銭トレニャア、ナゴヤはオワリ?
うーん、株価が戻りません。ゆえに買い増しのチャンスという見方を変えた方が良さそうな感じです。原因は複数あって、特に外国人売りの地合いが強いようですが、誤解のないように指摘すれば、主に欧州各国で銀行への公的資金注入が行われた結果、政府主導で国内中小零細企業への貸出増加の圧力がかかり、投資原資として外国資産の処分が行われているもようで、ひと頃言われたジャパンパッシング(日本素通り)とは別の要因です。欧州では社会の装置に過ぎない銀行の救済よりも預金者や融資先の保護に重点が置かれているわけです。
とはいえそれだけで現在の株価が説明できるわけではなく、実際これだけ安くなったのに買いが入らない状況は、プロに言わせればあり得ない話と言われ、実際PER(株価収益率)が5倍とか、PBR(株価資産倍率)が0.5倍といったアンビリーバボーな数値が並びます。後者など会社を廃業して資産を切り売りした方がマシというレベルです。やはり前に指摘した株式持合いの負のスパイラルが原因のようです。悪い予想ばかりが当ります。
で、持合いの中心には銀行が居て、現在の株安を先導している状況をどう見るべきでしょうか。日本では銀行は救っても預金者や融資先は救わないのでしょうか。現在国会審議中の金融機能強化法でも、政府案では公的資金注入に際して経営責任を問わないことになっておりますが、それでいて貸し渋り防止策を謳っているのは矛盾しております。ま、この辺は90年代末の金融危機のときも政府の対応は基本的に変わっていない気がします。担当大臣が外国に「自慢」した公的資金注入にしても、長銀と日債銀の救済策は元々民主党案を丸呑みして実行したもので、こちらは経営陣の更迭と0円評価での全株式取得という形で経営責任と株主責任を問うたものでした。その仕組みを使い回して2002年にりそなへ資金注入したしたことで、政府の関与による金融秩序の回復期待が好感されて7,000円台だった日経平均株価が反転上昇に転じたことで、銀行の保有株が値上がりし、あれほど経済の重石となっていた不良債権問題が嘘のように解消したものでした。いわゆる竹中プランで、大手行に対しては経営責任を強く問いましたが、地方経済への負のインパクトを回避するために、地方銀行の不良債権処理は途半ばとなり、保有株価の上昇で見かけ上の自己資本は回復したわけです。それがリーマンショックの株安連鎖で資本が毀損し、さらに2006年下期以来の不動産不況も重なって、元々建設や不動産関連の融資が多かった地方銀行のバランスシートを傷める結果となっております。つまりは地方銀行に元々隠れていた不良債権問題が顕在化したわけです。
地方銀行でも、破綻すれば影響が大きいと考えられる上位行の足利銀行は、上記のブリッジバンク方式で一時国有化され、再建されて野村グループに転売されたのですが、規模の小さい地銀下位行や第二地銀ではそれは通らない話で、実際不動産不況関連で初めてのペイオフ実施が囁かれてさえいたのですが、世界金融危機に便乗して一転救えという話になりました。いわゆる焼け太りです。同様に流通市場が消滅して値決めできないという実務上の制約から、社債や証券化商品について時価会計を一時凍結しようという気運が欧米で出ると、流通市場が機能していて値決めが可能な株式や国債にまで適用しようと画策する日本政府の姿勢は、むしろ国際的に不信を買います。お願いだから15日の金融サミットでバカなこと言わんでくれ。
そんな中でトヨタショックがあったわけですが、メディアの取り上げ方はかなり一面的です。減収減益の直接的な原因は北米市場の冷え込みですが、メディアの論調としては円高の影響を過大視する傾向があります。既に現地生産比率が高いトヨタですから、為替変動の影響に対しては耐久力があります。実際経常利益7割減とはいっても、去年までの数値がむしろ円安メリットで高めに出ていたと見る必要があります。特にレクサスのように日本で生産して北米で売られる高単価車の寄与が大きかったのであって、その部分が金融バブルと共にしぼんだだけです。そういう意味ではマイナスには違いないですが、元々財務の強いトヨタですから、仮に単年度で赤字転落しても、さらには赤字が数年続いても、存亡の危機にはなりえないので、その辺がビッグ3とは大違いなんです。
とはいえ自動車不況の現実は確実にあるわけで、実体経済への影響は計り知れません。特にトヨタの減益発表のインパクトで怖いのは、納入する部品メーカーへの影響で、既に中部地区では衝撃が走っております。好調時には納入価格を叩かれた上に、不況で減産となれば真っ先に影響を蒙るのは、こういった下請企業群です。トヨタは安泰でも下請け企業は存亡の危機となるわけですが、よくよく考えれば、真に必要なサプライヤーならば、発注元企業が資本を入れれば良いわけですが、そうはせずに公的資金で助けられた銀行の融資や都道府県信用保証協会の保証業務などで延命させると、再度好況に巡り合わせたときに、使える安値受注のサプライヤーを温存できるわけです。つまりトヨタのような親企業だけが富む構図ですね。結果的に国内消費をリードしてきた名古屋景気はしぼみ、中小企業は疲弊する構図です。地域のトヨタ依存が高すぎた反動ですね。
その影響で栄の老舗デパートをなぎ倒したジェイアール名古屋タカシマヤも業績にブレーキ、JR東海の連結業績にも影響しています。さらにこんなところにも変調が。
中部空港、4-9月初の赤字 燃料高痛手にこれ燃料費高騰だけが原因ならば、最近の原油価格の動向でいずれ回復が期待できますが、より構造的な問題として、そもそも国際空港として発着便数を増やせずに、経済の冷え込みでむしろ航空会社の撤退が始まってしまい、空港としての存在感が低下していることが見逃せません。開港当時から航空客より見物客が多いことから、空港付テーマパークとも揶揄されましたが、名古屋景気の冷え込みで見物客の落ち込みも予想されるだけに、業績回復は容易ではないというべきでしょう。
となると気になるのが、空港輸送で息を吹き返した名鉄の動向です。元々クルマ大国の名古屋地区で、それに対抗して登場したパノラマカーが、来年度の全廃が発表され、一時代が終わった感があります。ところがクルマ社会の親分であるトヨタよりも、民営化JRと名古屋市営地下鉄/バスの挟撃という思わぬライバルの出現で乗客を減らした名鉄が、中部国際空港の輸送で得たアドバンスも、先行き不透明です。既に岐阜地区の600V線などローカル区間の撤退も進み、リストラも一巡したところでの地域経済のリセッションは堪えそうです。
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Comments
こんばんは。
名古屋の話しをひとつ。
ICカードのマナカが2011年に導入される予定です。
驚いたのがTOICA(東海旅客鉄道)とあゆか(岐阜乗合自動車)との
提携が名古屋市営地下鉄の車内吊り広告では公表されていないことです。
あゆかは独自のポイント還元があって難しいのは理解できます。
昼間だとポイント40%還元。普通にプリペイドカードとしてもポイント10%還元。
ほかにもいろいろあって納得できます。
ただし、先ほど述べましたように、車内吊り広告しか見ていないので、
今後もネットなど他の媒体を含め事態の推移を見守ります。
以上報告いたします。
くれぐれも心身共にご自愛ください。
ご多幸をお祈りいたします。
では、失礼いたします。
とまと
Posted by: とまと | Monday, June 14, 2010 11:15 PM
連続投稿をご容赦ください。
名古屋市交通局の話しです。
地下鉄車内吊り広告によると通学定期券の条件を一部緩和するとのこと。
以上報告いたします。
Posted by: とまと | Tuesday, June 15, 2010 04:33 PM
ご報告ありがとうございます。
名古屋地区は電子マネーでもトヨタ系のquickpayがEdyよりメジャーだったりと、他地区と異なった展開が見られますが、ICカード乗車券でも特殊な状況があるようですね。
TOICAも熱海―函南間を除外して首都圏からの通し乗車をブロックする一方、EXICでチケットレスで新幹線に乗れるようにして、利用を誘導してます。ご指摘のようにmanacaとの共通化が行われないとすれば、かなりの唯我独尊ぶりですね。
岐阜乗合のあゆかについては存じませんでしたが、高率の割引があるとすると、回数券カードの性格が強いのでしょうか。東急世田谷線のせたまるで乗車ごとにポイント付与して実質回数券扱いというのがありますが、おかげでPASMO用と別にせたまる用のカードリーダーを備えて重装備になっております。
関西でも京阪がポストペイのPiTaPaとプリペイドのICOCAの両方を採用して独自性を出してますが、JRとの連絡運輸を意識したのかもしれません。
事情は各社各様のようですね。
Posted by: 走ルンです | Tuesday, June 15, 2010 09:37 PM
こんにちは。
m(__)m
いつもありがとうございます。
報告事案をご容赦ください。
(以下記事要約)
中日新聞岐阜県版2010年7月7日(水曜日)26面に
あおなみ線を運営する第三セクター名古屋臨海高速鉄道は6日
事業再生ADRの手続きを
事業再生実務者協会(東京)に申請し受理された。
(記事要約終了)
以上報告いたします。
盛夏の折、くれぐれも心身共にご自愛ください。
ご多幸をお祈りいたします。
とまと
Posted by: とまと | Wednesday, July 07, 2010 01:11 PM
元々がバブル時代の甘い計画でした。三セク鉄道の不振は今や普通のことです。
って慰めになってないか(笑)。
Posted by: 走ルンです | Thursday, July 08, 2010 10:46 PM
返信ありがとうございます。
泣きっ面に蜂というか
倒れかけたところに背中から押されるというか
名古屋地区の第三セクターの報道は、
というか第三セクターはもう作らないでほしい。
結局無責任に税金投入が発生しやすいかもしれないと愚考しました。
もちろん、不要な支出を減らすのはしなければならないのは理解します。
さて、度重なる報告をご容赦ください。
2010年7月9日付け中日新聞岐阜県版18面に
樽見鉄道支援継続に厳しい声ということで
8日樽見鉄道連絡協議会にて藤原勉本巣市長が
「(鉄道が)あったほうがいいというようなノスタルジーでは議会の理解を得られない」
と支援打ち切りの検討を示唆するなど、厳しい意見が相次いだ。
(以上記事要約)
まとまりのないコメントをご容赦ください。
Posted by: とまと | Saturday, July 10, 2010 11:48 AM
「(鉄道が)あった方がいい」かどうかをノスタルジーでしか語れないところに問題があるんですよね。鉄道が地域の交通インフラとして位置づけられていない証左ですから。
実際は鉄道がなくなると地図上でわかりにくくなるといった見栄のような話だったりします。鉄道を中心にした地域開発ができないならば仕方ないでしょう。
とはいえ名鉄に続いて樽見鉄道もなくなるとすると、西濃地区の地盤沈下は止まらないですね。確か下水道の処理能力不足で営業時間制限されたモレラ岐阜は北方町だったような。スプロール現象でライフライン整備が負担になっているとすると、何やってんのって話ですね。
Posted by: 走ルンです | Saturday, July 10, 2010 09:20 PM
こんばんは。
m(__)m
いつもありがとうございます。
念のため表現します。
西濃地方は石灰石の産地で
石灰石関連産業の輸送手段として樽見鉄道が意識されていました。
その石灰石関連産業が鉄道利用を廃止しました。
なおモレラ岐阜は本巣市糸貫町らしいです。
http://wapedia.mobi/ja/Special:Search?search=%E3%83%A2%E3%83%AC%E3%83%A9%E5%B2%90%E9%98%9C&skl=%E8%A1%A8%E7%A4%BA&searchtype=
厄介なのは、
まちづくり狭い意味で都市計画は旧建設省あるいは旧国土庁
鉄道は旧国鉄または旧運輸省
ちなみに樽見鉄道は旧国鉄から第三セクターに転換。
という縦割り行政と第三セクターの負の遺産と愚考します。
関係のない第三者は正直誰に何をどのように伝えるべきか
困惑しています。
非礼無礼をご容赦ください。
くれぐれもご自愛ください。
ご多幸をお祈りいたします。
では、失礼いたします。
とまと
Posted by: とまと | Saturday, July 17, 2010 10:34 PM
モレラ岐阜は本巣市でしたか。失礼いたしました。
なるほど逆モーダルシフトですね。石灰石はセメント材料の他、消石灰など消毒剤としての用途もあり、国内埋蔵量はほぼ無尽蔵な有力資源ですが、JR青梅線の貨物輸送撤退など逆モーダルシフトの傾向が見られます。
直近では自衛隊百里基地向けジェット燃料輸送を支えとしていた鹿島鉄道が、日立小川と基地を結ぶパイプラインの老朽化に伴いトラック輸送に切り替えられたことで支えを失い、TX開業で親会社の関東鉄道が支援余力を失ったことがダメを押しました。この手の有力荷主に支えられていた鉄道の廃止は今後もあり得ます。
難しい問題ですが、地域の交通に関する自治体の関与が低い日本では、結局避けられない問題です。民主党が準備している交通基本法の制定で地方運輸局の地方移管に期待がかかりますが、財政難は自治体も同じこと。同時に使途自由な一括交付金の交付が伴わなければ機能しません。ねじれ国会でどうなることやら。
Posted by: 走ルンです | Sunday, July 18, 2010 12:25 PM