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Monday, September 15, 2008

ロス列車事故は対岸の火事?

えーと、どうにも悲惨な事故ですが、情報が錯綜しております。

通勤列車側が信号見落とし 米衝突事故、死者25人に
信号無視原因か ロス列車衝突
米列車衝突、原因は通勤列車の信号見落とし…死者25人に
運転士、信号見落としか=事故1分前にメール送信-米加州
おそらくニュースソースは海外通信社の配信記事で同じなんでしょうけど、メディアごとに取り上げ方が微妙に違います。現場はU字カーブで見通し悪く、手前に行違い信号場があったそうで、鉄道を知っていれば、これだけで通勤列車側が何らかの理由で停止信号を冒進して貨物列車と正面衝突した事故とわかります。現場の見通しの悪さは直接的には事故には関係しません。

また事故1分前に携帯メールを送っていたことが証言されてますが、このことと信号見落としの関連性については、現時点では断定は避けるべきでしょう。それよりもATSが未設置だったことで、安全対策の不備が疑われます。またそこには同じ線路を複数の事業者が共同使用する米国の鉄道事情もあります。加えて日本の鉄道事業法では、設置基準こそ尼崎事故以後ですが、ATS設置が義務付けられておりましたから、鉄道事業に対する政府の関与の度合いに違いがあります。当局は30年前から設置を推奨しながら、コスト負担を嫌った事業者の不作為で放置されていたわけです。

日本でも先日JR西日本山崎社長をはじめとする関係者10人が兵庫県警から書類送検され、検察が起訴するかどうかが注目されてますが、米国での事故の責任の取り方には興味があります。

JR西社長ら書類送検 尼崎脱線事故、業過致死傷容疑で10人
と同時に、この事故を契機にATS設置基準が定められ、私鉄各社は速度照査機能を持たせた保安装置の更新計画を発表し準備にかかっておりますし、従来予防安全重視の立場から、軽視されがちだった衝突安全についても、JR東日本E233系のクラッシャブルゾーン設定やJR西日本の223系でも今年7月落成分から車体強度向上仕様となるなどの変化が出ておりますが、他社への波及はこれからでしょうか。ただし元々衝突安全を重視していたアメリカの構造規則で作られたメトロリンクの客車が、外観は維持しながら機関車が食い込んで中身がグチャグチャになったように、車体強度強化の効果は過大評価できないこともまた抑えておくべきでしょう。

あとロス通勤列車の運転士が下請会社社員だった件ですが、いかにもアメリカらしい労働市場の流動性の産物と見ることも可能ですが、むしろ斜陽産業だった鉄道事業ゆえの問題とも見れます。鉄道事業従事者とりわけ運転要員については、専門性が高く育成に長い時間と費用がかかる点はどこの国でも同じです。年功序列が崩壊したと言われる昨今の日本でも、こと鉄道に関しては徒弟制度が健在です。新入社員は現場に配属されると、その現場のベテラン社員を師匠としてみっちり基礎を仕込まれた上で、本人の希望と能力に応じて、地上職から列車乗務職へ、車掌から運転士へとキャリアアップする仕組みで、その中で必要なスキルを身につけるわけです。

この仕組みは、若い社員にコストをかけて育成するわけですから、鉄道事業者の負担は重いわけですから、人口増で右肩上がりの需要増を見込めるうちは良いとして、需要増を見込めない成熟段階になると、即戦力の中途社員や定年後の嘱託社員を多用することで、当面の負担の軽減に走りたくなるわけです。実際国鉄改革の前後で新規採用が手控えられたJR各社では、30代40代の中堅社員が手薄で、定年間近の高齢社員と経験不足の若手社員で技術継承に齟齬を来す状況が見られました。思い出して欲しいんですが、JR尼崎事故の高見運転士の若さが事故を引き起こす要因の一つであったことです。

あとあまり知られておりませんが、2005年春に阪急電鉄などから運転士などの労働者派遣法の規制緩和要求が出されていたんですが、尼崎事故後に国土交通省が門前払いをしたことで沙汰止みになりました。もし認めらていれば、日本でも派遣運転士が登場したかもしれないですが、認めるべきではありません。人材育成は企業の責任です。鉄道事業のような公共性の高い事業の場合、人材育成は事業継続のための投資でもあるわけで、これを外部に依存すれば、むしろ事業の継続性を阻害します。会計規則上従業員の技能などはバランスシートに反映されないのですが、事業は人の格言は、1分前メール送信でわかるモチベーションの低さから、ロス列車事故でも明らかでしょう。

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