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Thursday, June 05, 2008

山手線ホームドア設置、安全を阻む混雑

JR東日本から、山手線29駅へのホームドア設置が発表されました。

山手線への可動式ホーム柵の導入について(PDF)
3月に発表された「グループ経営ビジョン2020-挑む-」について(PDF)の中で、「導入に取り組む」とされていた安全対策の具体化です。新聞報道でも日本経済新聞5/12付で記事があります。
山手線全駅にホーム柵、転落防止へ17年までに
混雑線区への導入ゆえ、円滑な工事や運行遅れなどの課題もあります。

とりあえず目黒、恵比寿両駅で先行導入するもので、2008年度からホーム構造改良工事を行い、可動柵の基礎を構築し、その後可動柵を設置し、2010年度から稼動させて3年間の検証期間を経て、13年から本格整備し、17年度までに終わらせる予定ということです。かなり慎重な姿勢ですね。

可動柵自体は既に地下鉄や私鉄の一部線区で導入されておりますが、後付した都営三田線や東京メトロ丸の内線などでは、駅停車時間が伸び気味で、ダイヤ維持に苦労があるようです。開業時からホームドアを採用した東京メトロ南北線も含め、客扱い時間は延びる傾向があるようです。

それゆえ、危険性を指摘されながらホームドアや可動柵の設置は進まなかったのですが、広域に路線のあるJRの場合、人身事故でどこかの線区が止まることが結構頻繁に起きている状況に背中を押されての取組みとなったようです。前記の南北線では、元々混雑の程度が少ないと見積もられていたことが、ホームドア設置を決断させたわけですが、客扱い時間の伸びを踏まえて最高速を他線よりも速い80km/hに設定するなどして、トータルな運行時間を圧縮する努力はされております。その一方で可動柵を後付した三田線や丸の内線では苦労があるわけです。

それでもワンマン運行が可能になり、混雑時に駅員をホームに立たせて安全監視するなどの人海戦術を取っていた部分の省力化にはなるわけですから、ホームの基礎工事や柵の設置で初期投資も決して少なくないながら、メリットもあるわけです。

ただホームドアにせよ可動柵にせよ、車両のドア位置が揃っていることが前提となりますので、定員制優等列車が走ったり、他社線との直通運転が行われていたりする場合、現実的には導入は難しいわけです。そこで他線との直通がない山手線で導入というわけです。しかし田端~田町間の京浜東北線の併走区間では、非常時に京浜東北線の電車が走る可能性があるという理由で、現在7,10号車に組み込まれている6扉車は全て4扉車へ取替えられるということです(目黒、恵比寿駅での検証期間中は該当号車部分の可動柵未設置で対応)。これで自動的に京浜東北製への6扉車導入の目はなくなったわけですね。ただし衝突安全を考慮したE233系先頭車のドア位置のずれにどう対応するのかは不明です。

というわけで、実施計画は発表されたものの、まだまだ課題山積の状況ですが、ホームへの駅員配置による安全監視という人海戦術での安全対策というのも、今後は人員の確保も難しくなりますから、この面でも成果は期待できます。

あとは他線区への波及があるかどうかですが、これは難しそうです。ドア位置が揃っていなければ難しいので、中央快速線や中電各線は難しいでしょう。また山手線は保安装置がATCなので、TASC(定位置停止装置)を付加することで対応可能ですが、一段減速が可能でも、あくまでも運転士の操作のバックアップが目的であるATS-Pで同等の停止位置精度を持たせるのは難しいでしょう。TASCでは±350mm以内の設定ですが、ATS-Pの前提となる運転士のブレーキ操作の場合は±1,000mmとアバウトです。これでも試験合格水準であることは電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)にもあるとおりです。

より簡便な方法としては、転落すると危険な車両の連結部のみをカバーする簡易柵の設置などの方法は考えられます。既に一部私鉄のターミナル駅では実績がありますが、元々過走余裕がなく進入速度が低いから可能なのかもしれません。なかなか決め手は見つかりません。そもそもホームが混雑するから柵などで防護する必要が出てくるのですが、その混雑が安全対策の最大の阻害要因というところに悩みがあるわけですね。

とはいえ安全対策をできない理由を並べても仕方ないわけで、とりあえず可能なところからでも取り組むことは重要です。丁度こんな報道がされました。

福知山線脱線事故、JR西役員ら書類送検へ 業過致死傷容疑
当ブログでは以前からJR西日本幹部を訴追すべきだと申し上げてまいりましたが、捜査当局が一歩を踏み出したことは評価したいと思います。と共に、今後鉄道事業者の安全輸送への圧力は増すものと考えられますので、逃げずに答えを模索して欲しいところです。

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Comments

こんにちは。山手線への可動式ホーム柵設置、JRにとっては大きな決断だったと思います。御指摘されているテスト期間の長さもそうですが、6扉車の廃止とは、随分と思い切った決断だなと感じます。

今回の決断に至った経緯ですが、今後の平行路線の開業で、山手線の混雑は緩和されて行くとの見込みがあったからではないでしょうか。そもそも6扉車の最大のターゲットは、新宿駅での乗降時間の短縮(←全線の所要時間短縮に貢献する)であると思いますが、副都心線開業によって新宿での乗降が減って行くのは確実かと思われます。また、東横線の渋谷が地下に潜ることで同駅埼京線ホームを北側に移すことも可能になり、埼京線へのシフトも見込まれるでしょうから、6扉車を外すという決断に至ったのかと思います。工事着工に漕ぎつけた東北縦貫線の影響もまた、背後に存在しているのでしょう。

外された6扉車ですが、特殊用途とはいえ減価償却は未だ完了しておらず、E231系の製造も終了していますので、他線区で使われているE231系通勤タイプのサハE231とトレードでしょうか。とはいえ、サハE230-500だけで100両以上が在籍していますので、三鷹と松戸のサハE231だけでは賄いきれないでしょうから、代替新造があるとも読めますね。処遇が気になるところです。

Posted by: Super White Arrow | Monday, June 09, 2008 at 05:31 PM

仰るとおり、東京メトロ副都心線の開業が背景にあると思います。特に新宿の乗降客の動向は影響すると思われます。

6扉車を外す場合、減価償却期間が終了しなければ、保留車となる可能性はありますが、実際の置換えは2013年からと考えると、保留車となるのは半数程度ではないかと思います。E231系増備に関しては、サハ限定ならば可能性はあります。とっくに製造中止した209系では3100番台モハまで登場してますし、とりあえず廃車の6扉車から台車はもらえますし。とすると6扉車は減価償却期間終了を待って解体→資材リサイクルという流れになるのではないでしょうか。一部にはE235系の登場が予想されてますが、転用が難しい山手線仕様のE231系500番台ですから、全車廃車よりは可能性ありと見ます。

Posted by: 走ルンです | Monday, June 09, 2008 at 10:11 PM

貨物列車と混在するあおなみ線では、ATS-STでTASC(定位置停止装置)を使ってホームドアを実現しています。

Posted by: あんぱん | Sunday, June 15, 2008 at 05:27 PM

コメントありがとうございます。あおなみ線については存じ上げませんでした。情報感謝です。

Posted by: 走ルンです | Sunday, June 15, 2008 at 10:28 PM

埼京線にE231を移籍(他にも京葉線もありますし)
総武緩行もE231もぼちぼち古いヤツから消えそうです。
埼京は6ドアの入れがいのある路線でしょうし、11両化は
さほど難しくないと思います。

一方、ドル箱の山手には新車を入れるのもありでしょうね。
E233でも良いですし、最終的にはワンマンもにらめばE235
でもOKか。

時差通勤に団塊の大量離職で置き換えが本格的になるころ
にはかなり空いてくる都内の電車と思われます。

副都心線は意外というか利用度は高い(ご祝儀相場でも
あるが)ということで一定の転移はあるかもしれません。

Posted by: SATO | Sunday, June 15, 2008 at 11:40 PM

コメントありがとうございます。副都心線は開業日から盛況のようですね。

副都心線の影響ですが、2012年の東横線直通時点で影響が大きく出ると考えられます。その意味で可動柵設置が2013年からというタイムスケジュールは、その影響を見極めてから取り掛かれるということでもあります。新車投入となるかどうか、実行段階のオプションは結構多いと思います。

まわりを新系列で固められたために、陳腐に見える埼京線の205系ですし、相鉄との直通が始まれば、E233系1000番台の同型車11000系の投入が発表されて、おそらく直通車になると考えられますから、JR側で山手線発生のE231系500番台で対応するというのもありかもしれませんね。

Posted by: 走ルンです | Monday, June 16, 2008 at 09:29 PM

JRの決定はすばらしいですね。
人身事故と言うと、鉄道ファンを中心に「自殺して迷惑掛けて」みたいに言う人が多いのですが、個人的経験から非常に疑問に感じています。かつてある鉄道に勤めており、何回か人身事故の処置や原因調査をしたことがありますが、自殺である、と言い切れる案件は実はとても少ないのです。このことは、鉄道会社は絶対に言いませんが、「自殺と推定」で終わってしまう件が圧倒的多数です。明確な目撃証言でもあれば別ですが、実は転落事故も多いのではないか?と、鉄道の従業員は薄々気づいているように思います。

ここ数年、鉄道事故による死者は500名弱あります。鉄道輸送の分担率が20%以下であることを考えると、鉄道は実は安全な輸送機関ではないと思っています。そして、ホームに可動柵を設置すれば、少なくとも「自殺と推定」と書きながら若干の疑念を黙殺する必要なんて全然なくなりますから。

ところで、副都心線のホーム柵は可動部分が東急目黒線のモノに比べてずいぶん広いようです。もしかしたら将来は、中央線に扉位置の互換を持たせた特急車と言う手もあるかもしれません。

Posted by: とくめい元電車屋 | Friday, June 20, 2008 at 12:15 AM

コメントありがとうございます。

仰るような「自殺と推定」されるケースが多いというのは、おそらく鉄道会社としては有責事故ではないことにしたいでしょうし、警察も事件性がなければあまり熱心に動かないということで、ありそうな話です。

しかし現場の社員にとってはモチベーションの下がる話ですし、今後労働力人口の減少で人員確保も難しくなるでしょうから、一歩を踏み出したJR東日本にもそのような問題意識はあると思います。考えて見れば混雑の激しい首都圏では自動解札は無理と言われていたのが、山手線を皮切りに整備されていったことなどもありますし、混雑を言い訳にしないでチャレンジしようという気運があるのかもしれません。後戻りしないようにしてほしいですね。

中電区間でも、例えば東横線横浜駅跡地を利用した横須賀線ホームの拡幅工事が続いてますし、辻堂駅でもホーム拡幅が発表されました。とりあえず可動柵などは無理でも、ホーム上の混雑を緩和して安全度を高めよういうことのようです。スペースに余裕があれば、新幹線のようにルーズに同期するタイプの可動柵も考えられます。

一方で副都心線では、可動柵のせいばかりではないでしょうが、開業3日目の16日に混雑の洗礼を受けてダイヤが乱れました。小竹向原で有楽町線方面と副都心線方面の電車がランダムに1,2番線から発車するために、乗客が右往左往したり駅の乗客案内が混乱したりということがあったようです。

加えて8~10連で可動柵連動の戸閉めタイミングを取る難しさがあり、特にワンマン運転の副都心線では、運転士の不慣れが混乱を助長したようです。

というわけで、前途多難な可動柵設置ですが、やり遂げてほしいですね。

Posted by: 走ルンです | Saturday, June 21, 2008 at 10:41 PM

初めまして、ご労作しばしば拝見しております。
ホーム可動柵の設置ですが、段差隙間解消と連動させるべきですが、大阪市交通局以外にはそのような発想がありません。
既設路線のホーム可動柵と段差隙間解消は大阪市交通局が全路線実施を表明し、長堀鶴見緑地線で実施されましたが、ほぼ完璧な状態で設置されています。車いす使用者だけでなく、ベビーカーや高齢者や歩行困難者も、キャスター付きバッグを引いている人にも、多くの人にとって利便性が非常に高くなっています。
特に車いす使用者にとっては「駅員の介助無しに、どの駅でも自由に乗降できる」恩恵は筆舌に尽くせません。
ぜひ、このような視点もご理解下さいますようお願いします。
(参考にご一覧ください)
http://kurumaisyu.exblog.jp/15439550/

Posted by: 山名 勝 | Saturday, January 07, 2012 at 05:01 PM

大阪市の取り組みの情報提供感謝です。

別項で市営交通民営化の話題を取り上げましたが、公営ゆえの一貫した取り組みという評価もできるかもしれません。営利企業では制約があるだけに、単純な民営化を是とするかどうか、いわゆる企業会計原理だけで赤字黒字を論じてるだけでは見落とされる視点です。

一方、駅員の介助を必要としないという意味では、事業者に一定のメリットもあるわけですから、公的支援も含めて制度に工夫が必要なのかもしれません。

同じ大阪で、大阪駅ノースゲートビルに付帯するJR高速バスターミナルが、公道扱いのため交通バリアフリー法の適用がなかったとか、滋賀県の帝産湖南交通バスの車いす乗車拒否問題とか、折角制度はできても機能していないケースが見られるのは残念ですね。

Posted by: 走ルンです | Saturday, January 07, 2012 at 08:46 PM

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