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August 2009

Sunday, August 23, 2009

尼崎脱線事故で企業体質を認めた山崎社長

福知山線尼崎事故で、大きな動きがありました。

尼崎脱線事故、歴代社長の責任明言 JR西、被害者説明会で
事故から既に4年。この時期にJR西日本が被害者説明会を行うというのも異例ですが、歴代トップの責任にまで言及し、企業体質に問題があったことを認めたことは、大きな1歩かと思います。

この問題は前の記事でも指摘したとおり、司法が山崎社長1人の責任しか問わないことが問題なんですが、訴追を受けた山崎氏本人も、さすがにこれではまずいと考えたのでしょう。何しろ起訴の理由が、JR東西線との直通運転のために福知山線上り線の線路付け替え時に鉄道事業本部長だった山崎氏には、事故を予見できたのに新型ATSの設置など必要な措置を怠ったことが、業務上過失致死傷に当たるというのですが、無理スジの話です。

というのは、当時JR西日本幹部間で、どのようなやり取りがあったかはわかりませんが、本業の設備投資計画を経営トップではない1事業本部長の権限で決められるわけはないんで、その点で井出、南谷、垣内の歴代3社長を不起訴として、逆に安全対策をうるさく進言して事故当時系列会社に出向させられていた山崎社長の起訴というのは不満の残る神戸地検の対応でした。

当然山崎氏としては1人で責任を被るつもりはないでしょうし、遺族にとっても不満ということで、検察審議会に歴代社長の起訴を申し立てております。

尼崎脱線事故「歴代3社長起訴を」 遺族、検察審に申し立て
今回の山崎氏の対応は、被害者からの評価されているようです。
尼崎脱線事故、JR西社長の謝罪に評価も 被害者ら
山崎氏のこの決断が、JR西日本を企業として事故に向き合わせることを期待したいと思います。何度も繰り返しますが、起きてしまった事故は取り返せませんが、それと向き合うことで、未来に生かすことはできます。JR西日本がやっとその入り口に立ったものと評価しておきます。

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Friday, August 14, 2009

地震で盛土崩落の東名高速、意外と脆かった物流インフラ

道路ネタ連発で"道路的部落"と化している当ブログですが^_^;ご容赦ください。まずはメディアチェックです。

静岡で震度6弱、6人の負傷者確認
地震が早朝だったこともあり、地震そのものによる直接被害は少なかったようですが、交通への影響が次第に明らかになります。
東海道新幹線が運転見合わせ 東名高速も一部通行止め
新幹線は営業時間前でもあり、ユレダスが作動してき電停止されてますから、マニュアルどおり目視安全点検後再開となり、始発から2時間後の午前8時に運転再開したわけですが、東名高速の方は実は深刻な事態でした。
東名高速「きょう、明日の復旧は難しい」 国交相
お盆の帰省シーズンであり、週末限定のETC割引を特例で13,14両日にも実施することが決まっていたことから、当然それに復旧を間に合わせようということになりました。
東名高速、13日にも通行止め解除 駿河湾震源の地震
しかし被害は予想以上に大きく、復旧はずれ込みました。
東名復旧、13日午後以降にずれ込み 被害予想より大きく
しかし更にずれ込み、復旧を上下線で分離することで当座を凌ぎました。
東名高速下り線、全面開通 上り線も一部通行止め解除
とりあえず下り線は開通し、それを知らずに中央道へ迂回した車も多数あったことから、スムーズな再開とはなりましたが、上り線の復旧はずれ込み、「行きは良い良い帰りは怖い」状態は続きます。
東名全面開通「15日中」
驚いたのは高速道路の盛土の脆弱さです。特に整備時期が古い東名、名神などでは、耐震強度などはほとんど意識されず、事後的な補強もほとんど行われていなかったし、今回の崩落地点も、復旧工事で搬入した重機の足場が崩れるという形で、予想外の結果となったわけです。それと比べると東名高速より古い東海道新幹線では盛土の崩落はなく、マニュアルどおりに復旧できたことが際立ちます。この差はどこから来たのでしょうか。

結論から言えば、減価償却がされていたか、いなかったかの差ということができます。鉄道事業は営利事業である前提で、事業用固定資産の保全による事業の継続性が求められ、東海道新幹線が開業した1964年から国鉄でも、民間並みに資産の減価償却が行われるようになりました。減価償却はちょっとわかりにくいのですが、企業が事業用資産を取得して操業を続けることで、機械などの現物資産ならば経年で劣化して資産価値を減じることになるのを、会計上一定のルールの下に取得価格の一部を費用化して利益から控除する仕組みです。言い換えれば利益の一部を無税で積み立てて内部留保資金とすることになるわけで、現物資産を部分的に現金資産に交換するという表現がわかりやすいかもしれません。

ルールに従って現金化された資産は、基本的に使途自由ですが、通常は事業の継続性を保証するために、老朽設備の大修繕や交換などに充てます。鉄道のように投資規模の大きい場合は、投資資金の多くが借入金で調達されますから、割賦払いの原資として使うこともできます。また災害復旧の費用に充てることもできます。これらの場合その分会社全体では資産は目減りするわけですから、減価償却で得たキャッシュフローをどのように配分するかは、経営上重要な意思決定といえます。

その辺を踏まえれば、地震の被害が経営に重大な影響を及ぼすことが容易に理解される新幹線では、路盤の補強やP波を検知して本震前にき電を停止するユレダスの設置などの対策が取られたことは当然のことといえます。そのように仕向ける仕組みができていたわけです。

一方の高速道路ですが、道路公団の事業として民間の会計基準によらない特殊な基準で対応されておりました。特に通行料は諸経費を控除後に整備費用の債務償還に回さなければならないわけですから、見かけ上の利益を圧迫する減価償却の仕組みを取り入れることは強い抵抗があったわけです。加えて1996年に東京都日野市が、市域を通過する中央自動車道への固定資産税課税を打ち出したように、高速道路自体が法的にあいまいな位置づけにあることが影響しております。この問題に関しては面白いレポートがネット上で公開されておりますのでご参照ください。

日野市の高速道路課税について
~なぜ政策イノベーションは失敗したか~(pdf)
地方分権も重要なテーマですが、ここではこれ以上立ち入りません。それよりも高速道路が料金プール製の下で永久有料化が決まった1995年の決定を受けて、地方自治体からこのような提案がされたことが重要です。

実は高速道路の料金制を維持することの制度上のリスクが明らかになったわけで、だからこそ道路公団民営化が検討されたときにも、道路会社の直接保有ではなく、JR発足時の新幹線保有機構に倣って(独法)高速道路保有・債務返済機構が保有し、道路会社にリースする仕組みとされたのです。道路公団民営化が、いかに矛盾を糊塗するものであったかということです。

ちなみに新幹線鉄道保有機構は1987年にJR各社と共に発足し、国鉄長期債務の一部を引き継いでJR東・海・西各社のリース料で償還する仕組みだったのですが、JR東日本の上場準備の過程で東京証券取引所の事前審査で「収益の柱となる主要な事業用資産を自己保有していないことはリスク要因」とする見解が示され、特に日本の税法ではリース資産の減価償却は行われないので、資産の保全による事業の継続性に疑義が生じることが指摘されたわけです。そこでJR東日本が東海と西日本に呼びかけ、新幹線資産の買取りを国に求め、1991年に実現して新幹線保有機構は解散されました。この伝でいえば、民営化された道路会社の株式上場は同様に難しいということになります。

ところで、ここまで来ると、じゃあ現在行われている東名高速の盛土崩落の復旧工事の費用は誰が負担するのかという素朴な疑問が出てまいります。おそらくは通常の道路保守費用の範囲内で道路会社が負担することになると思われますが、そうすると今度は、今回の崩落現場以外にも危険箇所は存在するでしょうから、その計画的補修、補強はどうなるかという疑問が出てまいります。おそらく財政資金を投入する以外にないと考えられます。

とすると民主党がマニフェストに盛り込んだ高速道路無料化は難しいのかという疑問も沸きます。これに関しては私個人は楽観しております。その前に、詳細が明らかでなかった民主党の高速道路無料化案の細部が一部明らかとなりました。

高速無料化「首都高・阪神除く」 民主幹事長が明言
今まで具体論には踏み込んでいなかったのですが、2012年時点で首都高、阪神高速を除く全国の高速道路が無料化されるということで、私が考えていたよりも範囲が広いですね。実は東名は無料化から除外される可能性が高いと考えていたもので。

というのも、太平洋ベルト地帯を貫き、物流インフラとして存在感の高い東名の無料化は、首都高などと同様渋滞がひどくなると考えていたのですが、東名だけ有料で残せば、おそらく無料化される中央道へシフトしてしまうだけでしょうから、確かにこの方がすっきりします。

更にオンライン上の記事では割愛されておりますが、紙面上では、高速道路関連の債務35兆円は国が引き取り、国債発行でファイナンスし、60年かけて償還するということで、無理のない返済計画であり、道路の保守費用は首都高と阪神高速の料金収入で賄うことも明らかにしております。つまり債務が消えれば料金収入から保守費用を捻出するのは容易ですので、現実的な解といえます。

そして高速道路保有機構が発行する機関債がなくなるわけです。料金収入が消えてリース料がなくなるわけですから、それを担保に発行される機関債は繰り上げ償還されますが、サブプライムショックで破綻の危機に瀕し、政府が救済した米ファニーメイ、フレディマック両社のように、暗黙の政府保証は、経済情勢次第で隠れ借金として財政にのしかかるリスクがありますので、国債で借り替えるのは、隠れ借金の見える化でもあるわけです。加えて残高800兆円を超える財政状況の中で、35兆円の積み増しは大勢に影響なし、むしろ政府試算で7兆円を超えると言われる無料化の経済効果で税収が増えることも忘れてはなりません。

加えて道路会社の判断に委ねられている高速道路の新規着工が止まる効果が重要です。料金収入があるから借金を積み増して、破綻したら暗黙の政府保証で国に助けてもらうということができなくなるわけですから、中長期の財政再建にも寄与します。

ただ、懸念されるのは東名のように元々物流インフラとして重要度の高い路線の場合、当然無料化は交通量の増大を通じてさまざまな影響があるわけですから、もう少し慎重に考えても良いかもしれません。特に温暖化防止との整合性が問われる部分です。

元々利用度の低い地方の高速道路の無料化は、CO2排出増も知れてますが、東名の交通量が増え、かつ渋滞が増えるとなれば無視できません。むしろ「だから第二東名は必要」という声を増強しかねないし、その可能性の芽を摘む無料化は「間違い」と糾弾されるリスクを民主党は自覚しているでしょうか。そのあたりに一抹の不安があります。

私はこう考えます。第二東名、第二名神の完全整備で物流インフラは確かに増強されますが、そのための費用が10兆円ほどと、何とリニアを大阪まで整備した場合と同等の見積もりとなります。その一方で温暖化対策としてトラック輸送の鉄道貨物へのモーダルシフトを前提とすれば、名古屋の南方貨物線や城北線の整備や変電所増強、着発線有効長延長による列車単位の増強と所要電力を賄う変電所増強など一切合切の合計で1,000億円程度と見積もられており、何と1/100で済むのです。この程度ならば国の財政支援で可能ですから、東名を無料化するなら、ここまでセットでぜひ考えてもらいたいところです。

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Sunday, August 02, 2009

外環道三すくみ、虚妄の民営化

道路ネタが続きますがご容赦を。整備計画の凍結が解除され、着工が決まった東京外郭環状道路(外環道)大泉JCT―世田谷間ですが、事業者選定を巡って椿事が起きています。

外環道事業主体に首都高も名乗り 未着工区間、三つどもえ戦に
元々東日本と中日本の2社は、以前から事業着手に意欲を示していたのですが、そこへ首都高速道路会社が名乗りをあげ、事業者選定が頓挫してしまいました。

背景は今年度末に開業する中央環状線新宿―大橋間の工事終了後の技術系社員600人の処遇問題があるようです。いわばリストラ回避のために新規事業への参入を模索した結果ですから、それ自体は責められるものではありません。

問題は、東日本や中日本ならば既存の高速道路網と一体的に運営できるということで、国交省で両者の表明しか予想しておらず、国交省としては中央道JCTを境に両社に分担させるいわば談合シナリオを描いていたところに、首都高の表明があって、予定が狂ったということにあります。

ややこしいのは、東日本と中日本は、いずれも国100%出資であるのに対して、首都高は都が26%を出資するために、事業者選定に当たって都の意向が無視できないという点です。まるでとなりのメトロの道路版のような話ですが、ちょっと違うのは、メトロが株式上場を控えていて、都の保有株式の扱いが、上場の阻害要因になっているのに対し、外環道は、道路公団民営化でドサクサ紛れに実現した高速道路整備への税金の拠出によって、1兆2,820億円の事業費のうち、道路会社の負担可能額を除いた部分を国と都が分担する仕組みになっており、都の意向が過剰に働く可能性が高いという点です。

元々道路公団民営化では、新規整備は基本的に凍結されることとされ、整備にあたっては道路会社の意向が尊重される仕組みだったのが、上記の財政資金投入によって骨抜きとなったものです。これも元々は小泉政権時代の歳出削減方針によって、2007年度以降道路財源に余剰が出ることが確定したことから、ずっと積み残されていた宿題を、高速道路整備の抜け穴に利用された結果です。

そして国交省が元々東日本と中日本の談合決着を考えていたように、参入希望が増えたからといって、それが即競争によるコストダウンにつながっていないことが、問題をややこしくしています。というのも、国交省が3社に実施したヒアリングで、負担可能額は3社横並びの2,500億円ということで、国交省が想定したように、既存高速道ネットワークとの一体運営に利があるならば、差がつかないはずがないんで、事前の情報漏えいも疑われます。

というわけで、国鉄改革では明確に財産分割がされて、整備新幹線に関しても、並行在来線を保有する旅客会社が事業主体となるように新幹線整備法が読み替えられたのと違って、元々凍結解除時の事業者選定がルール化されていなかったために、事業者選定が頓挫することになったわけです。後先考えずに利権漁りした結果ですね。

そんなことしてる間に、政権交代が起きて、民主党が暫定予算14兆円の執行停止を睨んだ精査を打ち出しておりますから、おそらく引っかかって再凍結となる可能性が高いと考えられます。あるいはそれを嫌って国交省が都の意向を汲んだ政治決着で首都高へ落札し、予算執行を強行する焦土作戦に出る可能性もありますが、その場合、住民説明会が紛糾する可能性もあり、選挙前の予算執行は限りなく可能性0%と考えられます。

一方で、元々基本計画線だった外環道練馬―世田谷間を着工するためには整備計画への昇格が必要だったのに、整備計画線ながら凍結され、今回解除されなかった第二名神の扱いを巡って、例の名物知事は納まらないでしょう。

「新名神、凍結解除に合理性」橋下知事強調
確かに外環道の整備計画線昇格によって、債務の総額は増えるわけで、また国幹会議に提出された資料で費用便益比で外環道と第二名神の未着工区間はほぼ同等とされており、法律家らしい切り込み方です。

というわけで、不透明極まりない意思決定ですが、それもこれも、道路公団民営化がいかにインチキだったかということです。

あと良い機会ですから、民主党の高速道路無料化に関しても見解を述べておきます。民主党の主張の肝は、40兆円を超える高速道路債務の償還方法に関する提案として、財政支出で賄い料金収入によらないことを謳ったものです。現状では各道路会社が収受する料金収入から、保守費や人件費を除いた部分を(独法)高速道路保有機構がリース料として徴収し償還に充てる仕組みですが、保有機構はリース料を裏づけに機関債を発行して資金をファイナンスしているわけです。政府機関ですから、暗黙の政府保証ありと見なされはしますが、政府発行の国債よりは信用度が下がりますから、その分のリスクプレミアムが金利に上乗せされますので、それだったらそれを国債に置き換えて償還した方が、金利負担が下がるから、結果的に国民負担が減るということです。

加えて特に利用度の低い過疎地の路線で道路通行料を無料にすることで、遊休施設の有効活用を図りながら物流費が削減され、企業収益の向上や物価下落による家計消費の拡大が望めるので、税収増を通じて償還財源の手当もされるということになるわけですが、うまくいくかどうかは必ずしも明快ではありません。

ただし今回のマニフェストでは「地方から段階的に無料化」の文言が盛り込まれており、政権交代即全面無料化ではないということで、おそらく料金収入の少ない地方の路線から徐々に実施することになると考えられます。その場合でも、不採算路線が道路会社から切り離されるわけですから、道路会社の収支は改善されます。それを原資に繰り上げ償還や料金引き下げが可能となり、そのルートでも国民負担は減ることになります。問題はその超過利潤を道路会社が内部留保したり随意契約などでファミリー企業に所得移転したりすれば表へ出ないわけで、このような利益隠しを許さない監視体制を取れるかどうか、民主党の政権運営に高いハードルを課します。

といように、メディアはマニフェスト選挙で字面を追い、政党間で中傷合戦の様相となっておりますが、マニフェストは行間も読まなきゃなりません。思えば前回2005年の総選挙でも、郵政民営化は約束されたものの、円安誘導で国民窮乏化による企業を支援とは約束されておりませんし、日銀への圧力で低金利を続けますとも言っておりません。

ま、これは日銀法違反に当たりますから明言できませんが、その結果米国内消費バブルをもたらし、外需でも米国向け輸出に過剰に依存した結果、リーマンショックで一気にクラッシュしたわけですから、「百年に1度の経済危機」と他人事では済まされません。対外収支不均衡や円キャリートレードの肥大化は、巻き戻しが起これば経済に多大なダメージを蒙ることは以前から警告されていたにも拘らず、回避策は一切取られなかったわけですから、不作為責任を問われる事態でもあります。

あとよく言われる財源問題ですが、財源の目途もないままに北海道新幹線札幌―長万部間の着工が決まったものの、着手できない体たらくをどう評価すべきでしょうか。

という具合にマニフェストに書かれて実行されたことされなかったこと以外に、書かれなかったけど実行されたことと実行されなかったことも、併せて評価の対象となるわけで、ゆとり世代記者も現場デビューしている現在のメディアに果たしてその力量があるかも試されているのです。外環道を巡る報道でも、日経新聞でさえ政権交代で無料化されれば外環道も白紙という内容の報道をしておりますが、正確には補正予算の執行見直し過程で凍結の可能性はあるものの、無料化とは別の話です。メトロと都営の経営統合というガセネタを流したTBSや、岐阜県庁の裏金問題で嘘の証言を流したNTVなど、アカンタレやってる場合じゃないぞ。

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