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March 2010

Tuesday, March 30, 2010

郵政見直しに見る与党民主党の心変わり

ちとひどいですね。郵政見直しで郵貯・簡保の限度額アップを含む見直し案で揺れる鳩山政権ですが、5年前の郵政選挙で独自に郵政民営化案を盛り込んだマニフェストを掲げていたことをよもやお忘れではないでしょうね。過去記事は今読み直しても、当時のアホらしさが伝わってきますが、当時から民主党は小泉竹中路線の4分社化による民営化案を批判し、特に郵貯・簡保の縮小をはっきりと謳っていたのですから、今回の亀井郵政金融担当相と原口総務相が取り纏めた見直し案は論外と言える代物です。

良い機会ですので、郵政関連のリンク集として、過去記事から拾ってみます。

郵政と年金の陰で霞む地方分権
郵政台風去って「こんなはずでは」
ヒルズ、郵政、TBS
郵政公社と全日空提携でインテグレーターの夢成るか
宿敵、銀行マン起用の日本郵政トップ人事
数合わせ?の政府系金融機関改革
高くつく内部補助、公共性と独占の関係
英、郵便市場開放で見えた日本の周回遅れ改革
郵政眠永化?

一貫して小泉郵政改革には疑問を呈してきましたが、今回の見直し案の最大の問題は、形式上民営化され非公務員となった特定郵便局長や郵政関連労組など郵政ファミリーは、公務員の政治活動の禁止に抵触することなく政治活動ができる存在であるということです。つまり政治に圧力をかけて利権を得る存在ということです。中途半端な小泉改革が問題を複雑にすると共に、それに便乗して権益拡大とったわけです。そもそも本業の郵便授業の赤字体質は民営化しても直らず、確実に利益が見込める金融部門で内部補助という安直な方法では効率化につながりません。

となると民主党の心変わりも、夏の参院選対策の本音が透けて見えます。結果的に声を上げた千谷戦略担当相への風当たりの方が強い党内情勢となっているようです。2005年の郵政選挙当時との心変わりをどう説明するつもりでしょうか。新年度予算の公共事業費の箇所付け情報が民主党幹事長室から地方へ漏洩した問題や、凍結されたはずの道路建設を復活した問題と共に、選挙目当てミエミエの対応として更に支持率を下げること間違いなしですね。

なお、イギリスの郵政民営化ではロイヤルメール社が自由競争に敗れ青息吐息で、梃入れ策として政府による経営安定基金の供与や郵貯預け入れ限度額引き上げが議論されてます。また民営化の成功例といわれるドイツでは、ドイツポスト社によるメガインテグレーター戦略が成功したかに見えたものの、傘下に収めたベルギー宅配大手のDHLを手放しましたし、元社長はリヒテンシュタインのプライベートバンクを利用した巨額脱税容疑で2008年に逮捕されるなど、結局民営化の結果は各国共に惨憺たるものとなりました。

あと「民業圧迫」とする議論についても一言。報道によれば金融庁は信金・信組のペイオフ限度額引き上げを打診したものの、亀井大臣の郵貯限度額引き上げとセットの話と見て断っておりますが、そのことを以て「言質を取った」と言わんばかりの亀井大臣の対応は、議論の進め方としても問題ありですね。

ただし現実にメガバンクから信金・信組まで、銀行の貸出残高が減少の一途を辿っていることもまた事実で、果たして銀行は金融仲介機能を十分果たしているのかという点には疑問があります。郵貯限度額引き上げ問題にしても、民業圧迫を主張するだけでなく、郵政との提携によるより高度な金融サービスの提供などの前向きな提案も欲しいところです。

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Saturday, March 20, 2010

遅れてきた2003年問題、オフィス不況が止まらない

2008年の公示地価発表の時の記事を読み直したんですが、丁度JR東日本の東北縦貫線の着工が決まったタイミングでした。同時に前年8月にサブプライムショックで世界規模で信用収縮が始まっていたのですが、まだ東京都心などでは地価は高止まりしておりました。当時まだ実体経済は強かったのですが、9月のリーマンショックで実体経済が傷つき、更に年末にかけての派遣切り騒動へと連なります。

そして今年ですが、全国の地価は観測地点の99%が下落しており、下落幅も大きくなっております。

公示地価2年連続下落 4.6%、商業地下げ目立つ
大まかなトレンドとして、06~08年にかけて三大都市圏で地価上昇局面があった一方、地方圏は下落が続いていて、結局バブル崩壊後20年に亘る地価下落となりました。

ここで気をつけなければならないのは、公示地価の動向は実勢価格より遅れて動くという点です。2006年、姉歯事件を契機に見直された建築基準法改正による強度構造検査の厳格化が06年6月から施工され、建設ラッシュに水を差されたのですが、そのお陰でオフィス需要が逼迫し、賃料を上昇させた面があります。また再開発ラッシュで少なからぬ大企業が本社屋の建て替えで仮オフィスを手当したことで、オフィス賃貸市場に仮需要が生じたことも指摘できます。

オフィスビル2003年問題というのが言われたのですが、六本木ヒルズや汐留や品川港南地区などの一連の再開発でオフィスビルの供給が増えて賃料が下がるのではないかと言われていたのですが、実際は上記の通り再開発で仮需要を生んでいたことと、2003~2004年の大規模為替介入による円安誘導で輸出主導の景気回復があったことで、また丁度ブロードバンド化で光回線などのブロードバンド環境の整った新築オフィスが好まれたこともあって、オフィス需要自体が押し上げられたこともあり、問題は顕在化せず、むしろ賃料の上昇でオフィスビルの新築が高水準で続いた結果、2003年以上にオフィス供給量が増えてしまいました。

問題はその後の変化で、クラウドコンピューティングはオフィスに鎮座していた専用サーバーを代替し、また高速大容量の通信でどこでもオフィスが実現することで、そもそもオフィス自体の必要性も低下しつつあります。加えて団塊世代の大量退職でオフィスワーカーが減少に転じており、更にリーマンショックによる実体経済の悪化がオフィススペースの圧縮を後押ししているのが現状です。この構造変化は当分続くものと考えられます。

何のことはありません。オフィスビル2003年問題が時間差を置いて顕在化したわけです。その結果90年代のバブル崩壊時と同様に、金融機関の不良債権問題が再燃することになります。とりあえず現時点ではダヴィンチ・パートナーズのような不動産ファンドの資金繰り難という形を取っておりますが、ファンドが破綻すれば機関投資家としてファンドを購入していた銀行、生保、年金基金などに損失が広がります。現状は塩漬けにして損失を隠しているものの、2015年にも予定される新国際会計基準(IFRS)の強制適用によって保有有価証券の評価損益の開示を迫られることになりますので、またしても日本発の金融危機となります。

悪いことにJR東日本の東北縦貫線が完成する2013年以降、高輪の操車場跡地がまとまった再開発用地として売り出されます。駅設置も決まっており、ある程度のオフィス供給は為されるでしょう。とはいえ既にこの状況ですから再開発計画自体が見直される可能性もあります。また老朽ビルは2003年問題のときにコンバージョン(オフィスビルの用途変更)が言われ、住宅や倉庫に変更されたものも出ておりますが、下手をすると新築ビルでもテナントが決まらないままコンバージョンにかけられう物件も出てくると考えられます。というわけで、建築計画ではオフィスビルなのに、完成後なんちゃってマンションに化けるなんて事も起こりそうです。

とはいえ都区内でも既に大型タワーマンションが多数建っている現状です。いくら高層タワーマンションは人気があるとはいえ、供給が増えれば値下がりするのが道理です。加えて既に国内の住宅ストックは余剰となり、空屋率は13%を超えている状況です。諸外国の例では空家率は10%程度で安定するのが望ましいと言われますが、現状では更に上昇しそうです。

加えて少子化で、若年層にとっては両親の持ち家が相続される可能性が高いわけですから、そもそも住宅購入の必要を感じていないでしょうし、現在のような雇用情勢ではそもそも長期の住宅ローンなんて怖くて組めないでしょう。というわけで、今年売り出された高層タワーマンションが軒並み即日完売で、マンション市況が底を打ったとする見方もありますが、それはひと頃の高額物件よりも価格がやや下がってきたことの影響でしょう。逆に売るに売れない高額物件は賃貸に回され、ファンド売却によるオーナーチェンジ(賃貸契約を引き継ぐ形での譲渡)を探っているというのが本当のところです。

というわけで金融緩和の長期化と容積率緩和などの政策の後押しによる再開発の行き着く先は、空室だらけのシャッタービルだったと言う笑えないオチです。

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Sunday, March 14, 2010

道路はFREE(無料)になりたがる

サイドバーの"AMAZON鉄道書"で取り上げたFREEに「情報はFREEになりたがる」という一節があります。電子回路の集積度の進化を示すムーアの法則でハード価格が下がり、コピーが劣化しないデジタル技術によって商品/サービスの1単位の追加にかかるコスト(限界費用)はゼロに近づき、経済学では十分に競争的な市場では価格は限界費用に収斂されるわけですから、コンピュータやネット関連でタダのサービスが出てくることが避けられないことを表すフレーズです。それに倣ったタイトルとしてみました^_^;。

「道路は違うだろ」というツッコミが聞こえてきそうですが、消費される時に占有されない(非競合性)ことと、1台の自動車の追加通行で費用発生がない(非排除性)という点で道路も同様の性格を持っています。これ丁度経済学で言う公共財の定義に合致します。この観点から道路はタダで当然ということは導けます。

少し違った議論として、そもそもネットの無料サービスは、ひと頃web2.0と言われたブロードバンド環境下でのネットの進化の過程で多くのものが顕在化してきているのが特徴です。通信インフラの進化によるコストの劇的な低下なくして、例えばトラフィックの負担の大きい動画のネット配信などは有り得なかったことです。同様に日本国内の道路整備が進んだことを指摘しておきます。とはいえビット(情報)の世界と違ってアトム(物質)の世界では、空間の輻輳は避けられず、ネットワーク上に渋滞するボトルネックが不可避となります。ムーアの法則が支配するビットの世界にはない空間占有はアトムの世界では避けられず、ネットワークが充実しても渋滞を引き起こすボトルネックは存在し続けるという点には注意が必要です。つまり渋滞対策は永遠に続くわけです。

とはいえ渋滞対策は道路整備だけではないこともまた注意が必要です。道路整備をしてもボトルネックが別の場所で現れて、さらに対策が必要になるわけですから、投資としての道路整備は、伝統的な投資収益逓減法則を免れないことになります。その中で道路整備を続けることの意味を問わなければならない局面が存在するわけです。

東名高速の盛土崩落の記事で、現在の高速道路が如何に矛盾した存在であるかを述べました。特に95年の永久有料化を引きずった現状の民営化スキームは、道路族の圧力で骨抜きにされ、(独法)高速道路保有・債務返済機構によるリースというのは、喩えればクレジットカードのリボ払いのようなもので、返済額が増えないから、債務の元本が減ったところで元本を増やしても痛みを感じない仕組みです。元本が増えれば利払いが増えますから本当は負担増となるのですが、それが意識されないという恐ろしい状況になるわけです。

そして45兆円あった高速道路債務が35兆円に減った2009年、唐突に行われた国土開発幹線自動車道建設会議が開催され、外環道練馬―世田谷間の新設と対面通行4区間の4車線化を決定したわけです。外環道はともかくとして、4車線化の方は完成しても増収効果はほぼゼロでしょうけど、今の仕組みならばそれでも道路会社は困らないのです。採算性を加味した道路建設の抑制効果は働かないわけです。ゆえに前原国交相は国幹会議の廃止を表明、今国会に法案提出の予定です。

とはいえ高速道路無料化の方は妙な形でトーンダウンしております。新年度予算で6,000億円を予定していた無料化予算は1,000億円に圧縮され、地方を中心に37の路線、区間での実施に留まります。加えて土休日1,000円をはじめとするETC割引の原資として拠出された3兆円のうち、残っている2.5兆円を道路整備に用途変更するということで閣議決定されました。公共工事の箇所付け情報が民主党から地方へ流れたことが問題視されましたが、例の幹事長室に陳情一元化した結果としてブレたように見えてしまいます。

もちろん既に保有機構に支払われていて、形の上では執行済みの予算の使途変更ですし、もっと言えばETCのセットアップ料金を掠めている財団法人道路システム高度化推進機構(ORSE)がETC普及の名目で拠出したいわゆる埋蔵金の類いでしょうから、財政負担は生じないのですが、そんなお金があるのなら、国庫へ返納して国債発行を圧縮することの方が重要ではないか、あるいは夏の参院選対策ではないかとメディアに書きたてられている通り、折角政権交代が起きたのに、以前と変わらないじゃないかという不信感が国民に出始めているのは要注意です。所謂政治と金問題で国会論戦も期待はずれですが、鳩山政権の支持率低迷は、むしろ改革姿勢の変節を国民が気にしているということでしょう。そういった意味で高速道路無料化の後退は見通しづらい気持ち悪さを感じます。

とはいえ6月に実施される無料化で、神奈川県の新湘南バイパスと西湘バイパスが含まれている点には期待します。というのは、今月28日予定のR134湘南大橋の4車線化で、戸塚から小田原まで事実上R1ルートのバイパスが完成しますから、現在少額の通行料が嫌われて大型車の通行が殆どない両バイパスに利用がシフトすれば、住宅が密集して生活道路の要素も強いR1の慢性渋滞が解消されることが期待できます。こういった目に見えた変化が実感されれば、必ずしも国民に理解されていると言い難い高速道路無料化への理解が進むと考えられます。

あと地方路線中心の無料化ですが、関連自治体の意識改革も重要です。高速道路ではありませんが、昨年9月に無料開放された埼玉県の富士見川越有料道路ですが、R254バイパスとして交通量が増え、沿道で開発が始まっております。過疎化が進む地方では、無料化された高速道路はメインストリートになるわけですから、高速道路を起点とした地域開発に意を砕く必要があります。また道路会社にとっても、管理するSA・PAは商業の一等地となるわけですから、料金収受部門のリストラと相まって、道路会社の収益性を高めることにもなります。

あと無料化で渋滞すれば事業が成り立たないとして高速バス大手の西日本鉄道が高速バス事業の縮小、撤退方針を明らかにしてますが、本音は2012年の九州新幹線博多開業で打撃を受けることの予防線でもあるでしょう。一方で上越新幹線を向こうに回して盛業の北陸道高速バスの例もありますから、収益性の高い高速バスで一般路線バスの内部補助をする現在のビジネスモデルが成り立たなくなることの方が問題と考えているのでしょう。これもタクシー無線などの既存インフラを利用したデマンド交通のような試みも一部で始まり、EVのカーシェアリングも将来の過疎地の地域交通政策で位置づけられる可能性があり、バス事業者の役割はひょっとしたら縮小するのかもしれません。

それとJR各社も抵抗しておりますが、少なくとも渋滞が予想されるならば、営業エリアに大都市圏を抱える本州上場3社とJR九州にはむしろ追い風になるのは高速1,000円渋滞でも実証されております。思えば開業以来赤字続きだった東京モノレールが黒字転換したのは、並行する首都高羽田線が渋滞するようになってからでした。ただし北海道、四国、貨物に関しては公的支援は不可避と考えられます。

ここまで来ると地域独占を前提に民間事業者に公共性を担わせる現在の交通政策の前提から見直さなければなりませんが、国交省はフランスに倣って交通基本法制定を考えているようです。ミッテラン政権時代に行われたフランスの画期的な地方分権政策により、交通サービスを地方政府の権限と責任において維持し、事業者に公共性義務を負わせない、と同時に新規参入を促し地域独占を否定するという、現在のEUの交通政策に反映された考え方です。ただし日本でやるには地方との軋轢を覚悟する必要がありますが。

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