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April 2009

Tuesday, April 21, 2009

第三セクターは救うな

えーと、未来を感じる明るいニュースがある一方で残念なニュースから。

無人車両、下り坂を8キロ走行 JR名松線、運転士離れ
突然アクセスが増えて、しかも3年前の同様の事故を起こした記事が閲覧されるという椿事が起きまして、そのとき現場社員のモチベーションの低下を心配したのですが、今回もケアレスミスですから、職場にミスを誘発するファクターがあると考える方が自然です。こんなんじゃリニアどころじゃないだろうに。

で、本題に入る前にもうひとつ。政府は15兆円超の追加経済対策を打ち出しましたが、驚くことにそのほとんどが予算シーリングで削られた案件が並びます。つまり予算枠が増えたから一度は否定された優先度の低いものを復活させたわけです。これで景気回復は絶対無理ですが、バカ殿宰相は自信満々なようですね。何も考えない暗愚なリーダーは恐ろしい。

そもそも今回の経済危機ですが、サブプライムショックに始まりリーマンショックで一気に底が抜けた展開ゆえに、日本ではどこか他人事のところがありますが、その海外バブルに乗っかって、低金利の支えもあって、設備投資を拡大した自動車や電機などの製造業各社が、危機に直面して短期間に生産調整に走ったことで、危機を増幅しています。そして調整は進み、漸く出口が見えてきたというのが現状ですが、問題は海外バブルに乗っかって設備も人員も膨らませてしまったわけですから、少なくとも元の水準(2002年水準が目安)まで設備の廃棄と人員の整理をする必要があるわけで、今から失われた90年代を再現すると考える必要があります。つまり正規雇用者の早期退職や新卒採用の手控えは当分続き、第二就職氷河期となるわけです。

ゆえに欧米と比較しても日本が飛び抜けて経済のマイナス幅が大きいわけで、GDPはザックリ10%縮む計算です。というわけで、たかがGDP比2%の財政出動に効果があるわけがありません。また健全といわれた日本の金融ですが、株式持合いが災いして銀行の自己資本が毀損する事態となっておりますし、事業会社でも急速な業績悪化で税効果会計による繰り延べ税金資産の資本計上分が取り崩しとなる可能性が高まっており、これから発表される上場企業の決算はかなり悲惨なものになりそうです。それはまた株価を押し下げ、銀行の資本を毀損します。

加えて大手銀行こそ資本増強もあって何とか持ちこたえるかもしれませんが、いわゆる竹中プランでも手付かずだった地方銀行には、存続が難しい所も出てきそうです。そもそもリーマンショック以前には、金融庁では多すぎる地方銀行を整理するために、ペイオフまで検討されていたようですが、今回の危機で吹っ飛び、むしろBIS規制の及ばない国内行の自己資本比率4%を守らせるために保有株式の時価評価を緩めてしまいました。こうなると情報の適切な開示が遠のくわけで、再び金融が経済の足かせになる可能性も出てきます。

というわけで、元々オーバーバンキングと言われた日本の銀行で、郵政民営化でゆうちょ銀行という巨大な新規参入者を受け入れ、且つ銀行業免許こそないものの、日本政策投資銀行や日本政策金融公庫などのいわゆる政府系金融の民営化で、企業融資はますます供給過剰となりますから、銀行は儲からないから政策金利を下げて支えるしかなく、預金者の受取利息は削られます。たかが2兆円の定額給付金で仕事した気になるな(怒)。

元々竹中プランでも、大手行と地方銀行を同じ基準で律するのは無理ということで猶予された地方銀行の整理ですが、地方銀行には融資先の地場企業がぶら下がっていて、簡単に整理できないということで、地方版産業再生機構を創設する構想は安倍政権時代からあったわけですが、その後の政権の迷走で棚上げされ続け、そうこうするうちに今回の経済危機で、地方企業の窮状は待ったなしの状況となりました。

また2007年3月の夕張市の財政破綻により自治体財政の早期是正措置が決まり、自治体の出資する第三セクターまで連結対象とされる一方、自治体と微妙な関係にある地方銀行にとっては、三セクへの出資や融資はお荷物だった上に、破綻となれば損失を被るということで、産業再生機構の地方版として(仮)地域力再生機構の創設はこの面がらも期待されておりました。

というわけで、政局の迷走で棚上げされていた問題が動き出したようですが、三セクは対象外となりそうです。

地域力再生機構、地方中堅企業支援に軸足 三セクは対象外に
考えてみれば甘い見通しで事業着手した三セクの後始末を預金保険機構半額出資の機関が面倒見るのも変な話で、自治体の不始末を預金者の負担で救うことには問題があります。三セク処理は地方政治のガバナンスで対応する、つまり地方の納税者の判断に委ねる方が理に適っております。

とすると困った問題として、整備新幹線の並行在来線問題が絡んできます。地方ローカル線に比べて事業規模は大きいけれど、新幹線に都市間需要が移行した後のローカルな需要を満たすのに本線規格の立派な線路を維持しなきゃならないわけで、負担ばかりで将来展望はなし、加えて多数の自治体が関与しますから、足の引っ張り合いも起こりえます。例えばIGRいわて銀河鉄道では、旅客輸送は赤字で、国の補填でJR貨物が支払う線路使用料で辛うじて黒字という状況にある上に、高額の料金収入が得られる夜行列車が、北海道新幹線青函トンネル区間の工事間合い確保のために北斗星1往復が運休となって収入減という皮肉な結果となっております。なまじ新青森までフル規格化したために、新函館延伸の影響を受けてしまったわけですから、出資自治体にとっては辛い話です。

こういった現実が見えてくると、整備新幹線に地域がNOをつきつけるということも考えられます。元々整備新幹線は地方にとっては負担ばかりの話ですが、直轄国道などと同様、元々地方の請願、陳情によって事業化された経緯もありますので、事業をやるために地方負担を一時棚上げが考えられているようですが、一時しのぎで問題を先送りするだけです。基本的には税源委譲で地方に判断を委ねるべきでしょう。

というわけで、メディアの政局報道では見えてきませんが、各論では与野党の歩み寄りも見られる状況です。ただ懸念されるのは、小沢民主党代表の西松献金問題で風向きが変わったことで、折角の歩み寄りがまた棚上げされる可能性もあります。この献金問題にしても、小沢代表は「適法に処理している。(違法と言うなら)公判で決着をつけよう」と言っているわけで、これ以上公明正大な説明はないんですが、「説明責任を果たせ」というメディアの論調は何を意味するのでしょうか。代表を辞任して見えないところで検察と手打ちしなさいというわけでもあるまいに。あるいは政治ショーとして「腹切って見せろ」ということなのか。現実的に公判となればマンパワーの面で小沢氏が代表に留まるのは難しいと思いますが、検察とガチンコの姿勢をとる事で、今まで曖昧に処理されていた迂回献金による実質企業献金に拘束力のある判例が出るわけで、国民としてはそれこそが望ましいことではないでしょうか。最後はやや脱線でした^_^;。

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Sunday, April 12, 2009

KANSAIスルッと箱根越え

先月25日ですから、ニュースとしてはやや旧聞に属しますが、ニュースバリューありと判断し、遅まきながら記事を起こします。

西武と小田急、関西の私鉄と資材共同購入 4月から
西武鉄道、小田急電鉄、箱根登山鉄道の3社がスルッとKANSAI協議会と鉄道事業関係の資材調達の共同化を決め、4月から実施されます。しかも関東3社の取引先も共同購入の斡旋がされるということで、相互性のある提携関係というところがポイントです。スルッとKANSAI協議会のリリース(PDF)(西武、小田急、箱根登山鉄道と連名)もご参照ください。

というわけで、かなり評価の難しいニュースです。というのも、JR東日本のSuicaが提携先を順調に増やしているのに対し、ローカルカード化が心配されるPASMOという構図が隠れているからです。PASMOは元々寄り合い所帯で加盟社局間の連携が不十分という点に関し、当ブログでも度々指摘してまいりました。一例はPASMO品切れバスで取りすぎなどの記事で述べているとおりなんですが、そもそも何のためのICカード乗車券だったのかがはっきりしない中で、サーバをSuicaに依存し、提携ハウスカードで乗客を囲い込むことには熱心でも、システムとしての全体最適は置き去りにされている状況で、加盟予定社局の足並みが揃わない中でのこのニュースですから、つい深読みしたくなるというものです。

元々乗車券カードの共通化に関しては、JR西日本の攻勢にさらされていた関西私鉄各社の取組みが早かったのですが、カードの共通化に留まらず、今回関東3社が加わる資材の共同購入などにも守備範囲を広げ、調達コストを約2割削減するなど成果をあげております。おそらく今回参加した関東3社も、PASMOで同様の取組みが行われていれば、違った対応をしていた可能性がありますが、元々寄せ集め感の強いPASMO参加社局間で足並みが揃うのを待てなかったということなんだろうと思います。特に名義株問題で堤前会長が刑事訴追を受け、東証の内規により上場廃止されて経営再建中の西武鉄道には切実でしょうし、また複々線化の進捗に伴ない減価償却負担が重い小田急電鉄、箱根観光の空洞化に苦しむ箱根登山鉄道ではなおさらでしょう。

ただしPASMOに関しても、Suicaの提携範囲を拡大するJR東日本の前に、PASMOが関東限定のローカルカードになるという危機感はあるようですが、一方で過大な初期投資を要求される中小事業者にとっては、加盟のハードルが高まるエリア拡大には慎重姿勢が強く、加盟社局間の意思統一には至っていない状況です。そんな状況でとてもじゃないけど守備範囲拡大となる資材の共同購入なんて話が割り込む余地はないということですね。

一方で加盟社局間の絆が強いスルッとKANSAIですが、ICカード乗車券のPiTaPaに関してはポストペイというクセ球を投げてきております。いわば少額決済用の簡易クレジットカードとなるわけで、いちいちチャージが必要ない上に、記名式でポイントサービスを充実させやすいなどの特長があります。ゆえに発行に手間がかかる分発行枚数は少ないものの、サービスの充実ぶりは大したもので、回数券や定期券制度まで取り込んでおり、関西エリアのみならず、静岡地区(静岡鉄道)や岡山地区(岡山電気軌道)でも使える上、さらにエリア拡大を狙っているということで、加盟社局間の足並みも揃っており、いずれ首都圏にも攻めてきそうです^_^;。となるとPASMO陣営で個別にPiTaPa導入なんてことも視野に入っているかもしれません。

というわけで、これゲームの理論でよく用いられる囚人のジレンマを連想させます。共犯関係にある犯人同士を隔離して別々に取り調べ、証言すれば刑を免除すると持ちかけると、結局囚人同士全てを証言して揃って刑に服することになるわけですが、最適解は共に完全黙秘して証拠不十分で放免されるシナリオです。いわゆる協力ゲームとすることで利益が最大化するという昨今の行動経済学の基本的なスタンスですが、100年に1度の経済危機に、漢字が読めない首相と秘書逮捕で選挙の票が読めなくなった野党党首の足の引っ張り合いを見るにつけ、ちょっと考えさせるニュースです。

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Thursday, April 09, 2009

JR東日本仙石線でATACS導入決定

経済危機と高速道路1,000円乗り放題の影響で業績見通しを下げているJR各社ですが、明るいニュースです。

JR東日本、無線による列車制御システム(ATACS)の実用化計画を発表
ATACSに関しましては以前にも記事にしましたが、仙石線あおば通~東塩釜間で2011年春に実用化されます。一応同線同区間では以前から試験は行われていたのですが、一歩を踏み出すこととなりました。JR東日本からの公式発表はこちらです。
無線による列車制御システム(ATACS)の実用化について
重複しますが、ザックリ解説しますと、従来左右のレールを車輪で短絡することで列車の在線を検知し、信号を切り替えたりポイントなどの進路選定の連動関係を取るいわゆる閉そくと呼ばれるシステムを、GPSを利用したデジタル無線通信により、列車間隔や進路選定などをソフト的に制御するもので、従来のATS,ATC,CTC,ATOSなどの運行管理システムを一元的に制御するシステムです。

鉄道の保安装置の基礎となる閉そくですが、前の記事でも指摘したように、メンテナンスが厄介な上に、応答性にも弱点があり、列車間隔を詰めようとすれば先行列車の影響を受けるので、必然的に渋滞が起こり、ラッシュ時の速度低下は日常的に見られるとおりです。また列車間隔を詰めるために固定閉そく長を短くしようとすれば、動力用電力の帰線に使われるレールに脈流である信号電流の絶縁セクションを設けるため、インピーダンスポンドと呼ばれる特殊なコンデンサを用いますが、鉄道信号でしか使われない専用品で高価な上、風雨にさらされ経年劣化もありますので、コスト面で不利なものでもあります。

また高密度輸送を支える保安装置自体も高度化、複雑化の一途を辿り、その分トラブルが起きやすい環境になっているとも言えます。つい先日こんなニュースもありました。

朝の千代田線立ち往生 信号故障で一時7万8000人に影響
原因は、通常は自動制御されるATCを訓練のため手動に切り替えていたときに、係員の誤操作をシステムが異常と認識して停止信号を出したものだったわけで、典型的なヒューマンエラーで、誤操作で停止はシステムが正常な証しですから、安全性に疑義はないのですが、複雑さ故に不具合の発見も簡単ではないわけです。それに比べるとATACSのシステム構成はシンプルです。

あと今の時期にJR東日本がATACSの実用化に舵を切った理由ですが、こんなニュースを見ると見えてきます。

国際鉄道連合に初の日本人会長 JR東の石田氏が就任
JR東日本が鉄道関連の国際機関トップを出したタイミングですので、ひょっとするとJR東日本はATACSで世界標準を取りに行くつもりかもしれません。これ結構重要です。例えば台湾高速鉄道でのドタバタやICカード乗車券でFERICAシステムがISO認証を受けていないことに対する欧州からのクレームなど、日本が誇る鉄道システムも標準化の面で立ち遅れていたことは否めないところですが、まぁつい最近まで日本を代表する産業と目されていた自動車や電機でもそうだったんで、JR東日本がそのことに気づいて標準化に動いたとすれば、日本発の脱ガラパゴス戦略として注目されるところです。

とはいえATACSのようないわゆる移動閉そく(クロージング・イン)システムは、旧国鉄でも混雑激しい中央線への導入を計画していたぐらいで、アイデアは古くからあるにも係わらず、実現できていないように、かなり難易度の高い技術開発ではあります。旧国鉄時代の電気通信技術では、おそらく電算車1両増結して専用の信号線と常時接触などが必要だったかもしれません。当時中央快速線の最混雑時間帯の混雑率は300%超と言われ、東中野東方の神田川橋梁上で混雑でドアが破損し乗客が落下するという事故まで起きており、高加速のモハ90系(後の101系)とクロージング・インで1分間隔運転を実現することが大真面目に検討されておりました。実際は変電所要量不足で計画が頓挫したのは、以前の記事でも指摘いたしました。その意味ではデジタルIT技術の進化が、やっと積年の夢の実現を可能にしたということはできそうですが、課題もまたさまざまあります。安全に係わるだけに、システムとして破綻しないことが求められます。その難易度はおそらくリニアやテポドンにも引けを取らないでしょう。利用価値ははるかに高いですが(笑)。

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