GW本番に冴えないJR各社の憂鬱
いよいよGW本場、早速高速道は渋滞が始まっております。予想では最大50kmの渋滞とか。それでも1,000円割引最後の大型連休ということで、出足は好調なようです。とはいえ割引クーポン携えての観光地めぐりやグルメツアーなど、節約志向は強いようです。
また昨年の新型インフルエンザ問題やグローバルリセッション、アイスランド火山噴火などで不調だった国際線航空も息を吹き返し、成田の出国ラッシュとなります。
成田空港、出国ピーク 4万6千人が海外へその一方でJR各社は苦戦しており、このGWでも一部で乗車率100%の列車があるほかは、余裕のある状況です。ということで久々載り鉄すっかな^_^v。
特に新幹線の落ち込みが大きいようで、上場3社の業績に大きく影響しております。
JR3社、減収減益、10年3月期 高速道路値下げなどで特にJR東海の落ち込みが大きいのは、収益の新幹線依存度の高さからくるものです。また記事中にあるように、退職給付費用の減少が寄与して東と西の11年度予想では鉄道収入は横ばいながら純利益2けた増の予想となっており、この面でもJR東海は出遅れております。
その結果が昨日のリニア開業遅延のニュースとなります。
JR東海、リニア開業27年に延期発表、新幹線の収入減で加えて大阪までの建設も自己資金で行い、開業時期を2045年ごろとしており、不透明だった大阪延伸に関してはむしろ踏み込んでおります。
中央リニア5.1兆円の記事でも指摘したところですが、元々1992年の新幹線買い取りで5.1兆円の価格設定がされ、そのうち4.5兆円分のローンが2017年度で終わり、以後この分のキャッシュフローが余剰となるので、それを整備費用に充てる算段をしていたわけです。それでも山梨実験線の延伸による実用化に向けた技術開発や環境アセスメントなどの行政手続きなどで発生する費用は現在の東海道新幹線の収益に依存せざるを得ないわけですから、新幹線の利用減による減収減益は堪えるわけです。必然的に開業までのスケジュールを見直さざるを得なくなったわけです。
加えて東海道新幹線に強く依存した収益構造のリスクも明らかとなったわけで、台湾新幹線で痛い目にあったJR東海が突然技術輸出に熱心になった理由も見えてきます。その結果の日本車両の子会社化だとすれば、本気度は高いといえます。となればむしろ山梨リニアの実現可能性は高まったのかもしれません(笑)。
さて、頼みの東海道新幹線の不振がいつまで続くかですが、基本的に10年以上続くと考えるべきでしょう。理由は簡単で、高齢化の進捗で労働人口が減少するわけですから、三大都市圏を結ぶ東海道新幹線はその影響を最も強く受けることになります。加えて最大の貿易相手国がアメリカから中国にシフトした結果、太平洋に面した港湾機能を強みとする三大都市圏の比較優位も失われ、また新興国の工業化はエネルギーや鉄鉱石などの資源価格の上昇を招き、加工貿易立国型の産業構造を持続させることができなくなります。温暖化ガス削減目標の25%は容易に達成可能です(苦笑)。
一方、政局の混乱でやや不透明になった感はありますが、4年以内に行われる高速道路無料化の影響も受けることになります。この面ではビジネス利用の多い東海道新幹線への影響は相対的に小さいと考えられますが、影響は皆無ではありません。ただし羽田空港第4滑走路の供用開始もマイナス材料となります。
というわけで収益の屋台骨を支える東海道新幹線への逆風は強く、一方で高速道路無料化で渋滞しやすくなると考えられる大都市圏の近郊輸送で安定収入を得られる東、西、九州は相対的に影響が少ないと考えられます。JR東海でも遅ればせながらの武豊線電化を発表しました。九州の筑豊本線、篠栗線(福北ゆたか線)は電化済み、北海道の札沼線も電化が発表されており、将来の燃油代上昇を睨めば遅きに失した感は否めません。
てなわけで本気でアメリカの高速鉄道計画受注を目指しているのですが、北東回廊の高速列車アセラで実績のあるアルストムの優位を覆すのは難しいのです。というのは、そもそもJR東海がアメリカの高速鉄道計画に熱を入れる理由が、日本の新幹線と同様に新設の高速列車専用線を建設することから、アメリカの国内基準で重視される衝突安全性の除外が期待されるからというのですが、尼崎事故問題で指摘したpaper trainであることを追認したようなもので、セールス面ではマイナスだと思うんですが。
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Comments
こんにちは。
深遠な記事の数々、いつもながら楽しく拝見しています。
相も変わらず遅きに失するアナクロ東海ではありますが、
ここ最近、どうも少しずつ変化してきている気もします。
日車の子会社化や武豊線電化、新幹線海外営業など
今までらしからぬ流れは気になるところです。
もっと本気になってくれるといいのですが。
ただ、リニアは日本より海外で先に実現しそうな気がします。
さて、我が家でも墓参りを兼ねたGW伊勢志摩の旅を
マイカーにするか、鉄道にするかの家族会議を連日行いました。
大人二人+未就学児一人、ETCなし、という条件なので金銭的には
大きな開きがあるわけではなく、結局辛くも近鉄のクーポンに軍配。
これがETCや子供料金などの影響が大きくなると、
結果は一気にマイカーに傾いたでしょう。
鉄道もいよいよ厳しい時代なんだなぁ、と感じます。(^-^;
Posted by: ポポロ | Friday, April 30, 2010 12:05 AM
のぞみの原則N700化など東海もそれなりに工夫は
しておりますし、名古屋近郊の313系の成長は見張る
ものもあります。一度現地確認をなさると良いと思います。
名古屋圏は名鉄が空港輸送と犬山線沿線で気を吐く程度
で蒲郡地区は廃線希望など東海の躍進が目立ちます
ただ、この地域の真のライバルは車で、名鉄の客を
取ったところでシェアの伸びが見えづらい東海には
これ以上頑張れというのも酷でしょう。加えてカード
ビジネスです。edyが先発の名古屋地区でのtoica参入
は後手というより手遅れの感があり、ここでの成長も
見えず、またホテルも東の低価格化(METS)に対して
アソシエと高級志向のホテル運営では小遣い稼ぎも
難しい状態です。
マーケットを見えにくい名古屋をメインに持つ東海は
固い顧客の新幹線にシフトするのは当然ですし、ここが
手抜かりと言われても他に策がないといったほうが
良いのではないでしょうか。
売れない地域では売れないものは売れないんです。
Posted by: SATO | Friday, April 30, 2010 08:55 PM
コメントありがとうございます。
>ポポロさん
最近のJR東海の変化ですが、確かにらしからぬところがありますね。とはいえ遅きに失した感は拭えません。
気になるのは新幹線の売り込みがいかにも付け焼刃な点です。日車の子会社化もトヨタを手本とした垂直統合モデルを意図したものと考えられますが、そのトヨタがリコール問題で躓いたことを思い起こしてください。オペレーションの現地化が必要な鉄道ではアクセルペダルの不具合のような落とし穴は無数にあると考える方が安全です。
結局収益の9割を依存する東海道新幹線の利用が横ばいを脱することができない中で、海外へ出なければ成長できないことに気づいて焦っているように見えます。
道路の問題は複雑ですが、鉄道の特性を活かすには、結局道路輸送で実現できない希少性を訴求するしかないという点を強調したいところです。高速大量輸送による時間短縮と大都市部などの渋滞回避など、道路の周辺に存在する希少なサービスニーズを拾うことにこそ鉄道の意義があると考えられます。
>SATOさん
JR東海が努力していることは確かなんですが、新幹線依存の結果、ストラテジー(戦略)を見誤ったということなんだろうと思います。
確かに名古屋がフランチャイズというのはハンデかもしれません。他の大都市圏に比べて道路整備が進んでおり、かつ日本を代表する巨大自動車メーカーの地元でもあります。
ある意味名鉄は自動車に挑戦し続けてきたと言えるかもしれませんが、パノラマカーを以てしても乗客減は止まらなかったのに、名古屋圏の発展で道路が渋滞するようになってから乗客は増えているのです。おかげで新車は有料指定席車とロングシート車ばかりですが^_^;。
Posted by: 走ルンです | Friday, April 30, 2010 11:51 PM
JR東海の海外ビジネス、顧客はアメリカでなく日本政府じゃなくて?
フロリダ州の全人口1700万人。マイアミ500万、オーランド160万、タンパ270万。東海道新幹線の沿線人口4700万人。こんな沿線人口が少ないところに東海道新幹線をモデルした高速鉄道を建設したら採算が取れない。だから売れない。
この採算がとれない部分をまるまる日本政府に税金で援助して貰って、政治介入で主導権を握っていこうというビジネスプランを考えてるのでしょ。
海外高速鉄道プロジェクトC&C事業室と言いながら海外なんて見向きもしていないよこの会社。
Posted by: 蔵権 | Saturday, May 01, 2010 12:21 AM
蔵権さんは相変わらず短文で本質にグサリときますね。
仰るようにJR東海は政府の支援を引き出そうとしていると思います。アメリカも連邦政府と州政府が補助金を出すでしょうから、人口密度が低くても、案外損益分岐点は低い可能性はあります。
とはいえ実際に補助金で支援するには、例えば海外収益のリターンや量産効果によるコストダウンなどで新幹線運賃料金を下げるなど納税者に理解しやすい見返りがないと無理でしょう。実際金融支援が精一杯、一部に政府保証をつけるぐらいでしょう。殿様商売を続けてきたJR東海にとっては高いハードルですね。
Posted by: 走ルンです | Saturday, May 01, 2010 08:48 PM
私事で恐縮ながら、家族大人三人でお墓参りすると
公共交通機関運賃三人往復12000円
高速道路料金往復7100円
ガソリン代金往復概算2000円
自家用車所有のため乗り換えやその他不便さを回避して
自家用車にてお墓参りになります。
結局岐阜県では、交通渋滞があっても公共交通機関は
回避されやすいのが現実です。
また名古屋市近郊の道路事情を考えると
渋滞もあるけど今はまだ我慢できる程度であり
さらに長期的には人口減少なので、JR東海や名鉄にとって
管理人様ご指摘の渋滞回避などによる需要は絶望的でしょう。
最近の名鉄における設備投資を見る限り
輸送能力は現状維持もしくは縮小なので名鉄関係者は、
絶望的になっていると愚考いたします。
JR東海に関しては、ご存知の通りJR東海道新幹線なので
甘えが生まれた。と愚考いたします。
蛇足ながら、JR東海に関してJR東海道新幹線という感じになっているのは、
分割民営化当時に新幹線保有機構を経由して
北海道旅客鉄道株式会社などの経営安定基金の仕組みを利用して
利益の付け替えを準備したと愚考いたします。
Posted by: とまと | Saturday, May 08, 2010 06:23 PM
お天気に誘われて近所の六国見山から天台山、大丸山、円海山と縦走(爆笑)してきましたが、1日かけて踏破して痛い足をさすってJRで戻るときの運賃160円也とは、運賃節約で歩いたとすると何か損した気分です^_^;。
名古屋圏の事情が厳しいのは確かでしょう。というよりも、現状では首都圏以外は厳しいんだと思います。中之島線が不調の京阪や関空と共に沈み行く南海など、厳しい状況でしょう。
あと名古屋に限りませんが、止まらない公営地下鉄の建設も乗客の取り合いに拍車をかけております。その一方でバスは赤字だからと撤退傾向です。
東京でも大江戸線の開業を機に都営バスが縮小された結果、不便になった地域も見られます。
名鉄に関してはJRと市営地下鉄の挟み撃ちで、遠距離客はJRに流れ近距離もバス路線再編で地下鉄に人が流れですから、厳しいですね。しかも市バスも収支悪化で路線縮小ですから、地下鉄が整備される毎に不便な地域が出現するというのは、何か間違ってますよね。
Posted by: 走ルンです | Saturday, May 08, 2010 11:48 PM