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Saturday, February 13, 2010

リコールでバブル回避か?

本エントリーはエコカーバブルで二番底の続編です。

トヨタのリコール騒動ですが、メディアの報道にどうも釈然としないのですね。アクセルペダルの不具合問題について、一部メディアが「アメリカ製部品の不具合」というようなバイアス報道をしているのですが、トヨタ自身が現地生産を選択し、少なからぬ日系部品メーカーも後追いで進出している中で、アメリカ向けの左ハンドル仕様車に適合した部品として件のアクセル部品を選択したという点は押さえておくべきでしょう。問題はむしろ熾烈なコスト競争の結果、同一部品を多数の車種に使用していたことが、傷口を大きくする結果となった点です。

実は欧州トヨタでは既に昨年7月にアクセルペダルの不具合を認識し、対応していたことがわかってきました。何故そのようなネガティブ情報がトヨタ社内で共有できなかったのかに、問題の本質が覗きます。基本的に欧州ではトヨタ車はあまり数が出ていないので、現地法人の対応はそれほど難しくはなかったでしょうし、軽微な改修で対応できる問題でもあり、事態を軽視した面はあるのでしょう。おそらくここまで問題が大きくなるとはゆめゆめ思わなかったでしょう。

三河の機械屋が世界に生産拠点を拡大する中で、兵站線は伸び切り情報流通は阻害され、大組織にありがちな風通しの悪さが出てきても不思議ではありません。また具体的にアクセル部品にアメリカ製部品が幅広く使われている事実も把握していなかったかもしれません。そういった中で、仮にトヨタ欧州現法がEUにリコールを届け出ていれば、問題なく情報共有できたはずです。

実際にはトヨタはリコールを回避しようとする行動を取り続けました。北米トヨタでは一部車種で採用されていたフロアマットにアクセルペダルが引っかかって戻らなくなる問題もあったものの、リコールとはせずに自主改修で対応しました。あくまでもクルマの欠陥ではないという立場を取ったわけです。その流れのままに、アクセルペダルの不具合問題もプリウスのブレーキ問題も対応に後手を踏む結果となったわけで、トヨタはひたすら墓穴を掘り続けました。

鉄ちゃんにしてみればプリウスのブレーキ問題は当然起こりうる問題と認識できます。省エネのための回生ブレーキ活用は良いのですが、モーターを発電機として逆トルクを発生させる電気ブレーキの制御の難しさは良く知られております。それゆえに保安基準でもブレーキシューの摩擦で動力を熱に変換する機械式ブレーキが非常時のバックアップとして必須となっており、鉄道車両でも非常制動は電制カットが常識です。

プリウスのケースではABS(アンチロックブレーキシステム)の制御プログラムによって低速で空転すると瞬間制動力が空白となる場合があるということで、しかも同一条件での再現性も高いのですから、早期発見してソフトを書き換えなければならなかったはずなのに、発見が遅れた上に幹部による「ユーザーの感覚の問題」という発言が反発を買ってしまいました。この問題は部品交換すら発生しないわけですから、自動車工業の世界の常識では欠陥どころか不具合ですらないという認識だったのでしょう。

実際は既に燃料噴射、火花点火、バルブ開閉などで広範に電子制御されている現在の自動車にとって、この手のソフトバグは厄介な問題ですが、それだけに早期発見早期対応が重要になります。トヨタにその認識がなかったことがむしろ驚きです。

というわけで、エコカーバブル崩壊前にリコール問題が発生したお陰で、トヨタはむしろ助かったのかもしれません。どのみち政策的に底上げされた需要は終わりが来ることは避けられません。むしろプリウスのバックオーダーがキャンセルされて減った方が、建て直しはやりやすいでしょう。元々儲けの薄い車ですし。

あとメディアに登場した珍説の数々は頭痛いですね。中には「普天間問題をこじらせた意趣返し」なんてのもありました。むしろエコカー減税や補助金が日本の10・15モードという欺瞞に満ちた燃費基準で事実上輸入車を締め出していたことに対する怒りは作用した可能性はあります。実際昨年の東京モーターショーでは外国メーカーが集団ボイコットしたわけですし。

にも拘らずエコカー補助金は9月まで半年延長されましたが、トヨタ労組出身の直嶋経産相が官僚に絡め取られたかもしれません。元々書類の不備などで年度内執行で予算を使い切れないと見られていただけに、期間延長はそれを隠すためではないかと勘ぐりたくなります。最近官僚の巻き返しが見え隠れする上に、直嶋経産相のほかにも松下労組出身の平野官房長官の発言のブレ方など、労組出身閣僚が鳩山政権の獅子身中の虫になりそうです。

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Comments

トヨタは良くも悪くも日本の自動車メーカーという感じがします。
日本人は昔から外に発信するのが苦手で
内輪で物事を決めてしまう部分があると言われますし
回生制動は本来の自動車の領域ではありません。

今後ハイブリッドやEVが普及すると
既存の自動車メーカーでは限界があると思います。
将来的には電機メーカーや鉄道車両メーカーなどが
直接自動車市場に新規参入した方が良いような気がします。
そのうち日立製のクルマとかできるかも?

Posted by: yamanotesen | Saturday, February 13, 2010 at 10:14 PM

今回のリコール騒動は、エクセレントカンパニーと目されていたトヨタが、実はドメスティックな日本的企業であったことが明らかになったという点で、他社にも教訓になる話です。

補助金で新車販売にゲタを履かせることは世界の主要国で行われ、トヨタも恩恵に浴していたのですが、ハイブリッドばかりが売れる状況から脱出する好機と捉えるべきでしょう。

例えば独VWが新型ゴルフでエンジンの大胆なダウンサイジングを行ったようなクルマ作りこそ、扱いが難しい内燃機関動力の自動車メーカーとしてのアドバンスを発揮できる分野です。

そういった意味での原点回帰に期待したいとkろです。

Posted by: 走ルンです | Saturday, February 13, 2010 at 11:32 PM

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