バスで取り過ぎ昨年春から
前の記事の続報です。
パスモの過徴収、07年春に把握ちょっとひどいですね。PASMOサービスが始まってすぐの4月に乗客の苦情で発覚、バス共通ICカード協会(以下「協会」と記す)は大きな問題と思わず公表せず、5月にICカードで決済未了時に取り消し処理をしないよう通達し、12月にはエラー音を他のものと区別できるようにしたが、「運転士のミス」はなくならず、今年7月まで放置したといいますから、ひどすぎます。
こうなると何のためのPASMO導入だったのかを問いたくなります。少なからぬ初期投資をしながら、「運転士のミス」を増やすだけなら、むしろやらない方が良かったとさえ言えます。そもそもバス事業は人件費で売上の8割を占める労働集約型産業です。鉄道など他の交通事業と比べても、人件費比率が飛び抜けて高いのです。これは人口減少社会では、持続可能性が極めて厳しいという意味でもあります。
人口減少下では乗客減も心配ですが、当面の高齢化は運転免許返上などでむしろ追い風になります。それよりも運転士や整備士などの確保が難しくなることの方が問題です。解決策があるとすれば、運転士に高給取りになってもらうほかありません。そのためにはより大勢をより速くより遠くへ運ぶということになります。1人当り乗車人キロで表現可能です。この観点から、単位時間あたりの走行キロを稼ぐ高速バスの収益性の高さがわかります。
その一方で一般道を走る一般路線バスの収益性は低く、大都市圏では表定速度10km/h台も珍しくありません。とはいえ一般路線から撤退するわけにもいきません。むしろ都市交通の一部として鉄道駅を起点とするフィーダー輸送には一定に需要があり、1台のバスで何往復もするシャトル運行であれば、効率性は高まります。実際駅と団地を結ぶ路線などで、そのような路線は少なからずあります。
また鉄道では乗換が発生するとか、大回りしなければならない区間で直通や短絡ルートを構成する場合なども、一般に利用度が高い傾向があります。許認可事業である路線バスで、認可路線を維持するために漫然と運行している路線は、実は結構多かったりします。ICカード乗車券は、そんな現状を変えるインパクトを持つツールであるわけで、その意義が事業者に理解されていなかったというのが残念です。協会は単なる調整機関に過ぎないのでしょうけど、バス事業者の意識の低さは残念です。
せっかく多額の初期投資をして資本装備を積み上げても、労働投入と代替的でなければ生産性の向上にはつながらないわけで、結果的に運転士の賃金も抑制せざるを得なくなる、とすると苦労が多くて稼げない業種ということで、運転士の確保が難しくなる道理です。そこから脱却することが、バス事業の大きな課題であるはずですが、現状で事業者にその意識はなく、システムを追加して「運転士のミス」を増やしているのですから、バス事業の将来を悲観したくなります。
システムは改良すれば済むわけですが、事業者の意識は簡単には変わらないと思います。鉄道を補完するバスの役割はけっして小さくはないので、今回のことを教訓にしてほしいところです。
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