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Thursday, June 11, 2009

エコだまし100年に2度の仏の顔

政府は2020年までの温暖化ガス排出削減目標を発表しました。

温暖化ガス15%削減、20年目標 首相表明「国際交渉を主導」
京都議定書が1990年比6%削減なのに対し、2005年比15%としました。分母を変えた理由は、削減率を大きく見せるためでしょうけど、2012年までの京都議定書の削減目標との連続性を否定するのは問題です。05年比-15%は90年比-7%程度にしかなりません。排出権売買を含まない国内の真水の削減だということで、7月のラクイラ・サミットや12月コペンハーゲンで開かれるCOP15での国際交渉の余地を持たせたという意味のようですが、早速国際的に叩かれております。
日本の温暖化ガス削減目標、途上国など「数値は不十分」
日本政府の外交ベタはどうしようもありません。

以前敗け続けるニッポンという記事で、国際決済銀行(BIS)規制で日本代表が押し込んだ銀行保有資産のリスク評価の問題を取り上げまして、主に欧州銀でサブプライム関連の資産の焦げ付きに飛び火したことを取り上げましたが、この手の話は日本が絡む外交交渉では度々出てまいります。温暖化防止関連でも、森林のCO2吸収を認めさせながら、国内排出権売買市場が整備されていないので、生かせないというアホな話になってたりします。この辺は以前にも指摘いたしました。

国際交渉ではWTOの農産物関税問題でも、自由化を迫る米に抵抗する日欧という構図が、欧州が関税を補助金に切り替えて米と妥協したために、日対米欧の対立に変わったりしてますし、国際捕鯨委(IWC)で叩かれているのも、今や船団を組んで遠洋で操業するのは日本の南氷洋調査捕鯨のみで、捕鯨大国のノルウエーやアイスランドも今は自国の近海での操業しかしていません。日本も和田浦や太地の伝統捕鯨保護にシフトすれば国際世論の理解を得られるのに、かたくなに南氷洋の調査捕鯨を続けていることで孤立しているのです。日本が絡む国際交渉は日本政府のKYぶりが目立ちます。

温暖化問題は以前にも地球温暖化と日本の勘違いという記事で取り上げまして、日本の省エネ大国という自己評価は、実は通勤電車のラッシュとウサギ小屋(小さな家)のおかげという話をいたしました。今回の政府目標の基準年を90年→05年としたことで何が変わるのかといえば、バブル真っ盛りの90年よりも輸出好調ながら所得が伸びず内需が冴えなかった05年の方が排出量が増えているわけですが、主に運輸と家庭部門での排出が増えたと言われます。つまりマイカーが増えてウサギ小屋いっぱいに家電が普及したということです。何のことはない、自動車と家電メーカーが商品を売り込んだ結果として排出量が増えたということです。

あとIT革命でコンピュータや通信機器その他の電子機器類が爆発的に増えたことも忘れてなりません。それらの問題をハイブリッド車の普及と原子力や太陽光発電で解決できると考えるのは無理です。車自体を減らすことと、太陽光以外の自然エネルギー利用や家庭用燃料電池など小規模発電の活用などを組み合わせる必要があります。米オバマ政権が掲げるスマートグリッド(賢い送電網)のような仕組みが必要ですが、電力会社の発言力が強く、発電送電一体で大規模発電と遠距離送電が効率的→だから原子力利用が必要という論法から脱却できないのです。例えば風力利用ですが、発電機はモーターと同じ仕組みであることを思い起こして欲しいのですが、大規模発電所に連なる送電網に出力の小さい風力発電機を直接繋ぐと、巨大扇風機になってしまいます(爆笑)。ですから、電力を一時貯蔵するNAS電池や、電力の逆流を防ぐ仕組みが必要で、そのための投資をしたくないのが電力会社の本音です。

別の視点として、そもそも洞爺湖サミットで2050年までに世界で50%削減を謳ったわけですが、これを人口1人当りの排出量で見ると2t/人となります。現在日欧で10t/人、アメリカ20t/人で、中印など新興国も含め、全ての国で削減が必要な水準で、排出を増やせるのはアフリカ諸国ぐらいです。日欧で80%削減、アメリカで90%削減が必要な水準です。こういった長期目標を決めておきながら、中期目標がそれへの橋渡しにならないというのは、論理的におかしいわけですね。

こういった点を踏まえると、いわゆるカイゼンで到達できる目標水準ではないわけですが、気になるのは、50%削減の長期目標決定に関与した人のうち何人2050年時点で生きているかということですね。どうせ自分は生きていないから、思い切った目標を掲げられるんだということならば、単なる先送りの口実にしかなりません。基本的に産業革命に匹敵する産業構造の変革が不可欠ということになります。その意味ではより厳しい目標を設定し、従来とは異なったアプローチを取らざるを得ない状況を作り出すことこそが重要です。

一方で100年に1度といわれる経済危機の中にあって、野心的な目標を掲げる欧州でも、企業サイドから経済危機を理由に規制を緩めて欲しいという声が出ておりますが、各国政府は無視しております。場合によっては温暖化防止が原因で経済が停滞しても良いとさえ考えているフシがあります。それぐらいしないと目先の利益に追われる営利企業が本気にならないという風に考えられているわけです。産業界に甘い日本政府とは大違いですね。

それどころか欧州委では2100年時点での世界の平均気温上昇を2度に抑えるという超長期目標さえ掲げております。将にホトケの顔もここまでよということです^_^;。

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