山梨リニアよ永遠なれ
リニア関連で動きが出てきましたが、まずはこのニュースから。
JR東海会長「リニア、前倒しで部分開業へ」明らかに山梨リニア実験線の延伸部分を早めに営業路線にしようという意図が見えます。現在18.4kmの先行区間の両側を延伸中で、2013年までに42.8kmとなり、神奈川県境近くの上野原市から甲府盆地の中央市まで伸びます。甲府側は身延線東花輪付近に設置予定の仮称新甲府まで数キロ、起点側も県境を越えれば神奈川県相模原市(藤野町)で、駅設置が見込まれる橋本まで30km弱というところでしょうか。見た目には直ぐにでも伸ばせそうに見えます。
とはいえ市街地に設置される駅の建設費用が問題になります。橋本、東花輪両駅周辺は市街化されていて、山岳トンネル中心の実験線とは用地買収の難易度はかなり違います。今のところ神奈川県も山梨県もリニアには積極的ですが、JR東海が中間駅設置は1県1駅で全額地元負担を打ち出しており、しかも地上駅で350億円、地下駅で2,200億円とされる建設費の見積額から、実際の交渉はかなり難航が予想されます。
当然こんな区間で開業してペイするのかという疑問がありますが、JR東海は東海道新幹線との損益通算で問題なしとしております。それよりも実際に営業運行を早めたい事情があるということですね。
1つは既成事実作りということでしょう。ご存じの通り中央新幹線のルートを巡っては、木曽谷経由のAルート、伊那谷経由のBルート、南アルプス直下の長大トンネルによる直進のCルートの3案が併記されており、JR東海はCルートを希望するものの、諏訪地区を経由するBルートを希望する長野県と対立している状況です。諏訪地区に駅を設けるとなれば1県1駅の原則ならば飯田地区に駅ができないと飯田市はCルートを希望し、自治体間でも対立している状況ですが、新幹線整備法で関与が決められているものの、事業主体でもなく財政支援もしない国は静観の構えです。
実際は今年中にルートを決めて環境アセスメントの手続に入らないと、着工を予定する2014年には間に合わず、当然2025年の開業も後ろへずれることになります。そんな中で関係者は「天の声」を希望しているとか。予算編成で見せた民主党小沢幹事長の鶴の一声が欲しい長野県でしょうか。そういえば山梨実験線も自民党副総裁だった金丸信の「天の声」で決まったと言われます。真偽は定かではありませんが。当の小沢さん自身は今それどころじゃないでしょうけど^_^;。ただ岩手県の胆沢ダムの工事受注も巡る疑惑が取り沙汰されてますが、ゼネコン関係者の証言が明らかになる一方、発注者の国交省は捜査されておらず、当時の担当者も政治家の関与を否定しているあたりに、民主党の言う「国策捜査」の臭いは漂います。とはいえ公訴まで至らなくても、小沢一郎という政治家の力を削ぐ結果にはなりそうです。
というわけで事業の展望が拓けない中で、事業化を急ぎたいJR東海は民主党にパイプはなく、開業できるところから開業するという手段しかないわけですね。
あと実験線はあくまでも実験線で、コストしか発生しませんが、営業線になれば収益が発生します。結果的に赤字だとしても、キャッシュフローが生まれれば、建設費の償還が早まるわけですね。とりあえず東海道新幹線から発生する黒字の範囲を超えない限りは許される道楽となるわけです。
仮に橋本―(仮)新甲府間が開業できたとして、所要時間は10分少々、1時間ヘッドとして折り返し間合いを含めて1編成で営業運行が可能ですから、複線の片方を試験やメンテナンスに使いながら営業できるということです。しかもややこしい複数列車の制御は当面必要ないというわけで、ある種いいアルバイトにはなります。
加えて新宿―橋本間は京王の急行で40分、調布市内立体化後であれば毎時1本程度の特急「リニアリレー」の設定は可能になると考えられ、30分で新宿となれば、乗換時間を含めて(仮)新甲府まで1時間以内、甲府までも1時間強とJR東日本のあずさ/かいじや中央高速バスの半分ということで、相応に競争力を発揮しそうです。
ただし大元の需要からすれば赤字必至、1編成950人という定員も、あずさ/かいじのE351系やE257系より多く、空席を埋めるのに苦労しそうです。早晩HISあたりに格安チケットが流れそうです。京王にとっては高速バスが食われるとしてもビジネスチャンスでもあり、有料特急で増収でもできれば、懸案の複々線化の可能性も出てきそうです。
あとはアメリカへの売り込みということでしょうか。こんな記事があります。
新幹線、米に売り込む JR東海「フロリダが最優先」なんとリニアをアメリカに売り込もうということです。ワシントンDC―ボルティモア間約60kmということで、なるほど神奈川―山梨間の部分開業を先行させれば、売り込みやすいと考えたようです。
とはいえ一方で国交省がJR東日本を帯同してアメリカでセミナーを開催し、新幹線の売り込みをかけております。
米で新幹線売り込み 国交副大臣・JR東の社長らがセミナー民主党政権は新幹線の海外セールスに積極姿勢を見せますが、JR東日本とJR東海のバラバラな対応は頭痛の種。JR東海は日本車輌を子会社化してトヨタばりの垂直統合を志向しているのに対し、JR東日本は車両や信号その他システムの部分でも広範に売り込もうとしていて、そのために準備室を設けたり世界鉄道連合に役員を送り込んだりと、全く異なったアプローチとなっております。
どちらが正解かといえば、はっきり言ってトヨタの米欧中の大量リコールを見ればわかりますが、垂直統合モデルには明らかに限界があります。いずれも左ハンドル車だけに出た不具合で、身内の論理を優先する企業風土から現地化に失敗した日本企業にありがちな結果と考えられます。加えてジャパン老いるマネーで指摘したとおり、そもそも高齢化が極限に達する今後の日本では、労働力人口が減って扶養人口が増える結果、輸出する以上に輸入が増えるジレンマに陥りますから、完成品輸出は儲からなくかります。
というわけで、橋本―(仮)新甲府間の部分開業も厳しいところですから、正直なところ山梨リニア実験線は永遠に実験線なんでしょうなぁ。これがオチでした^_^;。
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