業における用地買収費の比率は高いわけですから、税で集めた資金が土地所有者へ配分される仕組みとして捉えると、実勢価格とのズレの意味は即富の配分を左右することになります。ぶっちゃけ富の東京一極集中が加速し、都内の土地の多くを所有する大企業を利することになります。
こんな観点から地価の推移を長期的に見ると、面白い傾向が見えます。
<図>地価はまだバブル前の水準グラフは1974年の全国平均の地価水準を100とする指数ですが、商業地に関しては、バブル期はおろか1974年水準にも達していないという事実です。言うまでもなく東京都心などの地価水準は高止まりしているわけですから、それだけ地方の商業地の価格が下がっているということでもあります。シャッター通りの実態の反映ですね。
つまりは一部のブランド地域以外では、土地の収益性の低下に合わせて地価も下落しているわけです。そして大都市でもサブプライムショックで、主に不動産私募ファンドや上場REITに入っていた外資が売りに転じたもので、株と同じ構図です。同じ大企業でも、トヨタ効果が期待された名古屋駅前などは、むしろオフィス空室率が高くなって、早や地価下落傾向が見えております。名古屋浮揚にはリニヤだがや。
冗談はさておきまして、土地の収益性が低下すれば地価が下がるのは株と同じで、つまるところ、一部を除いて日本の商業地の収益性がそれだけ下がってきたということでもあるわけです。今後人口減少とともに、この傾向は動かしがたいところです。
一方で住宅地は、商業地に比べれば基準年(1974年)の1.5倍強ですから、商業地ほどには下がっていないことになります。ま、それだけ大都市圏への人口集中が激しく、住宅地の地価を押し上げている側面はあろうかと思いますが、それ以上に、住宅地の場合は、特に日本のように持ち家が推奨される国では、国民の購買力を反映した水準になっているということはいえそうです。実はこの点に、日本経済の浮揚策が見えてきます。
日本の国民は、例えば20坪の土地いっぱいの建売で数千万円の省エネ住宅(ウサギ小屋とも言う^_^;)など相対的に高い住宅を購入しているのですが、その資金が住宅購入から開放されれば、他の分野の消費に回ることが期待できます。そして人口減少によって、将来需要される住宅は減りますから、既存の住宅ストックを活用することで、価格を押し下げることが可能になります。逆に購入する場合には、リセールバリューを意識せざるを得なくなるわけで、中古住宅に値段がついて、住宅ローンの担保割れなんてこともなくなります。住宅が実質資産となるわけで、この面でも消費マインドを高めます。その結果国内商業が活性化すれば、商業地の収益力が回復することになります。
結果的に日本のGDPが押し上げられます。先進国中最も個人消費が弱い日本ですが、ここを掘り起こすことができれば、年率数パーセントの経済成長も十分可能です。ま、そのためには年金や医療などの社会保障が充実して、安心して消費できる環境が必要なんですがね。
あと現状のサブプライムショックは、日本のバブル崩壊後の金融不安と同じように世界で信用収縮が起きているのですが、それによるアメリカの実体経済の減速は避けられないところです。そしてその影響は4月以降に来ると思われます。さらに欧州でもイギリスやスペインなどで土地バブルに崩壊の兆しが見えますので、欧州経済の変調も早ければ年内に始まるでしょう。それでも当面はBRICsなど新興国が牽引することで、急減速は避けられるでしょうが、影響は長期にわたると覚悟した方が良いですね。経済は時間差を以て波及するものです。いわば不況のカノン(輪唱)が始まるということか。
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