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Saturday, October 11, 2008

気がつけば半値、株安が止まらない

最近、母が保有する株を売却したんですが、そのときの話から始めます。母は自ら株を買うような人ではなく、保有株も父が生前に名義変更で母に持たせたものだったのです。高齢で要介護の母にとっては、株で持っていても意味がないわけで、年金暮らしで急な出費に備える意味から、現金化するということで、私の証券口座で売却したんですが、これが面倒な手続きオンパレードで、結局2ヶ月もかかってやっと終わったのです。

四半世紀前に購入した株ですから、まずは履歴を調べて、取得日の終値を取得価格と見なすことで特定口座へ入庫、名義変更も売却目的ということで、母の株主履歴を引き継ぐことで、贈与税を免除されます。このときの証券窓口でのやりとりで、見なし取得価格が使える一般口座を利用すれば、手続きも簡単だし、見なし取得価格が高めに設定されているので、納付税額も少なくて済むと言われたんですが、ホント証券窓口の尾根遺産^H^H^H^Hお姉さんはわかってないです^_^;。

確定申告して申告納税すれば、確かに国税は安くなりますが、確定申告自体の手間もありますし、確定申告すると、申告内容が地方にも共有されて事後的に住民税が課されたり、年金天引きの介護保険や高齢者医療保険が増額されるわけですから、その方が困るわけです。源泉分離課税を選択する方が合理的なんですが、目先の金額の大小しか見ていないんですね。

日本の金融関係者にはこの手の話は多数ありまして、フローとストックは別物という常識が通用しないことにめまいを覚えました。四半世紀前に取得した株式は、価格はおおむね4倍相当になっておりまして、確かに納付税額は決して小さい額ではないんですが、現行軽減税率で10%(本則20%)が売却益から天引きされて処理が終わる特定口座取引の方が、手続上もメリットがありますし、通常の貯蓄と比べても、配当を受け取りながら期間中の物価上昇率を超えるキャピタルゲインが得られているのですから、多少の現金の目減りは問題ではありませんし、むしろ生活の糧となっているフローとしての年金受給額の手取りが減少する方が痛手です。この辺の当たり前の感覚を投資家と共有できない金融マンが多すぎます。むしろ投資家のはやる気持ちを抑えつつ、喜ばれる結果を得ることの方が重要ではないでしょうか。、ま、現実は上から言われたノルマに追われているんでしょうけど。

元々個人の株式保有の理由は、貯蓄の代替であるわけで、いくら株式を持っていても、またいくら保有株式が値上がりしても、それで直接食べ物や衣料が買えるわけではありません。売って現金に換えて初めて使えるのであって、今回の株安でも、お金が消えたかの如く言う人がいますが誤りです。株、債券、不動産などの資産は、貨幣の価値の貯蔵の側面を代替するのが本来の姿です。

しかし上場大企業同士ならば相互の信用情報が既知であるという前提で、相対で保有する資産を直接交換することも可能ですし、実際に例えば株式市場に無用な圧力を与えない目的で市場外取引は結構頻繁に行われます。つまりは価値の交換手段としての貨幣の機能を一部代替しているわけですね。米国発金融危機というのは、ザックリ言ってこの企業間の信用に基づく相対取引が、相手の信用情報に不信が芽生え機能不全に陥ったということです。中央銀行がいくら資金供給しても追いつかないほど非正規の信用創造がされていたわけです。

そんな中で流れた株式全面安のニュースですが、今回はパニックになっているようですね。米金融危機の連鎖ではあるんですが、今回の日本では大和生命の破綻のニュースが不安心理をかきたてた結果と考えられます。前日には上場REIT(不動産投資信託)の投資法人破綻がありましたし、不安材料は確かにあるんですが、それぞれ個別問題であって、連鎖の可能性はほとんどありません。

というわけで、今回も株の仕込みのチャンスかもしれません。特に相対的に高値で掴んだ金融株の買い増しを狙っておりますが、これは同時に平均購入価格を下げる意味もありますので、相場の状況を見極めたいところです。

ただし日本株の注意事項は、持ち合い株問題があるということです。安定株主対策の美名のもと、事業会社同士が株式を持ち合うことで、市場に出回る株式数が制限されれば、受給がタイトになって株価が下支えされますし、昨今は買収防衛策としても持ち合いがされているのですが、そもそも買収を仕掛けられる企業は、キャッシュフルだったり資本効率が低くて利益率が低かったり、場合によっては保有資産額を下回る時価総額しかなかったりで、経営の不在にこそ理由があるんですが、お構いなしに持ち合いを増やしてきた現実があります。

今回の株安はその結果企業の株式含み損を拡大することとなり、株価半減ならば減損処理で損失を確定させなければなりませんから、当然決算予想の下方修正を迫られ、それがさらに株安を助長するという負のスパイラルに陥る可能性があります。今回の株安もそれで助長された側面があると考えられます。持ち合いに使うお金があったら、自社の将来に備えた投資をすべきなのに、そういう意識が希薄なのは困った問題です。

今月は京阪中之島線が19日に開業します。中之島といえば、江戸時代は廻船問屋の集積地だったところです。廻船問屋というのは、船会社と商社を合わせたような業態ですが、主にコメの売買で収益をあげておりました。このあたりはフラット化する日本の黄金律という記事で取り上げましたが、コメの流通を通じて実現した資本蓄積が、日本の近代に多大な貢献をしたものです。今、地盤沈下がいわれる大阪経済浮揚の起爆剤になるかどうかは定かではありませんが、大都市圏の交通ネットワーク強化という意味で、副都心線や来春の阪神なんば線などと共通点があります。

ただし従来鉄道駅のなかった中之島ですから、既存線との連絡は渡辺橋駅と地下鉄四つ橋線肥後橋駅との地下連絡通路接続のみですから、直接的なネットワーク強化にはなっていないのですが、JR東西線北新地も徒歩圏ですし、中野島駅もJRと阪神の福島駅と徒歩範囲という微妙な位置関係ですから、特に駅勢圏の競合するJR片町線との間で乗客の転移が起こる可能性はあります。開業後どのような変化があるか見ものです。

将来構想として西九条延伸さらに新桜島から北興テクノポート線構想に沿ってWTC延伸などが取り沙汰されておりますが、現時点ではもちろん何も決まっておりません。WTC(ワールドトレードセンター)といえば赤字三セク全国ワースト1の大阪市のお荷物ですが、先日橋下知事が県庁新築計画を凍結してWTCへ入居という注目すべき発言をしております。実現すれば、既存施設の活用で大阪府、大阪市双方の懸案が解決することになりますし、オリンピック招致がコケて開発が滞っているウォーターフロント開発が活性化する可能性もあります。

というわけで金融危機のさなかではありますが、将来の新たな予感を含む京阪中之島線は、楽しみな存在といえそうです。

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