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Tuesday, May 25, 2010

当てない民主政治で損くらってます

タイトルだけでは意味不明ですが、ギリシャショックについて書いておこうと思います。古代ギリシャのアテナイの民主政治は、基本的に奴隷制をベースとした特権市民だけの民主制で、主に戦争で征服した周辺国の民を奴隷として徴用することで、哲学や数学など真理の探究に明け暮れた古代文明の地で、現代的な民主政治の破綻に直面しようとは思いもよりませんでしたが。

気になるのは所謂ソブリンリスクという用語がメディアで多く露出しているのですが、財政赤字の対GDP比がギリシャより悪い日本の財政を戒めるニュアンスで取り上げられますが、とんだお門違いです。経常赤字が累積する純債務国と経常黒字が累積する銃債権国の財政を同列で扱うことは出来ません。経常黒字の累積は即ち家計貯蓄となります。ザックリ言えば国全体の産出高の内、国内で消費されない分が輸出へ回り黒字となるわけですから、産出は所得とほぼ同義ですから、消費へ回らなかった分は貯蓄となるのは小学生でもわかる道理です。その貯蓄の範囲内で政府財政の赤字がファイナンスされている内は、財政破綻はあり得ないのです。

ギリシャは赤字国即ち純債務国ですから、政府財政の赤字は外国から調達して埋め合わせる必要があるわけで、しかも引受先がイタリアやスペインやアイルランドの金融機関で、彼の国々も財政赤字にあえいでいるわけで、早い話がEU加盟国同士で赤字国債の持ち合いをしていたわけです。何か日本の民間企業の株式持合いと似ているような^_^;。

だから日本の90年代の株安と銀行の不良債権の負の連鎖を想起させ、危機が拡がることを恐れられているのです。そして同じEU加盟国で通貨ユーロ導入16カ国中、ドイツ、オランダ、ベルギー、フィンランドの黒字4カ国がアンカーとならざるを得ず、金融機関の不良債権化した保有債券の償却を時間をかけて支援せざるを得ない状況です。丁度日本の90年代、バブル崩壊後の金融機関が実体経済の足を引っ張る構図と同じです。つまり欧州は日本の失われた90年代以降と同じ停滞期に入ったということです。

リーマンショック後の国際協調による財政出動で景気は回復してはいるものの、どこの国も短期的な財政出動から財政再建へ舵を切る出口戦略に苦慮しているわけですが、財政赤字問題だけで言えば、ギリシャだけを責められないほど他の加盟国の財政も痛んでいる中で、ギリシャの財政が破綻したら、ドミノ倒しのように他国へ波及し、ユーロの信認にも傷がつきかねないわけです。だからといってドイツ国民にとっては、自分たちの国富でギリシャのインモラルな財政破綻を救うことに抵抗感があるわけで、ドイツメルケル政権を苦しめており、実際地方選挙では与党が敗北するなどして、焦ったドイツは国民受けしそうな国債先物取引の規制を発表し、それがドイツの銀行の救済策と取られて市場にドイツの銀行の資産劣化を疑われ、先週の世界規模の株安に火をつけました。金融がグローバル化した現状では、1国だけで規制をしても意味がないどころか、むしろ裏をかかれてしまうわけです。何か90年代の日本を見ているようですね。

というわけでユーロ安となるわけですが、ユーロ導入16カ国はEU加盟国で既に相互の関税が撤廃され、同一通貨を用いるのみならず移住制限も撤廃され労働力移動も流動化し、リスボン条約も発効し欧州大統領も選ばれているわけですから、そもそもギリシャの財政危機をソブリンリスクと認識するのは正しくないのではないでしょうか。少なくともユーロ圏16カ国を1つの国と見る方が見えてくるものがありそうです。

この観点からは、上記の黒字4カ国を日本の太平洋ベルト地帯に、PIIGSと言われる財政破綻懸念のある国々をその他の地方と見れば、ユーロ圏事情が日本とよく似ていることに驚かされます。日本でも夕張ショックというのがありましたけど、ギリシャの財政破綻はさしずめ東北あたりの現状と対比すればわかりやすいでしょうか。EUの開発プログラムに沿って資金援助を受けてインフラ整備をしてきた周辺国は、さしずめ高速道路や空港や整備新幹線をおねだりする地方と同じで、実際天から降ってきたお金で投資ブームが沸き起こり、地価と株価を押し上げた様は、日本の80年代後半にも匹敵する熱狂ぶりで、それをドイツなど黒字国の貯蓄がファイナンス、加えてロンドン経由で欧州に流れ込んだアラブのオイルマネーも文字通り火にアブラ^_^;。しかしはじけるときはあっけないものです。そういやドバイショックなんてのもありましたが、お金の入り口と出口の関係で見れば、過剰なマネーが動き回っているだけというのがわかります。またユーロ安は黒字4カ国にとっては追い風ですが、2003-2004年の日本の大介入による円安誘導と同じ効果があるわけで、いずれ欧州企業の競争力を削ぐことになり、ここでも日本化が進みます。

ギリシャの財政危機が発覚したのは総選挙で政権交代が起きて、財政を精査したら国の経済統計に作為的改ざんが発覚し、表に出たものです。何かアジアのどっかの国でも似たようなことが起きてますが、政権交代後、予算編成してみたら、あまりにも財政状況が悪すぎて、選挙で約束したマニフェストの実行が難しいということで、マニフェストを変更するかどうかでゴタついております。そういや谷ツ場ダムはどーなったかというと、本体工事が凍結中でも県発注の関連工事は次々に発注され、しかも落札率90%超であからさまな談合状態ですが、政府はそれを止められないどころか、国交省の公共工事関連一括交付金で支援までする始末。地方が天から降ってきた金を貪る構図はギリシャ顔負けです。鳴り物入りの事業仕分けで埋蔵金発掘が期待されてますが、突っついてみたら隠れ借金が出てきたなんて事もありうるわけで、百鬼夜行の政権運営は続きそうです。

というわけでバブルがはじけて20年、日本は消滅せずに低位安定を保っております。となれば欧州の未来も同様、グローバルに進む日本化(苦笑)は、やっと欧州も日本に追いついたってわけです。80年代の日本のバブルは日本市場の閉鎖性の証しだったけれど、グローバル化が進み世界が単一市場に収斂されればこれ即ち究極の閉鎖市場ですから、かつての日本の出来事を世界がトレースするだけの話です。これで少し安心して眠れますかね^_^;。

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Comments

いつも楽しく拝見しています。

市場のグローバル化というのは
ここ数十年、常にこの地球が進んできた道のりなのでしょうけども
こうしてITの力で個々人がその変化を目の当たりにするにつけ
あらためて、本当に恐ろしい世界に突入したなと痛感します。
市場は地球の裏まで一心同体、
悲喜交々を瞬時に分かち合う様になってしまいました。

今や多くの輸出企業では沈み行く北米、欧州市場をそっちのけに
新興国のマーケットを漁りにいっていますが、
本当にそれでいいのでしょうか?
次の時代こそ、悲喜交々の「喜」を分かち合うべく
先進国市場にこそ未来を作る義務があるんじゃないでしょうか?
などと、今日も一人でぶつぶつ言って
明日に向けて仕事を頑張っています(笑。

晴れの日もあれば雨の日もあります。
ご自愛ください。

Posted by: ポポロ | Wednesday, May 26, 2010 01:12 AM

ご愛読ありがとうございます。

>今や多くの輸出企業では沈み行く北米、欧州市場をそっちのけに
新興国のマーケットを漁りにいっていますが、
本当にそれでいいのでしょうか?

量を取りに行くにはそれしかないんですが、新興国で急増している新中間層は、年収200万円以下なんですよね。日本で言えばワーキングプアの水準です。

にも拘らず「若者がクルマを買わない、テレビを買わない」と嘆いているんですから、そもそもマーケットが見えていないのです。本当に新興国で市場で勝負したかったら、ネットカフェやマクドナルドで夜明かしする若者に売れる商品を作れば良いだけの話です。だから明けない夜が続くんですね。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, May 26, 2010 09:53 PM

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