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Tuesday, December 23, 2008

207系900番台でスベった高等戦術

あお色エレジーの続編です。常磐緩行線への投入が予告されながら、未だ姿の見えないE233系2000番台ですが、203系と道連れに追われる207系900番台も取り上げたいと思います。国鉄としては最初にして最後の、そして唯一の営業用VVVF制御電車として、期待された電車でした。

そもそも国鉄では、北陸新幹線用車両用に、VVVF制御の開発を1984年から始めていて、国分寺の技術研究所で101系に試作品を装備してテストを繰り返していたんですが、次の段階として営業用に投入し、量産化のめどをつけることとなり、常磐緩行線への投入が決まったものです。常磐緩行線は地下鉄千代田線との相互直通運転が行われていて、高加速が求められる上に、会計検査院の指摘で営団と国鉄の車両の電力費の差額精算が求められて経緯もあり、省エネ車である必要があったことと、既に電機子チョッパ制御の203系が投入されていたので、比較検討の意味もあってのものです。

車体は203系のアルミボディではなく、205系の軽量ステンレス構造となり、台車も205系と同等のボルスタレス台車としているところから、後述するように新たな標準化の意図があったものと考えられます。この辺が国鉄らしいところではありますが。

国鉄らしいところとしては、何より10連1編成を複数メーカーで分担して製作している点があります。車体は205系と同等の軽量ステンレス製で、205系向けに東急車輛のライセンスを公開させたものですが、当形式では東急車輛と川崎重工が5両ずつ分担し、電装品は東芝、三菱電機、日立、富士電機、東洋電機の5社が分担という呉越同舟ぶりですが、一応日立製の機器に性能を合わせているようです。同一編成で運用する以上仕方ないところですが、5社競作になっていないというところは国鉄的な標準化思想の成せる業でしょうか。

また10連で6M4Tの電動車比率ですから、5社で6両分の電装品を調達するという不一致が出ております。実はこの辺に「高等戦術」が隠れているのです。実際は東芝が2両分の電装品を担当したのですが、量産時のことを考えれば、試作車での1両の割当増自体は、大した意味は持たないでしょう。元々省エネ性能を期待され、特に電機子チョッパ制御よりも粘着性能の高さに期待があったVVVF制御で、5M5Tで高加速をという狙いは伏せたままメーカーへ発注されたわけですから、量産時の見積もりも当然6M4Tが前提となるわけですが、現車で粘着性能を確認した上で、量産時には5M5Tとすれば、それだけ価格を抑えられるわけで、予算不足に泣いた国鉄末期のセコい高等戦術でした^_^;。

しかし現車は空転に悩まされ、なかなか性能が安定しませんでした。結局高等戦術はスベってしまったわけですね^_^;。加えて電装品に使われる素子類の価格も下がらず、製造コストを203系以下に抑えるには4M6Tにしなければ無理ということで、量産を断念されたのでした。201系以来、大量発注の量産効果を狙って失敗を繰り返す構図が続いたわけです。

この「高等戦術」が意図した結果を得たと仮定すると、おそらく通勤型の新標準車の地位を得た可能性があり、そうなれば209系以降の新系列車の登場もなかった可能性はありますが、国鉄が仕様を決めてメーカーへ分散発注する談合体制では、結局意図した性能は実現しなかったでしょう。実際分割民営化後のJR各社はコンペでメーカーを競わせる方向へシフトし、車両面では大きな変化をもたらしたのはご存じの通りです。

番外で、元々北陸新幹線用に計画されたVVVF制御ですが、新幹線用としては東海道山陽新幹線の300系で実現しております。JR東海は300系を短期間で開発しておりますが、それも国鉄時代の蓄積があったからこそであり、見方を変えれば、207系900番台とは異母兄弟といえる存在ということがいえます。

もう一つ、JR西日本の207系0番台1000番台2000番台についてですが、一部趣味誌で常磐線の900番台を試作車、JR西日本の0番台を量産車と紹介されましたが、VVVF制御でステンレス車体という共通点はあるものの、両者は全く無関係な別物です。加えて後者の登場を期に常磐線の207系が0番台から900番台に改番されたという説も流布されているようですが、900番台は登場時から番号は変わっておらず間違いです。活字で公開された誤情報はなかなか訂正されませんが、困ったもんです。ただし両者に番号の重複はありませんが、0番台が空いているというノリで紛らわしい形式名を与えるJR西日本には、国鉄大阪支社時代の東京本社への反骨心が残っているのでしょうか。変なところで国鉄を引きずっているのも困ったもんです。

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Comments

207-900は確かに面白い電車で走る実験室のような
イメージですね。面構えも国鉄⇒JRの過程を見るようで
いかにも”過渡期”の電車です。

そういえば900番台って今は東武くらいしか作らない
というか各社で傾向が違ってきますね。

メトロのように900番台910番台920番台といつまで
たっても量産が出ない05系やいきなり4番から量産に
なる10000系のような”ポリシーなきポリシー”を
持つものや東急のようにいきなり量産で、具合が悪いと
徹底的に直す7515のようなケース
西武のように番台変更(6000系)や相鉄は別形式に
シフトなど各社とも個性が出ます。

しかしかつては鉄道会社主体の試作も今はメーカーの
実験室ベースの開発が多く、珍車が出ません。
DLなどは貸し出して実験など(DF90?)のようなことや
ガスタービン車のように日の目を見ず散った車両も
あったのですが、そういうものってここ数年はJR東で
ちょっと出た(ACトレイン)程度で趣味的にもつまらない
感があります。

JR西の207は困った現象で、ここはさっさと訂正して
欲しいですね。
ちなみにキハ40ですがいきなり100番台からの落成
これはかつての客車改造のキハ40(その後の09)
との差別化だったそうです。国鉄時代のお話です。

Posted by: SATO | Sunday, December 28, 2008 at 08:55 AM

207系900番台は、過渡期の電車ですね。国鉄末期の登場であると共に、以後の技術革新の急なこともまた、特筆すべきことです。

メトロの前身である営団で、VVVF制御の導入に慎重だった理由が、東急9000系のトラブルと207系900番台の空転によるものと言われております。直流他励モーターで電気子と界磁の双方を制御する4象限チョッパ制御の採用で時をつなぎますが、その後VVVF制御の技術革新が求職に進み、独自技術を維持する意味が薄れたのですね。

一方で標準化が進んで試作車というジャンルの意味も変わってきている感じです。確かに珍車はなかなか出ないですが、その分量産車の方で、例えば東急と川重の競作や、日車ブロック工法や日立のAトレインなど、メーカー色が出ているのが面白いところです。

Posted by: 走ルンです | Sunday, December 28, 2008 at 09:14 PM

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