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September 2009

Friday, September 25, 2009

高速道1,000円渋滞で鉄道回帰

政権交代が実現し、鳩山首相の外交デビューも順調です。気候変動、核廃絶など、民主党の主張に近い関心が国際社会で広がっていて、丁度国連首脳外交やピッツバーグのG20サミットなどの外交日程が政権交代をアピールするチャンスとなったなど、ラッキーな面はありますが、期待の持てる十分な成果が見られます。

民主党が掲げる内需拡大策の目玉は、何といっても子ども手当と高速道路無料化ですが、まだまだその意義に対する国民的理解は不十分です。とはいえマニフェストに明記され、それを国民が信認して政権を与えた以上、民主党政権はこれを実現する責任があります。実現にあたっては当然生煮えな部分を国会で野党に追及されるわけですから、実現可能性を高めるための修正協議もする必要がありますが、一方で安易な妥協は308議席の与党議員の追求にさらされるわけです。今さらながらマニフェストの重みを思い知らされます。

というわけで興味深いニュースです。

秋の連休、鉄道好調 東海道新幹線、GWより8%増
秋の5連休で渋滞予想から利用者が鉄道へ回帰しているというのです。1,000円高速の影響で減少した利用が戻っただけといえばそれまでですし、JR各社が対抗策で割引キップを出した効果と考えると、ひょっとしたら売上は戻っていない可能性はありますが。

あと航空も同様に利用者が戻っております。春のGWではあの新型インフルエンザ騒動が公共交通利用忌避を招いた部分もありますが、むしろ今、流行が本格化している中で利用が戻っているのですから、この影響は軽微なのかもしれませんが、断定は避けておきます。

一方でオンライン版の記事では省略されてますが、各道路会社によれば高速道路利用はGW時より4%減ということで、明らかに渋滞が忌避されたことが読み取れます。しかし納得がいかない部分もあります。というのは渋滞の発生はむしろ増えた点です。しかも50km超の渋滞が複数個所で発生するなど、見かけ上渋滞はひどくなっているのですが、これは結局利用時間が集中したことの影響のようで、ちょっと時間をずらせば渋滞を回避できたケースも多いようです。ということで、高速道のETC割引による内需喚起という前政権の置き土産で、貴重な社会実験がなされたということになります。

渋滞は利用の集中で起きるわけですから、週末限定のETC割引は、そもそも渋滞を誘発する要因を内包しているわけです。ですから、GWや夏休みの高速道の渋滞を理由に、民主党の言う高速道無料化でもっとひどいことになるということも言われたのですが、その論拠は怪しいわけです。むしろ曜日限定がなくなれば、利用の分散で渋滞は減るという議論も可能です。

あと高速道路無料化は自動車利用を助長しCO2排出を増やすという議論があり、国交省でも他の交通機関からの利用の移転でCO23割増との試算を明らかにしてますが、一方で同じ国交省で並行道路の渋滞緩和でCO2削減効果は4割弱になるという試算もあります。これは計算の前提が違うために起きたミステリーですが、前者は交通機関の選択のみに絞った試算で、後者は渋滞緩和に絞った試算で、他の条件は考慮しておりませんから、実際は両方の効果が相殺されて中立に近い結果となる可能性が高いといえます。

というわけで、マニフェストに明記されていないJAL問題と違って、マニフェストに謳い政権を得た以上、高速道路無料化はやらなければならないことであり、JRや高速バス事業者などから否定的コメントが相次ぐ中、あえて申しあげますが、この程度の競争条件の変化は、経営の責任で対応すべきです。また変化はチャンスでもあるわけで、変化にいち早く対応した者が、多くの果実を得るのがビジネスの世界の鉄則です。各社の奮起を期待します。

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Tuesday, September 22, 2009

グッドJALバッドJAL

やー、前の記事で指摘したように、ホントにJAL問題は新政権の命運を左右する問題になりそうです。

日航の新旧分離要請へ、政投銀など主力行 実質債務超過の恐れ
ソースは明かされておりませんが、おそらく日経の独自取材によるスクープでしょう。元々9月末期限の再建策を見て対応を決めるとしていた日本政策投資銀行他の金融機関ですが、とても追加出資は無理ということで動いたのでしょう。加えて政権交代で、与党族議員などの圧力を受けることなく抜本改革が可能になったという見方もあるのでしょう。前原国交相が24日にJALや金融機関などからヒアリングを予定しているタイミングですから、なんかいきなり生臭い話に発展した感があります。

処理のスキームは米GM支援に似たグッドカンパニーとバッドカンパニーに分離し、前者へ国が支援し、後者は時間をかけて清算処理するというものですが、日本国内の事例としては、国鉄改革で旧国鉄債務を一部を除いて清算事業団によって処理することで、新生JRを身軽な状態で再スタートさせたことに近いといえます。あるいは98年の金融国会で、破綻が心配されていた日本長期信用銀行、日本債権信用銀行の救済策として民主党案を自民政権に丸呑みさせた金融再生法も同様の処理となります。

当時から民主党の政策立案能力に注目していた私としては、時を経て民主党政権が誕生したタイミングでJAL問題に遭遇することの歴史の皮肉を思わざるを得ません。いわゆる民主党の流儀に整合的な処理案であり、金融機関にそれなりの知恵者がいたのかもしれません。とはいえ簡単に進む話でもありません。

というのは、このために特別法を制定する必要があること、当然予算措置も伴いますから、現在政権で進められている補正予算の執行停止を含む見直しで捻出した財源の一部を回さざるを得ないこともあり、政権内でも揉める可能性があります。加えて地方路線の整理を伴いますから、与党議員の造反も予想され、来月の臨時国会は早速大荒れとなりそうです。

結局JAL問題は鳩山首相の帰国を待って判断を仰ぐ話となり、タイムリミットも迫っているだけに、いきなりリーダーシップを試される展開となります。処理を誤れば本当に鳩山新政権が空中分解しかねない話ですし、また外国エアとの出資交渉も事実上ストップせざるを得ません。

2年前のおJALの記事で指摘したとおり、87年に株式公開し、政府全額出資の特殊会社から一般の民間企業になったJALは、同年実施された国鉄改革によるJR発足と関連し、特殊会社でスタートしたJR各社の先行事例としての意味合いもあったわけで、その後小泉構造改革で実施された道路公団民営化、郵政民営化、政府系金融機関改革など一連の民営化策の着地点となるはずだったのですが、その民営化会社が破綻の危機に瀕した場合の先行事例となってしまったわけで、皮肉な話です。同時に郵政見直しを掲げる新政権だけに、おかしな処理をすれば郵政見直しの議論も歪めてしまう可能性があり、本当に取扱い注意の案件になってしまいました。どうなるでしょうか。

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Monday, September 21, 2009

ジャパニーズGM問題、JAL問題を考える

このところJALを巡る報道が数多く露出しております。正直なところ前途不透明、五里霧中といえるこの問題ですが、鳩山新政権の命運を握るほどのインパクトがある問題として考える必要があります。

当ブログでは2年前に既にJAL問題を取り上げておりますが、正直当時からの迷走が未だに続いていることに驚きを禁じえません。今まで一体何をしてきたのでしょうか。

一応さまざまな努力の跡は見られるものの、航空を巡るグローバルな変化に追いつけず、取り残されてしまったさまは、米GMの問題と通底するものがあります。時代はオープンスカイ政策による自由競争の進捗があり、その尖兵だったアメリカでは、既にナショナル・フラッグ・キャリアのパン・アメリカン航空が破綻、時を経て元々国策キャリアの性格が強かったノースウエスト航空も、業界大手のデルタ航空に吸収されて現存しません。欧州でもアリタリアやサベナ・ベルギーなど国策キャリアの経営不振で国境を越えた再編が進む状況で、国策で政府出資の特殊会社としてスタートした日本航空がいかに難しい局面を迎えているかがわかります。

加えて大量輸送を前提に拠点となるハブ空港へ路線を集めて大型機でハブ同士を結ぶ大量輸送前提のビジネスモデルが、米サウスウエストや英バージン、アイルランドのライアン航空など、燃費の良い小型機で着陸料の安い大都市外縁部の空港同士を直行便で結ぶいわゆるローコストキャリアの台頭が、世界中で競争激化をもたらし、かつて二国間協定として航空協定を締結し、運行航空会社を指名する究極の独占市場が消滅したわけですから、今までのやり方を踏襲する限り、危機からの脱却はできない状況です。

その中で世界のエアラインは様変わりしました。歴史を刻んだ大手キャリアは、アライアンスに活路を見い出す方向性を打ち出しました。いわゆるコードシェアや共同運航便の活用で機材と人員の運用を合理化しながら路線網を維持するビジネスモデルへと転換し、特に国内のライバルである全日空では、パンナム破綻後に路線の多くを引き継いだ当時の米最大手ユナイテッドや独ルフトハンザなどをメンバーとするスターアライアンスへの参加をいち早く実行し、自らはその東アジア支部として主に日本対アジアの近距離国際線を充実させることで、国際線航空として後発の不利を逆手に取り、選択と集中を実現しています。その過程で全日空ホテルチェーンの売却など、非中核事業からの撤退も行っており、また羽田第四滑走路完成による24時間化を睨んで整備部門を羽田に集中させ、成田を拠点とするJALを出し抜こうという戦略です。リスクはありますが先を見た経営ができているということです。

それに比べるとJALの対応の周回遅れぶりは目立ちます。ANAのスターアライアンス参加時点から取り沙汰されていたワンワールド(アメリカン、BAなどが参加)への参加を逡巡し、自前運行にこだわり続けて高コスト体質を温存し、経営が怪しくなってから参加して、むしろ顰蹙を買ってしまいました。実は今回のJAL報道の増加のきっかけとなったデルタ航空のアライアンスを超えた出資打診も、ワンワールド内のそんな不協和音に遠因があるかもしれません。

というわけで今回の報道合戦による露出増加の始まりとして、米デルタ航空の出資打診があったわけです。

米デルタ、日航に出資打診 300億~500億円、交渉は流動的
デルタはスカイチームに所属しており、当然出資となればJALのワンワールドからの移行が前提となるわけです。仮に実現すれば、ネットワークの規模で最大のスターアライアンスとスカイチームは肩を並べる存在になり、JALが抜けたワンワールドは弱者連合になりかねないですし、アジア路線が手薄なアメリカン航空にとっては、JALを逃がすわけにはいきません。元々アメリカンとBAが中核で大西洋路線に強みを持つワンワールドですが、世界の成長センターたるアジアへのアクセスで後れを取ることにもなりかねず、かくしてアメリカン航空も出資交渉へと向かいます。
日航出資混沌、アメリカンも交渉へ デルタと綱引き
さらに国内線、国際線の不採算路線からの撤退発表など、JAL自身もリストラ加速を表明し、事態は混沌としております。

とはいえ外国エアラインからの出資打診は300-500億円規模で、年度内に2,000億円規模の資金調達を迫られる状況では焼け石に水の状態です。資金調達のうち1,000億円程度を株式の増資で賄うと考えられますから、その半分相当が外国エアの出資分となれば、他の一般株主への安心感を醸成する効果は期待できますし、銀行サイドの出資態度も軟化することが期待されます。

一方で国交省はデルタとの提携を後押ししている模様です。というのは、元々ノースウエストを併合したデルタの太平洋路線の充実ぶりは凄まじく、JALの路線再編によるリストラ効果がそれだけ高いということがあります。加えてそれによって成田の発着枠が返上されれば、乗り入れ希望が多い成田の発着枠再配分を差配できるという意図も透けて見えます。

そしてこの間に起きた総選挙で実現した政権交代で民主党鳩山政権が誕生したことが、少なからず影響を及ぼしそうです。マニフェストで言及された子ども手当や高速道路無料化は、選挙に勝って政権を得た以上、実現しなければなりませんし、多少の修正の余地はあるにせよ、時間と共に実現に向かうことは間違いありません。ところがJAL問題には直接の言及がなく、今のところ政権としての方針は未定のようです。

マニフェストには航空行政の見直しは盛り込まれており、オープンスカイ政策に舵を切ることが示唆されているものの、羽田、成田の役割分担や発着枠再配分などの具体策には言及がありません。とはいえ羽田、成田共に発着枠の拡大と見直しは確実に行われ、増加分の日米大手への配分はなく、むしろ一部返上さえありうるわけで、その際に最も影響を受けるのが、成田をアジアの拠点空港と位置づけるデルタ航空ということになります。ということで、穿った見方ですが、政権交代がデルタの背中を押した可能性はあります。

一方のJALですが、もう一つの難問として8つの労組が分立し、安全を盾に報酬見直しに後ろ向きな組合問題と、OBの高額年金問題が横たわります。このあたりば米GM問題との相似象といいますか、JALが立ち直るための最大の問題です。

元々国策キャリアとして歴史を刻み、日本人のおもてなし精神を活かした充実した機内サービスで業界標準を確立したJALですが、その代償として高コスト体質が染み付いてしまったのです。かつて究極の独占市場だった国際線航空を主力としていたから可能だったサービスが、むしろ過剰サービスとして忌避される昨今、元々エリートの乗り物だった航空がそれだけ大衆化した証左でもありますが、同時にコスト削減を厳しく求められるようになった時代の変化に対応できないその姿は、省エネどこ吹く風で利幅の大きい大型車ばかり作り続けたGMなど米ビッグ3とそっくりの構図です。

加えて充実した企業年金でOBへの手厚い年金給付を続けた結果、業績を悪化させたいわゆるレガシーコスト問題もあります。ゆえに民主党内では通常の資金支援での立ち直りは難しいとして法的整理をという過激な意見もありますが、米オバマ政権のGM救済策に見るように、公的な支援に踏み込むならば、債権者も痛みを分かち合うべきというのは筋が通ります。債権者には従業員や企業年金受給者も含まれます。実際6月に日本政策投資銀行と銀行団による80%政府保証つきの1,000億円融資が実行された一方、4-6月期決算で990億円の赤字となりチャラになる体たらくです。果たして新政権は的確な問題解決ができるか、見守りましょう。

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