成田スカイアクセスの弱気
成田スカイアクセス開業の7月17日の京成線ダイヤ改正(PDF)が発表されました。関連して羽田空港―成田空港間の直通列車復活を京急webでも発表されました。京急は京急蒲田駅周辺の上り線高架化に伴う羽田空港アクセス強化の改正をしたばかりですから、ダイヤの骨格は変わらないものの、相互直通系統の行き先が変更となるわけですね。というわけで京成のプレス発表に力が入るのは当然ですが、中身は微妙です。
ダイヤの骨格はピーク時に有料のスカイライナー3本/時、新ルート経由の料金不要アクセス特急3本/時、在来線経由一般列車3本/時の合計9本となり、昼間は間引かれてスカイライナーが上野発00分と40分の2本に在来線経由の旧スカイライナー改めシティライナーが毎時50分発で都合3本/時となり、アクセス特急が40分ヘッドと、有料のスカイライナーと料金不要列車のラウンドタイムにズレが見られます。結果北総線列車などが退避で各駅の時刻がバラつく可能性があります。
また別途7月5日に金町線高砂駅の高架化で、金町線は終日線内折り返しとなり、上野―金町間に4連で運行していた普通を系統分割し、上野側は6-8連に増強されます。また新設のアクセス特急と差し替えとなる快速は上野発着となり、千住大橋を停車駅に加え普通との緩急接続を図るということで、在来線側は現行ダイヤの修正が中心のようです。
というわけで、中断していた羽田空港―成田空港間の直通列車が復活することになりますが、所掌時間最速103分は、途中乗り継ぎとなる現行ダイヤからは20分の時間短縮にはなりますが、かつてのエアポート快特/特急時代の最速列車は110分程度でしたから、実は新ルートで最高速120km/h運転でも、時間短縮効果は10分程度となり、運賃が200円上がることを考えると、どの程度利用されるかは微妙なところです。両空港を1時間で結ぶとして都営浅草線区間のバイパス線建設が検討されてますが、それで可能な時間短縮はせいぜい5-10分程度でしょうから、費用の割には効果は薄いでしょう。直通1時間の達成は容易ではありません。車両運用は120km/h運転対応となることから、京成3050形と京急車が充当されることになりそうです。
結局新ルートの運賃料金の値上げにより、在来線ルートとの分担がどうなるか読みきれない中で、目玉のスカイライナーの増発以外は、保守的な布陣かと思います。運賃を強気で設定したために、ダイヤは弱気ということか。しかもそのために力技の改札分離でコストアップしているわけですが、この辺の判断は吉と出るかどうか、注目したいところです。
一方成田空港を巡る状況は流動的です。羽田空港の第4滑走路供用開始と新ターミナル建設による国際化と日米オープンスカイ協定締結により、成田空港の位置づけが微妙です。羽田空港の国際線就航は便数の上では少ないものの、立地の利便性は圧倒的で、今後も発着枠の国際線への割り当てが増えると考えられます。成田空港も新滑走路延長で発着枠が増えるものの、立地面での不利は拭えません。
また今年のGWではささやかながら異変もありました。曜日付きの悪さと新型インフルエンザの影響で冴えなかった昨年との比較では利用は増えたものの、今年オープンの茨城空港で国際チャーター便が多数運行されたこともあり、その分成田の利用は食われたと考えられます。
あとちょっとややこしい話なんですが、JALの再建問題が事態を複雑にしています。日米オープンスカイ協定に基づく羽田発着の太平洋線の日米4往復ずつの割り当てで、米側がデルタ2往復、アメリカン1往復、ハワイアン1往復で、日本川の提携エアラインのないスカイチーム所属のデルタに2往復、JALと同じワンワールド所属のアメリカン1往復で、ANAと同じスターアライアンス所属のユナイテッドには割り当てないとなったのは以前の記事の通りですが、結果JALの所属するワンワールドがアメリカンの1往復を加えて3往復の一方、ANAの2往復のみのスターアライアンス、デルタ2往復のみのスカイチームとの間で配分が不公平になる上、JALが公的支援を得て経営再建中であることから、不公正競争というのがANAの言い分です。実際欧州では経営再建中のエアラインの就航制限を行っており、ANAの言い分にも一理あります。
加えて現在は国際線中心で高額の着陸料を設定している成田空港ですが、今後アメリカ以外ともオープンスカイを進めるのであれば。この内外価格差も見直しを迫られます。となれば成田空港にとっては減収要因となりますが、逆に値下げで就航便を集めやすくなる可能性もあります。そして上記のように両空港間の移動手段として鉄道が機能する状況にはないですから、今後の需要には読みにくさが付きまといます。この辺を視野に入れると、成田スカイアクセスの運賃設定は微妙なんですね。アクセス鉄道で改札分離までしてコストをかけて使い勝手を悪くするというのは、疑問の残るところです。
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