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Thursday, October 22, 2009

エコカーバブルで二番底

民主党鳩山政権の支持率が7割を超え、相変わらずの人気ぶりですが、やはりというか、予算編成を巡ってさまざまな火種が見え隠れしております。各省から出された概算要求が総額95兆円と史上最大ですが、政権交代で本気で政策転換をしようとすれば、一時的に予算が膨らむのはやむをえないところですし、政権交代のコストと認識しておけば良いでしょう。とはいえ次年度以降も同様ならば話は変わりますが。

という中で、いち早く八ッ場ダム中止など無駄な公共事業見直しや中止に踏み込んだ前原国交相をトップに国土交通省の成果が目立ちます。ここまで切り込んだら与党議員からも不満が出そうですが「コンクリートから人へ」という新政権の基本コンセプトに忠実です。一方で膨張を続ける社会保障予算を抱えながら目玉政策の子ども手当を抱える厚労省や、農家の個別所得保障を抱える農水省、高校の授業料無料化や奨学金拡充の文科省など、苦しいところも散見されます。

そんな中で経産省がエコカー減税と買い替え補助金の予算請求をしなかったのは見識ですが、復活を狙っているという話も聞こえるなど、やや曖昧なスタンスを感じます。そもそもエコカー減税も補助金も問題山積、基本的に継続はないと見て間違いないでしょう。

とりあえずメディアチェックです。まずは新車販売動向からです。

9月の新車販売、0.2%増 14カ月ぶりプラス、エコカー減税や補助金が効果
リーマンショックで落ち込んだ新車販売ですが、エコカー減税と補助金の効果かプラスへ回復、特に減税対象となるプリウスなどハイブリッド車その他の減税対象車が売れているということで、数字だけ見れば効果があったということになりますが、減税効果が薄く補助金も半額となる軽自動車がマイナスというところに問題の一端が見えます。

そもそもエコカー減税ですが、リーマンショックでメーカーが急速な派遣切りや期間工の雇い止めなどで生産調整をして、いわゆる年越し派遣村で世論の逆風を受けたことから、財政出動で新車販売を督励し雇用を支える目的だったわけです。その際に温暖化防止を前面に出せば世論受けするので、国民に抵抗感の強い財政出動も通りやすいということですね。しかし実際のCO2削減に寄与するとはとても言えません。

日本のメディアはこの辺をナイーブな感情論に流れてきちんと検証しないんですが、要注意です。普通に考えて燃費の良いエコカーの普及はCO2削減に貢献しそうですが、燃費の向上はユーザーにオーバーユースの誘因となることを忘れてはいけません。燃費の向上分は簡単にスポイルされてしまいます。加えてエコカー減税の制度自体にも瑕疵があります。

そもそもエコカー減税の基準ですが、車両重量別に9つに区分された各区分の標準燃費を基準にして改善度でランク付けするのですが、当然重い車ほど基準値が甘いわけです。そのために例えばヴィッツよりアルファードの方が減税幅が大きくなるという矛盾があります。また取得税は重い大型車ほど高いわけですから減税効果も大きくなるわけです。だから上記のように軽自動車はむしろ売れなくなっているのです。

加えてこの制度ではあくまでも車重別に判定されるということで、敢えて重量のあるオプションを装備して上位の重量区分に変更して、甘い基準の恩恵を得ようとメーカー各社は特別仕様車をそろえます。それらの車は重量が増えた分燃費は悪くなるわけですから、どこがエコなんだかという話です。

加えてエコカー補助金ですが、こちらはさらに問題を含みます。元々はドイツなどで始まったスクラップインセンティブ制度を見習ったもので、13年(ドイツでは9年)以上の古い車を燃費性能の良い指定車種へ買い替えたときに補助金を出すというもので、古い車の廃車と引き換えに低燃費車を増やそうということですから、問題なさそうですが、どっこい、通常の下取りと違って廃車が前提ですから、通常ならば中古市場へ流れる車がゴミになるわけで、やはりどこがエコなんだかという話です。

しかもこちらは書類の不備が多く執行が進まないため、3,700億円用意された予算は不発になりそうです。

エコカー補助金「不発」のおそれ、交付実績たったの1割
9月25日時点で199億円しか執行されておらず、今のままならば記事の通り1割程度の消化で期限を迎えそうです。

ま、結局のところ選挙目当ての雑な制度設計だったわけで、前政権のお荷物を背負わされた格好です。エコをうたっても本音はメーカーの販売支援でしかないですし、その結果売れる車に偏りが出て、例えばプリウスは年度内納車は既に不可能、各社今売れる弾が欲しいから、特別装備という錘をつけた"エコカー減税特別仕様車"に熱が入るわけです。こんなことでは温暖化ガス25%削減は遠のきます。

一方で元々民主党はマニフェストで自動車関連諸税の暫定税率廃止を打ち出しているわけですから、新年度から実施されるとすれば、重量税が6,300円から2,500円、取得税が5%から3%に軽減され、車種を問わず納付する税が半減するわけですから、実は現状のように車種が偏った販売動向となるエコカー減税よりもメーカーにもユーザーにも広くメリットがあるわけです。この前提で考えると、エコカー減税は仮に続けるにしても制度を見直さざるを得ず、とても予算編成期限となる年内には間に合いません。ムダ排除の政権のコンセプトからしても、スッパリやめるのが正解でしょう。

しかし頭の痛い問題もあります。エコカー減税で注目されたハイブリッド車を、トヨタは増産を決めております。車種を増やしラインナップを充実、加えて家庭用電源で充電可能なプラグインハイブリッド車の市場投入も決めるなど、前のめりになっておりますが、制度が変わるはざ間でオウンゴールを繰り返す可能性を否定できません。既にドイツやアメリカの新車買い替え補助金は予算を使い切って打ち切られ、輸出が弱含みな中で、エコカーバブル崩壊が直撃する可能性があります。となれば二番底、前政権の雑な制度設計が時限爆弾のように炸裂する可能性があります。トヨタがこけるのは自己責任ですが、新政権にとっては厄介な問題です。

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Comments

走ルンです様
興味深いニュースに深い分析洞察の数々、
いつも楽しく拝見しております。

エコカーなどの取って付けたような不公平・不平等な
各種制度ですが、そりゃ廃止も当然だろうと思います。
ただ、ハイブリッドブームについてよく消費者の偏向だと言われますが、
私からすれば需要を掘り起こしている感があり、
車による排気や温暖化、ひいては移動といったものにまで
後ろ向きになる時代感の中、ある種の免罪符を与えることで
マーケットの購買意欲を確保しています。
(つまりメーカーが環境対応に消極的だったら、もっと
 自動車市場は冷え込んで今の比じゃないだろうと思います。)
ブームゆえに批判も喧しく、そもそも自動車市場は
今ほど巨大な必然があるのかといった疑問もまた然りです。

こうした「エネルギーに対してのニッチで地味な取り組みを継続的に行い、
マーケットまで結び付ける」事の最大の功労者は、明らかにトヨタです。
(もちろんホンダも評価されて然るべきですが。)
1995年のプロトタイプから取り組んでいたシリーズパラレルハイブリット技術は
奥田政権時代に商品として花咲かせました。当時の自動車評論家や
欧州他社の首脳達は、過渡的技術で不十分、10年後には
燃料電池が実用化される中でハイブリッドを志向する理由が見つからない、
と言っていたのを今でも覚えています。
現在のプリウスと言う商品やLCAとしてみた時の環境コストも大切ですが、
環境に対してすこしでもできる事を、と取り組み続けてきた姿勢だからこそ
未だ一銭にもなっていない燃料電池開発に対して、
市場という果実を実らせることができたのだと思います。

私の想像でしかないのですが、この流れは早晩プラグインハイブリッドへと続いて、
パートタイムガソリンの電気自動車という1ジャンルを作ると思われます。
電気自動車市場が成熟してくる頃、満を持してようやく
燃料電池車が商品になってくるのじゃないかと考えています。
その過程で、自動車所持に対する価値観も変わり、トヨタやホンダの
描いていた新交通インフラとしてのカーシェアも実現しているかも知れませんね。

与太話を長々と失礼しました。

Posted by: ポポロ | Friday, October 23, 2009 at 03:58 PM

コメントありがとうございます。ご指摘のようにおそらく10年後のクルマ社会は現状とかなり異なったものになっていそうで、EVが主流となれば、もはやクルマは個人で所有するものではなく、公共交通の一部と認識される時代が来る可能性はあります。その辺も含めて将来はなかなか見えてきません。

今回の記事は、そういった中長期の話というよりも、もっと切実な、財政支援による消費底上げが、バブル化している可能性を危惧するものです。特に売れる車の偏りは、メーカーも頭が痛いところかと思います。

ハイブリッド車のプリウスで部品点数約3万点と言われ、かつ基幹部品のバッテリーは電機メーカーとの合弁事業で増産もままならずという中で、受注残を積み増すことはトヨタ自身にも負担です。というのも、部品調達は相当先まで睨んで押さえなければならない一方、代金決済は結局納車のタイミングに合わされますから、大量受注ゆえに儲からないというパラドクスを抱えていると考えられるのです。部品点数が多いということは、製造原価も高いということで、元々薄利な商品ということで、補助金でやっと一息が現実でしょう。

実際にはいろいろな車種が満遍なく売れる方が利益率は上がります。特にトヨタでいえば、レクサスブランド車や国内向けではマークX、北米向けカムリ、アジア向けカローラあたりが、一番売りたい車でしょう。そうして得た利益を開発費用に充てて、プリウスのようなハイブリッド車を生み出せたわけですが、皮肉なことにそのプリウスが売れすぎると、開発費予算がタイトになるというパラドクスから抜け出せない中で、時限措置の減税が終われば、反動減は避けられないところだけに、かなり打撃は大きいと睨んでおります。実際例えばクラウンからプリウスに乗り換えたユーザーは相当数いるようで、トヨタにとっては悩ましい限りです。

というわけで、杞憂であれば良いとは思いますが、かなり確率は高いと睨んでおります。

Posted by: 走ルンです | Saturday, October 24, 2009 at 12:19 AM

お返事ありがとうございます。

おっしゃる通りですね。
プリウスなど開発経費をまともに乗っけたら
利益率などとうに通り越しているかも知れません。
ホントはもっと前の時点でハイブリッドブランド=レクサスを
強固なものにしたかったのだと思います。

上のコメントで将来的な話に触れたのも
そうした従来の消費者市場だけでなく
カーシェアリングのような市場開発にこそ
精力的に補助金がでて然るべきなんじゃないかな、と思ったのです。
http://response.jp/article/2009/10/15/130913.html

景気が再度、しぼみかけるのはやむなしでしょうね。
日本という国は今こそ歯を食いしばって
将来のビジョンを作らないといけませんね。

Posted by: ポポロ | Saturday, October 24, 2009 at 01:20 PM

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