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Monday, February 22, 2010

成田アクセスバトル

成田スカイアクセスの開業が7/17に決まったということで、当ブログの関連記事にもアクセス急増です。今のところダイヤや新旧ルートの改札分離などについての発表はありませんが、旧ルートと価格差を設けたことで利用がどうなるかなど、見通しづらいところがあります。

一方、迎え撃つJR東日本は3/13改正でE259系新型N'EXの増発と新設される武蔵小杉駅への全列車停車を発表、さらにえきねっと会員向けサービスとして携帯サイトを利用したチケットレスサービス(PDF)を開始する予定です。あくまでもえきねっと会員向けサービスということで、モバイルSuicaとは別のサービスです。成田Suicaアクセス成らず^_^;。

とまぁ地上戦が活発な成田空港ですが、JAL再生との関連で空中戦も熱を帯びております。おさらいになりますが、注目されたアライアンス問題は、ワンワールド残留でアメリカン航空との提携強化を発表し、米当局に独禁法適用除外(ATI)を申請、認められればコードシェアや共同運航で一体的運営が可能となります。

その結果実に興味深いことが起きているのですが、ちょっとややこしい日米航空協定に絡んだ話です。1953年締結の日米航空協定は、当時の国力の差を反映した不平等なもので、航空会社が米側パンナムとノースウエストの2社に対して日本側はJAL1社、相手国経由で第三国へ向かえる以遠権についても、米側が無制限に対して日本側にはさまざまな制約があるということで、歴代政権でも不平等の解消に向けた交渉は行われていたのですが、そこはそれ安保タダ乗りを突かれると何も言えなくなる自民党政権下ではどうにもなりませんでした。

一方アメリカはオープンスカイ協定による航空自由化を主張し、オランダなどの賛同を得て各国と交渉を進めます。不平等解消を主張する日本に対しても、オープンスカイ協定締結を迫っておりました。アメリカにしてみれば、広大な国土で国内線の規模が大きく、国際線主体のパンナム、ノースウエスト、トランスワールド(TWA)よりも国内線主体のユナイテッド、アメリカン、デルタなどの航空会社の方が体力に勝っておりましたし、実際制約の多い国際線ではパンナムとTWAが破綻、ノースウエストも苦しい経営が続いており、最終的にはデルタの傘下になりました。こういった状況でアメリカがオープンスカイを主張したのは、二国間協定で自由度の低い国際線を自由化することで、自国エアラインの活躍の場が広がると考えたのでしょう。

とはいえなかなか話は進まなかったのですが、2007年の米とEUのオープンスカイ協定締結で一気に流れが変わり、安倍政権時代にアジアゲートウエイ構想が発表され、韓国やタイとの間で自由化されたものの、その後の政権失速で日米間の協定締結には至りませんでした。

それが2009年の政権交代であっさり締結に至ったのじはご案内の通りです。ただし成田の発着枠の制約から、米2社の特権は継続され、パンナム枠はユナイテッド、ノースウエスト枠はそのままデルタへと引き継がれております。ただしJALを含めて成田の発着枠を返上した場合は、乗り入れを希望する別の航空会社へ割り振られるルールです。実はここにアライアンス問題のキーがあったんですね。

元々アライアンスのスカイチーム移行を前提とするデルタとの提携話は、国交省航空局のアイデアだったもののようです。仮に締結されると、JALとデルタの2社で太平洋線の運行便の6割超を担当することになり、当然そのままでは米ATIの認可が難しいので、運行便の統合で減便することになりますので、それで返上された成田発着枠の再配分が可能になるわけです。いかにも役人的発想ですが、再建でリストラ必至のJALにとっては、リストラ効果が大きいので、社内的にはかなり傾いたようです。それをワンワールド残留に決めたのは、稲盛CEOですが、さすがに適格な判断です。

というのは、米2社の特権は旧協定の以遠権も含まれていて、デルタは成田を中継点に単独でアジアの各都市に航空路を設定できる権利がありますから、JALのリストラの結果が事実上の国際線撤退となる可能性も含んでいて、むしろ内際分離が見直されれば羽田へのアクセスにJALが利用されるだけとなる可能性があるわけです。

それに対して特権を持たないアメリカンの方が、JALの存在感を高めることになります。また米ATIの認可も早いと見られ、3年で再建を果たさなければならないJALにとっては、追加費用もかかるアライアンスの移行は無理があるということで、「航空素人」を自認する稲盛CEOの経営センスはなかなかのものです。

これで太平洋線に関してはアライアンス3陣営でシェアがほぼ3分されることになり、競争環境も理想的になります。とはいえ、これはこれで課題もあります。というのも、JALの事業計画に不可解な部分があるんです。

日航、ベトナム線増便・国内12路線廃止 10年度上期計画
これだけでは何のことかと思われるでしょうが、既に発表された国際線の路線撤退で浮いた成田発着枠を他路線の増便に回しているんです。これにJAL撤退後の国際線増強を狙っていたANAから不満が出ております。JALはあくまでも既得権益を手放さない構えです。

ま、敵の出鼻をくじくのも作戦のうちかもしれませんが、それでリストラ効果が薄まらないかという懸念もあるわけです。特に債権放棄や追加融資を迫られる銀行筋からは不評です。ま、これも3年以内に結果の出ることですから、引き続き国民目線で監視を続けたいところです。

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