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Sunday, January 10, 2010

JAL再建会社更生法適用が決まる

紆余曲折を経たJAL問題ですが、やっと出口が見えてきました。運行を継続しながら会社更生法を適用するプリパッケージ(事前調整)型法的整理となります。企業再生支援機構が提案し、財務省、日本政策投資銀行が賛同する一方、国土交通省と3メガバンクは猛反発しました。

日航の法的整理案、財務省・政投銀が支持 国交省、強く反発
前原国交相が肝いりで進めた旧産業再生機構OBから成る作業部会(タスクフォース)案が銀行の反対で宙に浮いたことは既に述べたとおりですが、融資だけでなく、普通株と優先株を保有する大手銀行にとっては、法的整理は債権放棄のみならず多大な損害を受けるだけに避けたかったのでしょうけど、既にこの段階で実質債務超過が発覚していただけに、支援機構案件となっても選択肢は限られるのは止むを得ないところです。というわけで独自の私的整理案を発表します。
日航再建で3大銀、減資含む私的整理案 債権放棄も増額
タスクフォース案を蹴っておいて何を今さらです。邦銀はサブプライムショックもリーマンショックもドバイショックも軽微な影響で済みましたが、バンカーの矜持を失ったようです。リーマンショック後の実体経済の落ち込みに対して、自行の健全性確保を優先し、企業の育成という役割を失った姿は滑稽ですらあります。というわけで政府方針には逆らえず、渋々承諾ですが、株式上場を維持するかどうかは未だ調整中です。
日航の上場維持、詰めの調整に
機構は株主責任を厳格に問う意味で100%減資としたいところですが、銀行をはじめ多くの事業会社が株式を持ち合っているため、とばっちりを食う企業も多数あります。日本の株式持ち合いは問題を複雑にします。また個人株主にとっては株主優待制度が魅力で保有していた人も多く、上場廃止は企業ブランドを傷つけるという意味で再建の足かせとなる可能性もあるだけに、決定はずれ込みそうです。

結局透明性の高い再建策となったのは喜ばしいところです。実を言うとJAL再建は道半ばで頓挫するシナリオも予想していただけに、政府の努力を素直に認めたいと思います。

ここで残った論点を少し整理してみましょう。株式上場維持問題以外にも、米社との提携問題と企業年金問題が残されてますが、機構は企業年金についてはOBの2/3の同意が得られない場合は解散するとしており、この場合は現時点での積立不足額を確定させた上で一時金を分配することになりますが、将来の負債の増加はなくなることになります。厚生労働省も法的整理ならば解散を認めざるを得ません。

そもそも企業年金はJALだけに留まらず厄介な問題でして、確定給付型企業年金、確定拠出型企業年金(日本版401k)、厚生年金基金、適格年金保険など、思いつきのようにさまざまな制度が混在していて、JALは確定給付型企業年金となります。年金に限らないのですが、日本はアメリカと共に社会保障給付を企業の福利厚生に頼る仕組みが発達していてその分公的社会保障の規模が小さいのです。人口が増加基調にあり、企業が右肩上がりの業績を予想できるならば、小さな政府を実現できる妙案なんですが、高齢化による人口減少で持続不可能となったのです。

企業にとっても利益を賃金で配分して他社から恨まれるよりも、名目上の賃金を抑制するのに役立ちますし、従業員にとっても、賃金の一部をファンドに拠出して後で大きな見返りが得られるのですから、悪い話ではありません。JALでは予定利率を4.5%としていたわけですが、この水準は以前ならば当たり前だったとはいえ、現在の金融情勢では高い目標です。

複利計算では7の法則というのがあります。年利7%で運用すれば10年で元本が2倍になるというもので、これ便利だから覚えておくと良いんですが、半分の3.5%ならば20年、10%ならば7年、5%ならば14年で2倍ということになります。JAL従業員の平均年齢はわかりませんが、退職までの残存在職期間が平均20年とすれば、ザックリ掛け金の2.4倍程度になる計算です。

当然予定利率を実現するためには、ハイリターンな株式投資など元本保証のないハイリスクな投資も組み込む必要がありますが、バブル崩壊後長期低落傾向にある日本株で毀損が激しいのは言うまでもありません。当然リーマンショックも直撃してますから,、ズルズルと問題先送りしてきた結果、傷口を拡げてしまったんですね。恐ろしいのは、この問題はJALの企業年金だけに留まらず、多くの企業が抱えていて、今後火を吹く可能性はあちこちにあります。加えて公的年金のうち民間企業向けの厚生年金に関しても運用利回り3.2%で計算されており、株式を組み入れざるを得ないため、やはりリーマンショックで損失を出しております。公務員等を対象とする共済年金では利回りは決められておらず、国債中心の安全な運用がされております。

あと米社との提携問題ですが、これは現時点で決めず、新経営陣の判断に委ねることになりました。

日航再建、選択肢を確保 米航空の出資受けず
国土交通省やメガバンクは、リストラの余地が大きいということでデルタを推しているようですが、問題はワンワールドからスカイチームへのアライアンスの移行でマイルの移行やシステム統合で追加負担が発生することと、日米路線で現状6割超となる運行シェアで米独禁法の例外認定が受けられない可能性があり、折角締結した日米オープンスカイ協定を活かせない可能性があること、加えてデルタがアジアに強い会社で且つ大韓航空がスカイチームに所属していることから、発着枠の窮屈な日本の空港を素通りする踏み台にJALが利用される可能性もあり、競争条件を考えると、アジアが手薄がワンワールドへ留まる方がJALの存在感は高まる可能性はあります。

実はこの辺が、一部で取り沙汰された国際線のANAへの一元化の難点でもあります。折角オープンスカイに舵を切ったのだから、ANAが加盟するスターアライアンスを含め3陣営で競い合う国際アライアンスのパワーバランスを利用しない手はないのです。同様に国内線でも大手2社体制を維持することは、競争条件の維持という狙いがあります。これは当然、航空会社の負担となる今後の空港整備にブレーキとなりますし、競合する整備新幹線にもネガティブインパクトとなり、五月雨式の新規着工に歯止めが期待できます。整備新幹線に関しては高速道路無料化でも影響されますから、前原国交相の狙いはかなりはっきりしてますね。

というわけで、今回のJAL再建策の着地点としては、私は及第点をつけたいと思います。

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