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Sunday, April 18, 2010

長崎は狭軌だけだった

タイトルだけでフリーゲージネタとわかりますが、青森に続く聞くも涙の地方の誤算です。

フリーゲージトレインに関しては、先日九州新幹線鹿児島ルートを使った試験走行で開発目標の270km/hをクリアしたというニュースがあり、一見順調なようですが、軌間可変のギミックを仕込んだ車軸は当然通常もののよりも重量があるわけで、実はそれがネックとなります。この重量増はほとんどバネ下重量となりますので、通常の鉄道車両よりも軌道破壊の度合いが大きく、それだけ線路保守のコストを押し上げます。

また台車重量の増加で主に在来線の曲線部を通過する際に車輪フランジに掛かる横圧が大きくなり、脱線限界を引き下げます。そのために在来線区間の軌道強化が必要になりますが、仮に軌道強化しても、曲線通過速度は下げざるを得ず、曲線通過のために低重心で自然振り子システムを採用する885系"白いかもめ”より10~30km/h程度下げざるを得ません。つまり在来線区間では現行の特急よりも遅いわけです。ちなみに振り子装置は乗り心地改善にはなるものの、フランジの横圧自体は大きくなるので、在来線専用の軽量車でなければ採用は難しいものです。

加えて新幹線区間での最高速270km/hは、JR九州内だけならば問題ないとしても、山陽新幹線に直通して新大阪まで走らせようとすると問題が生じます。この最高速は100系の230km/hよりは速く300系と同等ですが、700系の285km/h、500系とN700系の300km/hには及ばず、足を引っ張る存在となります。ただでさえバネ下重量が大きく線路保守量を増やす車両ですから、これ以上の高速化は難しいですし、そもそも在来線サイズで輸送力も劣る車両の乗り入れをJR西日本が呑むはずもありません。

というわけで開発を進める(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構も微妙な物言いとなり、フリーゲージトレインの開発に暗雲です。

九州新幹線:軌間可変電車の開発難航で懸念 県、開業まで「時間ない」
機構は「長崎ルート専用車ならば可能」としているように、鹿児島ルートに倣って新大阪まで直通することを事実上否定しております。この伝でいえば新鳥栖から博多までならば乗入できないことはなさそうですが、そのために新鳥栖に渡り線と軌間可変送致を設置するのはソロバンに合いません。さあ困った。

そもそも新鳥栖駅は当初予定されていなかった駅ですが、政治臭プンプンです。福岡、佐賀の県境に聳える脊振山地はそもそも地下水源の豊富な福岡の水がめで、それゆえ通常山の基部に通す新幹線のトンネルとは違い、水脈を避けて博多から上り勾配となっているのですが、山地の際に位置する新鳥栖駅に至る下り勾配を設ける必要から、在来線の山岳トンネルと同様のトンネル内にサミットがあり両口に向かって下り勾配となる従断面線形となっております。新鳥栖駅の位置は長崎本線との交点で動かせませんから、ここに駅を設置するために規格外の急勾配を配する結果となります。その結果博多以南へは基本的に16連の東海道山陽新幹線編成は乗り入れられないわけです。

そういうわけで九州側からの片乗り入れとならざるを得ない新大阪直通ですが、フリーゲージではそのハードルは更に高まるわけです。無理を重ねた整備新幹線の綻びですが、それでも山陽新幹線区間だけならば8連のひかりレールスターもありますし、鹿児島ルートの新大阪直通はJR西日本にとって受け容れられるでしょうけど、長崎ルートに関しては難しいわけです。

加えて博多南線問題というトゲの存在も指摘しておきます。福岡県那珂川町の博多総合車両所への回送線を旅客転用したものですが、回送線はJR西日本の財産に区分されます。そのためにJR西日本が運行しているわけですが、来年春予定の鹿児島ルート開業で存廃問題が浮上しております。とはいえ廃止すれば代替交通は博多駅まで1時間かかるバスしかなくなるということで、現時点で結論は出ておりませんが、当面存続となれば九州新幹線博多口の線路容量を支障しますから、長崎ルートの入り込む余地はなくなります。

というわけで新大阪直通つまり鹿児島ルートと同等を夢見た長崎新幹線ですが、見果てぬ夢になりそうです。既に国交省ではフリーゲージではなく在来線特急を載せ変える方向の検討も始めたそうで、何のことはない、当初のスーパー特急方式へ逆戻りとなりそうです。さてそうなると鹿島市の反対などで揉めた佐賀県の立場が微妙です。並行在来線として切り離される肥前山口―肥前鹿島―諫早間の県による買取りとJR九州へのリースで20年間存続という計画の正当性をどう説明すべきでしょうか。

夢を語るのは悪いことではないんですが、さんざん夢を振りまいておいて、イザ実現段階になってみると使い勝手がいまいちで地元の満足度も下がってしまうのは何故なんでしょうか。

p.s.一部記述に誤りがありましたので修正いたしました。

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Comments

夢を語る人はすべてを予測できていないから。
あるいは現実を知る人は夢を語らなくなるから。

いかがでしょうか。

Posted by: とまと | Monday, April 19, 2010 at 10:54 PM

夢と言っても鉄道の輪軸部分は安全を支える重要なパーツです。元々軽量化の削りしろは少ないですし、仮に画期的な軽量化が実現しても、FGT以外の車両にも応用されますから、結局FGTはハンデを負うことになります。

こんなことは開発が始まった頃から指摘されてたんですけどね。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, April 20, 2010 at 09:56 PM

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