JR東海が日本車輌を子会社化
えー、北京五輪で電波ジャック状態の日本ですが、その間に世界が動いております。とりわけグルジア紛争の先行きはキナ臭いのですが、とりあえず当事国の和平文書調印でひと区切りです。
グルジア和平が発効、ロシア大統領署名 撤退は流動的とはいえ北京五輪を狙ったかのような今回の紛争です。悪しき前例とならないよう欧米の外交攻勢は凄まじいものがあります。日本にとっては遠い国の話かもしれませんが、欧州向けの石油や天然ガスの供給源としてアゼルバイジャンなどカスピ海沿岸地域の比重は重く、グルジアはロシアを経由しないパイプラインの経由地ですから、そこがロシアと対立すると、当然エネルギー市況を悪化させる可能性があります。こういうニュースを見過ごして、事後的に原油が上がったと大騒ぎするんですから、日本も困った国です。アメリカ議会では2014年のロシアのソチ五輪の開催地変更の決議までされて、モスクワ五輪の悪夢再来の予感すらあります。
ソチ冬季五輪の開催地変更を要求 米議員が決議案あとパキスタンの政情不安など、世界は揺れ動いております。そんなときに五輪フィーバーの日本のメディアのしょーもなさが情けないです。せめて特番の合間の通常の報道ワクぐらいは、五輪の扱いを減らすべきです。その他のニュースを知りたい視聴者の存在を無視してます。
前置きはさておき、鉄道界のビッグニュースです。
JR東海、日本車両を買収 リニア総合体制整える記事にもあるとおり、現在日車株1.8%を保持するJR東海が、TOB(株式公開買い付け)によって50.1%まで保有比率を上げ、買い付け価格は1株370円ということで、必要資金最大282億円ということで、リニア開発の秘密保持が狙いのようです。このあたりにJR東海らしさが出ています。
鉄道事業者と車輌メーカーの関係でいえば、JR東日本が直営の新津車輌センターを保有し、ほぼ1日1両ベースでロールアウトする量産体制を採り、実は国内メーカー中断トツの実績です。ただし製造技術面では東急車輛の指導下にあって、特許なども共同で取得する体制を築いているなど、緊密な関係にあります。おそらく国鉄時代に職権で特許公開を迫ったことに対する負い目があるのかもしれません。
その一方で同じく川崎重工と日立製作所も有力車輌ベンダーですが、特に川崎重工ではJR化後の205系大量発注を1社で受注するなど、気を吐いておりますが、これもJR東日本の方針で、国鉄時代のように設計まで済ませてメーカーへ発注する形態だと、メーカーは単なる組立屋になってしまい、技術革新にメーカーの力を使えないということで、国鉄時代の慣行を敢えて覆したものです。このようにJR東日本は車輌発注も基本的にオープン化戦略を取っており、敢えてメーカーの育成を行ってビジネスパートナーとする戦略です。
それに対して今回のJR東海の戦略は、少々古臭い垂直統合型戦略といえそうです。日車自身は名門企業で技術力もありますが、メーカー間の力関係は大分変わってしまい、劣勢は否めないところです。そういった意味では日車にとっても今回のTOBは事業の再構築のチャンスではあります。
元々系列に車輌メーカーを持つ戦略は、多くの私鉄で取られていたわけで、東急車輛(東急)、近畿車輛(近鉄)、アルナ工機(阪急)、武庫川車輌(阪神)などがありましたし、西武鉄道のように自社工場で車輌製造を手がける例もありました。それらが今は整理淘汰され、国鉄解体でJR各社も競争入札でメーカーを決めるようになり、小規模メーカーはコスト面で太刀打ちできなくなります。既にアルナは路面電車部門をグループ外へ切り出して解散、武庫川車輌も量産メーカーとなって鋼製車に対応できなくなった川崎重工の下請けの組立屋のようなことをしていて、車輌メーカーとしての実態は失われています。JR東日本と関係を深めた東急車輛ですが、一時西武鉄道へ納入したり、日立メインの相鉄をJR東日本と共同で肩代わりしたりして販路を確保してますし、近畿車輛もJR西日本や阪神などへ販路を拡げて私鉄系列色は薄まっている感があります。
時代の流れは明らかにオープン化に傾きつつあるわけで、その流れの中でこのニュースに接すると、何だか時代錯誤の感も拭えないのですが、果たして吉と出るか凶と出るか、推移を見守りたいですね。
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Comments
相鉄と東急車両に関しては「改造のみ」が東急と社員の方より
聞いたことがあります。ですので新車作成は相変わらず日立で
改造が東急(実際に9000系は6000系の廃車発生部品を
使用)という定義で、10000系受注は漁父の利としか思えない
(広幅は川重か東急だけで当時は日立は造らない(今はTXで
実績あり)で改造で縁のあった東急に持ち込んだらノックダウンが
できそうだからと逆提案(推察の域は越えませんが))
ことよりの結果と思います。
実際、車両工場を持つべき鉄道会社というのはJR東のような大量生産
型の会社か、東急のようにすでに実績のある会社が多く、東海もその
例に沿えば倣ってもおかしくはない(とにかく東海は回転の速い「新
幹線」がありますから)はずです。
しかし東海の目的はリニアの開発で、ひょっとしたら日車に懐疑的な
空気が流れていたのかもしれません。それを断ち切る意味があったかも
しかしこれも推察の域は越えませんね。
問題は連結子会社後の日車に発注する各社で、京王は9000で実績
がありますが、すべて置き換えまでは仮に子会社化されたとしても
継続はありますが、その後の「仮称 2000系」は切れる運命に
もっと現実的なのは京成でしょうね。あそこはまだまだ置き換えが
あるし、おそらく土屋延長で北総も増備があるわけだからそのまま
出すか、思い切って形式を変えて東急に発注するかは思案のしどころ
と思います。
あるnetでは名鉄通の方でさえ「名鉄はこの会社に出すか?」と
書かれています。盟友の名鉄でさえこうなのですから子会社化
によって「リニアと東海の車両製造」として生き残るか、それとも
相乗効果が出るかは見えません。
営業が巧く、関係が切れなかったとすれば新津並みに成長するとは
見ております。
Posted by: SATO | Sunday, August 17, 2008 09:44 AM
コメントありがとうございます。
相鉄に関してですが、実は10000系で初めて中空軸並行カルダンドライブを採用したのであって、在来車とは保守の体系が変わります。それを承知で相鉄が動いた理由は、車輌保守部門のリストラの意図ありと思います。既に保守システムが確立されたJR東の電装品を採用したのはそのためで、実際保守システムも導入しており、おそらく東急単独ではなく、JR東も売り込みには関与したものと思われます。
JR東海は更新周期の短い新幹線車輌がありますし、現状でも新車全体の6割は日車製ですから、仮に私鉄からの受注が途絶えても、単価の高い新幹線車輌で穴埋めは可能かもしれません。と同時に、現在日車に発注している京王、京成、名鉄の対応も注目されます。小田急は4000系で東急に転びましたし、納入価格では劣勢は否めないところです。
リニアに関しては、私が言うと辛口コメントになってしまいますので、程々にしておきます^_^;。
Posted by: 走ルンです | Sunday, August 17, 2008 10:45 AM