« 高速道1,000円渋滞で鉄道回帰 | Main | エコカーバブルで二番底 »

Sunday, October 04, 2009

尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落

ニュースとしては先週の話ですが、メディアとは違った視点で取り上げるという当ブログのコンセプトに従って取り上げます。まずはこの記事から。

尼崎脱線事故調査委、元委員が報告書漏洩 JR西前社長が依頼
JR西日本の歴代トップの責任に言及し、企業体質に問題があったことを認めた山崎前社長ですが、一気に男を下げました。

鉄道事業本部長時代に安全対策を進言し、疎まれて関連会社へ出向させられていた山崎前社長には同情する声もあり、被害者からも評価の声が聞こえただけに、信頼を裏切ったことは重大です。加えて「新型ATSが設置されていれば事故は防げた」とする記述を調査報告書から削除することを求め、それを受けて山口元委員は事故調で発議して否決されたという一連は、事故調の第三者機関としての意味を無力化させるものでもあり、大問題です。

と同時にこの新型ATS問題は神戸地裁に起訴された山崎前社長の公訴事由にもなっているわけですから、それを意識した行動だとすると、更に問題が膨らみます。少なくとも審理以前に心証真っ黒となり、結果墓穴を掘ったことになるかもしれません。

そこまでのことではないとしても、山崎前社は経営者として事故を契機にATS設置基準制定などの規制強化で資金負担が増えることを心配したのかもしれません。鉄道事業の特殊性を考えると無理もないところがあります。というのも、今回の漏洩事件でも当事者は国鉄OBで先輩後輩関係という事情があり、おそらく山崎前社長も山口元委員も当事者意識が希薄だった可能性があります。

以前の記事で国交省の前身の1つである運輸省の問題を取り上げましたが、現業機関としての国鉄が公社として分離され、鉄道事業の国家独占の権限が現業機関である国鉄に帰属した結果、監督官庁であるはずの運輸省は国鉄に対して無力でした。そもそも国鉄による新線建設や改良事業は国鉄自身の意思決定で為され、民間事業者のような免許事業ではなかったんですが、例えばそのことが東海道新幹線が構想段階から反対の大合唱を受けながら実現したこととか、国より格下の東京都による都市計画に定義されない総武快速線の建設や、ローカル線建設に不熱心な国鉄に代わって建設を請負う鉄道建設公団の設立などは、この辺のねじれ現象の結果です。

で、技術面でも鉄道はブラックボックスに喩えられることが多いのですが、日本の場合技術面での国鉄の情報独占といいますか、位置づけはきわめて重かったのです。そのために日本の鉄道車両メーカーは国鉄の下請けを脱し切れず、大手私鉄も部分的ないいとこ取りで「うちのは国鉄より高性能」と言っていたような状況です。気候変動問題で世界で鉄道が見直されるトレンドに乗り切れない原因でもあります。この辺はガラパゴス化と言った方がわかりやすいかも。

その結果鉄道技術は旧国鉄と後身のJR各社が握り、監督官庁である旧運輸省には技術に関する目利きが存在しません。ゆえに福知山線事故のような重大事故が起きると、パニクって規制強化に走るのです。福知山線事故の場合も同様で、当時の北側国交相のコワモテぶりが思い起こされます。そういう意味で山崎前社長が、国交省の規制に影響を及ぼすこと確実な事故調報告の内容を早く知り、できれば規制強化を緩和する方向へ記述を変えて欲しいと考えても無理もないところです。

加えて事故調委員メンバーとして、結局国鉄OBを起用するしかない現状もまた避けられなかったでしょうし、OB同士の気安さが漏洩事件を生んだとすれば、つくづく旧国鉄という存在は罪作りです。明治以来のアンシャンレジュームは一朝一夕には解消しないんですね。

それとそもそも事故調(航空・鉄道事故調査委員会→現運輸安全委員会)の鉄道部会設置が、91年の信楽高原鉄道事故の遺族などでつくる鉄道安全推進会議(TASK)が93年に国に働きかけて発足したもので、信楽の事故でも不起訴ではあったものの、信楽高原鉄道を被告とする公判の審理過程で、滋賀県警が突き止めた亀山CTCセンターの方向優先テコの無届設置と事故後の撤去及び関連マニュアル破棄という重大事実が発覚したことが、専門の第三者機関設置の必要性を認識させたわけで、やはりJR西日本は本来当事者であったわけです。今回の漏洩事件は将にJR西日本の救い難い企業体質をを浮き彫りにしますね。

|

« 高速道1,000円渋滞で鉄道回帰 | Main | エコカーバブルで二番底 »

JR」カテゴリの記事

民営化」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

鉄道事故」カテゴリの記事

Comments

そもそも今思うと尼崎事故直後当時の北側国土交通大臣が鉄道に詳しくないのに
運行再開条件に新型ATSに固執したのが不思議です。
それは横に置くとして。
さらにJR西日本は調査委員会や警察、検察に
内部資料を隠蔽した疑いがあるとか。
その隠蔽した疑いがある内部資料に
北海道で発生した類似事案は
新型ATSが有効らしいとの記述があったとか。
少なくともJR西日本や調査委員会、警察、検察は
隠蔽した疑いについて調査のうえ報道発表してほしいです。

Posted by: とまと | Tuesday, October 06, 2009 at 02:57 AM

JR函館線の貨物列車事故の件ですね。速度超過による脱線転覆ですから、福知山線のケースと酷似します。

これがJR西日本による意図的な隠蔽なのかどうかはわかりませんが、隠したい動機はあるわけです。とはいえその辺を見破れない監督官庁の国交省の情けなさも相当です。

北側大臣が新型ATSに固執したために、大手私鉄も保安装置の見直しを迫られ、また地方ローカル私鉄では、旧式のATSでさえ負担になっているのに、存続のハードルが高くなってしまったんですから、功罪は微妙ですね。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, October 07, 2009 at 12:17 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50724/46391055

Listed below are links to weblogs that reference 尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落:

« 高速道1,000円渋滞で鉄道回帰 | Main | エコカーバブルで二番底 »