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Sunday, February 21, 2010

虎の尾を踏んだトヨタ

トヨタのリコール問題の続報です。最新ニュースから。

トヨタ批判、米社会問題に 公聴会控え収束見えず
トヨタ問題は単なる品質問題ではなくなってきております。カムリなどのアクセルペダルの不具合問題で、トヨタ米現地法人の幹部が修復不能な失言をしてしまったのが原因なんです。前エントリーの冒頭で指摘した米社部品の採用を「政治的配慮」とする現法幹部の不用意な発言が、リコールを否定するコンテクストの中で「原因は米国製部品にある」と取られてしまい、米国民のプライドをいたく傷つけてしまったのです。豊田章男社長の公聴会出席が決まりましたが、平身低頭誤るしか対応のしようがない状況です。

そもそもアメリカのリコール制度は日本と異なり、日本では自主改修で済ませるようなケース、将に豊田社長が「カイゼンの一環」と指摘したようなケースまで含めて情報開示を求めており、今回のケースでも、早期にリコールを届け出ていれば、単なるメーカーとユーザーの債務債権関係としてベタ記事で終わるものなのに、リコールを否定するばかりか、原因を米社製部品に責任転嫁するような姿勢に米国民が怒りをつきつけたということです。

逆に言えばこの制度は、海外本社が現地法人をコントロールするツールとしても有効なんで、世界規模で増産体制を組んできたトヨタにとっても「使える」制度なんですが、そのことに対する理解がトヨタには乏しかったのですね。だからこそアメリカは人件費が安いわけでも法人税率が低いわけでもないのに世界から直接投資が呼び込まれ、内需が活性化されてきたわけです。

これが日本や欧州諸国では、似たような規制をしていても、運用が往々にして恣意的で、規制当局と業界の阿吽の呼吸といような暗黙知が存在するケースが多いのです。これは圧倒的にインサイダーである現地企業に有利なわけで、ホームバイアスとなり貿易障壁として機能しているのです。

それでも中小国の分立する欧州では、国ごとに異なる規制や運用基準が貿易を阻害し経済にマイナスであることが意識され、それがEUの市場統合に活かされております。誤解のないように申しあげますが、個別に見れば欧州諸国は、日本も真っ青な旧態依然がまかり通る階級社会、格差社会で、内向きになりやすいのですが、それによる不利益も意識されているので、規制を国単位からEUという国家間の枠組みへ移し変えることで、ホームバイアスを乗り越え、アメリカに匹敵する自由な市場を作ろうという機運が生まれたのですし、またこのことが「外圧」として機能することで、各国の制度改革が進み、域内貿易が活性化されました。

その結果例えば日本の輸出の対GDP比は20%弱ですが、ドイツでは40%超という風に差が出ているわけです。ホームバイアスの典型例は現在進行中のエコカー減税や買い替え補助金、家電のエコポイントなどでも見られます。

スクラップインセンティブと呼ばれるエコカーの買い替え補助金は、同等の制度を欧米諸国も採用しましたが、例えばドイツではユーロ3と呼ばれるEUの排気ガス長期規制適合車が対象で、この規制はEU加盟国は言うに及ばず、EU向け輸出を志向するアジア諸国でも共有されたルールとして機能しており、当然日本のメーカーも対応しているので、ドイツ政府が支給する補助金の恩恵を日本メーカーも受けました。

一方日本では、10・15モード燃費という国交省基準値をベースに、重量別目標で減税したりしていて、実際は燃費改善にならないことは既に指摘したとおりですが、同時に日本だけのローカルルールで外国メーカーに無視されている10・15モード燃費を基準に重量別目標という恣意的区分を設けたことで、国内メーカーは阿吽の呼吸で特別仕様車を次々投入する一方、輸入車は締め出されてしまったわけです。昨年秋の東京モーターショーで外国メーカーの出展中止が相次いだのは、このことによる集団ボイコットというのが国際社会の見方です。

当然トヨタのリコール問題にもこの問題は影を落とします。ということは、日本政府の立ち居振る舞いも難しいのですが、ちょっと心配もあります。

トヨタ問題で外相「誤解ないように大使館通じ支援」
在米の外交官がこの辺の問題をどの程度理解しているかわかりませんが、下手な助言がヤブヘビにならないか心配です。事はトヨタ幹部の不用意発言が発端ですし、日本の規制のホームバイアス問題も絡みますので、政治問題化の芽はあるわけです。

そういう意味では折角政権交代したのに、バラマキ色が強く、国際的にも不評なエコカー補助金やエコポイント制度が延長されたことは、新政権への不安材料となります。

付け加えて、JR貨物にとっても重要なクライアントであるトヨタですから、何とか乗り越えて欲しいところです。

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